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2013年4月の13件の記事

2013年4月30日 (火)

猪瀬都知事は直ちに辞職せよ

東京オリンピック誘致のために訪米していた猪瀬都知事が、ニューヨークタイムズのインタビューに対して、とんでも発言をして騒動になっている。
発言を撤回し、謝罪と夕刊は報じているが、それですむ問題ではない。
ことはオリンピック誘致の成否の問題にとどまらない。
しかるべきケジメを付けなければ、日本が失うものがあまりにも多い。
「真意が伝わっていない」「文脈が違う」「雑談の中で出た話だ」とする知事の言い訳を踏まえた上で、ざっと今回の一件に関して、問題だと考えられる点を列記してみる。


第1、何と言っても、イスラム圏の国々の人々を侮辱した罪は重い。
この一件を軽く扱えば、日本人全体の見識を問われかねない。
一気にイスラム圏の人々が日本を見る目が厳しくなることを覚悟しなければならない。
日本はイスラム圏の人々に信頼されていると言われてきた。
これは、実は、日露戦争以来、日本の先人が営々として築いてきた日本国の重要な資源である。
アフガン戦争、イラク戦争で日本は、イスラム圏の人々からの信頼をなくしてきたが、猪瀬知事は最後のだめ押しをした。
そのような発言をした人物が、発言を撤回して謝罪すればそれですむというメッセージを残すことは得策ではない。
ことは日本の国に対するイメージ全体に関わり、中東諸国との友好関係に関わる重い問題ととらえるべきだ。
猪瀬都知事の辞任を発表し、東京都、日本の中東諸国との友好を大切にするというメッセージを、発するべきだ。


第2、中東問題が極めて繊細な問題であることを猪瀬知事は、全く認識していないことが暴露された。
このような外交センスのない人物を首都の顔にしておくのは今後も、同様の失態を繰り返して、国際関係に影響を及ぼす可能性がある。
日本と日本国民にとって、極めて有害である。


第3、途上国に対する蔑視も顕わになった。
イギリスは洗練されているが、トルコはそうではないなどという認識は、上から目線に他ならない。
途上国の反発を買う。
そもそも欧米がすぐれていて途上国は劣る等というものの見方は、一体、いつのものなのか。時代錯誤も甚だしい。
こうした人物は、逆にイギリスやフランス相手になると、卑屈になるに違いない。首都の顔をとして失格である。


第4、ニューヨークタイムズ側に一定の意図があったかもしれないことは、認めてもよい。
しかし、罠にかかるような人物が首都の首長でよいのか。
陥れるような事態があり得るということは、招致レースに参加しているという自覚があれば、当然に想定して行動しなければならない。
その程度の用心はお人好しが売りのマチベンでさえする。
この無防備・無警戒さは、他面では都政における傲慢さと裏表なのであろう。
しかし、そのような無警戒な人物に都政を任せる訳にはいかないだろう。
首都の顔として失格である。


それにしても、多分、これら一連の問題は、一種の思い上がりに発しているように思われてならない。
日本の支配層のほぼ全体を覆う空気の反映なのだろう。
アメリカを頂点とするグローバル帝国の支配層として自らを位置づけている。
日本に帰属しているというより、アメリカ帝国の重要な官職を担っているという錯覚。
原発、TPP、そして今回の猪瀬発言を通じて、この国の支配層が、そうした意識構造に絡め取られているのが、あからさまになってきている。
こうした階層は、いずれ帝国によって捨てられる運命にあるにも拘わらず、安全圏にいると思いこんで、国民を犠牲にする。
極端に、傲慢であったり、極端に卑屈であったりする。


多分、全ての病根は一つだということに、今さらながら、マチベンも気付き始めた。


猪瀬知事が辞任しないのであれば、東京都民は、自らがこうした人物を選んだ責任をとって、リコールしてもらいたい。
ことは、国の未来に関わっている。
都民の良識を世界に示すことが、ダメージを取り戻すには最も有効であろう。


東京都民にしてみれば、甚だご負担なこととは思いますが、よろしくお願い申し上げる次第です。

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2013年4月29日 (月)

かっわいい~!!

ついでながら、これにも参った


個人が作ったんかしらん…すんげえ
もし趣味だとしたら、日本人は、分かち合って楽しむのが好きなんだなとマチベンはつくづく思うのである。

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アメリカの衰退 虚業の繁栄

マチベンは、経済にとことん疎い。
がために、台所は火の車になる。
そんなマチベンでもアメリカが衰退していることぐらいはわかる。


かつてアメリカは文化の中心であった。
文化の発信力は、国力を反映する、と思う。
ハリウッド映画、中流家庭の電化生活、自動車に日本人は憧れた。


今、アメリカ文化に見るべきものがあるだろうか。
せいぜいがマクドナルドである。
ジャンクフード食べ放題のために、アメリカの肥満率は世界一である。
ついでながら、TPP交渉参加国の大半はアメリカ傘下にあるためか肥満率が高いというデータがある。


どうしてアメリカが経済力1位でいられるのか。
マチベンでも、日常感覚でわかる部分がある。


まず、IT関連では、OSの独占がある。
マイクロソフトは、ウィンドウズと関連のソフトの抱き合わせ販売で、世界標準を獲得した余録でやっているだけだ。
ビジネス系でパソコンを使用している者には、無用にバージョンアップを重ねているとしか思えない。
ソフトが対応しなくなるから、仕方なくパソコンを買い換えさせられる。
大体、後に修正ソフトをダウンロードさせるなんて手口は、未完成品を市場に出すということに他ならない。
精密を旨とする、日本の文化では恥ずべきことである。


ITに触れたついでに、知的財産権について触れる。
TPPでは、知的財産権の強化が問題となっている。
アメリカの最低限の獲得目標は、知財保護をアメリカ並みに統一することだ。
論理的には、知財の保護は、貿易自由化の文脈に入らない。
知財保護の強化は、貿易の不自由をもたらすと考えるのが論理的だろう。
つまり、アメリカは知財で優位に立とうと考えている。
今や誇るべき産品がないから、知財を持ち出すと考えて良い。
そもそも、知的財産権をどの程度、保護するのが、人類の福祉に適うかは、バランスの問題である。
アメリカが求める水準は、多分、人類の福祉を損なうレベルだ。
仮にOSがオープン共有化されていれば(たとえば、Linuxが一般化するのを妨害されなかったら)、ソフト開発はいっそう進化した可能性がある。
90年代初頭の日本は、オープンソースの方向を目指していた記憶だ。
結局、マイクロソフトの抱き合わせ販売の市場戦略にやられただけで、とくにマイクロソフトが抜きん出てすぐれていたわけではないと思う。


で、そのIT戦略なるものは、未完成品でもなんでも一刻も早く市場に出すというものだ。
発売時のOSには、必ずバグがある。
後で直せばよいという金儲け主義である。
不必要に買換を強制されるのは、ソフトが対応しなくなるからで、果ては、サポートを打ち切るので、セキュリティが危ないとして、XPを無理矢理買い換えさせようという算段である。
10年前のOSでは、セキュリティに限界があるとして、マイクロソフトを擁護するセキュリティ専門家は、それをメシの種にしている以上、信用できない。
セキュリティ産業それ自体もうさんくさい。
ウィルスソフトを自作自演している可能性が排除できないからだ。


マチベンが見るに、スマートフォンも、未完成品である。
あれほど頻繁に充電が必要な商品を、日本人だったら、バッテリーの性能を上げてから発売しようとするだろう。
しかし、アップルは違う。
多分、未完成品をばらまいた上、バッテリーを開発すれば、買換させられるので、まずは未完成品をばらまいたというのが実情だろう。
まもなく、多分、充電性能のいいスマートフォンが発売されるだろう。
未完成品で儲けて、性能を上げながら儲けるのだから、何倍も儲かる仕組みだ。
スマホも知財の網で守られているだけで、これが、とくにすぐれているという保障はないとマチベンは思う。
大体が、「ガラパゴス携帯」で良かったのである。
多分、「ガラパゴス携帯」という卑下する言葉は、技術が追いつかなかったアメリカ筋から流された情報に、われわれが踊らされて技術開発を中止したというのが実情ではなかろうか。


アメリカが秀でている産業は、他には軍事産業、医療産業、食糧産業などではないか。
これはみな、虚業に見える。
命に関わるもので儲けるのは邪道だとマチベンは考える。
そもそも、食糧産業をなぜ工業化しなければならないのか。
どうして家畜に成長ホルモンと抗生物質を使わなければならないのか。
どうして単位面積当たりのコメの収量を上げなければならないのか。
そのためにどうして農薬漬けにしなければならないのか。
まして、農薬とセットになったタネになぜ特許が認められなければならないのか。
そもそも、植物や動物は、耕作地や放牧地で自然に成育させることが、地域環境を保護し、生態系を壊さないためには欠かせないのではないのか。


アメリカでは、命を値段で測ろうとする製薬企業、医療機器メーカー、病院が幅を利かせている。
マチベンは、知財は開発費用を回収できる程度であるのがバランスが取れていると考えるが、多少、儲けさせてあげてもいいとも思うが、彼らが要求する儲けは桁が違いすぎる。
命と引き換えなので、暴利販売、暴利治療がまかり通る。


軍事産業が、自国民の命と引き換えに栄えているのも異様な光景だ。
兵站活動や兵隊まで民営化されて企業が栄えている様は、グロテスクである。


アメリカ経済を支えているのはほとんどが虚業なのだ。


日本は、違う。
TPP、日米FTA交渉で、自動車がどこまでもやられてしまうのは、アメリカの自動車産業に力がないからである。


次世代の実業生産品としてはロボットではないだろうか。
ロボット技術では日本は、世界一とも言われている。

可愛い!!

実業の世界では、日本は、アメリカなどに負けていないのだ。


アメリカが今も世界一のGDPを誇るのは、虚業によって支えられているところが大きい。
また、アメリカに有利なルールを押しつけているためであるところが極めて大きいと思う。


アメリカ発文化は、今、虚構の知的財産権に守られたIT以外に何があるだろう。
すぐには思いつかない。


日本発の文化はどうか。
コミケは、今や日本文化の中心地だろう。
ここではだれも知財などという野暮なことは言わない。


初音ミクなどのIT関連アイドルを生み出すのもすぐれた日本文化だ。
オープンソースでは、建築設計ソフトJwCadは、一時期、僕の趣味でもあった。
オープンソースの豊かさは日本にこそある。


日本が世界水準から措いていかれているかのように過剰に日本を卑下する言説がはびこっているが、虚業支配とマーケットのルールに支配されているからそう見えるだけの話だ。
サッカー選手が世界の舞台で当たり前のように活躍することを2000年頃に、誰が想定しただろう。
メジャー・スポーツのフィギュアスケート、水泳での日本選手の活躍を誰が予想しただろう。
音楽やバレーの世界、世界的にどれほどの若者が世界に進出しているだろう。
いつの時代にも世界的に活躍した日本人はいただろう。
しかし、層として、これほど世界の舞台で日本の若者が活躍しているのは、マチベンの人生の中では、初めてのことである。


文化の発信力は多分、国力を反映する。
凋落したアメリカ文化に比べ、日本文化の発信力は、現在は、非常に高いレベルにあるように見える。
ルールさえ、支配されなければ、日本は決して見捨てたものではないのである。

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追記 アメリカがすぐれているのは宇宙開発がありましたね。
冷戦時代の落とし子です。

追記2 書き殴ってみて思うのですが、日本人の自信喪失は、どうもアメリカ当たりのマインドコントロールにはまっているためではないか知らん。

2013年4月28日 (日)

ありがたき『主権回復の日』  寛大なる征服者を言祝ぐ

公約違反が売りの自民党は、今年から4月28日を主権回復の日にするそうな。


今や、アメリカ大統領の忠良なる売国の僕となった安倍首相が、主権回復を謳うのは、まるきりブラックジョークだ。


サンフランシスコ講和条約には、「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」(11条)とある。この条件に従って日本は『主権を回復』したのであるから、A級戦犯が合祀される靖国神社に大挙して参拝しながら、『主権の回復』を祝うという精神構造が知れない。この人たちには論理などというものは通用しないに違いない。


またこの日は、『主権を回復』するとともに、アメリカに対して、『望む兵力を、望む場所に、望む期間だけ、駐留させる権利』を発効させた記念日でもある。首都圏の制空権を今に至るまで維持させ、現在では、米軍基地の移設どころか、ハワイ州では拒否されたオスプレイの低空飛行訓練に本土を献上する態であるから『主権回復の日』というのは、『主権があると錯覚させてもらった日』を回顧する日ということなのであろうか。


まあ、それにしても、アメリカ様には感謝しなければならないとマチベンも回顧する。
何しろ、ドイツは、第二次世界大戦前の領土を大幅に連合国に割譲された上、東西に分断されたのに、日本が奪われたのはせいぜい北方領土にとどまった。アメリカ様のお陰である。


戦争賠償は、日本が二度と立ち直れないほどに深刻なものになる可能性があったにも拘わらず、ありがたくもサンフランシスコ講和条約に「日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことが承認される。しかし、また、存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害又は苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには現在充分でないことが承認される 」(14条(a))とお慈悲をかけてもらった。


『主権回復の日』以前に、金日成が戦争をしかけてくれて、アメリカが朝鮮戦争に全力を傾注してくれたお陰で、朝鮮特需に潤い、1955年には、すでに戦前の生産水準を回復するというめざましい恩恵を受けた。
かたや日本が植民地支配した朝鮮半島では数百万人が戦争の犠牲になったというのに、日本国民は、後方にあって経済成長の恩恵に賜った。涙が出るほどありがたいことである。
これも全てアメリカ様のお陰である。


サンフランシスコ条約は、戦争賠償にも枠をはめた。すなわち、賠償を希望する連合国に対して「生産、…その他の作業における日本人の役務」によるものとされ(14条(a)1項)、日本は、現金賠償を免れ、戦争賠償を産業育成の糧にするという恩恵に浴した。

日本は、この条項に基づいて、サンフランシスコ講和条約に加盟したアジア各国と賠償を協議していくが、物品・役務賠償の原則のお陰で、アジア各国で、ダムや製鉄工場等のインフラを日本企業が、整備していくことになった。要するに、政府が発注して、大企業が受注するという海外での公共事業の展開をもって賠償とすることができた。海外公共事業を受注した企業の多くは、戦争時、国民を強制労働に動員して潤った企業だ。強制労働企業にとっては、巨額の収入になるわ、アジア進出の拠点にはなるわで笑いが止まらないところである。これも全て、アメリカ様が、サンフランシスコ講和条約という枠組みを与えてくださったからに他ならない。


サンフランシスコ講和条約に参加できなかった韓国とは1965年に国交を回復し、日本は韓国に対して有償無償5億ドルの経済協力を約束したが、これも戦時強制労働企業の新日鐵などが、浦項製鉄所を初めとする公共事業で潤うことになった。これもアメリカ様が、サンフランシスコ条約で「物品・役務賠償」という枠組みを作ってくださったお陰である。


サンフランシスコ条約に加盟しなかった中国とは1972年国交を正常化し、日本は戦争賠償を免れる。しかし実際は、国交正常化以降、中国国内で多額のODA事業が展開され、笑いが止まらなかったのは、やはり戦時強制労働企業である。これもアメリカ様がサンフランシスコ講和条約によって枠組みを作ってくださったお陰である(最高裁が2007年4月27日にそうおっしゃった)。


かくして、戦前からある大企業のほとんどは、アメリカ様のお陰で生きながらえ、でかい顔ができているのである。


アメリカ様は、今や双子の赤字で衰退しつつある。
にも拘わらず、ナンバーワンのプライドや開拓者精神は捨てられない。
しかも、『テロとの戦争』などというバカげたことをしでかしたために、衰退の速度を一気に速めてしまった。
この際、アメリカ様のお陰で肥え太った忠犬ポチをそのまま放っておくのは如何にもバカげたことだ。
日本の資源は、まるごと引き渡してもらわなければ割に合わないと考えるのも又当然である。


まこと、『半占領開始の日』を『主権回復の日』などと錯覚してくれているのは、アメリカ様にとっては、好都合以外の何物でもない。

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犠牲になるのは常に国民である。
独占企業は戦争で儲け、戦後は戦争賠償で儲け放題、笑いが止まらぬ、が、この国の近現代史だ。

2013年4月26日 (金)

TPP オバマ政府から米議会への通知全文

何だか妙な具合だが、オバマの通知はまだかと書いたら、その日の内に大統領から米議会に対して、TPP交渉へ日本を参加させる目的が通知された。


URLは下記のとおり。

http://www.ustr.gov/sites/default/files/04242013 JBoehner Japan TPP notification_final 04-24-2013.pdf

画像ファイルになっているので、OCRした上、末尾に貼り付けた。
マチベンという仕事柄、英語を常用しているわけではないので、翻訳を期待するのは、今のところ、筋違いである。原文のままだし、OCRのミスをチェックするほどの腕もないので、間違いがあるかもしれないことをお断りしておく。


失効した2002年超党派大統領貿易促進権限法に倣った通知であるので、2月の日米共同声明以来の過程の中で、日本が一方的に差し入れた事前協議における『合意』と題する『念書』と並んで、法的には最も重要な文書である。
その割にマスコミはまともに伝えていないことを指摘しておきたい。


印象をまとめておく。


  1. 日本には強気で臨むオバマ政権は、とにかく成果を強調しなければ議会の了解が得られないということだ。つまり、オバマの交渉相手は、米議会であり、属国である日本ではないということだ。米議会との交渉材料を得るためにオバマ政権は日本に過大な貢ぎ物をさせ、安倍政権はオバマを介して米議会のご機嫌を伺うために率先して貢ぎ物を上乗せしていく。これが強い交渉の実態だ。

  2. マスコミではよく理解できない部分だが、通知文は日米二国間の交渉の意義を強調している。TPPの成否を問わず、並行二国間交渉で、最大限の米国益・米企業益・米国民益を追及する姿勢を鮮明にしている。事前協議の米国の最大のポイントは、実質的な日米FTAの交渉開始を合意した点にある。日本のポイントは何もなく、マイナスだけだ。

  3. 繰り返しになるが、アメリカが追及しているのは、ナイーブで単純な「自由貿易」なのではない。米国益に適う徹底した保護主義と米国益に適う範囲の徹底した自由貿易だ。この点において、自国中心主義は、一国行動主義を明確にしたイラク戦争と同質のである。

意外に大統領の権限は不自由で、弱いのである。
米国の権力分立の特徴は、行政(外交)と立法の分離が明確ではなく議会が優越することのようだ。
米国との交渉では議会工作が不可欠なのだが、このことについては、マスコミも触れないし、政府発表からもうかがい知れない。
政権との交渉が全てのように考えていると、とんでもない目に遭うのは米韓FTAの締結後の再交渉を韓国が呑まされた経過で見たとおりだ。


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EXECUTIVE OFFICE OF THE PRESIDENT

THE UNITED STATES TRADE REPRESENTATIVE

WASHINGTON, D.C. 20508

April 24, 2013

The Honorable John Boehner

Speaker

United States House of Representatives Washington, DC 20515

Dear Mr. Speaker:

On behalf of  President Obama, I am pleased to notify the Congress that we intend to include Japan, the country with the third largest economy in the world, in the ongoing negotiations of the Trans-Pacific Partnership (TPP) Agreement. As stated in the December 2009 letter from Ambassador Kirk notifying the Congress of our intention to enter into the TPP negotiations, the United States views a TPP Agreement as a means to advance US. economic interests with the fastest-growing region in the world and as a potential platform for economic integration across the Asia-Pacific region. A TPP Agreement will also serve as a tool to expand US. exports which is critical to our continued economic recovery and to the creation and retention of high paying, high-quality jobs in the United States. Japan’s participation in the TPP negotiations will contribute meaningfully to those goals and to the development of the high-standard, 21St century, regional trade agreement we are seeking.

The participation of Japan, a major U.S. trading partner as well as close ally, further increases the economic significance of a TPP Agreement. Japan is currently the fourth-largest goods trading partner of the United States. The United States exported $70 billion in goods to Japan in 2012 and an estimated $47 billion in services in 2012. With Japan’s entry, TPP countries would account for nearly 40 percent of global GDP and about one-third of all world trade.

In light of Japan’s interest in participating in negotiations that are both advanced and quickly moving toward completion, we focused in our bilateral consultations with Japan on its readiness to pursue the high-standard, comprehensive objectives that the TPP countries are seeking. We also focused on seeking to ensure that Japan’s participation would not slow down the negotiations as we have arrived at an advanced stage of the negotiations and TPP countries are aiming to conclude them this year. In response and with full recognition of the above, Japan has confirmed that it will participate positively and constructively in the negotiations. Japan also has confirmed that it will subject all goods to negotiation — both agricultural and manufactured goods — and will join the other TPP countries to achieve a high-standard and comprehensive agreement this year.

In addition, and as a result of in-depth, detailed consultations with Japan since February 2012 on specific bilateral issues of concern in the automotive and insurance sectors, as well as on nontariff measures that Japan maintains in other areas, we concluded and announced on April 12, 2013, a robust package of agreements with Japan and actions by Japan. In recognition of the importance of addressing long-standing, serious concerns with Japan in the automotive sector, we reached agreement with Japan with respect to the treatment of US. motor vehicle tariffs, and also agreed to conduct bilateral, parallel negotiations on a range of issues of concern to the United States in the automotive sector, including to address non-tariff measures. We view these negotiations as a key opportunity to level the playing field for US. companies, which continue to face a wide range of barriers in this sector. The outcomes of these bilateral negotiations on motor vehicles will be incorporated as commitments in our final bilateral market access package in the TPP Agreement and subject to dispute settlement. Furthermore, we have agreed to bilateral, parallel negotiations with Japan on other non-tariff measures, including in the insurance sector, as an additional avenue for the United States to address a range of additional sector specific and cross-cutting issues. We will consult rigorously and extensively with the Congress on the elements of these bilateral, parallel negotiations as we proceed.

 

We also will continue to consult rigorously and extensively with Congress on all elements of the TPP negotiations as they proceed. As we have done thus far, we will work with Congress as we use the TPP Agreement to promote new technologies and emerging economic sectors, create new opportunities for US. exporters, including small- and medium-sized businesses, in the region, and help US. firms participate in production and supply chains in order to encourage investment and production in the United States. In addition, we will continue to consult closely with Congress on elements related to environmental protection and conservation, transparency, workers’ rights and protections, and development.

We value the partnership we have established with Congress on the TPP negotiations and look forward to maintaining it as we discuss U.S. objectives and carry out negotiations to conclude this important new agreement.

Sincerely,

Ambassador Dem'etrios Marantis Acting United States Trade Representative

2013年4月25日 (木)

オバマの議会通知はまだなのだろうか

TPPへの交渉参加に関する日米の事前協議が合意に至ったのは4月12日だ。
マスコミが「とにかくバスに飛び乗らないと間に合わない」とばかりに強調していた大統領から議会に対する90日ルールに倣った通知はまだなされないのだろうか。
USTRのホームページには日本時間の4月24日午後8時現在、大統領から議会への通知がなされたとの記述はない。


日米両国のプレスリリースの内容が食い違っていることが指摘されている。
政府は、米国のプレスリリースに文句を言う筋合いではないとの立場らしい。


改めて復習すると、2月23日に出された日米首脳会談における日米の共同声明は、政治的宣言であり、法的なものではない。
これから一緒にやろうよという政治的アピール以上の意味はないと見てよいだろう。
オバマはTPPに関する権限を全く有していないのだから、「TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではないことを確認する。」との部分は、日本の政治宣言として有効であることに疑問の余地はないが、アメリカの声明としては政治宣言としてすら、疑問符が付く。
いずれにしろ、法的なものではないので、この共同声明くらいは、オバマの言動にも政治的な意味があると見てもよい。
その証拠に、日本政府やマスコミは「聖域なき関税撤廃ではないことが確認された」として一気にTPP交渉参加への世論を形成しようとした。
政治的効果はあった訳だ。


4月12日、アメリカとの事前協議が合意に至ったとして、日本の駐米大使と米国通商代表代行によって往復書簡が交わされた。
同日付でプレスリリースされた通商代表代行の声明(報告)は、往復書簡よりはるかに具体的な項目に踏み込んでいる。


さて、これらの内、法的に意味のある文書はどれかだが、通常の考え方では合意を構成するのは、この場合、往復書簡だ。
国家間の合意の方法はいろいろあり、往復書簡による方式もあり得る。
通商代表代行の声明は、一応、事実関係の報告にしか過ぎず、法的意味はないだろう。


これを踏まえて考えるが、まず、事前協議の合意が成立したのか否かである。
どうもマチベンには、日本の大使からの書簡は、日本政府を代表する権限ある者によってなされたので、法的効力があるが、オバマはTPPの締結権限がなく、従って交渉権限も有していないので、アメリカ政府にはTPPに関する権限がなく、通商代表代行の書簡は、法的効力がないように考えられる。
したがって、日本は、事前協議において、発した書簡に拘束されるが、米国は、無権限の通商代表代行が発した書簡には拘束されない法的構造にあるように見える。
つまり事前協議の「合意」とは言うが、厳密には法的意味での合意は成立しておらず、日本だけが法的言質を取られる『片面的合意』であるということだ。
これが第1点である。


第2点。通商代表代行の声明(報告文書)は、事実行為にとどまるから、法的意味がないのかという問題である。
ここが微妙なところである。
アメリカ国内におけるプレスリリースは、アメリカ国内において、事前協議の内容が、そうしたものであったという認識を定着させ既成事実化する作用がある。
マスコミが90日ルールとして持ち出す大統領が議会に対して出す通知には「大統領の意図」や「交渉のための米国の特別な目標」を記載することになっている。
プレスリリースで既成事実化された内容は、当然、大統領の議会への通知に反映されるはずだ。


もともと大統領に通商権限を授権する貿易促進権限法が有効であった当時は、通知をした上で、大統領(政府)と議会の間で協議を重ねることを前提にしていた。
この議会との協議のベースになるのが、大統領の通知文書である。つまり、通商代表代行の声明は、事実行為であり、それ自体、法的性格がないことは明らかである。しかし、TPPに関する権限を独占する米国議会との間では、自ずから影響を持つということだ。
もし、通商代表代行の声明に誤りがあるとすれば、大統領の通知に反映し、大統領とTPP本丸である議会との協議に影響を与える。
したがって、通商代表代行の声明(報告)内容に誤りがあれば、後々取り返しがつかないことになりかねない。
だから、日本政府は、相手国の声明だからと言って、放置してよい訳は絶対にない。
食い違いがあれば、指摘しなければならない。
それが当然の交渉態度だ。
放置しているということは、これを前提にしてアメリカ国内手続が進むということを了解したことを意味する。

万が一にも誤りがあるのを放置するのであれば、強い交渉どころではないだろう。
そんな卑屈な態度だから、日本はアメリカにパッシングされるのだ。


さて、2002年超党派大統領貿易促進権限法2104条(a)(2)によれば、通知の提出の前後に大統領は、「上院財政委員会と下院歳入委員会、その他大統領が適当と判断する上下両院の委員会、および第2107条に基づき召集される議会監視グループ、と交渉に関する協議を行うこと」とされている。


現在、法律は失効している。
そして、交渉参加に関する事前協議の『片面的合意』が成立してから、10日以上が経つ。
しかし、通知がなされたという痕跡はない。
無権代理人であるオバマは、通知提出前に議会との協議を綿密にしようとしているのではないかと、疑いたくなる。
それとも、この程度の期間は、当然必要な程度に通知するための前提作業自体がややこしいのだろうか。2014条の条文を読むと、そうらしくも思える。


前者だとすると、議会がまだ貢ぎ物が足りないとして、オバマにねじを巻いている可能性がある。
入場料が足りないから、もう一度、事前協議をすると言われる可能性がある。


後者だとすると、7月参加と喧伝して急かせた、政府やマスコミは一体、何を考えていたのだろう。
ただ、国民的議論が起きる前に、交渉参加を既成事実にするためだけに急いだように思えてならない。


どちらにしろ、これほどにも情けない指導者を持った国は、世界でも稀ではないかと思う。
敢えて騙され続けている国民にも当然、責任はある。
しかし、公約を破った上、国民に対する裏切りに裏切りを重ねる安倍政権は、安倍売国政権として歴史に残るほどに、ひどいと言わざるを得ない。


追加の貢ぎ物を要求されれば、いそいそと貢ぐであろう。
米国議会も、安倍政権をそう評価しているに違いない。
目が離せない日が続きそうだ。

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2013年4月24日 (水)

マチベンがTPPに反対する訳   『弱き者は死ね』のグローバル経済の世界観

マチベンがTPPに反対するのは、国境を超えた資本の移動が自由になればなるほど、金融所得層が所得を吸い上げ、中間層が薄くなるという実感を持っているからだ。
何より、贅沢品である弁護士は、中間層に依存している。中間層の減少は、マチベンにとって、打撃的な影響をもたらす。
マチベンだけではないだろう。大方の弁護士もそうだし、大方の産業もそうに違いない。


ユニクロが全世界の従業員の賃金体系を統一することを目指すことが話題を呼んでいる。
朝日新聞(4月23日付)は「限界日本」でこの問題を一面で採り上げた上、9面で大きく柳井正社長のインタビュー記事を掲載した。
ここにずばり、本音が書いてある。


離職率が高いのをどう考えているかという質問に対して、柳井社長はこう応えている。


「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値が付けられないと低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない


年収70万円の弁護士が2割を超える時代だ。
年収100万円もあればいいではないか、
という訳にはいかない。
中間層がなくなれば、マチベン事務所の経営は絶対に立ち行かない。


柳井社長は、「付加価値を付けられなかった人が退職する。場合によってはうつになったりすると」との質問に

「そう言うことだと思う。日本人にとっては厳しいかも知れないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」

グローバル経済というのは『Grow or Die』(成長か、さもなければ死か)。変わらなければ死ぬ、と社員にもいっている」

「売上は増やせ、その一方で残業はするな、では生身の人間は壊れませんか」との質問には、

押しつぶされたという人もいると思うが、将来、結婚して家庭をもつ、人より良い生活がしたいのなら、賃金が上がらないとできない。…頑張らないと


TPPは、資本の国家間移動の障壁を取り除き、資本の移動を最大限に自由化しようとする新たな試みだ。
今や、超国家主体となった多国籍企業は、資本に関わるルールがグローバルに統一化されることを求めている。それが国境を超えて行き交う資本にとって最適の状態に他ならないからだ。
いちいちそれぞれの国家でルールが異なりこれを調査しなければならないのは、資本にとって非効率と言うほかない。
ISD条項が最終的に目指すのは、ノーリスクで確実なリターンを得る地球規模の環境整備だ。


柳井インタビューは続く。


世界中の企業が最適地企画、最適地生産、最適地販売に移っている。…日本の電機の一番の失敗は日本に工場を作ったことだ。安くて若い圧倒的な労働力が中国などにある。関税も参入障害になるほどの高率ではないから、世界中にもっていける」


資本は瞬時に国境を越えることができる。
しかし、人間は自在に国家間を行き来はできない。
人間の生活圏は、資本に合わせて自由にはできないと考えていたところに、柳井社長のインタビュー記事である。
この人は、資本に合わせて人間を最適化しようとしている。


グローバル経済の本質がここにある。
人がグローバル資本にすみずみまで、支配される、究極の資本主義の姿だ。


グローバルになることで、世界全体の幸福が増すのであれば、それにも一理あろう。
しかし、グローバル経済が示すのは、全世界の国民が、資本に最適な生活を強いられ、国内格差は拡大するという事実だ。格差の拡大は社会的な不安をもたらす。
国民の大半は低所得で過密労働を強いられるようになり、不幸な人が増えていく。

働くことは、本来、それ自体が喜びとされるべきことではないだろうか。
しかし、グローバル規模に利益追求する資本は、決してそれを許さない。
柳井社長が言うとおり、うつになっても競争しろ、頑張れ、向上しろという。
うつの経験者であるマチベンに言わせれば、それは弱者は死ねということに他ならない。


マチベンがTPP反対にするのは、自分の台所事情のためだけではない。
TPP反対を通じて、「全世界の国民が恐怖と欠乏から免れ平和の内に生存する権利を有する」(日本国憲法前文)ことを確認しようとしているのである。

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2013年4月16日 (火)

【拡散希望】逃れられない日米FTA 事前協議合意の露骨な含意

TPP事前協議合意について、メディアは、真実の半分を伝え、半分を覆い隠している。
以下、山田正彦氏のブログを参照。
事前協議の往復書簡全文を掲載した上、一般に報じられていないUSTRの報告書が翻訳されているのが有益である。


メディアの報道では、早々と自動車などいくつかの分野について、貢ぎ物をし、非関税障壁に関する二国間協議に入るとの合意をしたと報じられている。


この二国間協議は、法的なものである。

この目的のため,両国政府は,TPP交渉と並行して,保険,透明性/貿易円滑化,投資,知的財産権,規格・基準,政府調達,競争政策,急送便及び衛生植物検疫措置の分野における複数の鍵となる非関税措置に取り組むことを決定しました。これらの非関税措置に関する交渉は,日本がTPP交渉に参加した時点で開始されます。両国政府は,これらの非関税措置については,両国間でのTPP交渉の妥結までに取り組むことを確認するとともに,これらの非関税措置について達成される成果が,具体的かつ意味のあるものとなること,また,これらの成果が,法的拘束力を有する協定,書簡の交換,新たな又は改正された法令その他相互に合意する手段を通じて,両国についてTPP協定が発効する時点で実施されることを確認します。

アメリカは、これまでの対日要求によって、政治レベルで日本の構造改革を図ってきたが、TPP交渉への参加を日本に対して認めるのをエサに、法的な拘束力のある協定や法令の改正によって非関税障壁の撤廃を図ることに合意したということだ。
これは、典型的には日米FTAのことに他ならない。
この交渉は「日本がTPP交渉に参加した時点で開始され」「両国間でのTPP交渉の妥結までに取り組ま」れ、「両国についてTPP協定が発効する時点で実施されることを確認」するとされている。
TPPと一括して、日米FTAも締結、批准されるという約束になっている。


マチベンは、TPPは、場合によっては、アメリカが求めるレベルに達しない可能性があると思っていた。とくにオーストラリア、ニュージーランドとの間で、米国が保護したいセンスティブな農産品の関税や、ISD条項の締結に関して意見の対立が厳しいため、場合によっては、TPPの決裂もあり得ると期待していた。


しかし、そうした期待は、ついえたと言ってよいだろう。
アメリカとしては、TPPでは、各国の思惑に配慮して、中途半端なものでも合意するかも知れない。
しかし、属国である日本に対して、それを許すとは到底、考えられない。
日本とは並行して法的拘束力のある二国間協議を進めるということは、TPPと日米FTAの間で基準や手続の相違が生まれるのは当然というのがアメリカの立場を示している。
属国にはより厳しい基準をという、ダブルスタンダードである。

アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。 (USTR報告書)

この合意は、TPPが締結、批准されることを前提にしているように見える。
TPPが決裂した場合は、どうか。
日本の交渉態度の想像を絶する弱腰からすれば、TPPが決裂する前に、日米FTAは、とっくに合意できる水準になっているだろう。
TPPが決裂したからと言って、日本がこの拘束から逃れることは実際上、不可能だろう。


米国議会は、日本のTPP参加表明まで大統領に対する通商交渉の授権法を失効させたままでいた。
日本が参加表明した途端に、授権法に向けた動きが出てきた。
最初からアメリカの狙いが日本だったことは明らかだ。


米国の狙いは、あくまでも世界3位のGDPを有する日本との間で、アメリカの求める自由貿易と保護主義を同時に満たすFTAなのだ。

 

「アジアの活力を取り込む」など、最初から、ウソだったことは明らかだ。


米国USTRの報告書の山田正彦事務所の仮訳を以下に張り付ける。
アンダーラインや強調部分に注意してもらいたい。


・関税撤廃は、TPPでは、おそらく10年を目処にしている筈だ。
USTR報告書では、日米間に限っては、自動車関税については、10年の猶予期間のさらに後に段階的に撤廃するという内容で合意したとされている。


・自動車安全基準の認証手続に関する例外台数の倍増、日本郵政に関連するガン保険や医療保険の不認可は、アメリカが求めるまでもなく、一方的に日本政府が通知してきたという。


・非関税障壁に関するファクトシートも極めて恐ろしい(末尾USTRの2つめのリンクがファクトシートである)。
たとえば、投資に関する部分だけ意訳すると、合併・買収を促進するために、真に独立した社外取締役の役割を強化するとされている。
西武の敵対的買収に対して湧き上がったような地方路線の存続や球団の保有等という企業の社会的な役割を云々するのは、投資家の利益に反する。投資家の利益を守るために「真に独立した取締役(株主代表)」の役割を強化しろというのだ。


政府の審議会などの機関に、外国投資家(stake holder)を入れることも明記されている。


こうした「非関税障壁の撤廃」が日米FTAの内容になるのだ。


なお、最後に付け加えれば、事前協議往復書簡で合意された「法の支配」が「アメリカ法の支配」であることは、2002年超党派大統領
貿易促進権限法から明らかである。

結局、TPP交渉事前協議とは、アメリカにとっては、日米FTAへの約束を取り付けるための場であったのである。

日本の官僚を中心としてそれに蝟集する政治家や財界を初めとする利益集団は、それを知っていて、TPP交渉へ前のめりになって、率先して日本を売り払おうとしているのだ。

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USTR 2013.4.12
TPPへ向けて:日本との協議事項報告 <仮訳>

アメリカ政府はTPPに参加したいという日本との公式二国間協議を2012年2月に開始しました。これは日本のTPP参加国との協議を始めたいという2011年11月の表明にもとづくものです
日本との協議は、自動車や保険セクターおよび他の非関税障壁に関する二国間の幅広い関心事をカバーし、TPPが求める高い基準を日本が満たす用意があるかどうかという点に関する議論も含まれています。
今日、アメリカ政府は日本との間に、強固な実施行動のパッケージおよび諸合意が成立したこと、そしてアメリカ政府が一連の協議を成功裏に完結したことを報告申し上げます。

自動車
アメリカ政府は、自動車部門に関する深刻かつ積年の関心事を明確にしました。日本政府はアメリカとの協議において、日本車の輸入関税はTPP交渉の他のいかなる製品に猶予された最長期間よりもさらに遅い時期において段階的に廃止されることに合意した。しかも、この段階的廃止は猶予期間が終了した後にのみ実行されることも日本政府は合意した。さらに、これらの措置は米韓FTAで韓国に認められた関税廃止措置よりもはるかに遅れることも日本政府は合意した。

4月12日に日本政府は、簡易許可手続き(PHP)すなわち日本に輸出される米国車に対してより簡単で時間のかからない認証方法での輸入台数を二倍以上にすることを一方的に決定して通告してきました。最近の例でいえば、車種ごとに年2000台まで認められている簡易輸入手続きを、今度は車種ごとに年5000台までアメリカ自動車メーカーは日本に輸出する際には認められることになります。

アメリカ政府と日本政府は日本の自動車産業分野に存在する広範な非関税障壁(NTM)を、TPP交渉と並行して行われる二国間協議の俎上に載せることを合意しました。そのテーマの中には諸規制の透明性、諸基準、証明書、省エネ・新技術車そして流通などの問題が含まれる。さらに、特定車両に対するセーフガード条項を協議し、係争事例の法的救済として関税再課税(snapback tariffs)などのメカニズムも協議することを日米政府は合意した。協議でどれだけの範囲のイシューを協議するかは添付されたTOR(内閣官房資料3)に書かれている。そしてその協議の結果はTPP交渉におけるアメリカと日本の二国間における最終二国間市場アクセス包括協定における強制的約束として含まれるものである。

保険
近年、アメリカ政府はアメリカの保険会社が日本郵政の保険との関係において、日本の保険市場で平等な基準で取り扱われていないことを強調してきた。今回の協議において、TPP協議へ向けて平行して行われる交渉と同時に、このTPP交渉における平等な取扱いの問題を取り上げることに合意した。さらに、日本政府は、4月12日に一方的に以下のことを通告してきた。その内容は、日本郵政の保険に関しては、民間の保険会社に日本郵政と平等な競争条件が確保され、また日本郵政の保険が適切なビジネス経営(非公営)の下で運営されていると日本政府が決定するまでは、いかなる新規のあるいは修正されたがん保険及び単独の医療保険を許可しない、ということである。

非関税障壁(NTM)
アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関してはfact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されてい

日本は高い基準での協定受け入れを表明
我々二国間の協議を通してアメリカ政府は、日本がTPP交渉に参加したいなら、現在の参加国である11か国によってすでに交渉された高い基準での協定を受け入れを保証せよと強く強調してきた。それに対し、また2月22日の共同声明に記載されているとおり、日本政府は、すべての産品を交渉のテーブルに乗せ、そのうえで2011年11月12日にTPP参加国によって表明されたTPP協約に明記された包括的で高い基準の協定を達成するために、交渉に参加することを言明した。

強固な関係の成長
もし日本がTPP交渉に参加するなら、その参加はアメリカの最大の貿易パートナーである国の参加であり、TPP協定の経済力を高める。日本は現在、アメリカの第4位の貿易パートナーである。2012年にアメリカは700億ドルの産品を日本に輸出し、サービス分野は2011年に440億ドルに達した。TPPに日本が参加することは、アジア太平洋地域FTA(FTAAP)への道筋を進めると同時に、競争力のあるアメリカで生産された製品とサービスに対する日本市場のさらなる開放を意味する。そのことは同時にアメリカ国内の雇用を支えるのだ。TPPに日本が参加したことにより、TPP参加国全体では世界のGDPの40%近く、そして世界貿易の三分の一を占めることになるのだ。    

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関連URL

USTR

http://www.ustr.gov/sites/default/files/04132013 Japan OVERVIEW factsheet FINAL_1.pdf

http://www.ustr.gov/sites/default/files/04132013 Japan NON-TARIFF MEASURES factsheet FINAL.pdf

外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/kyogi_2013_04_01.pdf

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/kyogi_2013_04_03.pdf

2013年4月15日 (月)

ISD条項の罠13 間接収用規定は憲法29条に違反する

引き続き、ISD条項の判断基準(実体法)の一つである「間接収用」の検討である。


日本国憲法には「収用」はあるが、「間接収用」はない。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


29条3項は、直接的な収用を定めている。


財産権の名義自体が、政府や自治体に移転する場合の補償である。
これは定説である。


憲法29条3項に間接収用が含まれるとすると、2項で財産権の内容を「公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」とする規定との関係を整合的に説明することができなくなる。
「間接収用」と呼ばれるものは日本国憲法29条2項の場合に他ならない。
そして29条2項は、補償については、何ら定めていない。


つまり、日本国憲法上は、法律が、財産権に対する規制を従来より強化したからと言っても、そのこと自体で、補償義務は生じない。
そもそも財産権自体が、公共の福祉に適合するように法律によって定められるものだから、原則的に政策的制約は許されるのだ。
財産権には、内在的制約があるという言い方もされるほどに、政策的制約が許されるのが日本国憲法下における財産権の考え方だ。したがって、日本国憲法の下では、「間接収用」は補償の原因にならない。


日本国憲法の下で、財産権に対する規制が、金銭的な対価の支払いを求められる場面は、国家賠償という形式を取る。
賠償は、補償とは別のものだ。
補償は、「収用」に該当すれば、政府や自治体の故意や過失を問わずになされるが、賠償は、政府等の行為が違法である上、政府等の公務員に過失が認められて初めて認められる。
大前提として、まず、その法律が違法でなければならない。


法律は国権の最高機関たる国会が制定するものであるから、憲法に違反すると認められて初めて、違法になる。
しかも、違法になるだけでは、その法律の規定が無効になるだけで、直ちに補償義務は生じない。
その法律を制定するについて、国会(議員)に過失があることが認められて、初めて賠償が認められる。


最高裁の判例では、財産権を侵害する法律の規定が憲法に違反すると判断された例はあるが、財産権を規制する法律が憲法に違反することを理由に、国家賠償が認められたケースはない。


もう一点、問題がある。
日本国憲法の解釈では、他の基本的人権に比べて、財産権については、政策的な規制が広く認められると考えられているという点だ。
とくに民主主義を支える集会、結社、言論、出版その他の表現の自由には手篤い保護を与えるべきだと考えられている一方、財産権については政策的な合理性があり、規制手段とのバランスが取れていれば、規制することは憲法に違反しないと考えられている。
とくに法律による場合は、①公共の福祉を目的としないことが明らかであるか、②明らかにバランスを失していると認められる場合に初めて憲法違反の問題が生じるとするのが最高裁の立場でもある。


財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、右のとおり立法府が社会全体の利益を図るために加える規制により制約を受けるものであるが、この規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及 び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。し たがつて、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものであるが、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものであるから、立法の規制目的が前示のような社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが 明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが 明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違背するものとして、その効力を 否定することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)
以上最高裁昭和62年4月22日大法廷判決


したがって、財産権を規制する法律が憲法違反となる場合は非常に限られている。
しかも、賠償の問題になるのは、基本的人権の侵害が明白な場合で、かつ国会に過失が認められる場合に限られるのであるから、「間接収用」に関して、国家に何らかの金銭の支払義務が発生する場合は、ほぼ皆無であると考えてもよい。


違憲な立法による賠償が限定されるのも、国会が国権の最高機関とされることから、一応の妥当性があるであろう。
国民主権の原理から、国民の直接の選挙によって選ばれる議員によって構成される国会の権能を、裁判所といえども、一応、尊重するという建前で、日本国憲法は運用されてきた。


ところが国際投資家民間法廷では、そのような国会に対する謙抑性は働く余地がなくなる。
「間接収用」、すなわち外国投資家の期待利益を損なう場合には、直ちに補償する必要が生じるというのだ。


法制度を同じくする韓国の法務省も最高裁も、この点を深刻に悩んだ。
法律家としては、全く矛盾する法体系が、同時に国内に存在するという問題は深刻に受け止めざるを得ない筈である。
日本の法務省や内閣法制局は、この点をどう考えているのだろうか。

この論点からは、外国投資家だけが規制による損失を補償されるのに、日本人や日本企業には補償されないのは、法の下の平等に違反するとする論点が直ちに提起されることになる。
これを憲法違反に当たらないとする議論があるが、憲法論としては、相当に苦しいように見える。


しかし、今しばらくISDすなわち国際投資家民間法廷における判断基準=実体法に関する議論を続ける。

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2013年4月14日 (日)

ISD条項の罠12 万能の間接収用法理

さて、韓国法務省が、最も具体的に検討した規定が「収用」に関する規定である。


「収用」とは、公の目的に用いるための政府や地方自治体による私有財産の強制的な取得を言う。
道路の拡張だとか、都市再開発だとか区画整理だとかで、「収用」という言葉を聞いたことはあると思う。
こうした場合、自治体等は、権利者に対してなにがしかの補償をして、権利を採り上げる。
日本国憲法では29条3項が、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と規定し、土地収用法や都市計画法、土地区画整理法など個別の法律が「収用」に関する具体的な手続や補償について定めている。


ところが、国際投資家私設法廷では、収用だけではなく、「間接収用」についても、補償をしなければならないことになっている。
この「間接収用」の概念が極めて厄介だと韓国法務省は悩んでしまったのだ。


「間接収用」とは、アメリカ判例法由来の国際投資家私設法廷独特の概念で、経産省によれば「所有権等の移動を伴わなくとも、裁量的な許認可の剥奪や生産上限の規定など、投資財産の利用やそこから得られる収益を阻害するような措置も収用に含まれる」と説明されている。
所有権の移転を伴わなくても、外国投資家の期待利益を阻害するような行為は、一応「間接収用」に当たる可能性が少なくともあるということになる。


したがって、政府(国会を含む)や自治体等が一定の政策により規制を実施する場合、「間接収用」に当たり、補償を要するものなのか、「間接収用」に当たらず、補償が不要なものなのかで、政策コストが全く異なることになる。
このため「間接収用」に当たるか否かの判断基準が決定的に重要になる。


韓国法務省によれば、「間接収用」に当たるか否かは、次の要件で判断されることになるとしている。


  1. 政府措置の経済的影響の程度
  2. 政府措置が明白で合理的な投資期待利益を侵害した程度
  3. 政府措置の性格等


教科書などを見ると、


  1. 政府の行為が不利な経済的効果を与えたとしても、そのことだけでは、間接収用にはならない
  2. 投資に基づく明確で合理的な期待を阻害した程度
  3. 当該行為の性質

を考慮するとされている。


困ったものである。
判断基準を見ると、ますます「間接収用」とは何かがわからなくなる仕掛けになっている


大統領に対して、本来議会の専権事項である通商協定の締結権を与える2002年超党派大統領貿易促進権限法を見ると、「米国の法理および慣行に一致する収用および収用に対する補償の基準の設定を求める」(2102条(b)(3)(D))とある。
要するに、アメリカ判例や慣行を参照しろということのようだ。


ところが、である。
マチベンが素朴に理解する限り、アメリカの最高裁判例というのは、容易に変転するもので、結局、米国法理というのは、そのときどきのアメリカの政治情勢によって、左右されている。
これも、アメリカ合衆国という国家が、不文法を基本とする国家であり、個別ケースことに裁判所が法を創造するに等しい権力を行使できるところにあると思われる。
先に国会等が制定した法律があって、その法律を解釈して、事案に適用するという、制定法の国の司法とは、また違った独自の作用を司法が果たしているのだ。
であるから、アメリカ判例を参考にしろと言われても、やはり、結局のところ何が「間接収用」に当たるのか、その時点において変化しているし、近い将来、また変化する可能性がある。
アメリカ国内だけにとどまるなら、それもいいが、他の国まで、これにしたがうようにというのは、極めて困ったことなのだ。
とくに英語圏でない民族にとっては、全く困りものである。


という訳で、韓国法務省も、「間接収用」概念には、甚だ困惑してしまった。
その結果、韓国法務省は、政府の実施するあらゆる規制が「間接収用」として外資の国際投資家私設法廷への提訴の対象となると結論づけざるを得なくなったのだ。
事情は日本も同じである。
あらゆる財産権に対する規制が、国際投資家私設法廷の提訴の対象となるのである


ISDを締結すれば、まず政府は、当該の規制を実施することが、外国投資家の期待利益を損ねないか検討する必要がある。
損ねるとすれば、提訴のリスクはどの程度あるのか、敗訴した場合の補償額はどの程度、用意する必要があるのか、いちいち考えなければ、政策決定ができない
国会や、内閣だけではない。
全ての自治体が独自に規制を実施する場合には、そのリスクとコストを計算する必要がある。
自治体が「間接収用」をしてしまった場合でも、外国投資家は、政府に対して補償を求めるのがISDの仕組みだ。
したがって、自治体も独自の規制を実施する場合には、いちいち政府のお伺いを立てて、事実上の許可を得ておく必要がある。


いやはや、アメリカ法とは「間接収用」とは、はなはだ困った代物である。
「間接収用」の問題は、これだけにとどまらない。
直接的に日本国憲法と矛盾するという問題もある。

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2013年4月13日 (土)

ISD条項の罠11 曖昧な実体法

米韓FTAの締結に当たって、韓国法務省は、米国とのISD条項の締結は、政府・地方政府・政府投資機関のあらゆる作為・不作為が国際投資紛争仲裁への提訴の対象となると結論づけた。


   特に、「間接収用」の概念は国際的定義が確立してない概念で租税、安保、公共秩序、保険等すべての政府(地方自治体および政府投資機関、司法府等を含む)の措置に対して提訴可能

 

    ※措置(actionまたはmeasure)は政府の法規定、制度、慣行、不作為、公務員の事実的行為等を含む広範囲な概念である

 


ISDは、規制政策に対する重大な萎縮効果をもたらすとして、いわば痛々しいほど真剣にISDの適用を回避し、あるいは適用範囲を縮小する途を探った。


韓国法務省の検討は結果的に無意味に終わったが、われわれがISD条項を検討する上で非常に有用である。


改めて、その翻訳版を以下に張り付けておく。
(なお、末尾の全米州立法者協議会の意見書は、英語を韓国語に翻訳した文章をさらに日本語に翻訳したので、極めて不自然なので、原文を参照してください)

韓国国会議員朴チュソン氏発行資料
投資家対国家紛争解決手続 国内法律機関等の検討


さて、今回から、しばらくISD条項に関する実体法を紹介する。
実体法というのは、ISDによる裁判の基準である。
どのような基準に基づいて、ISDの裁判がなされるのかという問題である。


ISDというのは、国際投資家民間法廷という手続をとることが強制されるという仕組みのことである。
これに対して、その民間法廷ではどのような法律で判断されるのかというのが実体法の問題である。


ISDを含む投資協定の代表的な「実体法」は大体相場が決まっている。


  • 内国民待遇
  • 最恵国待遇
  • 収用禁止と補償原則
  • 公正・衡平待遇義務
  • パフォーマンス(投資受け入れに伴う投資への義務づけ)要求の禁止
  • アンブレラ条項

ざっとこんな程度だ。
国際投資に伴い、相手国政府との間で生じる、複雑な利害関係をたった数箇条の規定だけで賄おうというのだから、極めて大胆である。
当然、政府(この場合は、国会や裁判所、地方自治体、独立行政法人、国立大学法人等々の政府投資機関を含む)側は、国民や地方住民の健康や生活を含む極めて多様な利益や人権、国土や都市のあり方、治安、環境、衛生、産業の保護、国民経済の維持、等々数え切れない様々な要素を踏まえて政策決定を行い、規制を実行する。
これほどの多様な利害と外国投資家の利益との調整をたった数箇条でまかなってしまおうとするのが、ISDなのだ。


ちなみに、民法の取引法に関連する分野だけでも700条を超える。
司法試験に合格するには、民法だけでも、少なくともその程度の条項を理解する程度に達しなければならない。
ついでに言えば、法務省は、この程度の条文数では、まだ透明性が足りないというのだ。このたびは、さらに詳細な条文を作って、条文数で言えば、おそらくざっと倍くらいにはなりそうな民法改正をしようといっている(マチベンは基本的に反対の立場)。


ISD裁判は複雑を極める外国投資家と国家規制の関係を、たった数箇条で全てを裁こうというのだから、どれほど無謀な裁判制度か理解してもらえるのではないかと思う。
条文数が少ないということは、法務省が民法の全面改正に当たって主張しているとおり、透明性に欠ける、つまり予測可能性が乏しいということを意味する。


予測可能性が乏しいことは、訴えられる側を必要以上に萎縮させる。
ISD裁判の原告は常に外国投資家である。
予測可能性が乏しいゆえに、外資は、政府のいかなる作為・不作為をも提訴の対象とできてしまう。
「間接収用」という概念をめぐって、韓国法務省が深刻に危惧したことの本質は、そこにある。


そして、政策決定の萎縮が早くも現実化したのが、韓国版エコカー支援政策の延期(実質上の撤回)である。
アメリカの自動車メーカーが韓国に輸出したければ、低燃費の性能のよい自動車を製造すればよいだけのことなのだから、差別的だと言われるのは完全に言いがかりとしか言えないだろう。
米韓FTA違反を言われる余地がない筈なのに、韓国政府は、エコカー支援制度を棚上げにしてしまった。
ISDによる損害賠償リスクを危惧したからに他ならない。


おおざっぱな規定で、何が違反になるのか意味不明というのは、訴える側にとっては、恰好の材料となる訳である。

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2013年4月 6日 (土)

TPP 『ルール作りに参加する』の大ウソ 締結した米韓FTAの書き換えをさせられた韓国

TPPのルールはアメリカ議会が決める。
大統領は、議会のお許しがなければ、通商協定を締結する権限すらない。
これまで、繰り返してきたとおりアメリカ合衆国憲法の帰結である。


2002年超党派貿易促進権限法は、2007年7月1日に失効した。
したがって、現在、オバマ大統領は、TPPの締結権限がない。
締結権限がないということは、交渉権限もないということだ。
オバマは無権代理人である。
TPPルール策定の本拠地は米議会であり、オバマは、米議会の操り人形である。


したがって、日本は、どんなに急ごうが、TPPのルール作りには参加できない。
交渉参加を表明するより、米議会でロビー活動でもした方がよほどマシである。
但し、日本国民には米議会選挙の投票権がないので、ロビー活動に応じてくれる議員が現れるのは期待薄である。


さて、米韓FTAは、2回締結されていることがわかった(というより、先ほど確認したというべきであるが)。
米韓FTAは、まだ貿易促進権限法が有効で、大統領に締結権限があった当時に交渉が行われている。
そして、大統領に締結権限がある最終日である2007年6月30日にめでたく調印された。
韓国法務部や韓国最高裁があれほど真剣に検討し、すったもんだ議論の挙げ句、ようやく締結されたのである。


マチベンの知る限り、裁判所で、和解調書ができ上がった後に、和解の内容を変えたいと言っても、裁判所は絶対に聞き入れない。
当たり前のことだが、正式な交渉の末の合意は、マチベンレベルでも極めてシビアなのである。


マチベンの和解ですら、その後に変更なんてあり得ないのであるから、国家間の合意に後出しなど、あるはずが、ない。


と思うのが素人の浅ましさである。
どうして、米韓FTAが2007年6月に締結されながら、2012年まで発効しなかったのかを確認したら、とんでもないことがわかった。


せっかく大統領が締結したFTAに議会の同意が得られなかった。
普通、代理人が相手方と同意した後、本人が突然、イヤだと言い出しても、相手方にそんなこと持ち出すのは恥ずかしくてできない。


ところが、大統領は違った。
“こないだ調印した米韓FTA、議会に文句言われたんだわ。
あのまんまではあかんげな。
ここ、直してちょ。”

 

と、締結された米韓FTAの書き換えを求めて韓国と交渉を始めたのである。
調印後、3年以上たった2010年12月3日のことである。
普通、こんなバカなことを言われれば、誰だって怒る。
調印後の後出しなど論外である。
ところが、韓国は、これを呑んだのである。
2011年2月10日、再度、米韓FTAは調印された。
そして、2011年10月12日、米議会は、不満たらたらではあるが、ようやく批准に応じた。


新たな協定は、自動車メーカーと労働者に新しい市場アクセスと公平な競争の場を保障する内容を反映したものだ。
USTRのホームページにはぬけぬけと書いてある。


韓国は、日本に先んじて国連事務総長を輩出し、日本単独開催が見込まれたサッカーワールドカップを共催に持ち込む交渉力ある国ではなかったかと、思うのだが、米議会にかかると赤子の手をひねるように思い通りにされてしまったのだ。


しかも、大統領に交渉権限や締結権限があってすら、頓着なしのこの扱いである。
TPPに関しては、大統領には交渉権限も締結権限もないのだから、TPP交渉なんてのは、米議会にとっては、ただのおままごと遊びである。


TPPのルール作りへの参加などあり得ない。
全ては米議会に決める。
加盟国はこれに従うしかないのだ。

米議会が批准した後に、TPPに参加するどうか、ゆっくり考えるのが最も賢明なことは火を見るより明らかである。


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なお、TPP交渉に参加したからと言って、TPPの内容がわかる訳ではない。
TPPは交渉担当者に厳格な守秘義務が課された秘密交渉である。
アメリカ国民すら内容は知らない。
参加国の国民に周知しておれば、当然、日本政府や日本国民も内容を知ることができる。
これは当たり前の理屈である。
が、マスコミを見ていると、交渉に参加すれば、国民にも内容が分かるような詐欺的な報道があとを絶たないので、念のため付け加える次第である。

2013年4月 2日 (火)

“純と愛” 純の独白全文書き起こし

他のサイトの要約では、不満だったので、改めて純のモノローグ全文を書き起こしてみた。
社会的なメッセージが込められていることがわかる。
マネーで人間を押し流すTPPという魔物を相手にしている僕の心情と重なる。
締結を止めるのも、批准を止めるのも、一度批准した条約を脱退するのもなおさらに困難だ。
だけど、これに抗する人々の連なりは確実に広がり、結びつきを深めている。
次の時代が2020年に来るのか、2030年に来るのか、それはわからない。
しかし、私たちは、そのときの時代の精神に『人間の復権』を求めざるを得ない。
そうした精神を信念と勇気を持って表明する人々の結びつきは、今、確実に形成され始めていることを感じる。


諦めなければ、希望はある。
希望を絶やすことは後代に対する裏切りである。

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どんなに風が吹いても、どんなに雨が降っても、
たとえ嵐や洪水になっても、どんなに不幸に襲われても、
苦しさに耐えて血反吐を吐き、はいつくばってでも生きていく。
どんなに寂しくても、不安でも、
どんなに人にバカにされても、自分を見失わず、
明日は晴れると信じ、勇気と情熱と希望を持ち続ける。


このホテルと、大切な仲間だけは、何があっても守ってみせる。
絶対に失ったりしない。
そのためにも、もっともっと賢くなりたい。
我慢強くなりたい。
母のように優しくなりたい、父のように純粋になりたい、
兄のように広い心を持ちたい、弟のように自由でいたい。
姉のようにたくましくなりたい。
おじいのように愛する人のために一生を捧げられるような人間になりたい。
強い者には決して屈せず、弱い者には、いつでも味方できる人間になりたい。


もう下を向かない。
自分のできることを一日一日やり続ける。
自分の家を守る。家族を守る。
自分の信じたことを伝える。
この世界から笑顔をがなくならないように命を捧げる。


この空や海に比べれば、あたしたち人間は本当にちっぽけな存在かもしれないけど、
でも、私たちは未来を変えることができる。
よりよい世界を作ることができる。

もう神様がいても頼らない。
奇跡を起こすのは、神様じゃなく、あたしたち、人間なんだから。 
たとえ、いとし君が、…この世で一番大切な人が、
一生目覚めなくても、あたしは死ぬまで町田純であり続ける。

と、決めた。

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