ISD条項の罠
主権を侵害するTPPのISD条項は、絶対に認めてはならない。
自民党の選挙公約である。
TPPは国内規制を無効化して外資に売り渡す、非関税障壁(国内規制)の撤廃にこそ問題の本質があることを自民党は承知していた。
今、安倍首相は、これを関税の問題にすり替えてこの美しき日本という国を外資の餌食として差しだそうとしている。
ISDS条項に関して、2006年に韓国法務部が検討した資料を入手し、専門翻訳の方に翻訳してもらった。
解説はしている暇がない。
これを見れば、憲法秩序が破壊されることは十分にわかる筈だ。
憲法学者はいい加減に事態を直視すべきだ。
日弁連も、渉外事務所任せにせずに、検討するのが当然ではないか。
日本の法務省は多分、韓国以上に情けない。
情けない法務省の言い分をそのまま垂れ流す日弁連執行部は恥を知れ。
先進国との間で、ISDS条項を認めることは、売国以外の何物でもない。
外資が、あらゆる規制に牙を剥くことは明白だ。
国家をまるごと外資に売り渡す結果を招く。
法務部は、米韓FTA交渉の過程で、すこしでもショックを和らげる方策を検討したようだが、結果として、ほとんど意味のない多少の文章表現の緩和を得たに過ぎなかった。
本日以降、ここで検討されているような前提を踏まえないTPP議論は無効である。
こうなっても、それでも国民の利益になると考える人だけが賛成すべきである。
韓国外交通商委員会パク・チュソン議員の勇気ある出版により、公開された資料の一部である。
なお、活字の大小が、やや不自然になっている。htmlファイルに手を加えているヒマがないので、取り急ぎ、公開する。
Word版「全体版(法務部・最高裁・弁協・全米州立法者協議会)」
---------------- 以下、翻訳文 ---------------------
国政監査政策報告書 3
投資家対国家 紛争解決手続
国内法律機関等の検討
(法務部、大法院、弁協等)
大韓民国国会
外交通商統一委員会
国会議員
朴チュソン
1. [法務部、2006年]
国際投資紛争分野対応方案
韓米FTA交渉
国際投資紛争分野 対応方案
2006.7.
法務部
Ⅰ. 概要
□韓米FTA全体交渉構造
○全体協定文は22個のChapterで構成
・商品貿易関連6個、サービス・投資分野6個、その他の分野(競争、政府調達、知財権、労働、環境)5個、一般事項(定義、透明性等)5個
○交渉単位は総17個分と2個の作業班に分かれて進行
※法務部はサービス(法律市場開放関連)、投資(紛争解決手続関連)、知的財産権(執行分野関連)等、3個の分野が参与中
※別添「交渉分科構成現況」参照
○第1次交渉(6.5.~9.ワシントン)結果
・総13個分科で両側の統合協定文完成
※統合協定文(consolidated text)は両側の文案が類似したり同一な内容は単一条項に整理し、立場の差異がある内容はブレキット([ ])表示をしたり、両側の立場を併記して整理する形である。
□投資分野協定の構造
○投資分野協定は外国投資家保護のための実体的・手続的事項を規定するもので
- 実体的規定としては内国民待遇、最恵国待遇、最少待遇基準(公正・衡平待遇)、収用に対する補償、送金保証、履行義務賦課禁止等、国の義務を規定
- 手続的事項としては国の協定義務違反等による紛争発生時、投資家が受入国政府を相手に国内手続、若しくは国際仲裁を通じた賠償請求権を保証し細部の手続を規定
○投資協定は通常、両者間投資協定(BIT, Bilateral Investment Treaty)形式で締結
されるが、FTA締結時には投資協定を別途Chapterで含ませることが普遍化されて
いる。
○投資協定上、紛争解決手続の基本構造
- 国際仲裁管轄創設のための紛争当事者同意要件を充たすために、国際仲裁管轄権の事前同意規定を置くことで投資家は紛争発生時、国内手続若しくは国際仲裁を任意に選択することが可能
- 仲裁機関としてはWorld Bank傘下のICSID(国際投資紛争解決センター)若しくはUNCITRAL(国連国際商取引法委員会)仲裁規則に従って設置される臨時仲裁
判定部等を規定
□韓米FTA交渉関連投資紛争手続に対する評価
○外国投資家に国際仲裁提訴権を認める紛争解決手続はわが国の既存FTA及びBITのほとんどが認めており、国際的に普遍化された構造で韓米FTAだけに特有な手続ではない。
○ただし、既存の締結した協定の相手国は開発途上国だったり提訴の可能性が低い国だった反面、米国との協定締結時には現実的に訴訟が頻発するものと予想され、投資紛争範囲も広範囲になることによってNAFTA投資紛争事例等に基き、投資紛争構造自体に対する批判と憂慮が高まっている。
Ⅱ. 米国既存FTAの投資紛争解決手続内容
□間接収用に対する賠償責任認定
○直接的収用・国有化措置のみならず、これに相当する措置(equivalent measure)による損害にも賠償責任認定
○収用(Expropriation)に対する別途のAnnex(付属文書)を置き、間接収用の定義、判断法理、排除事由等を規定
□紛争解決手続及び投資紛争の範囲
○投資受入国政府の協定違反等で外国投資家が損害を被った場合、国内司法手続若しくは国際仲裁手続を通じて、受入国政府を相手に直接損害賠償訴訟の提起が可能
○協定違反のみならず投資契約(Investment Agreement)、投資認可(Investment Authorization)に関する紛争も投資紛争の対象と規定
※投資契約 : 国が投資家に天然資源やその他資産に対する権利を付与したり、これら投資会社等の設立や獲得と関連し依存する契約
※投資認可 : 国の外国人投資管轄当局が外国投資家に付与した認可
□国際仲裁提起手続
○投資家は自身のために(on its own behalf)若しくは投資家が直間接的に所有または統制する投資受入国法人に代わって(on behalf of an enterprise)仲裁提起可能
○仲裁提起90日前まで被申請人に仲裁提起意向書(notice of intent)を送達
○紛争発生後6ヵ月経過後、申請人はICSID、UNCITRAL仲裁規則または当事者間で合意した仲裁機関等に仲裁提起
○当事国は国際仲裁管轄に関して協定を通して事前同意
□国内手続と国際仲裁との関係
○仲裁通知書送達時、国内司法手続の開始若しくは中断に関する権利を書面で放棄(waver)しなければならない
- 国内手続の進行途中でもこれを中断し、国際仲裁に移行可能
- ただし、賠償金の支給を求めるのではなく暫定的救済措置(Interim injunctive relief)の開始および継続に関しては、国内手続の利用が可能
□仲裁判定部の構成
○紛争当事者が別に合意しない限り、判定部は3人の仲裁人で構成
- 当事者が各1人を選定、議長仲裁人は当事者間合意によって選定
- 仲裁提起後75日以内に選定されない仲裁人がいる場合、ICSID事務総長が任命
□仲裁の進行形式
○仲裁地は当事者の合意で決めるが合意できない場合、判定部がニューヨーク協定当事国のうち一つを仲裁地に指定
○非紛争当事国(non-disputing Party、投資家の母国)も協約の解釈問題に関して口頭、または書面で意見提出が可能
○仲裁判定部は紛争当事者ではない第3者(amicus curiae)の意見を受付・考慮する裁量を持つ
○本案前抗弁(preliminary objection)関連
- 本案前抗弁は仲裁判定部構成直後、迅速に提起されなければならずcounter- memorial提出前に決定されなければならない
- 本案前抗弁受付時、本案に関する手続は中断される
○仲裁判定部の仮処分決定権
- 仲裁判定部は紛争当事者が所持・統制する証拠の保存命令等暫定的保護措置(interim measure of protection)を命じることができる
- ただし、差押(attachment)または協定・契約違反と主張される措置の施行中断等を命ずることはできない
□仲裁手続の透明性(Transparency)問題
○被申請人は仲裁関連書類を受付けたら即時に、これを非紛争当事国に伝え一般に
公開しなければならない
- 書類は仲裁意向書、仲裁通知書、当事者および第3者が提出した意見書等(pleadings、memorials、briefs等)、仲裁判定文等を含む
○仲裁審理は一般に公開されなければならないが、審理で「保護情報」(protected information)」が使用される場合、仲裁判定部は情報保護のための適切な措置を取らなければならない
○情報保護関連規定
- 意見書等の提出時、一般当事者は特定情報を保護情報と明確に指定しなければならず、判定部や当事者はこの情報を非紛争当事国や一般に公開できない
- 仲裁判定部が紛争当事国、投資家の保護情報指定が適切でないと判断した場合、これを提出した当事者はその情報を含む意見書の全部または一部を撤回したり、仲裁判定部の決定に従って再び提出することができる
□事件の併合
○多数の投資紛争が同一の事件または状況で発生し、法的・事実的争点が同一な場合、当事者の申請によって事件の併合が可能
○新しく仲裁判定部を構成して審理
□仲裁判定
○monetary damages(損害賠償)と財産の返還(restitution)を命じられるし、仲裁費用と弁護士費用にたいする判定も可能
○判定は当該当事者および当該事件に関してのみ拘束力がある
○仲裁判定の執行
- 最終仲裁判定日から120日(ICSID仲裁規則に従った場合)若しくは90日
(ICSID Additional Facility Rules、UNCITRA仲裁規則に従った場合)経過後、執行可能
- 被申請人が仲裁判定執行に応じない場合、非紛争当事国の要請に従って当事国間紛争解決手続によってパネルを構成して決定
Ⅲ. 国際投資紛争の現況および一般的憂慮
1. 国際投資紛争の現況
□NAFTA紛争の現況
○1994年から2006.6.現在まで3つの会員国が総44件被訴(米国16件、メキシコ15件、カナダ13件、現在13件係属中)および総請求額約280億ドル
- このうち約20件が間接収用関連である
○国の敗訴総5件、合計3千5百万ドル認容
※国家敗訴の現況 : カナダ3件、メキシコ2件、米国はなし
□その他投資紛争の現況
○2005年まで全世界での投資紛争事例は約219件で、このうち3分の2以上が2002年以後提起される等、最近急増傾向
○現在まで約61ヶ国が投資紛争で敗訴した
※最多被訴国はアルゼンチン(42件、39件が金融危機以後、緊急措置関連)
□NAFTA紛争の現況
○Metalclad事件
- Metalclad社がメキシコ連邦政府から廃棄物処理施設設置許可を受けて投資したが、有毒物質による近隣の村の飲用水汚染等で癌患者が多数発生する等、危険性が提起され地方自治体が同敷地を生態区域に指定し、施設設立不許可処分をしたところ、これを間接収用等で提訴
- 仲裁判定部は「間接収用」および「最少待遇(公正・衡平待遇)原則」違反を根拠に約1,700万ドルの賠償を判定
○Ethyl事件
- カナダ政府が人体有害性の指摘があるガソリン添加剤MMTの輸入を禁止すると、同製品生産企業である米Ethyl社は確実な証拠もなくこれを規制しようとしているという主張を、間接収用等と構成して提訴
※政府官僚が立法討論会で発言した内容に対しても損害賠償を請求
- 仲裁判定以前にカナダ政府は1,300万ドルを支払い、和解
○UPS事件
・国営企業(state enterprise)であるカナダ郵便公社(CPC)が法的委任に従って独占的
に郵便配達サービスをするのに併せて、法的委任がない小包特急配達サービスにおいても特恵を得ていることを理由に、小包配達競争社である米UPS社が内国民待遇違反を理由に提訴(公共サービスを対象にした最初のNAFTA事例)
・現在仲裁中であり、カナダ郵便労組は仲裁参与を通じてUPSの勝訴時、政府保証金支給が不可能になり収益性が落ち、僻地に対する郵便サービスを中断しなければならない等の憂慮を提起しており、NAFTAに対する違憲訴訟も起こされる等、社会的影響が大きい
○Trammel Crow事件
- カナダ郵便公社発注の郵便施設管理契約に入札を準備中だったTrammel Crow社は、郵便公社が既存企業との契約を延長し入札計画を取消したことを、協定違反として提訴
- カナダ政府は合意で終結(合意条件不詳)
○Loewen事件
- ミシシッピー州裁判所がカナダの葬礼企業Loewen社に対して、公正取引違反等で合計5億ドルの損害賠償と懲罰的賠償を判決したのに対して、同判決が「収用」に該当すると提訴
- 判定部は上の判決が「明らかに不適切で信頼できず、最低(公正・衡平)待遇違反に該当する」として司法部の判決も紛争対象であると判示したが、Loewen社が破産時米国会社に譲渡されたことを理由に管轄なしと決定
□現在係属中のNAFTA事例で問題になった措置
○米国を相手
- 米国の核廃棄物埋立て政策(他の処理技術保有者が提訴)、カナダ産木材に対する
反ダンピングおよび補償義務賦課、麻薬庁が大麻飲食物輸入を犯罪化した措置、組織犯罪取締り時のゲーム場および会計帳簿押収措置、原住民地域毀損の可能性がある坑口の埋立て措置、タバコ販売額のうち一定比率を公衆保健のための基金に納付するように強制する規定、狂牛病発見以後米国政府がカナダ牛の輸入を禁止した措置
○カナダを相手
- 公園建立のための土地収用措置、ゼネリック医薬品の製造を禁止するカナダの特許法規定、カナダ産飲用水輸出免許の延長・新規発給停止措置、特定農薬販売会社と政府機関の間の同農薬販売制限措置と関連した紛争
○メキシコを相手
- スロットマシンと類似した賭博場閉鎖命令、投資家に敷地を売渡した開発業者の所有権を否認して投資家に土地明渡しを命じた裁判所の判決、1997年ペソ貨危機以後当局の不実社債還収措置の差別性、メキシコ業者と法律家・公証人の共謀で投資家に対する詐欺および同事件対処に対する政府の無能と手続的不公正、土地の国有地余否に対する所有権紛争、清涼飲料甘味剤製造企業に対する課税措置、国境所在リオグランデ河に対するメキシコ政府の水路変更によるテキサス住民の用水権被害事例、観光地開発合作契約と関連した民・刑事紛争で敗訴後、メキシコの裁判システムを提訴した事件等
2. 投資紛争構造に対する一般的憂慮
□政府の規制権確保に障害
○投資協定はNT、MFN等一般的義務のみならず間接収用、国際法に従った「最低待遇(公正・衡平待遇)基準」等を規定している
○特に、「間接収用」の概念は国際的定義が確立してない概念で租税、安保、公共秩序、保険等すべて政府(地方自治体および政府投資機関、司法府等を含む)の措置に対して提訴可能
※措置(actionまたはmeasure)は政府の法規定、制度、慣行、不作為、公務員の事実的行為等を含む広範囲な概念である
※米国の文案は措置外に「一連の措置(series of actions)」という概念も含んでいるが、これはいわゆる「漸進的収用(creeping expropriations)」を意味するもので個別措置は収用に該当しないが、結果的に収用的効果が発生した場合関連する措置を一括して収用と擬律する概念である
○政府被訴時萎縮効果(chilling effect)等により敗訴判定以前にも規制政策推進を萎縮させる効果がある
※巨大資本を保有する多国籍企業の場合、制度的・慣行的障害を除去し特定政府を手なづけるために(taming effect)勝訴の可能性が低い場合にも、仲裁を起こす傾向がある
□予算の負担問題
○最低補償基準に関して国内より高い基準の適用等、損害賠償算定基準の差異から 高額賠償判定の可能性が常存
※2004年スロバキアに対して8億2,400万ドル賠償判定等(CSOB case)、2001年チェコに対して2億7千万ドル賠償判定(Lauder case)等
※現在まで最多請求額はエネルギー会社の株主たちがロシアを相手に起こした約330億ドル(韓国通貨で約33兆ウォン)
○勝訴時にも仲裁手続の長期化、高額の仲裁・法律費用、証人等関連者の出張費用、
翻訳費用等予算の負担が不可避
- 最近の仲裁事件関連の1件あたり平均法律費用は百万ドルから2百万ドルと推算され、長期間の訴訟で仲裁費用・法律費用加重の危険があり、投資家が一部でも勝訴時仲裁費用の半分、法律費用各自負担の事例が多く、被訴時に手続費用の算定が必要
※Pope & Talbot v. Canada事件の場合、原告が5億9百万ドルを請求し4年間進行した結果、結果46万ドルの認容に過ぎなかったが、総費用約760万ドルに関して仲裁費用の半分、法律費用619万ドルを各自負担との判定
(5千万ドル賠償を主張し150万ドルが認容されたKarpa事件でも同じ原則が適用)
- チェコは最近、ヨーロッパ系放送会社が起こした2つの訴訟の防御費用だけで約1千万ドルを所要(2003年)
※チェコ政府は訴訟に備えた予想費用とて2004年に330万ドルが、2005年に1,380万ドルが必要となるとの予算の推計を発表
□国内外投資家間の賠償要件・賠償額等等差の危険
○外国の投資家だけに政府を相手とした国際仲裁提起権が保証され、国内投資家と
異なる収用基準、補償基準等が適用されることがあり、実質的に賠償の不平等が招来される危険
□法的安定性問題
○仲裁判定の先例不拘束原則、上訴手続の不備、間接収用の法的基準の不明確性等により政策基準の混乱した状況が発生する可能性
- 被害企業に投資した外国投資家が多数で、各自が別途に仲裁提訴した場合、各判定部で相異した結論の判定が可能
(チェコのLauder事件等の実例)
□超憲法的措置の強制問題
○韓国の憲法上収用の法理に適合し、法律に違反しない措置が仲裁判定部によって収用と判断される場合にも、韓国政府が賠償判定を執行しなければならないのみならず、関連措置を是正しなければならない負担を負う矛盾が発生する可能性
- 例えば、整理解雇制限の法理を根拠に賠償請求し認容された場合、韓国では大法院判決と背馳する仲裁判定なのにこれを執行しなければならないのみならず、同種の提訴を防ぐために整理解雇要件緩和立法が不可避
Ⅳ.交渉の主要な争点および対応現況
□主要争点及び対応現況
○投資紛争対象範囲の拡大
- 米国側は当事国の協定義務違反のみならず、政府の投資契約、投資因果関連の紛争も国際仲裁管轄事件と規定
※投資契約(investment agreement)とは「一方の締約国の国家当局と他方の締約国の投資家若しくは国民や会社間で結ばれた書面協定として、国家当局により統制されている天然資源やその他資産に対する権利を彼らに付与したり、若しくは彼らが投資の設立および獲得に関連して依拠する契約」である
※「投資認可(investment authorization)」とは「一方の締約国の外国人投資権限当局が他方の締約国の投資若しくは国民や会社に付与した認可」である
- 投資契約・認可が投資紛争対象に包摂されると、個別投資契約等で「管轄合意条項」を置いて関連紛争を国内の裁判所でだけ解決することで約定した場合にも、これに関わらず国際仲裁を起こすことができる
- 韓国側は紛争対象の行き過ぎた拡大、契約上「当事者自治」原則の違背、管轄合意条項関連の複雑な問題点等を根拠に反対
※投資契約の主体である「national authority」に関して米国側は連邦政府機関を意味するものと制限しており、韓国側の案は未定の状態である
-仮に韓国側案が投資契約を中央政府の契約に限定して地方自治体、公的企業等の投資契約を適用範囲から排除しても、これらの機関は協定義務の主体になれるので、契約不履行等契約的紛争(contractual claim)を協定義務違反(treaty claim)に構成して提訴することは可能(最近Bayindir v.Pakistan事件等多数)
※投資紛争対象の公企業への拡大問題
・米国案によれば公企業(state enterprise)とは「締約国によって所有され、又は所有持分(ownership interests)によって統制される企業」と定義(間接的持分所有を通した統制も含むものと解釈される)され
・公企業が政府の委任に従って規制的、行政的、政府的権限を行使する場合には行政義務の主体となることを明示しているので、公企業等の各種措置もNT、間接収用等協定義務違反と構成して提訴可能(NAFTAのUPS case等)
・公企業政府投資機関が専ら商業的主体として行動する場合の他には、協定が適用される可能性が高い(高速鉄道契約等、各種政府投資機関の契約)
○米国判例法に基づいた間接収用判断法理の導入
- 韓国が既に締結したFTA等には間接収用に対する賠償の根拠条項のみを置いただけで、判断法理規定を置いていないが、
- 米国側案は最近締結したFTA、BITで米国修正憲法第5条収用(taking)に関する自国判例法法理を規定
・1)政府措置の経済的衝撃の程度、2)政府措置が明白で合理的な投資期待利益を侵害した程度、3) 政府措置の性格等3つの要素明示
※同法理規定は収用に関する投資家保護において「米国法制下で補償する保護に相当する保護を補償せよ」(“secure protections against expropriation for investors comparable to those that would be available under U.S. legal principles and practice”)は2002年TPAの明示的委任事項を反映し、Lucas判決とPenn Central判決を混合して構成したものと判断される
- 韓国側は、自国判例法の一方的導入に反対する一方、間接収用範囲を制限し 両国間間接収用法理の調和、規範的明確性を期待できる文案の必要性を提起中である。
○仲裁手続の透明性強化
・米国側案は、仲裁法廷に提出された申請書、意見書、判定文等、すべての仲裁関連資料を一般に公開(インターネットによる公開を意味)し、審理手続も公開
・紛争当事者外の第3者(amicus curiae)の意見提出権を保証し、これを審理に当たって考慮するように義務化
※透明性関連規定も米国議会の委任事項として、すべての情報と審理公開を通じて第3者の参与を容易にし、投資家に有利な手続的環境を醸成し、国際仲裁利用率を高める効果がある
・韓国側案は第3者介入の副作用、政府の秘密情報保護の必要性等を根拠に反対
□その他の論議 : 紛争解決手続全般についての削除問題
○法務部(法務省)は第1次交渉で国際投資紛争についての各種の憂慮等を勘案して、米国-豪州間FTAの例のように投資分野で内国民待遇、最恵国待遇、送金保証、 収用に対する補償等、各種協定上の義務を規定しても、関連紛争発生時仲裁判定部ではない各国の国内手続を通して解決する方案を積極検討してくれることを米国側に要請
○しかし米国側は米国-豪州間文案は両国がすべての法理が類似した英米法圏国家である点等を勘案した例外的な文案であり、韓国には適用できないと説明
Ⅴ.今後の対応方案
1. 概要
○投資紛争の危険性および米国企業の提訴可能性が高い点等を勘案して、紛争範囲を最大限縮小し、政府規制権確保のための方案の貫徹が必要
○米国側を相手に紛争解決手続自体の削除を主張することは、高級幹部次元の交渉が必要な事案で法務部はこのための積極的対応を外交部(外務省)等関係部処に要請したことがあるが、交渉推進状況に照らしてこれを期待するのが難しいので、法務部は文案交渉で韓国側案貫徹のため積極的に努力
○対米交渉と併せて米国側と交渉発効時、投資紛争急増が予想されるので、長期的に国内的対応態勢構築のための方案を講ずる予定
2.文案交渉方案
○間接収用関連問題
- 間接収用法理は明確な成文法的規範なく各国の判例と仲裁判定例の蓄積を通じて形成中の概念なので、明確な法理確定が難しいだけでなく仲裁判定の動向等に照らして韓国の憲法原則と背馳する仲裁判定の可能性を排除できない
- このような危険性を遮断するために間接収用を根拠とした提訴は国内手続でだけによるようにする方案、若しくは既存のわが国の判例原理を協定文に反映する方案等を推進
○投資紛争範囲制限
- 米国側案のように投資契約、投資認可等を紛争対象に含ませる場合、政府が主体になった契約紛争等が排他的国内管轄合意条項にもかかわらず国際仲裁に回付される危険性等があるので、これを除外する韓国側案を積極貫徹
○仲裁手続関連
- 韓国側が被訴された場合、対応の便宜性、国内仲裁力量の引き上げ等のために当事者間合意のない場合、仲裁地を被訴国とする法案を積極推進
- 議長仲裁人を第3国人とする方案等、仲裁判定部の中立性確保のための方案の貫徹
○仲裁の透明性関連
- 米国側は仲裁判定部に提出されたすべての資料のインターネット公開、紛争当事者外第3者(amicus curiae)の手続参与保証等を要求しているが、
- 保護が必要な秘密情報の保護方案、第3者の参与を無差別に許容した時、多国籍企業に友好的な国際団体の無分別な仲裁介入の危険性等を勘案して慎重な対応
○国内手続と国際仲裁の関係
- 国内手続進行中にもこれを中断し国際仲裁に移行できる米国側案はForum Shoppingを許容する副作用がある反面、国内手続選択以後は仲裁への移行を禁止する場合、初期に仲裁手続を選択する可能性が高まる憂慮があるので、国内手続への誘因方案および国内外手続間の整合性等を達成できる方案を模索
3.内部的対応体制樹立が必要
○各部署別現行規制措置の再検討
- 投資紛争問題は全ての政府の部署、司法部、地方自治体、政府投資機関等に関連した事案なので汎政府的な対処が必要
- 主要分野の規制権確保方案および被訴の可能性が高い措置の事前方案を講ずる必要
※濫訴に対する実効的防止装置が未整備で投資家のすべての被害状況を「間接収用」若しくは「最低待遇(公正・衡平待遇)基準」違反等で提訴可能(政府の措置がない場合にも、投資家保護のための制度不備を事由に提訴可能)
- 主要検討対象
・各種の租税措置、建築、不動産規制、保健・環境規制、外国企業に対する捜査および税務調査、中小企業支援制度
・政府、政府投資機関、地方自治体等の投資契約等関連実態および投資誘致関連各種の措置の現況等
※政府投資機関・公企業等state enterpriseの業務性格、法的根拠、契約実態、差別的措置等、各種実態を集中検討する必要がある
○投資紛争発生に備えた体制の樹立
- 法令の制・改定および各種の政策樹立・施行時投資紛争発生を事前に予防できる点検体系の樹立
- 紛争発生時、所管の機関、個別手続対応方案、政府の秘密情報保護方案等論議
- 外国の対応実態把握および対備計画の樹立
○投資紛争に備えるための専門組織運営の必要性検討
- 高度の知識が求められる国際投資紛争関連業務を効率的に遂行し続けられる専門組織構成方案を論議
別添 【交渉分科構成現況 : 17個の分科および2個の作業班】
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