起訴議決執行停止却下
民主党の小沢一郎元代表が自身を政治資金規正法違反で強制起訴すべきだとした東京第5検察審査会の起訴議決の取り消しなどを求めた行政訴訟に絡 み、東京地裁(川神裕裁判長)は18日、判決が出るまで強制起訴手続きの執行停止を求めた小沢氏側の申し立てを、却下する決定を出した。小沢氏側は即時抗 告する方針。
検察官役の弁護士を指定することについての「仮差し止め」も却下した。小沢氏の代理人によると、決定は「検察審査会は準司法的な機関であり、小沢氏側の主張の適否は行政訴訟ではなく刑事司法手続きの中で判断されるべきだ」と指摘した。(毎日新聞10月19日)
仙石官房長官が「行政訴訟になじまない」と発言したとおりの決定が出た。
しかし、行政法上、検察審査会の起訴議決が行政訴訟の対象になるかどうかは、そうそう簡単に結論が出る問題ではない。
行政法の学者に議論させれば、議論百出で、当分、収集がつかないだろう。
仙石官房長官が弁護士出身だから、専門知識に基づく発言だと、一般には受け止められているようだが、行政法は極めて特殊な分野なので、理解している弁護士は100人に1人もいない。
だから、仙谷氏も本当のところは自信がないはずである。
おそろしいのは、執行停止の申立から、わずか3日という目にも止まらぬ早業で、この難論点に、裁判所が却下決定を下したことだ。
裁判所は、判決や決定の文書を作るときには、細心の注意を払う。
誤字の一つでもあれば、「裁判所が間違えた」として、メディアや市民に揚げ足を取られかねない。
だから、結論を出して、起案をしてから最低でも2日は必要だ。
結論を出すまでには、提出された訴状を精査しなければならない。
今回の決定は、申立からわずか3日という超スピードで出された。
訴状を熟読して検討する、議論して結論を決める、決定文を起案する、ミスがないか書記官ともどもチェックする。
どう考えても、これ以上の早さでは決定を出すことはむつかしい。
多分、提訴と同時に(あるいは提訴以前に)、結論を出して、決定文の起案にかかった。
それが一体何を意味するだろう。
行政訴訟にはなじまないとする行政法には素人の官房長官の発言と密接な関係があるという僕の見方は、うがちすぎなのか。
僕は、これを戦後最大の裁判干渉と呼ぶことにした。
司法は危機にあるのか、それともすでに政治部門の下請機関に変質しているのか。
今後の推移を注目したい。
注:執行停止事件の場合、一刻も早く決定が必要なのは、停止を求める側だ。停止決定がされなければ、手続はどんどん進んでしまうからだ。逆に停止の却下は急ぐ話ではない。ほっておいても、起訴議決に基づく手続は粛々と進んでいく。結論が却下なのであれば、普通、裁判所はもっと急ぐ事件に集中して、当面、執行停止はほっておく。目にもとまらぬ早業で却下というのは、どう見ても奇妙きわまりない。
そういえば、重大事件なのに、ものすごく早かった例が、あった。安保条約を違憲と断じた東京地裁判決を破棄した最高裁判決だ(砂川事件)。このときも異例ずくめの早さだった。なんだかよく似てきた。
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