無料ブログはココログ

« 言論の暴力 タレントの『所得隠し』とメディアの『申告漏れ』 | トップページ | 東電のお粗末 被曝米兵「トモダチ」損害賠償訴訟 »

2012年12月29日 (土)

財界へのアドバイス -- 東電に対する被曝米兵の損害賠償訴訟をめぐって

東電がアメリカで訴えられた。
請求額は1億1000万ドルという報道もあるので、情報は錯綜しているようだ。

米空母乗組員8人、東電提訴=誤情報で被ばく、120億円請求

時事通信2012年12月27日(木)23:27

 米メディアなどによると、東日本大震災を受けて被災地沖合に派遣された米原子力空母ロナルド・レーガンの乗組員8人が27日までに、東京電力が福島第1原発事故について誤った情報を伝え、危険なレベルまで被ばくさせたとして、同社を相手に損害賠償など計1億4000万ドル(約120億円)の支払いを求める訴えを、米サンディエゴの連邦地裁に起こした。

 「トモダチ作戦」として救援活動に当たった乗組員側は「米海軍が東電による健康と安全に関する偽りの情報を信頼し、安全だと誤解させられた」と主 張。「東電だけが入手できた当時のデータによると、原告が活動していた地域における放射線被ばく量は、チェルノブイリ原発から同距離に住み、がんを発症し た人々の被ばく量にすでに達していたことになる」と指摘した。

 また日本政府についても、「ロナルド・レーガンや乗組員への放射能汚染の危険はないと主張し続けていた」とし、意図的なミスリードだったと非難した。 

[時事通信社]

原告にしてみれば、日本国も当然、被告にしたいところだ。
しかし、アメリカで日本国を訴えることはできない。
主権免責(主権免除)と呼ばれる法理があるからだ。
国際法上、国家主権は絶対的な権利であり、侵犯されてはならない。
例外的に、契約責任等を追及される場合を除けば、国家は、他国の司法で裁かれることはない。


しかし、東電は別だ。
東電は、一民間企業に過ぎない。
裁判所の管轄は、被告の住所地だけではなく、不法行為地にもある。
トモダチ作戦の活動は日本で行われたが、今後生じる可能性のある健康被害は、アメリカで発生している。
そして、不法行為地は、被害の発生した地を含む。
したがって、アメリカの裁判所に管轄はある(アメリカの裁判所には、この件で東電を裁く権限がある)。


訴訟の行方を見通すことはむろん困難だが、被曝リスクの上昇が認められれば、アメリカの裁判所は容赦なく東電の責任を認める可能性がある。
東電が正確な情報を発信していなかったことは、火を見るより明らかだからだ。


東電といえども日本国民を蹂躙し、見殺しにできても、米兵を踏みつけにすることは不可能だということだ。


但し、トモダチ作戦の実相には、よくわからないことが多い。
2011年5月2日付の中日新聞の社説「大震災と米軍支援 日米を真のトモダチに」によれば、

 日本政府から十分な情報が得られないと分かると、米政府は希望を募って在日米軍の家族七千五百人を帰還させ、福島第一原発の周囲八十キロを避難地域に指定した。これを受けて「トモダチ作戦」は八十キロ圏外で行われている。フクシマを米国に波及させないことに関して、米政府は徹底している。

とされている。活動が80キロ圏外で行われていたとする場合に、それでも、アメリカの裁判所が被曝リスクの上昇による健康被害を認めるか。注目されるところだ。


仮に、被曝リスクの上昇による健康被害が認められる可能性があれば、今回、訴訟を提起した8名だけではなく、トモダチ作戦に動員された多数の米兵から次々と訴訟が提起される可能性がある。


そうなると、問題は賠償額である。
単純に数字を見れば、一人当たり10億円を遙かに超える賠償を求められている。
アメリカには制裁的(懲罰的)慰謝料の法理があるから、億を超える賠償が認められても不思議ではない。


アメリカの弁護士にとって、東電訴訟は、日本の過払金訴訟のように旨味のある裁判になる可能性がある。


アメリカでは毎年4万人だったかの弁護士が生まれており、すでに弁護士人口は100万人を遙かに超えている。
利益が上がると見れば、ハイエナのように群がって、東電を食いつぶすだろう。
東電に投入された税金は、瞬く間にアメリカの弁護士に吸い取られる可能性がある。


フクシマの被災者は、恣意的で不当な線引きによって、苦しんでいる。
避難地域外だとされれば、汚染しているにも拘わらず、避難することは認められない。被曝リスクを覚悟して地元に止まるか、補償らしい補償もなく、「自主的に」避難生活を送ることを余儀なくされている。
不当な線引きを超えて「避難する権利」が認められていないのだ。
アメリカ国民と日本国民の、この落差を、どう説明したらよいのか、言葉がない。


司法改革が目指した弁護士の自由競争による「法の支配」が、すでに十分に実現された国がアメリカである。
弁護士激増政策に歯止めをかけなければ、一般市民がブラック士業に巻き込まれるだけではない。
回収が確実な大企業が狙い打ちにされる可能性が高い。
そうなってから、財界が司法改革を推進したことを悔やんでも、もはや手遅れである。


また、財界が政府に対して強力な推進圧力をかけているTPPでは、アメリカの弁護士資格を有するアメリカ弁護士と日本の弁護士による日本の法律事務所の共同経営が目論まれている。アメリカの弁護士は、居ながらにして、日本の弁護士を支配下に置くことができるようになるのだ。
そうなったとき、アメリカのローファームの豊富な資金力を利用して、共同経営とは名ばかりの、飢えた雇われ日本弁護士が、次々と日本企業に襲いかかる。
過払金訴訟の負担に耐えかねて倒産した武富士の二の舞が起きるだろう。
そのことがわかっていて、その覚悟があって、財界はTPPに前のめりになっているのか。
増やしすぎた弁護士の報いは、必ず、財界にも向けられる。
日本企業の衰退を狙う勢力の先兵として、日本の飢えた弁護士が雇われるのだ。


財界は、弁護士大増員も、TPPも直ちに止めるべきだ。
市場圧力に圧迫されたハイエナ弁護士ほど怖いものはない。
今なら、間に合う。
貧困マチベンから、財界に対するアドバイスである。

* ランキングに参加しています *

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

« 言論の暴力 タレントの『所得隠し』とメディアの『申告漏れ』 | トップページ | 東電のお粗末 被曝米兵「トモダチ」損害賠償訴訟 »

ニュース」カテゴリの記事

事件」カテゴリの記事

東日本大震災」カテゴリの記事

TPP」カテゴリの記事

トラックバック

« 言論の暴力 タレントの『所得隠し』とメディアの『申告漏れ』 | トップページ | 東電のお粗末 被曝米兵「トモダチ」損害賠償訴訟 »

2022年2月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28