良心的裁判員拒否 続 各党は裁判員制度廃止を公約せよ! その7
5月25日付で良心的裁判員拒否者について述べた。
「絶対に参加したくない」として裁判員への参加を拒否する人の権利を擁護するのか、あるいは蹂躙してしまうのか。
自らの思想・良心の証として裁判員への参加を拒む人を前に、その人の思想・良心の自由を保障すれば、自らその人を過料の制裁付で引っ張ってきた自分の立場が崩れる。
逆に無理強いすれば、人権擁護の最後の守り手としての自らの立場を放棄することになる。
自縄自縛とはこうしたことを言う。
と述べた。
しかし、この問題は、多分、表面化しないだろう。
裁判所は、露骨に思想良心の自由を蹂躙するほど非良心的でも非人道的でもない。
裁判所は、また、この問題が極めて深刻な問題であることをあからさまにしないようにする程度には賢明に違いない。
裁判所は、「不公平な裁判をするおそれがある」と認めた候補者を裁判員から除外することができる(裁判員法34条4項)。
また、裁判の途中でも、「不公平な裁判をするおそれがある」と認めれば、裁判員を解任することもできる(裁判員法43条1項、42条1項7号)。
具体的な候補者を不選任とするのも、解任するのも「不公平な裁判をするおそれがある」と言うだけで、具体的な理由を明示する必要もない。
そもそも、もともと馬を水辺まで連れてくることはできても、馬に無理矢理水を飲ませることはできない。
裁判所としては裁判員選任という入り口段階でいたずらにトラブルを抱えるのも嫌に違いない。
しかも、実際の運用では、一つの事件について50人から100人前後の裁判員候補者を呼び出すかのように伝えられている。その中から裁判員になるのはたった6人(プラス補充裁判員)であるから、選任作業は不適格者を排除するというより、いわば好みの裁判員を選び出すというに等しそうである(一応、くじ等、作為の加わらない方法によるとされているが。裁判員法37条1項)。
裁判所は、自分にとって扱いやすい裁判員を選びたいに違いない。だから、「絶対に参加したくない」などという厄介で頑固な候補者には、早々にお帰りいただきたいに違いないのである。
かくして、「良心的裁判員拒否」という格好良い問題は表面化しない。
(表面化させたい人は、方法を考えればよい。考えれば、何事でも、何か方法は見つかるはずである)
人を裁くことには「絶対に参加したくない」という信念を持っている人は、ただ「絶対に参加したくない」と言い続ければ、参加しなくてもすむようになっているのである。
一見、これは、思想良心の自由を尊重しているかのようで好ましく見えるかもしれない。
しかし、表面化しないだけで、この葛藤は、制度の本質的な問題だ。
裁判員になることを「国民の義務」だと言いながら、「絶対に参加したくない」と言えば、免れることができるというのでは、やはり二律背反から逃れられない。
矛盾が、表面化しないだけのことで、この制度にはやはり本質的な問題がある。
「絶対に参加したくない」候補者を裁判員から除外することによる弊害は他にもある。
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