現状不明で収束時期を見通すことはできない
昨日の中日新聞夕刊によれば、
窒素を注入しても格納容器の圧力が高くならないことから
1号機の格納容器も破損している
可能性があることを報じている。
また、
朝日新聞夕刊は、
1号機の原子炉建屋の
二重扉の外扉を開けて入った小部屋の放射線量が
毎時270シーベルトに達したことを
報じている。
高度の放射線のために作業員の作業時間は
大幅に制約される。
その上、実際に作業を必要とする原子炉建屋に入るには
小部屋の奥の扉を開けて入る必要がある。
この奥の扉は厚さ20センチの鋼鉄製で、
原子炉建屋の放射線は、小部屋よりはるかに高い可能性がある。
果たして、人が入って作業できるような環境か極めて疑問だ。
原子炉建屋に人が立ち入ることができないという前提で
漏出のない循環冷却系の装置を
設置することが可能な方法が考えられているのだろうか。
東電は、3月28日には、1~3号機とも
圧力容器の底に穴が空いているような印象だとして、
原発の心臓部である圧力容器が損傷している可能性を
認めている。
続報はなく、この損傷の状態も場所も不明なままである。
2号機の格納容器が圧力抑制室の爆発により、
損傷しているのは周知のところだ。
要するに、原発事故の現状は
現状調査と、
増え続ける高濃度汚染水の処理で
手一杯なのである。
しかも調査すればするほど、
至る所で異常が発見されるという状態なのである。
損傷の状態も把握できず、
作業環境の状態もわからぬまま
安定的冷却に向けた作業などできるはずもない。
6~9か月は絵に描いたモチという他ない。
4月13日、東電社長の会見を報じた中日新聞は
菅直人首相から指示されている収束見通しの早期公表については「現在詰めている段階で、一日も早い時期に対応策を示したい」と述べるに止めた。
と報じている。
今回の6~9か月での収束との工程表は、
菅総理から迫られて苦し紛れで示したもの
という他ないのである。
現段階は、あくまでも
現状が悪化するのを防止しながら、
原発の現状を調査確認する段階に過ぎず、
工程に入る段階とはとても思えない。
政治主導は、こんな技術的な場面で
発動されるべきではない。
事実を直視しなければ、
なすべき作業は行えない。
政治判断など入る隙のない場面である。
政治的圧力を受けて、
苦し紛れに示された工程表は、
現場で限界を超える決死の作業に従事している作業員に
無用なプレッシャーを与えることになりかねない。
ちなみに、今回、新規投入された、
米国製「目玉おやじ」ロボットも、
想像を絶するほどの高性能でもなさそうだ。
もう3日くらい経つかと思うが、
至る所に見つかるはずの損傷箇所を
未だ1つも確認できていない。
損傷箇所は、おそらく人が近づくのは不可能だ。
超高性能の作業ロボットでもない限り、
損傷を修復せず、損傷を前提にし
原子炉建屋内における作業を必要としない
冷却計画を立てなければならないだろう。
それにしても、
損傷の状態を正確に把握しなければ、
冷却計画など、立てようもない筈である。
できもしない収束時期の見通しを
政権浮揚のため強引に示させて
一人歩きさせ、
被災者にあらぬ期待を持たせようとし
現場の作業員に猛烈なプレッシャーを与えている
イラ菅政権とメディアの責任は極めて重い。
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