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2010年12月 5日 (日)

士業のモラルハザード マッチポンプな司法書士

案の定、借地権と抵当権に関する記事は、特別な関心がある人を除いて、これまでで最も読まれない記事になった。

これが僕の本来の仕事である。

すべからく仕事とというものは、面白くないのである。

これは、その続編である。したがって、きっと面白くない・・かな?

前回の相談から10日ほど後、一郎さんから、朝、電話があって、今日中に相談したいと言う。

急患である可能性があるので、相談者や相談内容によっては、こういう急な申し入れに応じるのが地域に密着したマチベンの仕事である。どうぞ、お越しくださいな。

事務所を訪れた一郎さんは、いささか動揺した様子である。
昨晩、書面に判を押した。
何やら胸騒ぎがするという。

(先回、相談したとおり建物に担保を設定した訳だから、いいんじゃないのかなぁ)

数日後に地主への融資が実行される。一郎さんも立ち会ってもらいたいと言われているが、立ち会わなければならないのかと聞く。

司法書士にはすでに担保に入れる書類を渡したという。それなら何のための立ち会い?

いろいろ話を聞く内に、判を押した書面の中に家族構成と収入を記載する欄があったという。

今度は僕が青ざめた。

家を担保にだけ出すなら、本人の返済能力など関係ないはずだ。

本人の責任は提供した担保である家を失う範囲に限定される。残金が残っても支払う責任はない。

ところが、本人の返済能力に関する記載がある書面に判を押したとなれば、一郎さん自身が借主か保証人にされている可能性が高い。保証人になっていれば、家を失うだけではすまず、残金を完済するまで支払う責任を負う。その元本は2000万円だったはず。

確かに、融資と担保提供の場面では、多数の書類が入り乱れるので、本人が意味もわからず判を押すことはよくある。

しかし、裁判になれば、書面が、決定的だ。
いい年をした大人が意味もわからず判を押したなどという言い訳を裁判所が認めてくれる可能性は1割もない。

本当に保証する書面に判を押したのかどうか、一郎さんの話だけでは、確定的なことは言えない。

だが、もし書面が保証人になった書面なら、異議を言わずに、時間が経てば経つほど、一郎さんは不利になる。

一瞬でも早く、一郎さんには保証の意思がないことを伝えておく必要がある。

とにかく、保証の意思がないことを伝えるため、その場で僕は、貸金業者に電話をした。

「出られない」とのコールがあり、通じない。

大急ぎで、一郎さんには保証の意思がない、仮に保証の書面が作られているのであれば、一郎さんには保証の意思はないのだから、錯誤により無効だとの書面(急ぎなのだから誤字・脱字はあっても構わない。趣旨が明確ならばよいのだ)を作成して、業者のFAXに送る。

業者のFAXが通じてくれるのを祈るばかりだ。

やがて、FAX受信音がして、送付レポートが排出された。

よし、「ファックス送信良好」

すぐに業者に連絡が取れる状況でもなかったので、とりあえず、この件は全て弁護士に任せたことにして、一郎さんが直接、相手に関わらないように指導して、帰ってもらう。

その日、業者へ電話。
業者は、あくまでも物的担保だと主張(内心、ほっとする)。

担保だけなら、なぜ年収や家族構成を書くのかと食い下がる。

銀行でもどこでも年収や家族構成は書かせているだけだと業者はとぼける。

そんな馬鹿な話はない。

保証人にしたのではなく、家を担保に取っただけなら、それをはっきりさせるためにとにかく書類をファックスしろと粘る。

業者は業界所定の様式を使っているだけだから、見せる必要はないとか粘るが、結局、FAXを送ることを約束。

後日、送られたFAXを見て、唖然とした。

一郎さんは、保証人どころか借主にされようとしていたのだ。

一郎さんが署名させられたのは「借入申込書」が2通。

1通の借入申込書には地主が借入申込者欄に署名し、一郎さんは「保証人・物上保証人」欄に署名させられていた。

送られたFAXには保証人・物上保証人」と保証人に抹消線が引かれているが、予定通りに進めば、そのまま保証人にするつもりだったことが明白だ。

もう一通はさらに奇怪な書類だ。

同じく「借入申込書」だが、この申込書は一郎さんだけが申込者の欄に署名している。

この書面には手書きで「担保提供」と書き加えられ、「担保提供借入申込書」とされた書面の、「借入」に抹消線が引かれている。

どう見ても、貸金業者は、一郎さんが地主に同情する人情に厚い人であることに乗じて、一郎さんが建物を担保にい入れるのは止むなしと考えているのを利用して、一郎さんも借り主にしようとしていたとしか見えない。融資実行寸前で、ストップをかけたから、トラブルを避けて、敢えて、手書きで担保提供やら抹消やらを加えたとしか見えない。

愛知県登録の業者だったので、事前に愛知県に苦情が出ている業者ではないかと確認したが、苦情はないとのことだった。苦情がない業者でも当事者の油断に乗じてその程度の詐欺的なことは平然と犯すのが今の時世なようだ。

一郎さんがもしも、融資実行の場に立ち会うようにとの業者の要求に疑問を持たずに、立ち会っていたら、借入申込書の署名は決定的な意味を持った。申込書の効力を覆すのは容易ではなく、一郎さんは、みすみす2000万円の負債をおわされるところだったのだ。

急患扱いしなければならない相談者は、病院に限らず、弁護士の場合にもいるのである(但し、急患かどうかは弁護士が長年の勘で的確に判断するので悪しからず)

 

この話には後日談がある。

結局、地主は、この業者からの借入を止めた。だから、僕は、司法書士にも担保提供の意味がなくなったので、書面を返すように求めて、司法書士が一郎さんから交付を受けていた書面を返してもらった。

当然、僕は、一郎さんは建物に担保を設定した担保設定者になっているだけだと思っていた。

ところが、送られてきた書類には、一郎さんが地主と並んで「債務者」、つまり貸金業者から借入をした借り主となっていたのだ。

この司法書士は、一郎さんが書面に署名させれたとき、もともと業者と一緒に一郎さん方を訪れると言っていたが、道に迷ったとのことで遅刻して、書面を作るばかりのときに現れて、ろくに説明もせずに、書面に判を押させて、帰って行ったという。

傍から見れば、詐欺的な事態に直接関わる痕跡を残さないようにしながら、貸金業者の詐欺的融資に助けているように見えてならない。

その司法書士のホームページのキャッチコピーは

「過払い請求、借金返済、多重債務整理、自己破産の相談なら、司法書士○○○○○○○○○○○にお任せください。任意整理、自己破産、民事再生、特定調停など適切な解決方法で解決します。全国対応が可能……」

悪質貸金業者に手を貸しながら、他方で、サラ金からの救済を表看板に謳う。

司法書士のホームページには、600万円の過払金を回収したとか、800万円の過払金を回収したとか、派手な成功例が上げられている。

その昔、多重債務の事件は、悪質サラ金と対決しながら、債務者の生活の再建を図るためのものだった。表で多重債務救済を謳いながら、裏で悪質業者と提携するなどはとうてい考えられなかった。

すくなくとも、ほんの数年前までは、こんなマッチポンプ司法書士のようなモラルハザードは、士業の業界にはなかった。

士業の自由競争化がもたらした確実なものは、新たなモラルハザードである。

 
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