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2010年11月20日 (土)

パワハラ・セクハラ(性暴力)隠蔽自衛隊事件 続報

自衛隊パワハラ・セクハラ(性暴力)隠蔽裁判の続報である。

上記事件は、女性が空自基地で、意に反して上官からわいせつ行為を強要された上、相談した上官から退職を強要されたとして自衛隊を提訴し、今年7月札幌地裁が性暴力と退職強要を認め、女性に対して580万円を支払うことを命じ、確定した事件である。

田母神氏は、自らの著書で、この事件に触れ、自衛隊法の定める守秘義務に違反した上、真実と信じるに相当な理由もないまま女性自衛官のプライバシーを侵害し、「男女間のいざこざのたぐい」「女性はやや精神的に不安定で2回ほど入院した経歴がある」などと、女性自衛官個人を特定できる情報を明記しながら、一方的で虚偽の事実を記載した。

今回、女性元自衛官は、田母神氏に対して、①プライバシー侵害・名誉毀損を認めて文書による謝罪をなし、これを公にすること、及び②自衛隊法上の守秘義務違反に当たることを認めて謝罪するとともにこれを社会に公表するように求めた。

僕は、先の訴訟の勝訴後のコメントで、女性が、勝訴判決がセクハラで苦しんでいる多くの女性の励ましになればと語っていたのが印象に残っている。そこに自らを捨ててでも正義をつらぬこととした固い意志を見たからだ。
あの裁判が、彼女にとって、言語を絶する極めて厳しい道のりであったことは想像に難くない。

今回の謝罪要求の相手方は、元航空幕僚長=空自のトップにあった田母神氏である。

田母神氏は、今も自衛隊員に絶大な影響力を持ち、社会的にも頻繁にメディアに出演するなど保守派を中心として大きな影響力を有している。自衛隊のトップとして、あってはならない誤った歴史認識を問われて幕僚長の職を解かれて以来、却って社会的ステータスを上げたかのような観すらある。
こうした人物が、性に対する誤解を振りまき続ける以上、セクハラを容認する社会が改まる筈もないだろう。

こうした人物に彼女は再び挑もうとしている。

本当に頭が下がる思いである。

若干24歳の彼女の勇気ある闘いに連帯し、心からのエールを送りたい。

以下、この事件を最初に報じた東京新聞の記事と、田母神氏に宛てた通告書全文を掲示する。

Toukyosinbun101118

「東京新聞11月18日」をダウンロード

【通告文】

田母神 俊雄 殿
 
通 告 書
 

前略
当職は、今年7月29日に札幌地方裁判所で勝訴判決が下された航空自衛隊北部航空警戒管制団第〇〇警戒群□□分屯基地の元隊員である原告の代理人です。同裁判は、自衛隊が、事実を争ったにもかかわらず、原告主張がほぼ全面的に認められ、それに対して自衛隊は控訴せず確定しました。
ところで、貴殿は、昨年5月に『自衛隊風雲録』(飛鳥新社)を出版されましたが、その222頁で、「こうした事案が起きますと自衛隊では、警務隊(この場合は空自警務隊)というのを派遣して、事案を細かに調査」するとして、その調査結果に拠るものであるかのように、以下の記述をしています。

「その調査によれば、男性三曹が夜中に女性空士長を呼び出し、一緒に酒を飲んで胸を触ったとか、飲んだ場所で一緒に寝てしまった、ということで、いわばよくある男女間の“いざこざ”の類であった。
また、この女性空士長はやや精神的に不安定で、病院に2回ほど入院した経歴もあり、部隊では腫物に触るように扱ってきたという報告も受けた。」

貴殿の上記記述は、当時裁判で争っていた、原告のプライバシ-に関わる事実です。これを公刊物にすることは、原告のプライバシ-を侵害し、名誉を著しく傷つけるものです。しかも、自衛隊法59条「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を離れた後も、同様とする」とする秘密保持義務に反する行為です(同法118条1項1号に罰則規定)。
 さらには、内容が事実に反しています。
 貴殿によれば、性暴力事件発生直後に、自衛隊が警務隊を派遣して積極的に調査したと言いますが、このような事実はありません。実際に警務隊の取り調べを受けたのは約6カ月後です。その警務隊の取り調べは、男性警務隊員が原告本人に対して被害状況の再現をやらせようとするなど(原告はこれを拒絶)、それ自体がセクハラ(二次被害)となるものでした。
 また、判決は、加害者が原告の意思に反する性的行為を行なったことを明確に認定しており、「一緒に酒を飲んだ」「よくある男女間の“いざこざ”の類」などでなかったことも明らかになっています。
さらに、貴殿は、本件事件以前に、原告が精神科系の病院に2回ほど入院したかのように述べていますが、これも事実に反しています。
結局、貴殿にこのように書かれることは、セクハラ被害者である原告に対する二次被害というべきものです。判決は自衛隊による二次被害を認め慰謝料の支払いを命じましたが、貴殿の記述も同根・同罪であると言わざるを得ません。
以上により、原告は貴殿に対して、下記のとおり請求し、本書到達から10日以内に書面で回答することを求めます。もし誠意ある回答をいただけない場合には、法的手続きを取ることも考えておりますことを申し添えます。
            記
1.貴殿の記述がプライバシ-を侵害し、名誉を毀損するものであることを認め、原告に対し書面で謝罪するとともに、その事実と謝罪の意思を社会に公表すること。
2.貴殿の記述内容が自衛隊法59条1項に反するものであることを認め、その事実と謝罪の意思を社会に公表すること。

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