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2013年2月25日 (月)

TPPと自動車安全基準

安倍首相は、底なし沼に踏み込みつつある。
コメ関税と引き換えに、日本を丸ごと外資に売り渡すTPPへの参加を表明する段取りという。


例によって、大手メディアは歓迎一色だ。


しかし、提灯持ち記事を書くメディアの中でも見逃せない情報はある。
アメリカは、コメ関税と引き換えに、自動車の安全基準の緩和を求めているという。


日本政府が義務づけている自動車の安全基準について、米国などからの輸入車に対しては基準をゆるめるよう求めた。(2月24日朝日新聞)


自動車の安全基準・環境基準の緩和は、アメリカが年来、日本に突きつけている課題で、日本側が珍しく持ちこたえてきた課題だ。
日本は、「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではない」(米韓FTAでもコメ関税は維持されている)というおまじないのような一言と引き換えに何とか守ってきた安全基準やおそらく環境基準をアメ車並みにすることを認めるように釘をさされた。出足早々の失態である。
メディアは当然、この交渉は大失態だったことを知っているが、それを覆い隠す「歓迎」を演出してごまかしている。


まず、TPPが多国間交渉だということが、認識されていない。
アメリカ車だけに輸入の特例を設けて優遇するということが許されないのは多国間交渉の当然の前提である。
したがって、少なくとも、日本は、これを受け入れることによって、TPP加盟国からの輸入車の安全基準・環境基準を全体としてアメリカ車並みに緩和することを認めざるを得なくなる。


これは、自由貿易協定では、最恵国待遇が大原則となっているからだ。
最恵国待遇とは、相手国を現在及び将来にわたって、最も有利に待遇される第3国と同等の待遇を与えるという原則である。


TPPという同一協定の中で参加国を差別するのは論外であるのはむろん、TPPで輸入車の基準を緩和すれば、日本がこれまで締結してきた自由貿易協定各国に対しても、アメリカ自動車並みの安全基準・環境基準緩和を承認しなければならない。
国内メーカーだけに厳しい基準を適用するわけにはいかないから、結局、国内の自動車安全基準・環境基準をアメリカ自動車に合わせたものに緩和しなければならなくなる。
結果として、国際的にも国内的にも日本車の優位性は失われることになろう。


従来、国土交通省は、日本の安全・環境基準を国際標準化することを成長戦略の重要な柱の一つとしていたようである(国土交通省平成22年11月「自動車環境・安全基準にの国際標準化に係る現状と方向性」)。


環境分野や製品安全問題等にかかる日本の技術や規制・基準・規格を、アジア諸国等とも共同で国際標準化する作業を行い、国際社会へ発信・提案することなどにより、アジア諸国の成長と「安全・安心」の普及を実現しつつ、日本企業がより活動しやすい環境を作り出す。また、スマートグリッド、燃料電池、電気自動車など日本が技術的優位性を有している分野においては、特に戦略的な国際標準化作業を早急に進める。 


アメリカの要求にしたがえば、日本車の環境・安全基準を国際標準化するなどという目論見は、不可能になる。
安倍政権は、TPP交渉の鳥羽口にも立たない間に、すでに、自国の国家戦略の一つを失う可能性を犯すという大失態を演じている。


国民を騙すために「聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPPには参加しない」等として、TPPの最大の問題がコメの関税の問題であるかのように主張して問題をすり替え、ことの本質が、自国の国内規制の撤廃にあることを覆い隠すから、このようなことが生まれる。


メディアの罪もあまりにも大きい。
何度でも繰り返すが、TPPについて、正確な情報の提供に基づく国民的議論が必要である。


関連記事 2013年11月7日「トヨタの繁栄と衰亡

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