東電OL事件が照らす闇
原発事故で、政・官・財・学そしてマスコミの癒着の構造があらわにされた今、東電OL殺人事件のゴビンダ受刑囚の再審申立に前進があったことが報じられている。
東電OL事件は、実に奇妙な事件だった。
東電に勤務するエリートOLが、勤務後、夜ごと、渋谷の街角に立って、4人の客を取ることをノルマとして売春を繰り返していた。
風俗関係としても最底ランクの街娼を、彼女は敢えてやっていた。
殺人事件当時、トップになり得ないエリートの屈折が、彼女を、この奇妙な行為に走らせたという見方もあったと思う。
フクシマ後から振り返る、僕の夢想は勝手にふくらむ。
彼女の行為は、東電を取り巻く歪んだ癒着の構造に対する復讐だったのではないか。
彼女の目には、東電の中から、官僚や政治家、学者、そしてマスコミとの癒着の醜悪さが、見えていたかもしれない。
それは、彼女が繰り返した街角に立つ売春の腐臭以上の腐臭を漂わせていたに違いないのだ。
彼女は自ら東電OLである身分をさらして売春をしていた。
東電を名乗って街娼をすることが、東電の腐食と、東電のエリートである自分に対する復讐だったのではないか。
何をありもしないことを…
しかし、企業の腐臭を感じる繊細が彼女になかったと、誰が断言できるだろう。
現に東電は、当時から完全に腐食していたのだから。
彼女の体内に残された精液がゴビンダのDNAと一致しないという報道に接し、その意味するところを確認するために改めて佐野真一氏の著作を読み返した。
癒着の腐臭は当時から、マスコミにも漂っていたことを、知った。
東京地裁の無罪判決のときも、これを覆し無期懲役を宣告した東京高裁判決のときも、朝日新聞には『東電』の文字はどこにもなかった。
1審無罪判決のときは、「渋谷・OL殺害」、
高裁判決のときは「女性会社員殺害事件」との見出しで、
本文には、「電力会社の女性社員」とあるだけだ。
他紙がこぞって、「東電OL]、「東電女性社員」と報じる中、朝日新聞だけが決して「東電」とは書かなかった。
その姿勢は、際だっていた。
他紙が、ニュース記事だけでなく2000字クラスの解説記事を載せる中、朝日新聞は、わずか946字(東京地裁)、655字(東京高裁)の記事を一本載せただけだった。
できるだけ目を引かぬよう、そして、東電の社員が街娼をしていたなどという恥ずべきことは絶対に知られぬようにとの気の遣いようなのだ。
2000年にすでに、「『東電』OL」と報じることができなかった朝日新聞は東電に絡め取られて深い闇の中で腐臭を放っていたのだ。
この腐食は、彼女の比ではない。
この事件は、実は司法の腐臭を見せつけた事件でもあった。
彼女の街娼行為は、さまざまな社会の腐臭をあぶり出して見せたのだ。
どの事件でも、再審が光りを浴びるまでには、弁護団の誰も知らない気の遠くなるような地道な努力の積み重ねがある。
弁護団の努力に心から敬意を表する。
そして、一刻も早く再審開始決定が、出されることを心から願う。
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以下、新聞横断検索で拾った各紙の文字・記事数
朝日 1審 946字
2審 655字
読売 1審 603字
2828字
2審1294字
2107字
毎日 1審 900字
1245字
1317字
2審1025字
2233字
1957字
ほぼ全紙が東電OL殺人(殺害)事件と呼称している。
朝日も今回の再審の動きを報じるときは東電OLの文字を使った。
なぜ、何が変わったから「電力会社の女性社員」でなくなったのか、何の説明もされない。
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