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2010年11月20日 (土)

借地権と抵当権の対抗問題

マチベンの仕事の大半は、普通の日常のトラブルである。
政治や、ご奉仕仕事である国選弁護だけをしているように思われても困る。
ときには、普通の仕事のことも書いておこう。
ただし、大抵の人にとっては、普通の仕事の話は面白くもないし、わかりにくい話になる。

借地の上に自宅を所有する一郎さんから相談。
借地には地主が銀行借入をするために根抵当権が設定されている。
地主の会社の経営が苦しくなり、銀行借入の返済が滞っている。

地主から、競売にかけられないようにするため、別の金融業者から2000万円を長期分割で借りて、銀行の借金を返済したいので、協力してほしいと求められた。

さて、前提問題は、地主が返済不能になり、銀行が担保権に基づく競売をかけた場合に、一郎さんは土地を明け渡さなければならないか、である。

銀行が土地を競売にかけても明け渡す必要がないのであれば、一郎さんは協力する必要はない。逆に銀行が土地を競売にかけたら、明け渡さなければならないようであれば、新規借入で地主が急場をしのげるのであれば、地主に協力するメリットがないわけではない。

そこで、一郎さんの借地と、銀行の担保の前後関係が問題になる。

一郎さんが土地を賃借して自宅を建てたのは、地主が土地に根抵
当権を設定して、銀行借入をする前。

本来、この順番どおりに考えれば、銀行が地主の土地を担保に取ったときには、すでに一郎さんが土地を賃借していたのだから、銀行は、建物所有目的の借地権が設定された土地を担保に取ったことになる。地主が返済に行き詰まって、銀行が根抵当権を実行して土地を競売にかけて土地が人手にわたっても落札した人は借地権が付いた土地を手に入れたに過ぎないから、一郎さんは立ち退く必要はない。
銀行が土地を担保に取った後に借地した場合は、銀行が土地の担保権を実行すれば、借地人は立ち退かなければならない。銀行は借地権のついていないまっさらな土地に担保を設定したからである。

担保設定が先か、借地が先かの順番で、同じ担保権に基づく競売でも、借地人の立場は、全く違うことになる。

特定の土地をめぐる銀行と借地人の関係は「対抗問題」と呼ばれる権利関係の一種だ。前者の場合は、借地人は銀行に対して借地権を対抗することができると言い、後者の場合は、借地人は銀行に対して借地権を対応することができないという言い方をする。

この「対抗問題」を決する「順番」は、事実経過にそのまましたがう訳ではない。
「対抗要件」を備えた順で決まる。

不動産をめぐる「対抗問題」は、登記の順序で決めることになっている。
一郎さんの場合、銀行の根抵当権の登記と一郎さんの建物の保存登記の先後で一郎さんが立ち退かなければならないかどうかが決まる。

一郎さん(正確には一郎さんの先代に当たる一郎さんの父親)は、建物は建てたけれども、建物の登記はなぜかしないままだった。一郎さんがそのことに気がついて、建物の保存登記をしたのは、地主が銀行から借入をして土地に根抵当権設定登記をした後だった。
したがって、一郎さんは、銀行に対して、借地権を「対抗」できない。

一郎さんは、協力しようがしまいが、地主が銀行からの借金を返済できなくなれば、競売により立ち退かざるを得ない立場にある。

一方で、地主が新たな借入先から借入をして返済をしようとする場合、新たな借入先は当然、土地に担保を設定することになる。
ところが、新しい貸主は、すでに一郎さんの建物の保存登記がなされた後に担保を設定することになるので、そのままでは、借地権の制限の付いた土地を担保に取ったことにしかならない。地主の支払が滞って、競売にかけても、一郎さんの建物の賃借権が存続したままの競売しかできない。
こうなると、担保価値が半減するので、地主は新しい融資を得ることができない。
結局、新しい貸主から借入をして返済が滞った銀行借入を清算する地主の計画は挫折する。

だから、この場合は、新たな貸主は、借地人の所有建物も担保に入れることを地主に要求することになる。これによって、借地権制限付きの土地という制約を回避することができるからだ。
そうすれば、貸主は、返済が滞れば、土地建物を一体で競売にかけて、売却金額から貸付金を回収することができる。
したがって、借地人が借地上の建物に担保権を設定すれば、これが実行されたとき、借地人は土地を明け渡さなければならない。

(あ~、ようやく前提問題の説明が終わった。書いていても、面倒だ。しかし、こういうことをお答えするのが僕らの本来の仕事だ)

一郎さんは、地主とは旧知で地主もいい人なので、協力してあげたいという。
今のままでも、地主の銀行借入の返済が止まれば、一郎さんは明渡を迫られる立場である。
新たな貸主から長期分割の借入をして、返済が滞っている銀行借入を返済してもらえば、毎月の返済額が減るので、場合によっては競売を回避できて一郎さんも明渡を回避できるかもしれない。

世の中には義理も人情もある。人助けである。

僕の回答は、一郎さんが協力してあげたければ、協力してあげればいいと思う、である。

そのことで、一郎さんが今以上に損な立場になることはないし、義理も人情も立つのだから言い解決だと思うよ。

という訳で、この相談は一件落着した筈だった。(続く

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