ISD条項の罠4 憲法秩序の破壊
引き続き、韓国朴チュソン議員が公開した韓国法務部(法務省)の検討結果の翻訳を紹介する。
今回は、法務部国際法務課が、米韓FTAの第2回交渉に臨んで検討した対応策の部分を末尾に貼り付けて紹介する。
法務部の検討結果からは、
①米韓FTAへのISD条項の導入は、国内規制のあらゆる分野において外国投資家によって提訴される危険性が否定できないこと、
②賠償金額や費用負担の巨大さから立法・行政機能が萎縮すること、
③「間接収用」概念と韓国憲法の「収用」保障規定とが対立する関係にあり、憲法秩序が攪乱される可能性があること、
③したがって、米韓FTAにはISD条項を導入すべきではないこと、
④しかし、アメリカは、韓国が英米法圏の国家ではないことから、米豪FTAに倣ってISD条項を設けない措置をとることはできないとしてISD条項の削除は居されたこと。
が明らかにされた。
同じく韓国法務部(法務省)の構成課と思われる「国際法務課」の検討は、ISD条項を削除すべきであるが、それは困難であるという前提から出発して、いかなる対策をとるべきかを検討している。
国際法務課の検討対象は、「間接収用」に対する補償を求める規定に集中している。
なぜなら、「間接収用」原則が韓国憲法23条3項に基づく財産権補償と矛盾し、憲法違反の事態を生じることがあまりにも明らかだからである。
ISD条項が最高法規である憲法に違反する論点に集中しているだけに法的な問題点としては、いっそう深刻である。
憲法に反する協定を押しつけられないためには、どうしたらよいか、ISD条項全体を米韓FTAから除外できないとすれば、せめて「間接収用補償原則」だけでも適用除外にしなければ、憲法秩序が崩壊するという問題意識は、痛々しいほどに具体的で論理的である。
これは又、日本がTPPを通して、直面しようとしている状態である。
要点を紹介しよう。
「間接収用」は「形式的所有権の移転がないが、直接収用と同等な効果を持つ国の措置(measure)若しくは一連の措置」であり、
間接収用は(略)経済秩序の確立、産業構造改善等一般的な目的の政策施行に付随して、財産権が事実上侵害されるケースを意味するので、政策遂行時に不測の障害要素として作用する可能性が濃厚
である。
要するに、財産権に損害を与える規制は、一応、間接収用に該当する可能性があると見なければならない。
では、間接収用はどのような判断基準で判断されるか。
修正憲法第5条の解釈に関する米国の判例法理論である3要素(Three-factor-test)の基準を考慮するように明示
・1)政府措置の経済的衝撃の程度
・2)明白で合理的な投資期待利益への侵害程度
・3)政府措置の性格
これらの基準は、極めて曖昧であるというほかない。これだけで何が間接収用であり、何が間接収用ではないかを判定することはほぼ不可能である。
では、韓国憲法は、間接収用に対する補償を予定しているか、あるいは、間接収用に対する補償を実行しているか。答えは否である。
・「公益事業のための土地等の取得および補償に関する法律」等各単行法律が個別に補償を規定したり、ほとんどすべての土地およびこれに類似した権利に限定され、財産権移転を伴う直接収用に限定
・間接収用の概念、範囲および補償原則に対する立法や判例が確立されていない
収用に対する補償は、「直接収用」(国家ないし自治体等への名義移転を伴う収用)に限定して、それぞれ個別立法で具体化しており、判例も「間接収用」の法理を確立していないというのである。
したがって、韓国・韓国民にとっては、「間接収用」は全く新しい概念であり、韓国にはその備えが全くない。米国側は、米国判例法によって確立されたものが「間接収用」であるとし、特別な国内的な変動はないが、韓国は法体系全体にわたる混乱を招く。
しかも、仲裁法廷では、韓国の財産収用に対する補償が予定しているより、格段に巨額の補償額が命じられる可能性がある。
通常仲裁判定部が損害額算定時、期待収益等一切の喪失利益を含ませるのが慣例なので、仲裁判定部の判断によれば、天文学的賠償を命ぜられる可能性が常存
かくして、法務部の報告にもあったとおり、国家機能全般に対して萎縮効果が及ぶことになる。
外国投資家の提訴の惧れ、被訴による各種予算的・行政的負担、敗訴に対する憂慮等から正当な立法・行政・司法機能が萎縮する可能性が大きい
具体的には、以下のような混乱が予想される。
- 大法院判決、労働基準法、憲法裁判所の決定等を通じて確立した整理解雇要件が被訴し賠償判定がある場合、解雇要件を緩和する立法の義務が発生
- 立法または規則等に基づいて推進される各種不動産関連の課税若しくは規制政策が収用と判定される場合、税金廃止および規制緩和が不可避
- 工程40%以上進行した後にアパート分譲契約をするようにした2006.7.6.建設交通部措置等についても、その間の利子費用またはそれによって事業自体不可能になったという理由で、仲裁提訴が可能なものとみられる
- 外国企業の不法行為を理由にする押収、捜査、有罪宣告、不法利益返還等が収用と判定される場合、司法主権と衝突
韓国は、これまで長年にわたって、個別法及び判例により、憲法を具体化し、憲法秩序を形成してきた。これでは、これまでの韓国の憲法秩序、さらには憲法的な価値観自体が大きく揺るがされる。
また、これまで途上国との間で途上国の司法制度が未整備なことを理由に設けられてきたISD条項を米韓FTAに入れること自体が、韓国の司法制度が未整備であることを自認する行為に等しく、屈辱的なことである。
(韓国が)NAFTA(‘94)以後、米国と仲裁手続が含まれた投資協定を締結する最初のOECD国となるもので韓国の司法制度が不備なことを自認する結果になる可能性がある
本来、仲裁法廷は、当事国の国内法秩序にしたがって、判断をすべきである。
しかし、仲裁法廷が、韓国憲法に基づく法秩序に理解を示し、韓国国内法を適用した判断をするか。すなわち、「収用」補償に対して、ドイツ法系の「特別の犠牲」に該当するか否かを判断基準を用いることが期待できるのか。答えは否定的である。
米国が提示した法理に対応して、ドイツの「特別犠牲」概念等に基いた韓国の判例法原則の反映を要求する方案だけでは、基本法理体系の相違を解消できないのみならず、仲裁判定部に対する実効的判定基準として機能することが難しい
以上のような検討の結果、国際法務課は、ISD条項を設けないにこしたことはないが、これが困難である以上、最低限、「収用」に対する補償法理だけは、除外することを提案している。
3.対応方案 : 「収用」関連紛争は国内の手続で解決
○既存の先例あり
-ドイツ-中国間投資協定(2003年)の文案
・「収用および補償」を規定した第4条第(2)項で「収用の合法性および補償金額の問題は投資家対国家間紛争解決条項(第9条)にもかかわらず、国内の裁判所が審査すると規定」
憲法との適合性を図るための最低限の手当であり、大幅な譲歩である。せめて憲法との適合性を図ろうとすることは、米韓FTAの相手国であるアメリカも同様に自国の憲法秩序と反することになる可能性を最大限排除しようとしていること、したがって両国の関心は、同じであることなどを、アメリカの貿易促進権限法成立過程にまで遡って、論拠を列挙している。
しかし、韓国の主張が容れられることはなかった。
間接収用というおそるべき萎縮効果を生む規定は、ほぼ無傷で残されたのだ。
韓国は今、主権国家としての瀬戸際に立たされていると言ってよい。
日本も同様の問題に直面することになる。
このことについては、又、後日、改めて述べたい。
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投資紛争関連2次交渉対応方案
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2006.7.国際法務課
1.概要
○協定文草案の投資chapterに規定された投資家対国家間紛争の解決手続は「収用」の広範囲性等による違憲性、濫訴の危険、政府規制権の萎縮等多くの憂慮が提起されている
○これに対する最も効率的な対処方案は米国-豪州間FTAの締結例のように、紛争解決手続部分を削除し、すべての紛争を国内で解決させることだが、積極推進が困難な状況である
○韓国の憲法と衝突を起こす可能性がある「収用および補償」条項を根拠とした紛争だけでも国際仲裁提訴の可能性を遮断する方案を次善策として提示しようとする
※紛争解決手続全体を削除する方案に対する交渉継続の必要性を前提とした意見である
2.投資協定文草案の構造および「収用」関連の問題点
□投資Chapterは3個のSectionおよびAnnex(付属文書)で構成
○Section A : 投資(Investment)
・ 米国投資家に対する内国民待遇、最恵国待遇、最低待遇(公正・衡平待遇)基準、収用に対する補償、補償の保障、履行義務の賦課(パフォーマンス要求)禁止等、投資保護のための当事国の実体的義務事項を規定
○Section B : 投資家対国家間紛争の解決
・ 投資紛争の範囲、仲裁提起および判定手続、仲裁過程の透明性保障手続等、詳細な手続を規定
・ 米国ワシントン所在国際投資紛争解決センター(ICSID)の仲裁若しくは国連国際商取引法委員会 (UNCITRAL)仲裁規則に従った臨時仲裁判定部等を規定
○Section C : 投資、投資家等、各種概念の定義を規定
○Annex B : 「収用((Expropriation)」に関する概念説明
・ 収用を直接収用と間接収用に区分
・ 直接収用は所有権の移転を伴う収用、「間接収用」は「形式的所有権の移転がないが、直接収用と同等な効果を持つ国の措置(measure)若しくは一連の措置」と規定
※直接収用が特定な財産権の強制的な取得を直接目的に行う措置であるのに対して、間接収用はこれとは関係なく経済秩序の確立、産業構造改善等一般的な目的の政策施行に付随して、財産権が事実上侵害されるケースを意味するので、政策遂行時に不測の障害要素として作用する可能性が濃厚である
・収用に該当するか否かの判断法理 :修正憲法第5条の解釈に関する米国の判例法理論である3要素(Three-factor-test)の基準を考慮するように明示
・1)政府措置の経済的衝撃の程度
・2)明白で合理的な投資期待利益への侵害程度
・3)政府措置の性格
-一部規制領域を原則的に除外 : 保健、環境、安全等公共の福祉(public welfare)のための非差別的規制措置は原則的に間接収用を構成しないという規定
※この場合にも例外的事由の存在を主張したり、規制措置が内・外国人を差別しているという理由で提訴が可能になる素地が充分
□問題点
○韓国の憲法上、財産権の補償法理と衝突の可能性
-韓国の憲法上の補償体系
・憲法第23条第3項は財産権収用時、「法律に従った補償原則」および「正当な補償」原則を闡明
※憲法第23条:①すべて国民の財産権は保障される。その内容と限界は法律で定める。
②財産権の行使は、公共の福祉に適合するようにしなければならない。③公共の必要による財産権の収用・使用または制限およびそれに対する補償は法律でするが、正当な補償をしなければならない。
・「公益事業のための土地等の取得および補償に関する法律」等各単行法律が個別に補償を規定したり、ほとんどすべての土地およびこれに類似した権利に限定され、財産権移転を伴う直接収用に限定
・間接収用の概念、範囲および補償原則に対する立法や判例が確立されていない
-FTA締結の立法代替的効果
・米国側案通りに間接収用の概念、判断法理を規定することは条約に法律と同等な効力を付与する国内法原則上、収用関連の法律を立法するのと同一な効果がある
※英米法圏の場合、条約締結以後関連国内法規を制・改定する国内手続化
履行(Implementation)過程を通して規範力を付与することになるが、米国側は収用規定は自国の判例法が既に反映していると見ており、米国法上判例法が成文法のような効力を持つので、別途の立法等の措置が必要ない
・これは財産権補償範囲を決定する重要な立法に関する法理の憲法適合性があるかに関して国内的な論議の過程なく受け入れるもので、実体的・手続的に違憲問題が発生する可能性
※(米国)修正憲法第5条の「収用(taking)」概念の解釈に関する慣例法を通じ補償範囲と基準を定める米国法制と異なり、韓国では法律に従った補償、広範囲な国家賠償責任認定および判例法理を通じた補償という構造を取っていて、米国法理そのままでの受容は不可
-補償基準も相異
・補償の範囲と基準に関して「収用された投資の公正市場価格(fair market value)」 とのみ規定しており、通常仲裁判定部が損害額算定時、期待収益等一切の喪失利益を含ませるのが慣例なので、仲裁判定部の判断によれば、天文学的賠償を命ぜられる可能性が常存
○濫訴の危険性および国家行為萎縮の効果
-「間接収用」の概念が広範囲で、投資家は資産価値の減少等すべての被害を国家措置とつなげて「収用」として提訴が可能
※NAFTAによる紛争事例をよく見ると環境被害を理由とした規制措置、政府の入札計画取消し措置、タバコの価格から公共基金納入措置、賭博場閉鎖命令等も収用を根拠に多数係属中である(立法・司法・行政等すべての措置が提訴される)
-仲裁手続の対応過程での各種資料の翻訳提出、関係者の出張証言等、莫大な行政負担および法律費用等の被害が予想
-外国投資家の提訴の惧れ、被訴による各種予算的・行政的負担、敗訴に対する憂慮等から正当な立法・行政・司法機能が萎縮する可能性が大きい
○超憲法的状況発生の危険
-韓国の合憲的立法・司法・行政行為が仲裁判定部によって「収用」と判定される場合、政府は損害を賠償しなければならないのみならず、同種の提訴防止のために関連措置を是正しなければならないので、超憲法的な矛盾状況を招く危険
※大法院判決、労働基準法、憲法裁判所の決定等を通じて確立した整理解雇要件 が被訴し賠償判定がある場合、解雇要件を緩和する立法の義務が発生
※立法または規則等に基づいて推進される各種不動産関連の課税若しくは規制政策が収用と判定される場合、税金廃止および規制緩和が不可避
※工程40%以上進行した後にアパート分譲契約をするようにした2006.7.6.建設交通部措置等についても、その間の利子費用またはそれによって事業自体不可能になったという理由で、仲裁提訴が可能なものとみられる
※外国企業の不法行為を理由にする押収、捜査、有罪宣告、不法利益返還等が収用と判定される場合、司法主権と衝突
3.対応方案 : 「収用」関連紛争は国内の手続で解決
□提案内容
○「内国民待遇」、「最恵国待遇」等、他の協定義務を根拠にした提訴に対してだけ仲裁
提起を許容
-協定で発生する義務であり、韓国憲法との衝突はない
○協定文第6条「収用」を根拠とした提訴は仲裁を禁止し国内手続だけで解決するようにするが、仲裁管轄に対する個別的同意がある場合にだけ仲裁への提起を許容
※米・豪州間文案のように紛争解決手続絶対削除主張の貫徹が難しい場合、次善の解決策であり中国とドイツの投資協定に先例がある
□主張の根拠
○「収用および補償」関連紛争の合憲性補償
-収用に対する補償は、憲法が定める財産権補償の内容と限界の問題なので、協定 締結を通じた保護範囲が憲法的限界と一致できるように保障する仕組みが必要
-財産権侵害に対する補償は協定上に規定を置かなくても憲法上保障される権利であり、仲裁合意が外国投資家に超憲法的権利を付与することに対する同意ではないので、結局収用問題を仲裁で解決するのは公正な基準と手続を保障されるためにforumを移すという意味に過ぎない
-しかし仲裁判定部が各国の憲法上の原理に沿った判定をすることを保障する仕組みがない限り、国内手続化が唯一の対案である
○韓国の司法制度の信頼度維持および誇り(自尊心)の保障
-投資協定は先進国資本が財産権補償体制が未整備な低開発国に投資しながら、安全を保障されるために締結するのが通例
-しかし韓国は司法制度等が検証されたOECD国として司法を通じた権利保護の仕組みが完備しているので、基本的安定性の保証が可能
※NAFTA(‘94)以後、米国と仲裁手続が含まれた投資協定を締結する最初のOECD国となるもので韓国の司法制度が不備なことを自認する結果になる可能性がある
-韓国の補償基準が未熟という疑問視、韓国の補償体系に対する米国企業の具体的不
満事例の有無、同一事例に対する米国内補償体系に対する比較検討後、改善方案を
講じる
○米国側の同一の関心事項と合致
-米国側が間接収用判断法理に関して収用(taking)に関する自国判例法の内容を規定した理由は、自国の判例法を許容する文案にせよという米国議会TPA(貿易促進権限法)の委任に沿ったものである
-これは国際仲裁によって米国に投資した外国人が米国人投資家より多くの権利を付与されるかも知れず、これは米国憲法に違反するという点を憂慮したものである
※米国議会がFTA交渉権を行政部に付与するTPA2002(貿易促進権限法)はたった1票の差で通過したもので、主権を侵害する素地を内包した投資紛争解決構造に対する憂慮が反対意見の有力な論拠になり、当時米国州最高栽判事協会、州法務部長官協会も国際仲裁の違憲性に対する憂慮を表明したことがある
-韓国側の提案は憲法と矛盾する状況の回避、国内外投資家間の平等待遇等、米国側が憂慮する措置であり、米国議会の関心事と同一
※米国が提示した法理に対応して、ドイツの「特別犠牲」概念等に基いた韓国の判例法原則の反映を要求する方案だけでは、基本法理体系の相違を解消できないのみならず、仲裁判定部に対する実効的判定基準として機能することが難しい
○「収用および補償」とその他協定義務との差別性
-収用に対する補償原則は、協定を締結しなくても韓国の憲法で保障される権利であるのに対して、内国民待遇、最恵国待遇、送金保証等の権利は協定を通して創設される権利と評価できるので、両者間の理論的区別が可能
○既存の先例あり
-ドイツ-中国間投資協定(2003年)の文案
・「収用および補償」を規定した第4条第(2)項で「収用の合法性および補償金額の問題は投資家対国家間紛争解決条項(第9条)にもかかわらず、国内の裁判所が審査すると規定」
※ “At the request of the investor the legality of any such expropriation and the amount of compensation shall be subject to review by national courts, notwithstanding the provisions of Article 9.”
□反論の可能性
○国際的異例性の問題
-間接収用だけを仲裁範囲から除外することは、国際投資協定の慣例上普遍的方式ではないという批判が可能だが、
・米-豪州方式は紛争解決手続全体を除外した異例なケースで、「収用」だけの除外はこれより緩和された形態であり、ドイツ-中国間投資協定等でも例を発見できるし、
・いわゆる「北-北」間投資協定締結自体が異例なものなので、必ず既存の「北-南」間投資協定様式を踏襲する必要はない
※米国が46ヶ国と、豪州が21ヶ国と締結した投資協定はすべて紛争解決手続を含んでいるが、相手国はすべて低開発国ないし開発途上国である
○請求原因の可分性問題
-仲裁提訴する場合、一連の事実関係を「内国民待遇違反」、「公平待遇違反」、「間接収用」等、色々な請求原因を動員して提訴する場合、一部の請求原因を分離して国内手続を強制するのは非論理的という批判が可能だが、
・収用以外の他の請求原因は、仲裁判定部に要件に該当するか否かを別途に判断させ、同義務違反と直接的因果関係のある損害として補償範囲を限定する等、技術的補完を通じて解決可能で、
・主要請求原因が「収用」であるケースが多いので、この争点が除去される場合、仲裁判定部が解決する争点が単純化し迅速な仲裁可能
※NAFTAのKarpa(Feldman) v.Mexico事件の場合、被訴国がタバコ輸出業者である申請人に消費税を返還しない事実が「漸進的収用」と内国民待遇に違反に該当すると提訴されたが、判定部は収用に基く請求は棄却し、NT違反だけを認容(同一の環境にある他の投資家たちと比べて、同一の待遇をしなかったと判示)して200万ドルの賠償を命令
□文案の構成
○韓国側「収用および補償」条項(第6条)に第6項を追加
-「措置の収用に該当するか否かおよび補償金額の問題に関する紛争は締約国の国内
行政裁判所若しくは一般裁判所の手続による」という文案を追加
○事前同意条項に例外規定追加
-事前同意を規定した条項(韓国側文案第18条、米国側文案第16条) 第1項末尾に「仲裁提訴が第6条を根拠にした場合を除く」という文案を追加
4. その他濫訴防止方案
□国家間事前協議義務の賦課
○協議および調整義務条項(韓国側16条、米国側14条)に国家間事前協議義務条項追
加
-「仲裁提起前、被訴国政府と投資家の母国政府間でもconsultationとnegotiation手続を経なければならない」
※TPA立法前にニューヨーク州法務長官(Eliot Spitzer)は外国投資家が投資紛争提起前に自国政府から承認を受けるようにする要件を置くことを要求したことがある
○国家間事前協議の条項を置く場合、投資家が母国政府に協議要請過程で提訴意志が 緩和され、濫訴が選り分けられる効果を期待
(翻訳:李洋秀/法律校正:岩月浩二)
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