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2012年11月13日 (火)

守られた「司法の独立」 小沢一郎高裁判決

昨11月12日、東京高等裁判所は、指定弁護士の控訴を棄却し、改めて小沢一郎に無罪を言い渡した。


僕の問題意識は、司法の独立が『民意』の名によって脅かされることがあってはならないというものであった。司法のよって立つ原理は民主主義原理とは相容れないとするのが僕の基本的立場である。


司法の危機 検察審査会という名の民主主義(2010年10月5日)


検察審査会の起訴議決は、極めて不可解で、最高裁事務総局の介在を指摘する議論まで出ていた。
純粋に法律的に見る限り、この裁判は無罪しかあり得なかったと思っていた。しかし、仮に、起訴議決に最高裁が関与しているとすれば、有罪判決がなされる可能性がないとは言えない。


司法の業界に身を置く者として、民主党の反小沢派の影響力が及ぶのは、せいぜい東京地裁の検察審査会止まりで、最高裁まで動かすことはできないだろうと考えていたが(アメリカに小沢排除の意図があるのは明らかだが、強制起訴は、アメリカの意向を踏まえた民主党反小沢派が独自に動いたものに見えてならない)、それでも、高裁判決が出るまで、一抹の不安が拭えなかった。


したがって、高裁判決によって、かろうじて「司法の独立」が守られたことに安堵している。


高裁判決は、小沢氏の秘書についても虚偽記載の故意を否定したと報道されている。


一審判決の要旨を検討した結果、僕は、6月21日付で「改めて小沢一郎の無罪判決を読み解く」で以下のとおり記した。


秘書の有罪判決でも、まさか8億円借りたとは思わなかったという言い分が通らなかっただけであろう。

しかし、僕に言わせれば、これは単純な記帳ミスで、過失なのだから、故意を前提とする政治資金規正法の虚偽記載罪には問えないと思う。


この考え方は高裁判決によって支持されたということだ。


かつて述べたように、一審判決は、起訴を強制された指定弁護士の立場にも気を遣って、起訴に関する責任問題が生じないように最大限の配慮をしていた。


最高裁によれば、

公訴提起の当時に検察官が現に収集した証拠および通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠を合理的に総合勘案し、有罪と認められる嫌疑

がない起訴は、違法であり、国家賠償の対象となる。


一方で起訴を強制されながら、他方で、国家賠償を問われかねないというのではあまりにも指定弁護士の立場は過酷だ。このため1審判決は、指定弁護士に最大限の配慮をしたのである。


しかし、指定弁護士は、その配慮を読み解くことができず、独自の判断で自発的に控訴した。指定弁護士は、自ら1審判決の配慮を無にしたのである。


今回の高裁判決では、指定弁護士の起訴が、明らかに裁量を逸脱した違法なもので国家賠償に値するものであることを明らかにしたといえよう。


小沢一郎側が指定弁護士に対して、国家賠償を請求することが適切とは思わないが、指定弁護士による上訴権濫用の問題の検証を欠いてはならないだろう。


被害者のないケースに関する強制起訴制度は、直ちに廃止すべきである。
被害者なきケースにおける強制起訴は、『民意』の名において司法に圧力をかけ、司法を利用して政治に介入しようとするもの以外思いつかない。


政治は政治の場で政治の原理(民主主義)によって決着すべきであり、司法は司法で独自の原理(法的正義・少数者保護)の原理によって、機能しなければ権力分立原理自体があやうくなる。


小沢一郎の強制起訴によって、日本国民がいかに政治の選択肢を奪われてきたかを見れば、司法の政治利用は断じて許されないというべきだろう。


一審無罪判決後、メディアは一転して、小沢を無視することに専念してきた。論調を見ていると、高裁無罪後は、改めて倫理的な「政治とカネ」の問題を持ち出そうとしているように見える。


メディアには、東京高裁が示したような、高い見識と独立の気概を持つことを改めて強く望む。


また、不可解な強制起訴に、如何に多くの弁護士や検察が関与してきたかを思うと、同業にある者として彼らの見識を改めて問いたい。

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