ソマリア沖海賊問題自衛隊派遣に関連して思うこと
ピースボートがソマリア沖で海自に護衛されたことが報じられ、ネットで非難ごうごうのようだ。
元記事は産経新聞の下記記事のようだ。
「『反対、でも守って』 ピースボート 海自が護衛 ソマリア沖」
この記事も含めて思うところだが、国内の報道は、どれもソマリアやソマリア沖の客観情勢を離れて、自衛隊ばかりに注目している。派遣したのであれば、派遣した先の情勢はどのようなものなのか、派遣された先の全体情勢の中で自衛隊はどういう任務を行っているのか、きちんと報じられるべきだし、議論されるべきだろう。自衛隊だけに注目して、一面的な報道を続けるメディアのあり方は、あまりにも内向き過ぎる。
ソ
マリア沖では、少なくとも二つの軍事作戦が展開されている。一つはEUの軍事作戦「アタランタ」。もう一つは米海軍組織(但し多国籍)が展開する合同任務
部隊(CTF)151だ。後者はテロとの闘いである「不朽の自由作戦」の内、海上阻止活動を担う合同任務部隊(CTF)150から今年1月分離独立した部隊だ。
また国連は、暫定移行政府に協力する各国軍に対して、ソマリア領域内(領土を含む)での武力行使を容認し、今年1月には呼びかけに応じた加盟国の「コンタクトグループ」会議も開かれており、国連の軍事作戦も存在するはずだ。
昨年秋には、世界的な米軍再編に伴いエジプトを除くアフリカ大陸全体を対象にする米軍アフリカ総司令部も創設され、指揮下の統合合同任務部隊「アフリカの角」は、CTF150、151にも参加ないし関与していると伝えられている。(以上、雑誌「世界」09年3月号谷口長世 (国際ジャーナリスト)「狙いはアフリカのエネルギー資源確保だ」)。
こ れらの軍事作戦の目的は何なのか、日本国内では全く報道されない。自衛隊がこれらの軍事作戦とどういう関係にあるのか、参加しているのか、参加していない のか、将来にわたって参加する意思はないのか、何も報道もされない。国会で議論された形跡もないようだ。国際的思考停止状態である。
護憲派が繰り返す失業した哀れな漁師が海賊になったというストーリーも疑問だ。海賊の中核は、98年にソマリアから分離独立を宣言したプントランド自治政府のコーストガード(沿岸警備隊)ないしその後身だとの指摘もある。海賊の実態を踏まえればこの見方には相応に説得力がある(これ を育成したのは英国の民間警備会社「ハートセキュリティ」)。単純に海賊とみなしてよいのかどうか、一定の主張のある政治勢力と見るべきではないのか、疑問がある(参照同上。竹田いさみ (獨協大学)「ソマリア海賊の深層に迫る」)。
ソマリア沖にはプントランド自治政府のコーストガードあるいはその後身が一定の規律をもって「海賊行為」をしている。そしてこれと対決するために列強の軍隊がひしめいているのだ。とすれば、こうした海域は通常の用語でいえば、戦場というのがふさわしい。
ピースボートも、ピースボートだとつくづく思う。海自に護衛された事態を弁解すべきではないだろう。率直に反省を表明してもらいたい。正確な情勢認識を持てば、のこのこと戦場に出かけて、海上自衛隊に護衛されるなどという自己矛盾を敢えて犯すようなことはなかったはずだ。
右も左も、総じて内向きである。
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