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2009年7月30日 (木)

18歳成年と養育費

法制審議会部会が民法の成年を18歳とする答申をまとめたと聞いて、正直、驚いている。
選挙権年齢引き下げ問題と民法の成年には何の関係もないはずだし、
民法における成年の意味と構造がよくわかっている学識者が、
そろって18歳成年で一致するはずがないと思っていた。
せいぜい両論併記になるものと勝手に想像していた。

憲法改正手続法に関連して、
成年年齢の議論が起きて以来、
ずっと気になっていたのが、
離婚に伴う子どもに対する養育費の支払のことだ。
民法の成年が20歳から18歳に改正されたら、
何歳まで養育費を払うべきという実務になるのか。

養育費は未成熟子に対する親の監護の問題である。
だから、当該の子が未成熟である限り、
親には支払義務があると考えるのが道理である。
したがって、本来、成人年齢とは論理的には何の関係もない。

しかし、裁判実務は20歳までで切る例が圧倒的だ。
20歳には論理的な根拠はない。
また、20歳には、子どもの経済的自立との関係でもほとんど意味がない。
当事者が、歩み寄る気配を見せないから、
裁判所は力業で強引に民法を使って線を引いているだけだ。

したがって、18歳を成年と定義すれば、
当事者間の際限のない争いを
強引にねじ伏せる目安は今度は18歳になるしかないだろう。
20歳には全く根拠がなくなる。
18歳以外を取るべき合理的な理由はそうは簡単には思いつかない。

ある夫婦の子は満22歳の3月まで(大学卒業)とするのは、
実態には合うように見えて、
他方で、18歳までしか養育費を受けられない子を前提にしている。
理念的に考えると
それはそれで差別的で気持ちが悪い。

したがって、裁判所は、一律の目安がほしくなる。
目安を決めるのは力業だ。
20歳に根拠がなくなれば、
18歳にする以外に方法がないように思う。

重箱の隅をつつくようなことを言っているが、
これは、どうしてもずっと気になっている論点なのだ。

いったい、どうなるのだろう。

つい先日は、人の死(人の生命)が、強引に決められた。
今度は、「おとな」を強引に決めるのだという。

僕は、何かついていけない気分である。

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