尖閣ビデオ流出と民主党マニフェスト
マスコミは、相変わらず、犯人探しに忙しい。
どこも尖閣列島海域であの日、あのとき、何が起きたのか真相に迫ろうとしない(ようだ。ようだというのは、産経新聞は違うという意見がありそうだからだ、僕は朝日と中日しか見ていないので、わからない)。
別にビデオを流出させた人を英雄扱いしたいとは思わない。
しかし、真相の一端にしろ、国民がそれを知ることができたのは、彼のビデオ流出行為によることは厳然たる事実である。
そして、彼がビデオを流出させるに至ったのは、間違いなく、密室の超限定ミニ上映会でお茶を濁そうとした政府の姿勢であり、これに無批判なマスコミのためだ(産経新聞を除く)。
民主的な議論は、正確な事実の共有の上にしか成り立たない。都合のよい一部映像をごく限られたメンバーだけに見せる等というやり方は、民主国家と到底相容れない。
マスコミが、そのことに敏感であり、事実の追及という本来の精神を発揮しておれば、だれが好きこのんで、身の危険を冒して、ビデオを流出させようか。
今回の件の最大の犯人は、無批判・垂れ流し機関と化したマスコミにあることは間違いない。
そして、そうしたマスコミを体よく利用したのは、民主党政権である。
とくに仙谷官房長官の横暴はひどすぎる。
今回の事件を契機に批判精神を忘れたマスコミに乗じて秘密保全法制の強化を検討すると言い出している。
仙谷由人官房長官は8日の衆院予算委員会で、中国漁船衝突事件の映像流出問題に関連し「国家公務員法の守秘義務違反の罰則は軽く、抑止力が十分ではない。 秘密保全に関する法制の在り方について早急に検討したい」と強調、検討委員会を早急に立ち上げる考えを示した。(共同通信・11月8日配信)
ビデオ流出によって、いかなる実害があったのか。
ビデオによって国民が事実の一端を知ることに、いかなる弊害があったのか。
いや、ビデオの中身こそ、国民の知る権利(憲法21条)の対象たる事実だったのではないのか。
僕には、情報統制下において、自分の都合のよいように世論を誘導しようとする権力者の意図が損なわれることくらいしか、仙石官房長官がこれほどの不快感を示す理由が理解できない。
ビデオ流出後も、ビデオの公開を拒み、国家秘密保全法制に言及する姿勢には、全ての情報を自らの統制下に置き、国民には知らせまいとする強い意志を感じる。
この夏の参院選の民主党のマニフェストには、
- 外交文書を含めて行政情報の公開に積極的に取り組みます。
- 情報公開法を改正し、国民の「知る権利」を明記します。
とあった。
仙石官房長官の見解は、明らかにマニフェストに反する。
繰り返すが、本件の事実こそ、まさに国民の知る権利の対象ではないのか。
そして知る権利こそ、民主主義の根幹を支える重要な基本的人権ではないのか。
小沢一郎氏の排除に成功し、権力を握った今では、マニフェストなどは一時の気の迷いに過ぎぬというか。
仙石官房長官は、先月14日にも、公式の記者会見で、起訴議決の有効性を争う小沢一郎氏の行政訴訟について、行政裁判にはなじまないと、具体的な裁 判について、公式の見解を述べて、憲法の無知をさらした。
内閣の事務を掌理する最高責任者が具体的な裁判について見解を述べるのは、裁判所に圧力をかける ものであり、司法の独立を蹂躙し、憲法76条に違反することは明らかである。
未解決な具体的な事件について、内閣が意見を述べるなどということは、自民党すらしなかった筈だ。それが、司法と憲法に対する権力者の最低限のたしなみだ。
恐ろしいのは、不思議なほど、どのメディアもこの違憲行為も指弾しないことだ。
僕は、小沢一郎の独裁的手法が嫌いだ。
しかし、最高権力者となった仙石官房長官の独善的な手法には、それ以上の恐怖を感じる。
権力を批判すべきマスコミは権力の犬となって久しく、情報統制に唯々諾々として従い続けている。
嗚呼、この国が、独裁国家と呼ぶあの国やかの国と、この国の間に果たして、幾ばくの懸隔ありや。
この国の行く末に対する懸念は深まるばかりである。
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