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2013年4月15日 (月)

ISD条項の罠13 間接収用規定は憲法29条に違反する

引き続き、ISD条項の判断基準(実体法)の一つである「間接収用」の検討である。


日本国憲法には「収用」はあるが、「間接収用」はない。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


29条3項は、直接的な収用を定めている。


財産権の名義自体が、政府や自治体に移転する場合の補償である。
これは定説である。


憲法29条3項に間接収用が含まれるとすると、2項で財産権の内容を「公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」とする規定との関係を整合的に説明することができなくなる。
「間接収用」と呼ばれるものは日本国憲法29条2項の場合に他ならない。
そして29条2項は、補償については、何ら定めていない。


つまり、日本国憲法上は、法律が、財産権に対する規制を従来より強化したからと言っても、そのこと自体で、補償義務は生じない。
そもそも財産権自体が、公共の福祉に適合するように法律によって定められるものだから、原則的に政策的制約は許されるのだ。
財産権には、内在的制約があるという言い方もされるほどに、政策的制約が許されるのが日本国憲法下における財産権の考え方だ。したがって、日本国憲法の下では、「間接収用」は補償の原因にならない。


日本国憲法の下で、財産権に対する規制が、金銭的な対価の支払いを求められる場面は、国家賠償という形式を取る。
賠償は、補償とは別のものだ。
補償は、「収用」に該当すれば、政府や自治体の故意や過失を問わずになされるが、賠償は、政府等の行為が違法である上、政府等の公務員に過失が認められて初めて認められる。
大前提として、まず、その法律が違法でなければならない。


法律は国権の最高機関たる国会が制定するものであるから、憲法に違反すると認められて初めて、違法になる。
しかも、違法になるだけでは、その法律の規定が無効になるだけで、直ちに補償義務は生じない。
その法律を制定するについて、国会(議員)に過失があることが認められて、初めて賠償が認められる。


最高裁の判例では、財産権を侵害する法律の規定が憲法に違反すると判断された例はあるが、財産権を規制する法律が憲法に違反することを理由に、国家賠償が認められたケースはない。


もう一点、問題がある。
日本国憲法の解釈では、他の基本的人権に比べて、財産権については、政策的な規制が広く認められると考えられているという点だ。
とくに民主主義を支える集会、結社、言論、出版その他の表現の自由には手篤い保護を与えるべきだと考えられている一方、財産権については政策的な合理性があり、規制手段とのバランスが取れていれば、規制することは憲法に違反しないと考えられている。
とくに法律による場合は、①公共の福祉を目的としないことが明らかであるか、②明らかにバランスを失していると認められる場合に初めて憲法違反の問題が生じるとするのが最高裁の立場でもある。


財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、右のとおり立法府が社会全体の利益を図るために加える規制により制約を受けるものであるが、この規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及 び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。し たがつて、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものであるが、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものであるから、立法の規制目的が前示のような社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが 明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが 明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違背するものとして、その効力を 否定することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)
以上最高裁昭和62年4月22日大法廷判決


したがって、財産権を規制する法律が憲法違反となる場合は非常に限られている。
しかも、賠償の問題になるのは、基本的人権の侵害が明白な場合で、かつ国会に過失が認められる場合に限られるのであるから、「間接収用」に関して、国家に何らかの金銭の支払義務が発生する場合は、ほぼ皆無であると考えてもよい。


違憲な立法による賠償が限定されるのも、国会が国権の最高機関とされることから、一応の妥当性があるであろう。
国民主権の原理から、国民の直接の選挙によって選ばれる議員によって構成される国会の権能を、裁判所といえども、一応、尊重するという建前で、日本国憲法は運用されてきた。


ところが国際投資家民間法廷では、そのような国会に対する謙抑性は働く余地がなくなる。
「間接収用」、すなわち外国投資家の期待利益を損なう場合には、直ちに補償する必要が生じるというのだ。


法制度を同じくする韓国の法務省も最高裁も、この点を深刻に悩んだ。
法律家としては、全く矛盾する法体系が、同時に国内に存在するという問題は深刻に受け止めざるを得ない筈である。
日本の法務省や内閣法制局は、この点をどう考えているのだろうか。

この論点からは、外国投資家だけが規制による損失を補償されるのに、日本人や日本企業には補償されないのは、法の下の平等に違反するとする論点が直ちに提起されることになる。
これを憲法違反に当たらないとする議論があるが、憲法論としては、相当に苦しいように見える。


しかし、今しばらくISDすなわち国際投資家民間法廷における判断基準=実体法に関する議論を続ける。

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