法テラス(法律扶助)を揺るがす重大問題勃発
拝啓
日本司法支援センター
理事長 寺井 一弘 殿
よもや理事長がご承知のことではないと存じます。
法テラス大阪地方支部で異変が起きております。
法テラスの根幹を脅かす異変と言ってもよいでしょう。
異変は法テラス大阪地方事務所長によって起こされています。
機構的には、理事長のあなた様ご自身のお許しがないとできないのではないかとの疑念もありますが、よもやあなた様が、お許しになっておられるとも思われません。
本部が関わらないというのであれば、これは法律扶助制度を揺るがす地方事務所の反乱です。
大阪法テラスは、トラブルの金額が10万円以下の場合は、法律扶助を決定しないとして大阪弁護士会員に告知しています(詳しくはイデア法律総合法律事務所のブログ)。
通知文はこちらです。
あなた様がおっしゃっておられるように法テラスは、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを基本理念としております(理事長挨拶)。
資力に乏しいがゆえに権利の実現が妨げられることがないようにするためのものです。
総合法律支援法にも
「資力の乏しい者にも民事裁判等手続の利用をより容易にする民事法律扶助事業が公共性の高いものであることにかんがみ、その適切な整備及び発展が図られなければならない。」(4条)とされ
また
「民事裁判等手続において自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民若しくは我が国に住所を有し適法に在留する者(以下「国民等」という。)又はその支払により生活に著しい支障を生ずる国民等を援助する」(30条2号)するための業務を行うものとされております。
社会的弱者であろうと、費用に困窮するものであろうと、あまねく法に基づく解決を得ることができ、自らの権利が実現できることが法律扶助の理念であります。
係争額の多寡ではありません。
適正に権利が実現できるか否かが問題なのです。
民事の紛争について、10万円以下の紛争でも、弁護士には、法テラスから最低、概ね10万円が支払われる仕組みになっております。
したがって、ここでは、法テラスが弁護士に10万円支払い、相手から10万円を回収する。あるいは弁護士に10万円近くを支払い5万円を回収するということが起こることを当然に仕組みとして想定されています。
これまで、法テラスの費用の支払がもっぱら立替払いだったため、いったん法テラスから立て替えられた費用を当事者が償還(返済)しなければならず、結局10万円以下の紛争は、当事者の持ち出しになるために、法テラスに持ち込まれることはなかったものと思われます。
なお、理事長が当然ご存じですが、念のために申し上げますと、係争額の多寡に拘わらず、裁判に関わる時間や手数はかかりますから、弁護士にとって10万円は、採算割れしかねない金額です(コマーシャル事務所が殆ど事務員任せで過払金を回収してやすやすと手にする金額を考えれば容易におわかりと思います)。
その結果、これらの紛争は、法律専門家の支援を得ることができず、多くは強者の論理にしたがって弱者は泣き寝入りを強いられてきたものです。
しかし、最近法テラスは、生活困窮者の現状を踏まえ、救済の趣旨から、生活保護受給者等に限って、償還を免除ないし猶予する運用を開始しました。
そこで、法テラスから弁護士に10万円弱が支給され、10万円を回収する、あるいは同様に弁護士に10万円弱が支給され、10万円の支払い請求を免れるという事案が法テラスに持ち込まれるようになりました。
その結果、ようやく弱者が権利を実現することが可能になったのです。
ところが、法テラス大阪地方事務所長は、こうした例は、費用対効果の観点から、納税者の納得が得られないものとして、10万円以下のケースについて、原則として法律扶助を決定しないとして、大阪弁護士会会員に通知しております。
これは問題が逆ではありませんか。
法律扶助の何よりの趣旨は、法律に基づいた解決ができ、経済弱者も権利が実現できることにあります。
経済弱者であるが故に権利の実現が拒まれ、泣き寝入りしなければならないことがないようにすることに法律扶助の最大の目的があったはずです。
庶民のトラブルは少額な場合がほとんどです。
したがって、10万円以下の係争に限らず、償還(返済)を原則とする現在の制度では、法テラスを念頭においてさえ、泣き寝入りせざるを得ない事案が少なくありません。
償還(返済)を猶予し、あるいは償還を免除することによって、ようやく心おきなく法の支配に浴すことができ、泣き寝入りを強いられず、権利を実現できるようになった途端に、費用対効果が合わないからと法律扶助を拒むのは、弱者に泣き寝入りを迫るものに他なりません。
したがって、係争額の如何を問わず、償還義務免除の範囲を広げ、広く法律扶助によって権利の実現を図ることこそが、法律扶助本来の姿ではありませんか。
私たちマチベンが起こした訴訟がいかに些細であろうと、裁判所では優秀な裁判官と、有能な書記官が、分け隔て無く法律に照らして紛争の解決に当たり、権利の実現に助力しておられます。
私たちマチベンが持ち込む事件には、彼らの給与や裁判所の施設維持費と費用対効果が合わないものが少なくないはずですが、そうした発想は、裁判所にはありません。公平に扱われます。
争いが少額だから、いい加減にすますなどと言われたことは一度たりともありません。
費用対効果を持ち込もうという大阪地方事務所長のお考えは、司法の一翼を担う一法曹として、一弁護士として恥ずかしくありませんか。
そもそも司法は、法の支配を行き渡らせ、公正な社会を成り立たせるための不可欠のインフラではありませんか。
だから近代国家では、どこの国でも、コストの問題ではなく、不可欠な機関として裁判所が存在するのです。
ここに費用対効果などという発想を入れるのは完全に間違っています。邪道です。
いまだ、わが国の民事法律扶助予算は、130億円程度に止まっています。
一人当たり支出額にすると、アメリカの3分の1,フランスの4分の1、ドイツの6分の1、イギリスの27分の1という低レベルに止まっているのです。
高速料金無料化に要する費用が年7000億円と言われています。
年金掛金を全く支払うことがなかった「運用3号被保険者」に年金を支給するためには最大で毎年8000億円が必要と見られます。
法律扶助予算はあまりにも些細です。
ばらまきともいえるこのような予算の使い方に対して、どうして、僅かな「権利の実現」のために不可欠な費用の支出をそこまでして、止めてしまおうとするのでしょうか。
大阪地方事務所長の決定は、全く法律扶助のあり方を理解しないものです。
是非とも、大阪地方事務所を厳重に指導し、法律扶助の趣旨をお教えいただき、法律扶助不支給との決定を撤回させていただくよう、心からご尽力をお願い申し上げます。
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追伸 2月26日
少額訴訟の好例として分割払いで受け取った生命保険金に対する相続税と所得税の二重課税は違法との判決を思い出しました。訴額は2万6000円だったそうです。思い出せませんが、まだ他にも少額事件が大きな社会的意味も持った例もあります。
こうしたものは認めるというのなら、いったい、扶助の趣旨にかなうとする判断基準は何かが問題になります。
より根本的には、そうした社会的広範な性格がないとしても、それぞれにとっては重要な権利の問題であることには変わりはありません。
大阪地方事務所長は、10万円の敷金の返還請求を扶助を認めない例としてあげていますが、これは泣き寝入りの勧め以外の何物でもないでしょう。

