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2012年12月30日 (日)

東電のお粗末 被曝米兵「トモダチ」損害賠償訴訟

昨日のブログで、アメリカの裁判所になぜ米兵の東電に対する損害賠償訴訟の管轄が認められるのか、検討した。
マチベンの結論は、不法行為の被害発生地としてアメリカの裁判所に国際裁判管轄があるというものだった。

しかしながら、訴状を見ると、不法行為地を理由とする国際裁判管轄の主張はない。
東電の原発事故について、アメリカの裁判所に管轄が認められる理由は、単純に被告の所在地がアメリカにあるとするものだった。
支社や事務所所在地も国際裁判管轄を生じさせる。
東電は、ワシントンに事務所を構えていた。
だからアメリカに裁判管轄があり、カルフォルニアでも事業をしているから、カルフォルニア州の連邦地方裁判所にも管轄があると、原告は主張していたのだ。

唖然とした。
被告所在地は最も一般的な管轄原因である。
マチベンが東電のアメリカでの事業展開を想定していなかったという意味ではない。
まさか、アメリカに「日本法人」の事務所を構えているとは想像もしなかったからだ。
訴訟リスクの高いアメリカで事業展開するのであれば、現地法人を設立して、日本本社に累が及ばないようにするのが企業法務のイロハではないかと思っていたからである。
まして福島原発事故後であれば、当然である。
つくづく東電は阿呆である。
確かに、「トモダチ」から企業の存亡を左右されるような訴訟を提起されるとは、マチベンも想像していなかったが、仮にマチベンが東電の企業法務を担当していたとすれば、この種訴訟の可能性には、容易に思い至っていた筈だ。

何ともお粗末な東電のリスク管理である。

昨日のブログでは、不法行為地として管轄があると考えたが、原告は発ガンリスクが高まる程度の被曝を具体的に主張立証しようとしているわけではなく、偽情報を流して騙したことによる被爆自体を損害を主張しているようである。
そうであれば、不法行為地に基づく管轄は発生しない。
日本法人ではなく、現地法人を設立しておけば、この件では、国際裁判管轄がアメリカに生じることもなかったはずである。

東電の阿呆さは、日本での傲慢さと裏腹である。
傲慢な体質が身に染みついているから、足下をすくわれる危険性をまじめに検討することができない。
自分だけは、安全地帯にいると思っているから、国民を次々と突き落とし、見殺しにすることができる。
やがて、それが自分に及ぶという想像力など東電にはかけらもない。
これが、日本の大企業共通の体質だとすれば、日本の大企業は「終わっている」。

この訴訟の請求内容については、「税金と保険の情報サイト」に“賠償50兆円?『トモダチ作戦』米兵8人が東電に賠償請求”としてかなり正確な記事が載っていた。
健康被害に対する賠償が一人当たり1000万ドル、懲罰的慰謝料が全体で3000万ドル、原告らの将来的な医療費をカバーするための1億ドルの基金の設立を求めている。
原告9名で、合計2億2000万ドルが請求額ということのようである。

この記事は、この種の訴訟がトモダチ作戦に参加した米兵2万400人に波及する可能性を指摘し、この訴訟リスクを最大50兆円と見積もっている。
アメリカには、ビジネスチャンスとあれば、見境いなく飛びつくハイエナ弁護士が跋扈しているし、賠償額、賠償方法はアメリカでは陪審員が決めると思われるから、このリスクは杞憂には止まらないだろう。
東電に投入される日本国民の血税は、ハイエナ弁護士たちに巻き上げられていく。
彼らがハイエナでなければ、被爆リスクを承知の上で、作戦を展開したアメリカ政府こそ被告に加えられてしかるべきだろう。

脱原発に向けた国民の願いを踏みにじって原発推進政策に転換を図ろうとする日本政府も、原発をなくせば競争力を失い経済が衰退する騒ぐ財界も、福島原発事故の重大性と原発リスクの大きさを思い知ってもらいたい。

政府にしろ、官僚にしろ、財界にしろ、メディアにしろ、今やトップは目先の利益にしか見えていない。
その原因をマチベンは某大企業との交渉を通じて体験的に知っている。
今、組織のトップにいるのは、みんな自分の保身だけしか考えていない。
自分の身の安泰をはかることしか考えていない。
みな、国のことも、自分の会社のことすら考えていない。
自分さえ安泰なら、国も会社もこの先、どうなってもいいのである。

だから、企業法務も想像力のかけらもないお粗末なものになる。
この訴訟の対策を委ねる適切な弁護士も準備していないのではないか。
人ごとでなく、心配である。

日中間の企業交渉等を担当する中国人の通訳が言ったとされるエピソードがある。
「中国では、上に行くほど、賢い人物が出てくるが、日本では上に行くほどバカが出てくる」

繰り返すが、弁護士激増政策の災厄は、必ず大企業に降りかかる。
米国のハイエナ弁護士に恰好の武器を与えるTPPは、必ず、日本政府や財界に再起不能なダメージを与えるだろう。

弁護士激増政策と、TPP推進は直ちにやめるのが身のためである。

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