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2012年11月 9日 (金)

東電OL殺害事件 捜査に重大な問題があったことは明らか 検証の決定的な手がかりはある

先日(11月4日)、東電OL殺害冤罪事件の捜査検証記事において産経新聞は次のように報じていた。

 再審開始の決め手は、東京高検が行ったDNA型鑑定で、被害者の体内に残っていた体液が、マイナリさん(血液型B型)とは別人(同O型)のものであることが判明したことだった。

 だが、当時の取材メモによると、被害者の体内に別の男性の体液が残されていた事実は、捜査の過程で既に分かっていた。ただ、警視庁側は当時、「殺害の数日前から体内にあった古いもののようだ」などと説明。DNA型鑑定で、この人物を特定する捜査は行われていなかった。

下線部分が明らかな歪曲であることは、6日付のブログで指摘したとおりだ。


改めて昨8日付の産経新聞の検証記事『東電OL殺害 15年前から存在した“新証拠” 長期拘束、責任はどこに…』では、こう報じられている。

遺体内の体液のDNA型は鑑定されないまま捜査は終結したが、OBは断言する。「あれは事件前に被害者が性交渉した別の知人男性の体液と判断した。当時は弁護団だってそう思っていたと思うよ」

二つの記事の矛盾を敢えてあげつらうつもりはない。実質的に訂正されたのだから。
この記事は、当時、捜査側で鑑定を依頼された石山いく夫名誉教授(81)が、体内精液の存在すら知らされていなかったこと、事件当時にも爪のDNA鑑定をするべきだと意見したにも拘わらず、無視されたこと等注目すべき事実を報じている良心的な記事だ。
マチベンが問題にしたいのは、体内精液が「事件前に被害者が性交渉した別の知人男性の体液と判断した」とするOBの断言だ。


この点が、一審判決にも反映して、犯行時間とされる時間帯の2時間前に「コンドームを付けずに性交渉したなじみ客A氏の精液」と認定されてしまったのだ。


マチベンが風俗好きの体験者Q氏(断じてマチベン自身ではない)に取材したところ、「普通、そういうところでは、コンドームを付ける」ということだそうだ。そりゃそうである。性病感染を誰だって恐れる。

まして当時は、エイズ不安が社会問題になっていた。風俗嬢と性交渉するのに、コンドームなしではあまりに無防備だろう。

まして、被害者は風俗嬢の中でも最底辺に蠢く街娼である(敢えて街娼をしていたのも謎の一つである)。Q氏によれば、まともな風俗店では、定期的に嬢には性病検査をさせているそうだ。

街娼とコンドームを付けずに性交渉することなど、Q氏によれば、「あり得ない。仮にコンドームを付けたとしても、恐ろしくて、性交渉自体しない」。


精液の主と誤解されたなじみ客A氏は、ちゃんとしたホテルで性交渉し、3万円(だったかな)を払ったしかるべき身分の客である。そのような客が、コンドームを付けずに街娼と性交渉するだろうか。昨今の出会い系では、「妊娠した、中絶費用を寄こせ」等という詐欺も、よくある手口である。であるからして、世の紳士諸氏は風俗や出会い系で遊ぶのに、ゆめゆめ「コンドームを付けずに」性交渉しようなどとは思わない方がよろしい(by Q氏)。


したがって、今回の冤罪において、誰が考えても、まずもって明らかにされなければならないのは、「コンドームを付けずに性交渉した」とするA氏の証言がどのような経過を辿って作られたかの検証である。


捜査官が、ゴビンダ氏を犯人に仕立て上げるために、A氏に「コンドームを付けなかった」との供述をさせたのなら、極めて悪質なねつ造である。
逆にA氏から自発的に「コンドームを付けなかった」と供述したのなら、A氏は、体内精液に関する捜査を攪乱する意図があったのではないかという重大な疑問が浮かび上がる。


いずれにしろ、今回の冤罪の検証に関しては、この点の検証が絶対に欠かすことができない。
もし、後者であるなら、真犯人にたどり着く手がかりになる可能性がある。強盗殺人に見せかけて被害者を殺害したとおぼしき背景にも問題が結びつき兼ねない(現在、無期懲役になった受刑者の大半が獄死しており、仮釈放も30年を超えないとむつかしいが、当時は、10数年で出られるケースもあった。金額次第では殺人の実行犯に旨味はあったし、身代わり犯もあり得た)。


この事件には「背後がある」等というと、妄想と決めつけられかねないことは承知している。しかし、A氏の問題をタブー視しているとしか思われない報道が続くのはなぜなのかを考えると「妄想」にも、相応の根拠があるように思われならない。


脱原発を目指す閣議決定が、アメリカの圧力によって、棚上げにされたのは、公知の事実だ。
日本が原発依存から脱却できないのは、アメリカが日本を「潜在的な核抑止力国家」に仕立てて、外交に利用し、他方では、アメリカの原発輸出のために日本の核技術を必要とするためである(岩波書店:吉岡斉『脱原子力国家への道』)。


そう考えるとき、被害者が85年5月5日付の朝日新聞「声」欄に投稿した意見が、イランのアメリカ大使館人質事件についてアメリカが取った救出作戦を痛烈に批判していることも無関係とは言えないような気がしてくる。

「アメリカの無謀な人質救出作戦に、全世界があぜんとする中、当のアメリカ国民の中には、この強攻策を是認している人が多いという。そこには、国際法上から、また、成功の可能性から、作戦自体は愚挙とはみなさないという考え方があるともいわれる。」
「それにもかかわらず、各国に対して、今回の作戦を批判する資格はないというアメリカ国民は、もはや、いらだちから理性的判断を失っている、としかいえないのではないか。」

日本の原発依存の中核には対米従属構造がある。

そして、被害者は、東電社内にあって、少なからず、対米従属構造に反発を抱いていたことも、想像に難くない。

このことも闇の深さを窺わせる一因である。

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