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2009年5月19日 (火)

各政党は、裁判員制度に反対せよ! その3

【番外編】 期待はずれですみませんm(__)m

現在の裁判員制度には憲法の基本原理からも問題があるなどと大見得を切っておきながら、海賊やピースボートの話にそれた。
裁判員制度は悪い。
それははっきりしているが、本題に入る前に当該の業界人ならではの実感を一言。

この2年ほど(もっと長かったかもしれない)、名古屋の裁判所は文字通り上へ下への大騒ぎ状態だった。ことは裁判員制度導入に伴う物理的な話である。

弁護士になって以来、20年あまり、民事第○部は何階のフロア、民事第△部は何階のフロアというのが定位置であった。
総じて民事部は6階と7階(刑事は確か4階と5階だった。民事には特殊事件専門の部について多少の例外があった)、高等裁判所は10階と決まっていた。だから事件を扱う部が何部かさえわかっていれば、行くべき場所は決まっていた。

これが、この2年ほど、めまぐるしく動いたのである。定刻に間に合うように出かけても(マチベンの場合、ほぼ40分前に事務所を出る)、あるべき場所に該当の部がなく、あわてて走り回り、挙げ句はこれまで決してあり得なかった場所に該当の部が突然、出現したりと、大変だったのである。
部の移動が一度であればともかく、2度も3度も起きたのである。

裁判所に直接確認した訳ではないが、ほぼ全ては、裁判員制度導入のための法廷作りや、裁判員制度導入に伴う部屋作りのためである。2年ないしそれ以上の期間、ずっと裁判所は工事が続いていた。裁判所の北側駐車場には、工事用の区画が設けられて一般車の進入ができなくなり、工事用の事務所が建っていた。

裁判員制度を導入するためには、裁判員裁判用の法廷を作ることはむろん、裁判員を選任するための質問の部屋や、裁判員や候補者の待機室や、合議をする部屋を作らなければならない。

しかし、工事中だからといって、裁判所を閉める訳にはいかない。日常の裁判をこなしながら、大改装が進められたのである。

弁護士が大変な思いをしたのであるから、工事の進行の度に、膨大な事件記録を抱えて引っ越しをしなければならない裁判所職員はもっと大変な思いをしたろう。引っ越しに伴って裁判記録が紛失したなどということは万が一にもあってはならない。精神的にも相当、負担だったのではないかと想像する。きっと裁判官も裁判の内容について夢中で考えながら、いつもの部屋に入ったら、全然違うメンバーがいて、「こりゃまた、どうも失礼しました。それにしても、俺の部屋どこに行ったんだったっけ」なんてこともあったのではないかと勝手に想像してしまうくらい、本当に大変だったのである。

さて、裁判制度実施を目前にして、ようやく各部が収まるべき位置に収まった。

と同時にあれまぁ、気がついたら、これまでの裁判所のイメージとはがらっと変わって、親切な案内掲示板が各所に掲示されているではないか。これがまた、淡いピンクと黄緑を基調とした、なかなかに落ち着いた快いデザインである(少なくとも裁判員制度宣伝用のゆるキャラよりよほどよい)。

名古屋の裁判所は、法廷棟と事務棟に分かれていながら、これが少なくとも外観上は一体の建物になっていて、かつ、法廷棟と事務棟で天井の高さが違うという複雑な作りである(法廷棟は11階建て、事務棟は13階建てなのに同じ高さの一つのビルに収まっている)。このため天井が高い法廷棟では、たとえば3階がない。4階から階段を下りると突然2階になるというミラクルな建物である。この構造が一目でわかるようなカラフルな(但し、品位を損なわない)看板が作られたのである。

また、階段に沿って、車椅子を上下させる昇降機が付けられたり(これまでここは車椅子の人にとっては、数人の助けがないと通行不能だった)、何やらトイレも改装されていたりと、ずいぶんと変わった。市民の目線というスローガンが裁判所の箱物にはとりあえず生かされたようである。こんな一面が、市民に開かれようとする裁判所の善意を感じさせたりする。

しかし、相変わらず、録音禁止、裁判所敷地内の撮影禁止である。裁判員になった人は、裁判所の敷地内で思わず携帯電話で写真を撮りたくなろうし(一生の記念になるもんね)、尋問を忘れないようにと、ヴォイスレコーダーに録音しようとしたりするだろう。是非、そうしてみてほしい。そして、裁判官に叱られてみてほしい。そして「どうしていけないんですか」と食い下がってほしい、何と言っても裁判員制度は市民の目線で裁判所を洗い直そうというのが第1原理だから、裁判官は懇切丁寧に撮影や録音が禁止されている理由を市民にわかるように十分に説明しなければならない義務がある。はてさて、市民が納得する答えを裁判所がするであろうか。

ま、撮影や録音が解禁されて、裁判所が市民にわかりやすい役所になったあたりで、裁判員制度廃止となるのが、ごく一般的に突き放した見方をすれば、一番よいのかもしれない。

ただ、その間に「絶対に参加したくない」という裁判員候補者が裁判員を強制される精神的物理的苦痛は取り返しがつかないかもしれない。雑ぱくな裁判で有罪や死刑にされたりした被告人の人権も取り返しがつかないかもしれない。実験台にされた身はたまらないから、今回の話は極めて不謹慎なのかもしれぬ。

僕は、裁判所は役所の中では、比較的、親切な方だと思っている。多少間違えた書面を出しても、書記官の方が、ここをこう直してくださいと、やさしく教えてくれる。食いついても、ちゃんと理由を教えてくれる。また、一昔前と違って、本人訴訟だからといって、やたら冷たくする裁判官もずいぶん減った。だから、僕は基本的には、裁判所は嫌いではないし、裁判官の良心をたいていの場合は、信じている。

と、横道ばかりにそれて、本日はおしまいなのである。各党に対して、裁判員制度に反対せよ、と言う割には、不甲斐ないのである。それは日弁連が裁判員制度推進の方針で固まっているので、なかなか憲法論に踏み込む勇気がないのである。

別に目に見える不利益があるという訳ではない。空気が何となく言い出しにくいのである。こういえば、わかってもらえる人にはわかってもらえるかもしれない。北朝鮮が4月5日に打ち上げた飛翔体を「ミサイル」と呼ばず、「人工衛星」と言うと、そのとたんに、周囲の風当たりが強くなる、あるいは風当たりが強くなるように想像してしまう、だから、先端部の形状から人工衛星である可能性が高いとか思ったとしても、とりあえず、「ミサイル」と言って自分を裏切って差し障りなくごまかしておきましょうとか。そんな気分が、気弱な日弁連会員の中にはあったりするのである。決して、裁判員制度推進が日弁連会員の総意でもないし、おそらく多分、多数でもないのだけれど、とにかく空気が言い出しにくいので、二の足を踏んだ今回であった。

以上、番外編、おしまい。

追伸

なお、北朝鮮が4月5日に打ち上げた飛翔体を「ミサイル」と断定した国や国会(但し、共産党は未確認を理由に反対。社民党は棄権)は、日本以外にはないのではないか。

ミサイルと断定するためには先端に爆発物が搭載されていることが確認されなければならない。今回の飛翔体の打ち上げが北朝鮮によるミサイル能力の誇示、ないしミサイル開発計画の一環であることは事実であろうが、国際社会では今回打ち上げられた飛翔体は人工衛星、せいぜいがロケットということでコンセンサスがあるようにみえる。

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