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2009年12月 2日 (水)

それを言っちゃあ

旧聞になるが、11月19日、平野博文官房長官は、参議院内閣委員会で、自衛隊のイラク派遣は、違憲だとは考えていないと答弁した。

「現政権としては、イラク特措法自体が違憲であると、こういう考えには至っておりません。
 また、自衛隊が活動した地域がイラク特措法の定めるとおり非戦闘地域であったことが事実かどうか、ここのところの究明が私ども野党のときには十分分かっ ていないと、こういうことでございますので、それが我々の理解では非戦闘地域だと、こういう認識の下におりますので、その活動が違憲だというふうには考え ておりません。」

と答弁した。

民主党は、一貫して自衛隊のイラク派遣は憲法違反だとして、政府与党を追及してきたはずだ。

野党だったときには「非戦闘地域」だとは、わからなかったが、与党になって自衛隊の活動していた地域は「非戦闘地域」だとわかったという理屈だ。

一体、何がわかったから見解を改めるというのか極めて疑問だ。

自公政権がひた隠しにしてきた空自の空輸実績の全面開示で、航空自衛隊がバグダッドへ空輸していたのは、大半が武装米兵だったことをはっきりさせた民主党を評価したとたんに「それを言っちゃあ、おしまいよ」のどんでん返しである。

名古屋高裁のイラク判決の特徴の一つは丹念で的確な事実認定あった。

判決は、空自が活動するバグダッド空港を戦闘地域に当たると認めているが、その部分では、このような認定をしている。

(イ) 首都バグダッド
a 平成16年6月のイラク暫定政府発足後,首都バグダッドにおいて, 政府高官を狙った自爆攻撃等が相次いで多数の者が死傷し,武装勢力 による多国籍軍に対する攻撃も相次ぎ,同月27日及び同年7月末, いずれもバグダッド空港離陸直後にC130輸送機が銃撃を受け,ア メリカ人とオーストラリア人の乗組員2人が死亡した。また,平成1 7年1月30日には,バグダッド近郊を低空で飛行していた英国軍の C130輸送機が,武装勢力(アンサール・イスラム=イスラムの支 援者が実行の声明を発したが,実際はイスラム・スンニ派(以下単に 「スンニ派」という。)の武装組織ともいわれる。)により撃墜され, 乗員全員(少なくとも10人)が死亡する事件が生じた。さらに,バ グダッドでは,多国籍軍と武装勢力との衝突が頻繁に生じていた。 このような事態を受けて,多国籍軍は,バグダッドにおいて,武装 勢力に対する大規模な掃討作戦を展開するに至った。

実際に、空自の活動中には、東京新聞(中日新聞)を除いて、C130が攻撃の危険にさらされていたことを報道したメディアはなかったが、空自の撤収が開始された昨年12月15日付の産経新聞は、空自、イラク撤収開始 献身が生んだ「犠牲ゼロ」として極めて危険な中で空自が活動していたことを伝えている。

 空自のC130が攻撃を受け、被害が出たケースはない。だが、隊員が肝を冷やす場面はあった。

 C130がバグダッド空港を離陸後、15分遅れで離陸し、同じルートを飛行した米軍機が対空砲で攻撃されている。同空港の滑走路で要人を乗せて待機中、C130の上を4発のロケット弾が飛び越えていたことも弾道計算で判明した。

 「非戦闘地域」ではあったが、「治安が悪化した時期には、バグダッド空港への攻撃は月に30件ほどあった」(自衛隊幹部)。クウェートを拠点にイ ラクの南部アリ、中部バグダッド、北部アルビルに国連や多国籍軍の人員、物資を輸送した空自部隊にとって、最も危険度が高かったのは同空港だった。

 着陸直前、同空港へのロケット弾攻撃が起き、パイロットが着陸の判断を迷ったこともある。「隊員やC130が1発でも撃たれれば撤収論が巻き起こる」(同)。空自部隊は“完全試合”を求められていた。

同紙の立場は、バグダッド空港は「非戦闘地域」であったという前提ではある。犠牲なく任務を遂行したとして空自の献身を讃える主張ではある。

しかし、同紙が伝える事実は、バグダッド空港が、まさに武装勢力による攻撃を受けていたという事実である。

民主党は、こうした事実を踏まえてなお、「非戦闘地域」であったとの見解に変わったというのか。

新政権では、事実に基づいて、十分な検証がなされることを強く望む。それが将来に禍根を残さない途でもある。

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