度し難い東京中心独善主義
27日には、日弁連会長再選挙が行われる。
日弁連会長選では、最多獲得票とともに全国52弁護士会中、3分の1の弁護士会で最多票を獲得した者を当選とする。
第1回の選挙(決選投票)では、約8500票を獲得したA候補者が、14弁護士会しか一位を取れず、約7500票を獲得したB候補者が37弁護士会で一位を獲得した(52弁護士会の内1弁護士会は同数)。
票数1位のA候補者が、弁護士会数では、完敗したのである。
むろん、反骨心旺盛な愛知県弁護士会ではB候補が圧倒した。
A候補 B候補
愛知県 201 550
だいぶん前に、A候補を支持する東京有志のFAXが届いた。
“対立候補陣営は、この選挙を「東京と地方の対立」とする構図を煽っているが、間違いである。
東京にいる自分たちは、B候補によるこの間の日弁連運営を間近に見てきたが、問題が多い”とする趣旨であった。
(だいぶ前のFAXなので、すでに捨ててしまってやや正確さに欠けるとしても、許してもらいたい)
確かに、A候補は、東京で圧倒的にB候補に差を付け、東京以外では、逆に差を付けられたために、結局、全体票では、東京の差をはき出し、僅差になった、
しかし、これを「東京対地方」というのは、ちょっと待ってほしい。
この有志の人たちは、地方というのはどこを指していると考えているのだろうか。
ちゃんと各弁護士会の票数を見ているのだろうかと思ってしまう。
まぁ、かつて「偉大なる田舎」と呼ばれた名古屋を「地方」と呼ぶのはよいとしよう。
しかし、東京に隣接する横浜、埼玉、千葉の各弁護士会でも、全てB候補が票数で圧倒しているのである。このことをこの人たちはどう見ているのだろう。
A候補 B候補
横浜 190 310
埼玉 70 202
千葉 49 216
東京以外は全て「地方」だとする無意識を反映しているのだろうか。
あるいは、隣接県の弁護士たちでも、日弁連の運営を間近に見ることはできないとでもいうのであろうか。
間近に見ることができるのは、東京都内のどこかにある密室に入れる者だけなのかと疑いたくもなってしまう。
この人たちにとっては、東京と名の付かない所は、首都圏であっても、「地方」なのだ。
何という東京中心独善主義だろう。
このFAXは、最後は、日弁連の団結を訴えて終わっている。
何のための団結なのか、さっぱりわからない。
少なくとも東京で圧勝したA候補は、今、全国の弁護士を経営難で苦しめている弁護士増員政策の推進に賛成してきた人のようである。
もともと日弁連内部の不団結が決定的になったのは、2000年当時の日弁連執行部が、弁護士人口激増(司法試験合格者3000人)政策の推進を、少なくない弁護士の反対を押し切って、強行採決したからだ。
強行採決に反対して壇上に上がった弁護士には懲戒請求すらされた。
懲戒請求を受けたのは、名古屋の尊敬すべき弁護士であった。
当時を無視して今、この人たちは団結を訴える。
この人たちは、強いて流行の言葉で言えば、弁護士は団結して「集団自殺」しようと呼びかけているように見える。
無駄にあがくより、早く溺れてしまおうということらしい。
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