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2009年6月29日 (月)

弁護士事務所の広告はどうして多重債務者一辺倒なのか

弁護士事務所の広告を見る機会が増えた。
そのほとんどが「債務整理・過払金」など、「多重債務者」向けだ。

世の中、多重債務だけが庶民の悩みではなかろうに。
離婚の悩みも多かろう。
解雇や雇い止めなど、職場での不当な仕打ちも多かろう。
どうして、「多重債務者」向けの広告が集中するのか。

答えは簡単である。
多重債務処理は、完全マニュアル化している。
任意整理にしろ、破産手続にしろ、マニュアル通り進めればすむ。
以前に比べて、裁判所の破産手続で用意すべき書類は、山ほど増えている。
裁判所は、あらゆる事態を想定して、事細かに質問し、証拠資料を指定している。
かつてに比べて格段に面倒になった。
しかし、
逆に言えば、マニュアルに従って、決められた書類さえ出せばよいのである。

これは手間はかかるが、単純作業である。
したがって、弁護士がやる必要はない。
面倒な事務はもっぱら事務員に任せればよい。
弁護士が最低限しなければならないのは裁判所への同行だけだ。

担当弁護士が依頼者とほとんど面談していないので、
裁判所への出頭日には、依頼者が弁護士を間違えないように、
依頼者に弁護士の写真を送付しているという話も聞いたことがある。

こうした合理化を徹底すれば、
事務員を大量に雇って、大量処理し、多額の売上を挙げることができる。

こうした多重債務者の奪い合いが現在の弁護士広告ラッシュの実態である。

多重債務以外の分野では、広告コストに見合った売上が得られる分野が今のところ見あたらない。

このため、弁護士の広告は多重債務に集中している。

裁判所による完全マニュアル化のおかげで、
昔に比べて、事案の「顔」は、却って、わかりにくくなった。
この人はここで行き詰まった。
この人はここで間違った。
等のポイントが雑多な書類に埋もれてしまい、
却ってわかりにくくなったのだ。

世はなべてマニュアル化である。
僕は工夫の余地の広い仕事が好きである。
完全マニュアル化した多重債務でも、
やはりその人の抱える悩みや問題に、
せめて向き合う姿勢は持っていたいと思う。

マニュアル化と大量処理でも、
別に、当事者から苦情が出ている訳ではないから、
よいのだろう。

しかし、僕は何となく釈然としない思いで広告を見ている。

釈然としないものは釈然としないとしか、言いようがない。

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