ありがたき『主権回復の日』 寛大なる征服者を言祝ぐ
公約違反が売りの自民党は、今年から4月28日を主権回復の日にするそうな。
今や、アメリカ大統領の忠良なる売国の僕となった安倍首相が、主権回復を謳うのは、まるきりブラックジョークだ。
サンフランシスコ講和条約には、「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」(11条)とある。この条件に従って日本は『主権を回復』したのであるから、A級戦犯が合祀される靖国神社に大挙して参拝しながら、『主権の回復』を祝うという精神構造が知れない。この人たちには論理などというものは通用しないに違いない。
またこの日は、『主権を回復』するとともに、アメリカに対して、『望む兵力を、望む場所に、望む期間だけ、駐留させる権利』を発効させた記念日でもある。首都圏の制空権を今に至るまで維持させ、現在では、米軍基地の移設どころか、ハワイ州では拒否されたオスプレイの低空飛行訓練に本土を献上する態であるから『主権回復の日』というのは、『主権があると錯覚させてもらった日』を回顧する日ということなのであろうか。
まあ、それにしても、アメリカ様には感謝しなければならないとマチベンも回顧する。
何しろ、ドイツは、第二次世界大戦前の領土を大幅に連合国に割譲された上、東西に分断されたのに、日本が奪われたのはせいぜい北方領土にとどまった。アメリカ様のお陰である。
戦争賠償は、日本が二度と立ち直れないほどに深刻なものになる可能性があったにも拘わらず、ありがたくもサンフランシスコ講和条約に「日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことが承認される。しかし、また、存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害又は苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには現在充分でないことが承認される 」(14条(a))とお慈悲をかけてもらった。
『主権回復の日』以前に、金日成が戦争をしかけてくれて、アメリカが朝鮮戦争に全力を傾注してくれたお陰で、朝鮮特需に潤い、1955年には、すでに戦前の生産水準を回復するというめざましい恩恵を受けた。
かたや日本が植民地支配した朝鮮半島では数百万人が戦争の犠牲になったというのに、日本国民は、後方にあって経済成長の恩恵に賜った。涙が出るほどありがたいことである。
これも全てアメリカ様のお陰である。
サンフランシスコ条約は、戦争賠償にも枠をはめた。すなわち、賠償を希望する連合国に対して「生産、…その他の作業における日本人の役務」によるものとされ(14条(a)1項)、日本は、現金賠償を免れ、戦争賠償を産業育成の糧にするという恩恵に浴した。
日本は、この条項に基づいて、サンフランシスコ講和条約に加盟したアジア各国と賠償を協議していくが、物品・役務賠償の原則のお陰で、アジア各国で、ダムや製鉄工場等のインフラを日本企業が、整備していくことになった。要するに、政府が発注して、大企業が受注するという海外での公共事業の展開をもって賠償とすることができた。海外公共事業を受注した企業の多くは、戦争時、国民を強制労働に動員して潤った企業だ。強制労働企業にとっては、巨額の収入になるわ、アジア進出の拠点にはなるわで笑いが止まらないところである。これも全て、アメリカ様が、サンフランシスコ講和条約という枠組みを与えてくださったからに他ならない。
サンフランシスコ講和条約に参加できなかった韓国とは1965年に国交を回復し、日本は韓国に対して有償無償5億ドルの経済協力を約束したが、これも戦時強制労働企業の新日鐵などが、浦項製鉄所を初めとする公共事業で潤うことになった。これもアメリカ様が、サンフランシスコ条約で「物品・役務賠償」という枠組みを作ってくださったお陰である。
サンフランシスコ条約に加盟しなかった中国とは1972年国交を正常化し、日本は戦争賠償を免れる。しかし実際は、国交正常化以降、中国国内で多額のODA事業が展開され、笑いが止まらなかったのは、やはり戦時強制労働企業である。これもアメリカ様がサンフランシスコ講和条約によって枠組みを作ってくださったお陰である(最高裁が2007年4月27日にそうおっしゃった)。
かくして、戦前からある大企業のほとんどは、アメリカ様のお陰で生きながらえ、でかい顔ができているのである。
アメリカ様は、今や双子の赤字で衰退しつつある。
にも拘わらず、ナンバーワンのプライドや開拓者精神は捨てられない。
しかも、『テロとの戦争』などというバカげたことをしでかしたために、衰退の速度を一気に速めてしまった。
この際、アメリカ様のお陰で肥え太った忠犬ポチをそのまま放っておくのは如何にもバカげたことだ。
日本の資源は、まるごと引き渡してもらわなければ割に合わないと考えるのも又当然である。
まこと、『半占領開始の日』を『主権回復の日』などと錯覚してくれているのは、アメリカ様にとっては、好都合以外の何物でもない。
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