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2012年4月 5日 (木)

ドキュメント『命の平等裁判』和解

相変わらず、主任代理人であった僕だけが、判決がほしかったと思っている。

但し、和解を受け入れる瞬間瞬間の判断は、さすがこの道30年のプロである。間違っていた訳ではない。
弁護士は、当事者の法的利益を守ることが第一である。
利益はお金だけでなく、困難な裁判を抱えている遺族をその精神的な負担から解放することも利益である。
また、裁判所が和解骨子として提示した金額が、上訴審で覆される可能性も計算しなければならない。
間違いなく和解を受け入れたのは、ベストの判断である。

それでも、判決の方が、世の中に与える影響は大きい。
だから、判決だったらなと、プロではない僕が思ってしまうのである。
「良きことはカタツムリの速度で動く」(マハトマ・ガンジー)と繰り返しながらも、主観的世界にとらわれてしまうのである。

よって、支援者である「徳山ダムの建設中止を求める会」の事務局長である近藤ゆり子さんのお許しを得て、ブログから記事をお借りして、和解の報告に代えさせていただきたい。

とても、的確で、客観的であって、かつ本質を突いた心のこもった文章である。

なお、この裁判の支援する会のHPはこちらです。
「障害のある伊藤晃平君の施設内死亡事故裁判を支援する会」

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裁判実務の壁を突破した画期的勝利和解!
「憲法」を輝かせる大切な一歩に

<経緯>

3月30日に判決が言いわたされるはずでした。
「支援する会」世話人(数名)は、「判決の日」の詳細なスケジュールを確認しあっていました、3月28日の夜まで。
3月28日夜、少し遅くなってから「極秘。裁判所から和解の打診あり。判決2日前の和解勧告は異例中の異例。受け入れるかどうかは未定ゆえ、他に漏らさないで」という事務局長からのメールが世話人に入りました。

こんなに判決直前になってからの和解勧告は「聞いたこともない。」
「ありえない」と多くの世話人が受けとめました。
損保会社がからんでいます。「本社の決裁」をとるのに最低でも1ヶ月はかかる、というのが(少しでもこういう件について知識のある人にとっては)常識です。
「和解になるにしても判決になるにしても、最終的に決まるのは30日朝」と原告代理人からは言われていました。
ところが「和解」のためには弁論再開が必要だった(この民事訴訟法の規定に関しては今はパス。29日夕方、裁判所から司法記者クラブに「弁論再開(つまり「判決」ではない、という」こと)という連絡があったそうです。
原告代理人に(支援する会」事務局長にも)、マスコミから一斉に取材が入り「支援する会」世話人に連絡するどころではなくなってしまいました。
で、世話人は29日夜のTVニュースで「30日に和解成立へ」を知ることになりました。

この裁判はかなり「原告側がおしている」という感触はありました。
「少しは前進した判決のはずだから、判決を貰えば良いのに」という声もありました。
また世話人らの経験では「和解」にあまり好印象をもっていない、ということもありました。
不安の声もあった・・・・
でも私は信じていました。
これまでの原告のピシっと背筋の伸びた姿勢、原告代理人弁護士の高い理論水準。
ダメな「和解」を受け入れるはずがない。
結審後に裁判所に届けられた全国からの声も、裁判所の心を動かしているはずだ。

<法廷で>

入廷前に「和解」ということはわかっていましたが、中味は全く知らされていません。
「裁判長が和解条項を法廷内で読み上げる」というのが和解条件だった、と聞いたとき「これは素晴らしいに違いない」と思いました。

倉田慎也裁判長は、まず冒頭に「生命の平等を訴える遺族の主張を踏まえ、損害の公平な分担をすべきだと考えた」と述べました。
「生命の平等」にはっきりと言及しました。
事実上「原告の言い分は、全くもってその通りだ」と言ったに等しい。

<和解条項>

そして和解条項の読み上げがありました。

金額がどうこうは原告代理人に説明されないと「わからない。」
しかし和解条項「1」はきくだけで「わかる」
「全面的勝利」と私は感じました。

私は全くのシロウトですが、この日に原告代理人から説明されたことを基にして少々。

<逸失利益>
「障害者の逸失利益はゼロ円」
耳を疑う話ですが、それがこれまでの判例などにより裁判実務のありかたでした。
軽度の障害児(者)に対しても非常に低い「逸失利益」しか認められてきませんでした。

伊藤晃平君のように最重度と判定されている障害児(者)の逸失利益は「ゼロ円」しか認められてきませんでした。最重度障害の人には、全く就労可能性を認めてこなかったのです。
この和解条項では、就労の可能性を認め、773万8370円まで認めました。
金額も「破格」の高額です。
伊藤晃平君は最重度障害と判定されていました。画期的です。

就労可能性を認めながら、障害年金1級(働けないとの判定)を基に計算したのは一種の論理矛盾ですが、最低賃金を基に計算するより高額になります。できるだけ「健常者」に近づけるためにこういうテクニックを使ったのだろう、と思います。

<慰謝料>

慰謝料は「障害者か健常者か」で違うはずがないのに、これまでは差別がありました。
この和解では「ごく普通の」金額となっています。つまり差別はない。

◇◇◇

「障害者の権利」を大きく前進させました。
今は、丁寧に論証することができませんが(「原告最終準備書面」を読んで頂ければ、少しわかっていただけるのではないか、と)日本国憲法の下での「人が平等に尊重されて生きる権利」を大きく前進させたといえます。

憲法14条と25条がリンクし「誰もが(すべての人が)等しく尊厳をもって生きる」ことの権利性を固めることに貢献します。

どうか皆さん、この「勝利」を喜んで下さい。
そしてこの地平を広げて下さい。

「誰もが(すべての人が)等しく尊厳をもって生きる」社会の実現に向けて!!!

近藤ゆり子 2012.4.1

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