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2013年4月14日 (日)

ISD条項の罠12 万能の間接収用法理

さて、韓国法務省が、最も具体的に検討した規定が「収用」に関する規定である。


「収用」とは、公の目的に用いるための政府や地方自治体による私有財産の強制的な取得を言う。
道路の拡張だとか、都市再開発だとか区画整理だとかで、「収用」という言葉を聞いたことはあると思う。
こうした場合、自治体等は、権利者に対してなにがしかの補償をして、権利を採り上げる。
日本国憲法では29条3項が、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と規定し、土地収用法や都市計画法、土地区画整理法など個別の法律が「収用」に関する具体的な手続や補償について定めている。


ところが、国際投資家私設法廷では、収用だけではなく、「間接収用」についても、補償をしなければならないことになっている。
この「間接収用」の概念が極めて厄介だと韓国法務省は悩んでしまったのだ。


「間接収用」とは、アメリカ判例法由来の国際投資家私設法廷独特の概念で、経産省によれば「所有権等の移動を伴わなくとも、裁量的な許認可の剥奪や生産上限の規定など、投資財産の利用やそこから得られる収益を阻害するような措置も収用に含まれる」と説明されている。
所有権の移転を伴わなくても、外国投資家の期待利益を阻害するような行為は、一応「間接収用」に当たる可能性が少なくともあるということになる。


したがって、政府(国会を含む)や自治体等が一定の政策により規制を実施する場合、「間接収用」に当たり、補償を要するものなのか、「間接収用」に当たらず、補償が不要なものなのかで、政策コストが全く異なることになる。
このため「間接収用」に当たるか否かの判断基準が決定的に重要になる。


韓国法務省によれば、「間接収用」に当たるか否かは、次の要件で判断されることになるとしている。


  1. 政府措置の経済的影響の程度
  2. 政府措置が明白で合理的な投資期待利益を侵害した程度
  3. 政府措置の性格等


教科書などを見ると、


  1. 政府の行為が不利な経済的効果を与えたとしても、そのことだけでは、間接収用にはならない
  2. 投資に基づく明確で合理的な期待を阻害した程度
  3. 当該行為の性質

を考慮するとされている。


困ったものである。
判断基準を見ると、ますます「間接収用」とは何かがわからなくなる仕掛けになっている


大統領に対して、本来議会の専権事項である通商協定の締結権を与える2002年超党派大統領貿易促進権限法を見ると、「米国の法理および慣行に一致する収用および収用に対する補償の基準の設定を求める」(2102条(b)(3)(D))とある。
要するに、アメリカ判例や慣行を参照しろということのようだ。


ところが、である。
マチベンが素朴に理解する限り、アメリカの最高裁判例というのは、容易に変転するもので、結局、米国法理というのは、そのときどきのアメリカの政治情勢によって、左右されている。
これも、アメリカ合衆国という国家が、不文法を基本とする国家であり、個別ケースことに裁判所が法を創造するに等しい権力を行使できるところにあると思われる。
先に国会等が制定した法律があって、その法律を解釈して、事案に適用するという、制定法の国の司法とは、また違った独自の作用を司法が果たしているのだ。
であるから、アメリカ判例を参考にしろと言われても、やはり、結局のところ何が「間接収用」に当たるのか、その時点において変化しているし、近い将来、また変化する可能性がある。
アメリカ国内だけにとどまるなら、それもいいが、他の国まで、これにしたがうようにというのは、極めて困ったことなのだ。
とくに英語圏でない民族にとっては、全く困りものである。


という訳で、韓国法務省も、「間接収用」概念には、甚だ困惑してしまった。
その結果、韓国法務省は、政府の実施するあらゆる規制が「間接収用」として外資の国際投資家私設法廷への提訴の対象となると結論づけざるを得なくなったのだ。
事情は日本も同じである。
あらゆる財産権に対する規制が、国際投資家私設法廷の提訴の対象となるのである


ISDを締結すれば、まず政府は、当該の規制を実施することが、外国投資家の期待利益を損ねないか検討する必要がある。
損ねるとすれば、提訴のリスクはどの程度あるのか、敗訴した場合の補償額はどの程度、用意する必要があるのか、いちいち考えなければ、政策決定ができない
国会や、内閣だけではない。
全ての自治体が独自に規制を実施する場合には、そのリスクとコストを計算する必要がある。
自治体が「間接収用」をしてしまった場合でも、外国投資家は、政府に対して補償を求めるのがISDの仕組みだ。
したがって、自治体も独自の規制を実施する場合には、いちいち政府のお伺いを立てて、事実上の許可を得ておく必要がある。


いやはや、アメリカ法とは「間接収用」とは、はなはだ困った代物である。
「間接収用」の問題は、これだけにとどまらない。
直接的に日本国憲法と矛盾するという問題もある。

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