小沢一郎という問題
マチベンがものいう話題ではないが、違和感があるので、敢えて一言、言いたくなった。
小沢一郎の問題である。
僕は、小沢一郎の安保政策に反対である。
だから、小沢一郎を支持しない。
小沢の安保政策は、国連中心主義を看板にする軍備自立拡張路線である。
国連の決議さえあれば、戦地であろうが、どこであろうが、自衛隊を海外派遣できるとするのが彼の基本スタンスである。国連決議に基づく軍隊における武力行使は、憲法9条が禁じる武力行使に当たらないとするのが彼の理屈だ。
だから、小沢は、アフガニスタンの地上部隊に自衛隊を派遣することを主張している。
小沢は、憲法9条を改正しないまま、憲法9条による制約を解除するために
憲法解釈の全面的変更を企て、
憲法解釈を司る内閣法制局長官を国会審議から排除しようとした。
彼の政治手法が独裁的であることはよく知られた通りだ。
私は、憲法9条の原理的な支持者として、小沢を支持しない。
他方で、小沢の「政治とカネ」の問題は、冷静に見て、
言われるほど大きな問題なのか疑問だ。
特捜部があれだけの捜査をしても、
政治資金規正法の不実記載という形式犯が立件されただけだ。
不実記載についても、植村一秀氏や天木直人氏のブログによる限り、些細なことだ。
特捜部も小沢氏の関与が立証できないから、立件を見送った。
検察審査会の判断によって、強制起訴となるかどうかが注目されている。
しかし、検察審査会に強制起訴の制度が導入された、一番の要因は、起訴不起訴が検察の一存に任されており、とくに被害者の声や思いが、起訴不起訴に反映されていないという実態にあったのではないか。
検察審査会が、政治情勢に極めて大きな影響を与えることは、本来予定されていなかった。くじ引きで選ばれた一握りの市民が、一国の政治を左右するということ等、およそ想定外のイレギュラーな事態だ。
現在の状況は、検察審査会制度の政治的濫用になっている。
検察審査会に対する申立は、極端な排外主義を唱える民族団体「在日特権を許さない市民の会」の代表からなされている。
今の政局が、彼らの思惑通りに進行しているということを見逃しては、事態の本質の一半を見失うことになる。
メディアが小沢排除一色で一致しているのは、小沢が利益誘導型の古い政治手法を代表する政治家だからだろう。
「強い経済」を唱える菅内閣の方針は、小泉・竹中の構造改革路線に急速に回帰しようとしているように見える。
「強い経済」を標榜する構造改革路線なるものは、結局のところ、市場原理主義であり、株価至上主義である。
コストを下げ、株価を上げる。経済成長がなされたとしても、その成果は、株主に還元される。労働者の賃金を削って、機関投資家や富裕層に利益が還元される仕組みである。この路線からは、一般市民の福利の充実は図れない。
小沢が、構造改革路線から一線を画する政治家であることは明らかである。
小沢の排除が、小泉・竹中構造改革路線への回帰と関係があることは見ておくべき論点だろう。
さらに他方、対米追随を外交の根本に据える官僚にがんじがらめにされて、普天間基地一つ、撤収させられない民主党政権の中で、もはや小沢一郎ぐらい強引な政治家でなければ極端な対米追随から脱却できないだろうとする期待もある。
普天間基地問題は、単なる一基地の問題には止まらない。
沖縄を差別し続ける本土人の醜悪さを示す象徴である。
海外移設という決着を図ることが可能であるとすれば、今の政界には強引な政治手法を持つ小沢しかいないだろう。
僕は、憲法原理主義者の立場から小沢を支持しない。
ただし、一斉バッシングには不気味さを覚える。
それぞれの立場から、冷静にものを見ることが求められている。
「政治とカネ」のスローガンに惑わされてはならない。
世論が、極端なバッシングに走るとき、極端な結果がもたらされることが多い。
僕は、弁護士増員もそうだったと考えている。
だから、小沢に対する一斉バッシングには、敢えて一言、差し挟んでおきたくなった。
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