リアルタイム弁護士運転資金借入体験記
何しろ最近は、事件単価の低下が著しい。庶民の懐が寒くなれば、弁護士に払える費用も乏しくなる。当然のこと、庶民に依拠するマチベンの懐も寒くなる。大概の弁護士は、当人がどう思っているかは別にして、企業に依拠してきたわけではなく、分厚い中間層に支えられてきたはずだ。中間層が薄くなれば、当然、事務所経営にも影響が及ぶ。しかも、これに弁護士大増員と広告の自由化が追い打ちをかけた。
僕が資本の流動化を極限まで推し進めるTPPやISDに反対するのは、中間層の崩壊を決定的にするからだし、司法改革に反対するのもマチベンのような良心的で正義感が強く、有為で志ある有能な人材が、カネ勘定が下手なばかりに淘汰されかねない現状を見るに忍びないからだ。
それにしても、昨年、弁護士歴30年にして初めてイソベン君を雇ったせいもあるにしろ、事務所の預金残高が心許なくなった。月によって売上が大きく上下する法律事務所の場合、残高を気にしなくて済むくらいの預金は必要である。
この点は、2010年11月10日付ブログ「弁護士事務所の台所事情 不況と過当競争の果て」参照
マチベンとしては、離婚協議で定められた息子への養育費の支払の他に15万円程度の手取りがあれば、当面、不満はないので、多くは望まない。しかし、今現在、台所が寂しいので、運転資金が必要である。
日本政策金融公庫(以下、公庫という)が弁護士なら無担保無保証で500万円くらいなら、軽く借りられると知人の税理士から聞き、申し込むことにした。
ネット検索で、公庫の融資には、中小企業事業、農林水産事業、国民生活事業の三種類があり、支店ごとに担当分野が異なることがわかった。
マチベンの事業は、当然、中小企業事業であると判断し、中小企業事業を担当している支店に電話してみた。
何となく法律事務所とは言いにくい。
名前を告げて、借り入れるには、まず窓口に行くのか、尋ねると、事業は何かと聞かれる。
仕方がないので、「法律事務所です」と、答える。
担当者は、「それでしたら、国民生活事業です」とお答えになる。
マチベンは、「そりゃそうですね。弁護士は、中小企業じゃなくて、零細事業ですよね」と言わなくてもいいことを口走る。
担当者は、売上を聞くので、もぞもぞと答える。
国民生活事業だと地域ごとに割り振りがあるとのことで、所在を聞かれたので、「守山区です」と答えると、支店管轄が違うとのこと。担当者は、担当支店の電話と所在地を行き方まで含めて、親切に教えてくれた。
ちなみに「国民生活事業」だと、融資金額は月商が目安になるという、マチベンは「エー、それっぽちですか」と落胆すると、担当者は、「いえ、一つの目安です」と答えた。
という訳で、今日は、担当支店を確認して、直接、電話の上、借入申込書(ネットでダウンロードしてある)と添付書類のコピーを郵送した。窓口に赴く日程について担当支店からの連絡を待つ次第となった。
今どきの新人弁護士は、ほとんどの新人が当然のようにロースクールの奨学金を借りた上、司法研修所の修習費用(概算300万円)を借りて、多額の借金を背負いながらスタートする。
新人で即、独立して事務所を構える場合は、さらに借入をして頑張っている。
ベテランだからと言って、借金弁護士体験を新人だけに押しつけてはいけない。
自分も体験してものを言うべきだと思う。
日弁連の開業マニュアル(その名も「即時・早期独立マニュアル」)によれば、新人弁護士が開業する際の借入先に政策金融公庫が挙げてある。
新規開業資金 最大7200万円を貸してくれるとなっている。
弁護士協同組合に至っては、1億円以内、内無担保無保証で1000万円を貸してくれる(東京の場合)となっている。
ホントにそんな借り入れられるかいな。
借入希望金額の欄があったので、強気に700万円と書いてみる。
さて、どうなるかな。弁護士は優良事業とみなしてくれるかしらん。
それとも、不良事業に仕分けられちゃうのかしらん。
今日の教訓。
弁護士事務所は、中小企業ではなく、国民生活事業である。
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