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2011年4月18日 (月)

ある簡易裁判所事件

裁判所は親切な役所だと書いた途端、
不親切の典型のような事件を見てしまった。

口頭弁論という手続き期日では、大抵、複数の事件が
同一時刻に指定され、当事者がそろった順に審理がされる。
自分の順番が来るまでは傍聴席で順番待ちである。

地方裁判所の合議部で順番待ちをしていたときに見た事件。
簡易裁判所の判決に不服で控訴した控訴人は
弁護士を付けず、本人であった。

彼は、Aさんという個人を訴えたつもりであったらしい。
ところが、簡易裁判所の判決は、
被告をAさんの勤務先である法人として彼の訴えを棄却したようである。

彼は、控訴審のその場になって、
初めて被告が法人になっていることを裁判官から知らされて、
何度も何度も、自分はAさんを訴えたのだと繰り返す。

どうも簡易裁判所備え付けの訴状の書式に
「法人の場合は、代表者の名前を書く」とかいう欄があり、
Aさんの勤務先のつもりで法人を記載してしまったのが間違いのもとのようだ。その様式はそこは被告を書く欄だったのだ。

随分、時間がかかって、
彼は、納得はできないが、事態は理解したようで、退席し、

ようやく僕たちの裁判の順番が来た。

僕たちの裁判は、支援者の方も傍聴に来ている事件だったので、
その後の打ち合わせでは、
この事件のことが、ひとしきり話題になった。

簡易裁判所の裁判官が、審理をすれば、
彼が被告の記載を間違っていることに気づかない筈がない。
間違いを指摘して、改めてAさん個人に対して
提訴を促すのはあまりにも当然ということで、
簡裁の裁判官のあまりの不親切さに一同、非難囂々であった。

控訴審の第1回期日まで、
慣れない訴訟で随分苦労をしたに違いないのに、
「被告が違いませんか」との一言もなく、
ずっと裁判を続けていた彼の心情は察するにあまりある。

完全な裁判所不信になるだろう。

確かに、簡易裁判所には、
まま不親切な裁判官がいることがある。
裁判官は大抵、裁判官の仕事が好きでやっているが、
必ずしもそうではない人が裁判官をやっていることもある。
で、判決を書くのが嫌なので、
すぐに調停に回して話し合いをさせてみたりする。

先日、家賃不払いで明渡を求めて簡易裁判所に
提訴した大家さんが、
すぐ調停に回されてしまって、
相手から不当な明渡料を要求されて調停が不成立になり、
と言って、判決してもらえずに、
結局、僕の所へ依頼に来たケースがあった。

お陰で、僕の仕事になってありがたいが、
簡易裁判所は、本来、一番、市民に身近な裁判所である。
だから、当事者本人による訴訟も多いはずで、
地方裁判所以上に親切さが求められる。

地方裁判所は、僕が出す訴状にミスがあると
親切に訂正を求めてくるのに、
簡易裁判所は、被告の取り違えという重大なミスがあっても
そのまま放置して判決を出したのだ。
これは、本人訴訟の多い簡易裁判所としては
いかにもまずい。

簡易裁判所は、裁判官によって、ばらつきが大きすぎて、
確かに、ときどき、いかにも不親切な裁判官を
見かけることは事実である。

やみくもに弁護士を増やすより、
簡易裁判所の裁判官の質をもう少し均質にして、
かつ、増員する方が、
法の光をすみずみまでという
司法改革の理念にはるかに合致するのではないだろうか。

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