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2013年5月の26件の記事

2013年5月31日 (金)

【拡散希望】TPP/SPSルールの恐怖1から5 まとめ

SPSルールに関する基本的な考え方を示す部分は、比較的まとまった形となったので、ここで、あらためて全体を掲載する。
なお、その際、WTO加盟国数を訂正した他、余計な雑談的部分を少し削除し、表現を変えた部分がある。


結論から言えるのは、週刊新潮が示した懸念は、TPP及び並行日米2国間協議で法的な現実となっているいうことだ。
SPSルールを見れば、国民の健康や環境などの利益との関係で自由貿易をどこまで重要視するのか、その天秤のバランスが、実はWTO時代から狂っているというのが、僕の私見である。
さらにこれを徹底しようとするのがTPPである。


国際経済法の主流は、自由貿易こそが国民に福利をもたらすという前提で考えている。したがって、国民の利益と自由貿易の間に対立関係があること自体を認めないのではないだろうか。
一番わかりやすい例が、健康の問題であるので、とくにSPSルールを問題にしてみたが、これは一例である。


国家は好き嫌いはともかく、国民の保護のための様々な規制を行っている。
この規制を資本の利益を最大化するために、撤廃していこうとするのが、TPPの本質である。
その結果、国家の皮膜は破られ、国家はスケルトン化される。
スケルトン化し、資本が自由に行き来できる世界、これがグローバル資本の目指す世界のイメージだ。


しばしばこうした規制の解体は、「自由貿易」の名目で正当化されるが、ことは実はそれほど簡単に『自由貿易』では割り切れない。
知的財産権の強化はむしろ『自由貿易』阻害要因であるというべきだろう。しかし、先進国が途上国に対して優位に立つためにその強化を求めている。
知財の保護期間の延長などは、過去、先進国の資本が確立した優位を固定化しようとする要求に他ならない。



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【シリーズ】TPP/SPSルールの恐怖

 

第1回 前置き

週刊新潮5月23日号に「TPP交渉に深刻な懸念 中国産に気を取られるあなたの食卓に米国産『危なすぎる食材』」という特集が掲載された。

記事は、アメリカの肉牛は、狭いスペースに牛を押し込めることで運動を制限して太らせる「フィードロット方式」いう方法が採られていることの紹介から始まる。

飼育現場を視察した畜産業者は、「至るところが糞尿まみれになっていた。充満する悪臭で、息もできないほどでした」と語る。


山田正彦元農水相が、大規模食肉処理場を視察した経験を語る。
「異様な臭気が漂っていて、とても清潔とはいえない環境だった。」
日本では、食肉処理の過程で行われる背割りの前に十分に髄液を抜くが「アメリカでは吸引が十分ではないので、背割りの瞬間に髄液が牛の全身に飛び散る
「殺されてベルトコンベアーに載せられる前のラインに明らかな“へたり牛”が何頭かいたのには驚きました。へたり牛とは自力で歩くのもままならないような弱った牛で、BSEへの感染が疑われます


アメリカ牛は、ホルモン牛として有名です。
アメリカ牛(カナダ牛も)は成長ホルモンを投与して効率的に育てられます。
成長ホルモンを投与した牛は感染症にかかりやすくなるので、抗生物質も投与してあげます。
こうしておいしくて安いアメリカ牛が効率的に育つ仕組みです。
工業化された畜産です。
成長ホルモンを投与してやれば、人間も労働力になるまでの期間が短縮できるので、子育ての手間も省け効率的かもしれませんね。

 

さて、記事は、続く。


日本国内ではこうしたホルモン剤の使用は禁止。
が、不思議なことに、ホルモン剤を投与された牛の輸入は認められている。


抽出検査で「米国産牛肉には、国産に比べると赤身で600倍、脂身で140倍のエストロゲン(女性ホルモン)が含まれていた」と北海道対がん協会細胞センター所長藤田博正医師は語る。


エストロゲンは、乳ガンや子宮体ガン、前立腺ガンなどのホルモン依存性ガンの危険因子である。日本におけるホルモン依存性ガンの発生率は1960年代と比べて5倍に増加、それと比例するように牛肉消費量(内25%アメリカ牛)も同じく60年代比で5倍になっている。


他方で、EUは、1989年以降、ホルモン牛の輸入を禁止している。
その結果、ヨーロッパ30カ国の乳ガン死亡率が低下した。北アイルランドで29%、オランダで25%、ノルウェーで24%などとなっているとする論文が英国の医学誌『BMJ』に紹介された。


全てを紹介するのも骨が折れるので、食品添加物まで飛ばします。
アメリカを旅行した人から、食事が美味しかったという話を聞くことはあまりないように思います。
毒々しさに辟易したという声も聞きます。
ちなみにマチベンはアメリカ未体験の上、アメリカは広いので、一律にはいかないかもしれません。


食品の風味や外形を整えるために使用されている食品添加物は、日本で約800種類、アメリカでは約3000種類と国ごとに認可されている種類が異なる。
添加物について、食品添加物評論家の安部司氏は
「2007年に英国のサウスサンプトン大学の研究グループが発表したレポートによれば、日本でも認可されている添加物の食用赤色40号などと安息香酸ナトリウムという保存料を同時に摂取した際、子どもたちに多動性障害を引き起こした研究結果が出ました。添加物が恐ろしいのは、複合毒性や相乗効果があることなのです」と語る。


以下、記事は、添加物に関する国際基準について触れているが、力関係で押しつけられる懸念を述べているような印象で、僕が調べた範囲では、TPPの恐ろしさを、やや甘く見てしまっているように思われる。
実態はいっそう、恐ろしいと思われる。
日本では未認可の食品添加物の転化された食品の輸入を拒めるかどうかは、国際法に関わり、TPPに加盟すれば、法的な強制が働くと見た方がよい。


ということで、WTO/SPSルールに触れる前段としたい。

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第2回 TPP/SPSルールの恐怖1 毒だという科学的証拠がないものは食べよ

TPPで協議の対象とされている21分野の1つにSPSと書かれた分野がある。
SPSは一般に「衛生植物検疫措置」と呼ばれている。
正確には「衛生と植物検疫措置」と訳した方が適切かもしれない。


国家は、自国の域内に人や動植物の健康に有害な食品や動植物が侵入することを防ぐ権利を有する。
この権利の行使を国際経済法の言葉では、「衛生植物検疫措置」という。
「植物」とあるが、この場合「動物」や「食品添加物を含む食品」等も含まれている。


この「衛生植物検疫措置」について加盟国の統一基準を定めるのがSPSの分野だ。


SPSルールは、別にTPPで新たに設けられたものではない。
WTO(世界貿易機関)設立条約(1995年)の一部となっている。
したがって、TPPにおいて合意されるSPSの最低限度の内容は、WTOのSPSルールを勉強することでわかる。


さて、食品添加物や残留農薬、ポストハーベスト(採取後に保存・防カビ等のために添加される農薬)、BSE牛、遺伝子組み換え食品等の輸入について、国民にとって望ましいルールはどちらだろう。


A 安全性が証明された食品を輸入する。

 

B 有害性について科学的証拠がなければ輸入する。


大方の人は、Aが望ましいルールだと考えるのではないだろうか。
ところが、WTOではBが採用された。
WTOのSPSルールは難解な条文だが、ベースとなる原則は紛れもなくBだ。


つまり、現に有害であるとする十分な科学的証拠がない限り、有害な食品であっても、基本的に輸入しなければならないのだ。


たとえば、遺伝子組み換え食品など、進んで食べたいという人はそう多くはいないと思う。
遺伝子組み換えという発想が、トマトに北極ヒラメの遺伝子を注入するとか(凍りにくくするためだそうだ)、成長を早くするために魚にヒトの遺伝子を注入すると言ったグロテスクなものだと知れば、なおさらに嫌気がさすのではないだろうか。
遺伝子組み換え作物は日本では試験栽培以外には許されていない。
追記 2013年11月9日
2006年から遺伝子組み換え作物の商業栽培が承認され始め、2013年に入ってからは加速度的に承認作物が増え続けている
現在では、アメリカで認められていない、とくに危険性が高いと疑われている、遺伝子組み換え作物すら承認されている。
今のところは、日本は、アメリカ及び日本財界に対する政治的配慮という事実関係によって承認が進められているに過ぎない。
しかし、TPPが発効すれば、遺伝子組み換え作物の承認は、条約上の義務となる。
これを拒否するためには、高い代価を払う必要が生まれる。
今なら、政策転換ですむ問題だ。
しかし、TPP後の日本では、法的義務からの離脱が必要となる。
果たして日本にそれが可能なのだろうか。(追記終わり)


ところが、日本では遺伝子組み換え食品が、広く流通している。
こうした遺伝子組み換え食品が、有害であるという十分な科学的証拠がないとされているために、輸入しなければならない
ためだ。
かろうじて、現状では、豆腐や味噌、納豆といった直接の加工食品だけに表示義務を課して、遺伝子組み換え食品を直接、食べるかどうか消費者の選択に任せるというのが日本の現状だ。
日本の畜産では遺伝子組み換えトウモロコシがエサに使われているし、サラダ油、コーン油などの原料である菜種やトウモロコシも遺伝子組み換え食品が使われている可能性が高い。
知らない間に日本人は、遺伝子組み換え食品を食べさせられている。


日本では禁止されているのに、成長ホルモンを用いたアメリカ牛が広く流通していることは週刊新潮が伝えるとおりだ。
有害であるという十分な科学的証拠がないために、成長ホルモン漬けの牛でも輸入しなければならないからだ。


それもこれもSPSルールがBのルールを原則としているからだ。


有害である科学的証拠がなければ、輸入しなければならない。
これがSPSルールの本質である。

 

だから、自由貿易のおかげで、私たちは、安全だという証明のない食品を、どんどん食べさせられている。


この、今のところ毒だという科学的な証拠がないから、毒でも食べろという、SPSルールをさらに徹底しようとしているのが、TPPだとみてよい。

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第3回 TPP/SPSルールの恐怖 日米FTAという悪夢

毒だとわかるまでは、食べろという、SPSルールは、ルール自体が悪夢である。
日常生活の感覚では、不自然で異常に思える。
しかし、国際経済法の分野では、今や当然の原則とされている。
なぜなら「安全だという証明がされた食品を輸入する」という考え方では、安全性にかこつけて、輸入を拒むことがあり、「自由貿易」を阻害することになるからだという。
国民の生命や健康、国や地域の環境保護より、「自由貿易」を優先させなければならない、これが、国際経済法のルールだ。
まるで、「自由貿易」至上主義の新興宗教のようだ。


実は、SPSについては、TPPとの関係では、もう一つ、付け加えなければならない悪夢がある。


日本は、多国間協議で決まるTPP以上に、厳しいSPSルールを押しつけられる可能性があるということだ。


日米事前合意を通じて、USTRが「片面的合意」(日本政府がアメリカ政府に表明した意見)の詳細を大統領に報告した文書が作成された。


この本体部分は、山田正彦氏のブログに仮訳が掲載されている。
これをプレスリリースと評価する向きもあるが、むしろ、USTRからオバマ大統領に対する交渉報告文書と評価する方が法的な意味が明確になると思われる。
オバマは、失効している大統領貿易促進権限法に倣って、議会に日本の交渉参加を認めるように通知しなければならない。
そのための基本情報が、USTRの声明であると考えるのが筋だからだ。


この中に次のくだりがある。

非関税障壁(NTM)

アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関しては別添fact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されてい

この別添ファクトシートで、SPSルールについては、次のように記載されている。

WTO/SPS協定に定められた権利・義務にしたがい、食品添加物に関するリスク評価を加速し、簡素化するとともに、防かび剤と人間が消費するゼラチン・コラーゲンに関するその他の課題にも取り組むこと。


これについて、4月19日付日本農業新聞は、次のように解説している。


 一方、米国は今月1日に公表した2013年版のSPS報告書でも、これらを指摘していた。防かび剤については、日本がポストハーベスト(収穫後)に使用 する防かび剤を「食品添加物」と「農薬」の両方でリスク評価をしていることに対し、手間が二重に掛かり、新製品の認可を妨げていると問題視する。

 同報告書は、米国での牛海綿状脳症(BSE)発生を受けて日本が続けている、米国産の牛など反すう動物を原料とするゼラチンやコラーゲンの禁輸解除を要求。食品添加物については「米国や世界中で広く使われている添加物が、日本では認められていない」として規制緩和を訴える。

 米国からすると、これらはいずれも長年の懸案課題。TPP交渉をきっかけに、日本に要求を飲ませるもくろみがあるとみられる。


この並行二国間協議は、これまで日米で行われたきたような政治的交渉ではなく、法改正や、条約締結といった法的な拘束力を持った成果とすることが予め事前合意されている。
つまり、TPPで認められる以上に高度で、厳格なSPSルールの厳守を法的に約束させられようとしているのだ。


実際に、加盟159ヶ国に及ぶWTOにおいて、有害であるという十分な科学的証拠がなければ、輸入せよというSPSルールを厳格に順守している国はないと言ってもよいだろう。
多国間になればなるほど、合意は、相当の温度差のある加盟国間の妥協の産物であるだけに、その徹底はむつかしくなる。
食品添加物のような多種類に及ぶ物質について、一つ一つをWTOの紛争処理手続にかけるのは、現実性も実効性もない。


日本が、国益を損じても、ひたすらTPPに参加したいとの弱気の交渉姿勢であるのにつけ込み、どさくさ紛れに、長年の懸案に一気に片を付けるというのが、TPPと並行する二国間並行協議である。
日本は、週刊新潮が報道したような危なすぎる食材の輸入を一気に解禁させられることが避けられない。


かくして、日本は、将来、毒だと判明するかも知れない、アメリカ産の薬漬けの人体実験場となるのだ。

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第4回 TPP/SPSルールの恐怖3 EU-ホルモン牛事件(1/3)

週刊新潮(5月23日号)は、次のように書いている。


「アメリカでは、肉牛を効率良く育てるために…成長ホルモン剤を使うことが許されている。一方、日本国内ではこうしたホルモン剤の使用は禁止。が、不思議なことに、ホルモン剤を投与した牛の輸入は認められているのだ」


国内では成長ホルモンの投与を禁止しているのに、成長ホルモンが投与された牛を輸入しているのは確かに不思議だ。
しかし、WTOのSPSルールが、有害だという十分な科学的証拠がない食品は輸入しなければならないとしているしていることを知れば、法律的に避けられない事態であることがわかる。
日本は自由貿易至上主義の推進道具に変容した国際法(国際経済法)を誠実に守っているから仕方がないのだ。


では、ホルモン牛の輸入を禁止して、現実に乳ガンの発生率が低下したとされるEUは国際経済法に違反しているのだろうか。


結論からいえば、EUは国際法に違反している。
国際法に違反して、EU域内の国民の健康を守るという選択をしているのだ。


国際経済法のケーススタディでは必ず出てくるWTOの係争事例がある。
EU-ホルモン牛事件と呼ばれる。
EUは、消費者保護を理由として、1989年にホルモン牛の輸入禁止措置をとった。
この輸入禁止措置をアメリカとカナダがSPSルールに反するとして、WTOの紛争解決手続に訴えたのがEU-ホルモン牛事件だ。
(ISD 条項と異なり、WTOの紛争解決制度の主体はあくまでも国家であり、提訴も国家が国家(国家連合)を訴える。またISD条項と異なり、直接、賠償等を命じ ることはせず、WTO憲章のルールに違反するか否かを判定するだけだ。WTOは、紛争解決手続を設けるとともに、貿易紛争を理由とする一方的な経済制裁等 の発動を制限する仕組みを採用した)


この事件は、第1審のパネル(1997年)、最終審の上級委員会(1998年)とも、EUが敗訴している。
したがって、EUのホルモン牛輸入禁止措置は、WTOのSPSルールに違反しており、国際法違反が確定しているのだ。


EUホルモン牛事件では、EUは、成長ホルモンを投与した牛には発ガンのリスクがある、消費者の生命健康を守るために、「一応のリスクがあれば輸入を制限する」ことは国民を守るべき国家(国家連合)の権利だとして徹底して争った。国際法の言葉ではEUの主張は「予防原則」という。
しかし、WTOは、パネル(小委員会)も上級委員会も「予防原則」は、WTOのSPSの基本ルールではないとして、有害であることの十分な科学的証拠がないのに、発ガンリスクを主張して輸入を禁止したEUの措置は違法だとしたのだ。


EU域内の乳ガンの発生率の低下が、ホルモン牛の輸入禁止措置と相関関係があるとすれば、EUは国際法に違反してでも、国民の健康を守ったことになる。
国際法を遵守する一方で、乳ガンの発生率が高まっている日本と、国際法に違反して健康が改善されたEU。
国民の立場では、自由貿易を犠牲にしても健康を守ってほしいと思うのが、普通ではないだろうか。

しかし、日本は、国際社会(日本では国際社会が許さないというときの国際社会は必ずといっていいほどにアメリカを意味する。中国や韓国、東南アジア、中東諸国やアフリカ諸国を国際社会と呼ぶのは聞いたことがない)に従順な優等生国家だから、EUのような気骨のあることはできなかったという訳だ。

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第5回 WTO/SPSルールの恐怖2 EU-ホルモン牛事件(2/3)

ここまで、SPSルールは、有害であるという十分な科学的証拠がない限り、輸入しなければならないというルールだと述べてきた。
あまり、市民にわかりやすい言い方を繰りかえしていると、国際経済法の「専門家」(学生さんを含む)からお怒りが出そうなので、EUホルモン牛事件を例にもう少し、SPSルールについて、述べておこう。


SPSルールでは、食品の安全性に関する国際基準がある場合には、この基準に従った措置は適法な「衛生植物検疫措置」として、輸入を制限することも許される。
但し、「衛生植物検疫措置」は貿易に与える悪影響を最小限にしなければならないとか、「偽装された障壁」であってはならないとか、とにかく自由貿易に手厚い保護を与えていることには要注意だ。


さて、この国際基準の代表的なものに、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の共同委員会が決めるコーデックス規格がある。
ホルモン牛についても、このコーデックス委員会の定める、残留ホルモンに関する国際基準が存在した。


EUはこのコーデックス規格に適合するホルモン牛も含めて、輸入禁止措置(「衛生植物検疫措置」)を執り、アメリカとカナダからWTOの紛争解決手続に訴えられ敗訴したのだ。
SPSルールに従えば、国際基準を超える輸入制限措置を執る場合には、その措置を正当とするに十分な科学的証拠を示さなければならない。
しかし、成長ホルモンを投与された牛を有害だとする科学的証拠はなかった。
EUは、この事件において、あくまでも発ガンリスク(の可能性)があれば輸入を制限できるとする「予防原則」を「自由貿易」をより優先する原則だと主張し、堂々と敗れた。


EUの措置が、国際法上、違法だと確定したにも拘わらず、EUは輸入禁止措置を撤回しなかったため、アメリカは、EUに対して報復関税を発動して、EUに圧力をかけたが、EUは信念を枉げなかった。


そして、WTO発足前である1989年から継続した輸入禁止措置を貫き、20年余を経過して、乳ガンの発生率が顕著に低下した。他方、この間、ホルモン牛を輸入し続けた日本の乳ガン発生率が増加したと週刊新潮が伝えている。


さて、国際経済法分野の専門家の中には、EUには、もう少しましな争い方があったと指摘する向きもあるかもしれない。
WTO/SPSルールにも例外規定がある。
有害だとする十分な科学的証拠がなくても、輸入禁止措置を採ることができる場合があるとする指摘だ。
だから、予防原則を正面から主張して玉砕するより、例外規定に基づく現実的な争い方をするべきだったという言い方が一応成り立つ。


この例外は、科学的証拠が十分ではない場合に、暫定的な輸入制限を認めるルールだ。
SPSルール違反するとして、訴えられた国は、輸入制限措置の科学的証拠が十分ではない場合は、危険性評価のために追加の客観的な情報を集めるために、暫定的に輸入制限を継続することが認められる。
「ちょっと待って権」と言うような権利である。
こうした規定があるのだから、EUもこの規定に基づく権利を主張すべきだったとするのが国際経済法の通常の考え方としてあり得る。


しかし、この規定はあくまで暫定的な措置であるから、適切な期間内に輸入制限措置を再検討する(見直す)ことが義務付けられている。
国際経済法を遵守しようとすれば、絶えざる圧力をかけられながら、「ちょっと待って」と言い続けることになる。
国際経済法の文脈に入り込んでしまうと、結局、EUも、中途半端なところで、輸入禁止措置を撤回せざるを得なかったろう。


週刊新潮の記事によれば、輸入禁止措置以降、EU各国の乳ガンの発生率が有意に減少しているというデータが発表されたのは、ようやく2010年に なってからなのだから、「ちょっと待って」権による争い方では、国民の健康を守るという国家の基本的責務を果たすことはできなかったに違いない。


福島第一原発事故による放射能による被害を想定すれば容易に理解できるだろう。
放射能の被害の全容を把握するには、今後、長期間にわたる継続的で的確な追跡調査が必要である。
放射能被害の広がりがどこまで及んでいるかについて、統計的に有意性のある十分な科学的証拠によって裏付けられるまでには、十年単位の期間が必要なことは明らかだろう。
発ガンリスクなどは、適切な期間内に措置の見直しを義務付けられる「ちょっと待って」権などでは、防ぎようがないのだ。


今でこそ、農薬DDTは禁止することが国際的にも常識となっているが、DDTの有害性が判明するまでにやはり何十年という年月と大量の被害の発生が必要だったのだ。
そして、未だに多国籍業は、途上国へのDDTの輸出を続けているという。


SPSルールは、例外規定を踏まえても、やはり毒だという科学的証拠がなければ毒でも食べろ」というルールだという他ない。


ことほど、さように国際経済法分野でのものの考え方は、国民の健康を犠牲にしてでも、自由貿易を推進しようという凶暴さを秘めているのである。
ゆめゆめ159カ国も加盟しているWTOのルールだから、常識的なものなんじゃないかなどと油断してはならないのだ。

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第6回 WTO/SPSルールの恐怖2 EU-ホルモン牛事件(3/3 完)

SPSルールに基づく輸入制限措置の国際基準とされる代表的なルールはコーデックス規格である。
先に述べたようにコーデックス規格は、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同委員会で策定される。
いずれもれっきとした国連の機関である。
国連の中でも、食糧、健康を担当する機関が共同して決める規格であるから信頼性はいかにも高そうだ。


しかし、この国際基準は、EU-ホルモン牛事件の例に見る限り、健康リスクから世界の国民を守るためには不十分なものであったように見受けられる。


国連機関というなんだかありがたそうだが、泥沼のアフガン戦争を正当化したのは、国連安保理決議であった。
イラク戦争も、当初は安保理決議がなかったものの、開戦まもなく米国が勝利宣言した後は、多国籍軍の派遣を認める安保理決議をなして、その後、5年以上にわたる泥沼のイラク戦争に世界を巻き込んだ。
国連は重要である。
とくに国連憲章の精神を守り続けることは重要だが、国連が国際社会の力関係を反映する外交と政治の場であることも明らかである。


冷戦崩壊後、ソ連・東欧という重しが取れた資本主義はグローバルな新自由主義として暴走する。
軍事を除く場面においては、今や国際政治の権力は国連から世界銀行・国際通貨基金に移行しているように見える。
国連も否応なく、新自由主義に巻き込まれている。
その法律的な象徴が実は、WTOであったし、生命・健康の安全より自由貿易を優先するSPSルールである。


さて、ホルモン牛に関する国際基準は、国連を代表する二つの機関の合同委員会によって採用された安全規格だった。
コーデックス委員会自体は、1960年代から活動しているが、WTO憲章/SPS協定によって、法律的な意義付けを与えられ、コーデックス規格の重要性は一気に増した。


ホルモン牛に関するコーデックス規格は、WTO発足直後に採用されている。
コーデックス規格の採用は、それまで委員会全体によるコンセンサ ス方式によるのが通常であったとされるが、WTOの発足により、コーデックス規格に法的な意義付が与えられることに着目した米国やカナダは、1995年7 月に異例の多数決方式によって、コーデックス規格の採択を推し進めた。
ホルモン牛に関するコーデックス規格は、賛成33、反対29、棄権7という僅差でかろうじて採択されたものだ。
国連の権威ある機関だからと言って、国際基準を鵜呑みにする訳にはいかない。
コーデックス委員会のように中立的に見える機関でも、国際政治の場に他ならないのだ。


しかもコーデックス委員会には、規格が消費者の生命・健康を守るのに十分なのかを疑わせる、その他の事情も指摘されている。
コーデックス委員会では、加盟国の代表だけではなく、その随行員にもオブザーバーとして発言権が与えられている。
そのため、米国などは、多数の多国籍企業の代理人を随行員として委員会に参加させている。
当然、モンサントなどの代理人も随行員に参加しているだろう。
また、NGOにもオブザーバーとして発言権が与えられているが、これも業界団体が大半を占めることが指摘されている。
たとえば国際農薬製造業者協会連合会等が、多国籍企業からオブザーバーとして派遣され、専門知識を活かした発言をして、多国籍企業に有利な規格が採用されるように、活動している。
2005年頃で、コーデックス委員会のオブザーバー資格を有するNGOは約160、明らかに企業の利益代表と認められる団体が100、消費者・健康・環境の利益を代表する団体は10に過ぎないと言われている。


国際基準に日本の食品の安全を任せていいのか。
問われる事態と言わざるを得ない。


以上、週刊新潮の記事を手がかりとして、EU-ホルモン牛事件を振り返った。


実際上、コーデックス規格を初めとする国際基準が、WTOの全加盟国において用いられているわけではないこと、むしろあまりにも多数に及ぶコーデックス規格の受容については、国によって不統一な印象もあることは先に述べたとおりである。
しかし、TPP、まして二国間交渉である日米FTAでは、それは許されない。
うさんくさい国際基準に基づく、食品の安全規格を、日本が全面的に飲まされる危険性は著しく高い。
日本が、怪しげな食品の薬漬けの人体実験場になる
と、繰り返さざるを得ない所以である。


なお、EU-ホルモン牛事件は、どの国際経済法の教科書にも載っているSPSの代表的なケースだ。
ここで述べたのは、国際経済法を学んだ者であれば、少し突っ込んで勉強すれば、学部生でも知っているはずの初歩的な知識に属する。
国際経済法学者は、ISDについても、SPSについても国民に正確な知識を与えるべき立場にあり、責任を有している。
しかし、TPPを巡って、国際経済法学者が、国民的な議論に参加した例を知らない。
僕の知る限り、国民的な議論の場では、国際経済法学者は、沈黙を保ち、口をつぐんでいる。


国際経済法の専門家には、国際仲裁の裁判官とか、国際会議の国家代表だとか、それなりの見返りがあるのだろうか。
財閥や巨大企業の顧問であるビジネスロイヤーのグループは、国際経済法に詳しいはずだが、彼らにも同じようなステータスが保障され、ビジネスパートナーとなるアメリカのローファーム等からおいしいビジネスチャンスも約束されているのだろうか。


国際経済法ムラと呼ぶべき状態がないのか。

原子力ムラが国民の力によって、その姿を露わにしたように、国民は無力ではない。
私たちの努力は無駄ではないと信じる、ことに決めた。

(EU-ホルモン牛事件 完)

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2013年5月30日 (木)

【拡散希望】TPP/SPSルールの恐怖5 EU-ホルモン牛事件(後編)

SPSルールに基づく輸入制限措置の国際標準とされる代表的なルールはコーデックス規格である。
先に述べたようにコーデックス規格は、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同委員会で策定される。
いずれもれっきとした国連の機関である。
国連の中でも、食糧、健康、安全を担当する機関が共同して決める規格であるから信頼性はいかにも高そうだ。


しかし、この国際基準は、EU-ホルモン牛事件の例に見る限り、健康リスクから世界の国民を守るためには不十分なものであったように見受けられる。


国連機関というなんだかありがたそうだが、泥沼のアフガン戦争を正当化したのは、国連安保理決議であった。
イラク戦争も、当初は安保理決議がなかったものの、米国が、勝利宣言した後は、多国籍軍の派遣を認める安保理決議をなして、その後、5年以上にわたる泥沼のイラク戦争に世界を巻き込んだ。
国連は重要である。
とくに国連憲章の精神を守り続けることは重要だが、国連が国際社会の力関係を反映する外交と政治の場であることも明らかである。


冷戦崩壊後、ソ連・東欧という重しが取れた資本主義はグローバルな新自由主義として暴走する。
軍事を除く場面においては、今や国際政治の権力は国連から世界銀行・国際通貨基金に移行しているように見える。
国連も否応なく、新自由主義に巻き込まれている。
その法律的な象徴が実は、WTOであったし、生命・健康の安全より自由貿易を優先するSPSルールである。


さて、ホルモン牛に関する国際基準は、国連を代表する二つの機関の合同委員会によって採用された安全規格だった。
コーデックス委員会自体は、1960年代から活動しているが、WTO憲章/SPS協定によって、法律的な意義付けを与えられ、コーデックス規格の重要性は一気に増した。


ホルモン牛に関するコーデックス規格は、WTO発足直後に採用されている。
コーデックス規格の採用は、それまで委員会全体によるコンセンサス方式によるのが通常であったとされるが、WTOの発足により、コーデックス規格に法的な意義付が与えられることに着目した米国やカナダは、1995年7月に異例の多数決方式によって、コーデックス規格の採択を推し進めた。
ホルモン牛に関するコーデックス規格は、賛成33、反対29、棄権7という僅差でかろうじて採択されたものだ。
国連の権威ある機関だからと言って、国際基準を鵜呑みにする訳にはいかない。
コーデックス委員会のように中立的に見える機関でも、国際政治の場に他ならないのだ。


しかもコーデックス委員会には、規格が消費者の生命・健康を守るのに十分なのかを疑わせる、その他の事情も指摘されている。
コーデックス委員会では、加盟国の代表だけではなく、その随行員にもオブザーバーとして発言権が与えられている。
そのため、米国などは、多数の多国籍企業の代理人を随行員として委員会に参加させている。
当然、モンサントなどの代理人も随行員に参加しているだろう。
また、NGOにもオブザーバーとして発言権が与えられているが、これも業界団体が大半を占めることが指摘されている。
たとえば国際農薬製造業者協会連合会等が、多国籍企業からオブザーバーとして派遣され、専門知識を活かした発言をして、多国籍企業に有利な規格が採用されるように、活動している。
2005年頃で、コーデックス委員会のオブザーバー資格を有するNGOは約160、明らかに企業の利益代表と認められる団体が100、消費者・健康・環境の利益を代表する団体は10に過ぎないと言われている。


国際基準に日本の食品の安全を任せていいのか。
問われる事態と言わざるを得ない。


以上、週刊新潮の記事を手がかりとして、EU-ホルモン牛事件を振り返った。


実際上、コーデックス規格を初めとする国際基準が、WTOの全加盟国において用いられているわけではないこと、むしろあまりにも多数に及ぶコーデックス規格の受容については、国によって不統一な印象もあることは先に述べたとおりである。
しかし、TPP、まして二国間交渉である日米FTAでは、それは許されない。
うさんくさい国際基準に基づく、食品の安全規格を、日本が全面的に飲まされる危険性は著しく高い。
日本が、怪しげな食品の薬漬けの人体実験場になる
と、繰り返さざるを得ない所以である。


なお、EU-ホルモン牛事件は、どの国際経済法の教科書にも載っているSPSの代表的なケースだ。
ここで述べたのは、国際経済法を学んだ者であれば、少し突っ込んで勉強すれば、学部生でも知っているはずの初歩的な知識に属する。
国際経済法学者は、ISDについても、SPSについても国民に正確な知識を与えるべき立場にあり、責任を有している。
しかし、TPPを巡って、国際経済法学者が、国民的な議論に参加した例を知らない。
僕の知る限り、国際経済法学者は、沈黙を保ち、口をつぐんでいる。


国際経済法の専門家には、国際仲裁の裁判官とか、国際会議の国家代表だとか、それなりの見返りがあるのだろう。
財閥や巨大企業の顧問であるビジネスロイヤーのグループは、国際経済法に詳しいはずだが、彼らにも同じようなステータスが保障され、ビジネスパートナーとなるアメリカのローファーム等からおいしいビジネスチャンスも約束されているのだろう。


国際経済法ムラと呼ばざるを得ない所以である。
法曹要請阿呆ムラよりは、よほど強力で、利益も巨大そうであるから、国際経済法ムラの結束は固く、突き崩すのは容易ではないだろう。


しかし、原子力ムラが国民の力によって、その姿を露わにしたように、国民は無力ではない。
だから、マチベンが、庶民の事件とはおよそ縁遠い国際経済法を勉強して報告している訳である。
(EU-ホルモン牛事件 完)

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2013年5月29日 (水)

橋下騒動が隠蔽したもの

橋下騒動は改めてこの国でもてはやされる政治家に如何に国際感覚がないかをあからさまにした。
欧米の軍も韓国軍も女性を蹂躙したではないかという彼の主張に僕は同意する。しかし、そのことをどういう段取りを踏んで伝えれば受け入れられるかに関する構想を決定的に欠いていた。
日韓の日本軍「慰安婦」問題を解決して隣国との信頼関係を築いてからでなければ、そのような発言が国際的な反発を買うだけであることは目に見えていた。
強制があったという証拠はないなどという発言とセットで欧米批判をするのは日本を孤立させるだけだ。
なぜその程度のことが理解できないのか疑問でたまらない。


問題は橋下騒動に隠れて安倍首相の歴史認識問題がかすんでしまったことだ。
真の問題はこの国の有力な政治家に歴史修正主義が蔓延していることだ。
橋下氏を批判するのであれば、安倍首相も追及しなければならない筋だが、決してそうはならない。
メディアの自制か、とりあえず安倍首相は使えるという宗主国の判断か。
橋下騒動の本質が安倍隠しにあったことは、ほぼ間違いないように見える。


なお性奴隷という言葉は第一次安倍内閣の当時に日本が批准した国際刑事裁判所条約で用いられている法的な言葉だ。
性奴隷にする手段は物理的暴力に限らない。
韓国の日本軍「慰安婦」被害者もそうは証言していない。
貧しさにつけ込まれて就業詐欺に騙されて連れて行かれたとする証言が大半だ。
騙して連れ去れば、誘拐であり、性奴隷にされたものであることは条約上、疑いがない。


狭義の強制があったか否かなどと言う話は些末なことにならざるを得ない。
日本の政治家はあまりにも内向きの議論に終始している。
このままでは日本は進んで孤立への道を歩むことになりかねない。

【拡散希望】TPP/SPSルールの恐怖4 EUホルモン牛事件(中編)

ここまで、SPSルールは、有害であるという十分な科学的証拠がない限り、輸入しなければならないというルールだと述べてきた。
あまり、市民にわかりやすい言い方を繰りかえしていると、国際経済法の「専門家」(学生さんを含む)からお怒りが出そうなので、EUホルモン牛事件を例にもう少し、SPSルールについて、述べておこう。


SPSルールでは、食品の安全性に関する国際基準がある場合には、この基準に従った措置は適法な「衛生植物検疫措置」として、輸入を制限することも許される。
但し、「衛生植物検疫措置」は貿易に与える悪影響を最小限にしなければならないとか、「偽装された障壁」であってはならないとか、とにかく自由貿易に手厚い保護を与えていることには要注意だ。


さて、この国際基準には、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の共同委員会が決めるコーデックス規格がある。
ホルモン牛についても、このコーデックス委員会の定める、残留ホルモンに関する国際基準が存在した。


EUはこのコーデックス規格に適合するホルモン牛も含めて、輸入禁止措置(「衛生植物検疫措置」)を執り、アメリカとカナダからWTOの紛争解決手続に訴えられ敗訴したのだ。
SPSルールに従えば、国際基準を超える輸入制限措置を執る場合には、その措置を正当とするに十分な科学的証拠を示さなければならない。
しかし、成長ホルモンを投与された牛を有害だとする科学的証拠はなかった。
EUは、この事件において、あくまでも発ガンリスク(の可能性)があれば輸入を制限できるとする「予防原則」を「自由貿易」をより優先する原則だと主張し、堂々と敗れた。


EUの措置が、国際法上、違法だと確定したにも拘わらず、EUは輸入禁止措置を撤回しなかったため、アメリカは、EUに対して報復関税を発動して、EUに圧力をかけたが、EUは信念を枉げなかった。


そして、WTO発足前である1989年から継続した輸入禁止措置を貫き、20年余を経過して、乳ガンの発生率が顕著に低下した。他方、この間、ホルモン牛を輸入し続けた日本の乳ガン発生率が増加したと週刊新潮が伝えている。


さて、国際経済法分野の専門家の中には、EUには、もう少しましな争い方があったと指摘する向きもあるかもしれない。
WTO/SPSルールにも例外規定がある。
有害だとする十分な科学的証拠がなくても、輸入禁止措置を採ることができる場合があるとする指摘だ。
だから、予防原則を正面から主張して玉砕するより、例外規定に基づく現実的な争い方をするべきだったという言い方が一応成り立つ。


この例外は、科学的証拠が十分ではない場合に、暫定的な輸入制限を認めるルールだ。
SPSルール違反するとして、訴えられた国は、輸入制限措置の科学的証拠が十分ではない場合は、危険性評価のために追加の客観的な情報を集めるために、暫定的に輸入制限を継続することが認められる。
「ちょっと待って権」と言うような権利である。
こうした規定があるのだから、EUもこの規定に基づく権利を主張すべきだったとするのが国際経済法の通常の考え方としてあり得る。


しかし、この規定はあくまで暫定的な措置であるから、適切な期間内に輸入制限措置を再検討する(見直す)ことが義務付けられている。
国際経済法を遵守しようとすれば、絶えざる圧力をかけられながら、「ちょっと待って」と言い続けることになる。
国際経済法の文脈に入り込んでしまうと、結局、EUも、中途半端なところで、輸入禁止措置を撤回せざるを得なかったろう。


週刊新潮の記事によれば、輸入禁止措置以降、EU各国の乳ガンの発生率が有意に減少しているというデータが発表されたのは、ようやく2010年になってからなのだから、「ちょっと待って」権による争い方では、国民の健康を守るという国家の基本的責務を果たすことはできなかったに違いない。


福島第一原発事故による放射能による被害を想定すれば容易に理解できるだろう。
放射能の被害を把握するには、今後、長期間にわたる継続的で的確な追跡調査が必要である。
放射能被害が、統計的に有意性のある十分な科学的証拠によって裏付けられるまでには、十年単位の期間が必要なことは明らかだろう。
発ガンリスクなどは、適切な期間内に措置の見直しを義務付けられる「ちょっと待って」権などでは、防ぎようがないのだ。


今でこそ、農薬DDTは禁止することが国際的にも常識となっているが、DDTの有害性が判明するまでにやはり何十年という年月と大量の被害の発生が必要だったのだ。
そして、未だに多国籍業は、途上国へのDDTの輸出を続けているという。


SPSルールは、例外規定を踏まえても、やはり毒だという科学的証拠がなければ毒でも食べろ」というルールだという他ない。


ことほど、さように国際経済法分野でのものの考え方は、国民の健康を犠牲にしてでも、自由貿易を推進しようという凶暴さを秘めているのである。
ゆめゆめ157カ国も加盟しているWTOのルールだから、常識的なものなんじゃないかなどと油断してはならないのだ。
(続 EU-ホルモン牛事件2/3)

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2013年5月28日 (火)

【拡散希望】TPP/SPSルールの恐怖3 EUホルモン牛事件(前編)

週刊新潮(5月23日号)は、次のように書いている。


「アメリカでは、肉牛を効率良く育てるために…成長ホルモン剤を使うことが許されている。一方、日本国内ではこうしたホルモン剤の使用は禁止。が、不思議なことに、ホルモン剤を投与した牛の輸入は認められているのだ」


国内では成長ホルモンの投与を禁止しているのに、成長ホルモンが投与された牛を輸入しているのは確かに不思議だ。
しかし、WTOのSPSルールが、有害だという十分な科学的証拠がない食品は輸入しなければならないとしているしていることを知れば、法律的に避けられない事態であることがわかる。
日本は自由貿易至上主義の推進道具に変容した国際法(国際経済法)を誠実に守っているから仕方がないのだ。


では、ホルモン牛の輸入を禁止して、現実に乳ガンの発生率が低下しているEUは国際経済法に違反しているのだろうか。


結論からいえば、EUは国際法に違反している。
国際法に違反して、EU域内の国民の健康を守るという選択をしているのだ。


国際経済法のケーススタディでは必ず出てくるWTOの係争事例がある。
EU-ホルモン牛事件と呼ばれる。
EUは、消費者保護を理由として、1989年にホルモン牛の輸入禁止措置をとった。
この輸入禁止措置をアメリカとカナダがSPSルールに反するとして、WTOの紛争解決手続に訴えたのがEU-ホルモン牛事件だ。
(ISD条項と異なり、WTOの紛争解決制度の主体はあくまでも国家であり、提訴も国家が国家(国家連合)を訴える。またISD条項と異なり、直接、賠償等を命じることはせず、WTO憲章のルールに違反するか否かを判定するだけだ。WTOは、紛争解決手続を設けるとともに、貿易紛争を理由とする一方的な経済制裁等の発動を制限する仕組みを採用した)


この事件は、第1審のパネル(1997年)、最終審の上級委員会(1998年)とも、EUが敗訴している。
したがって、EUのホルモン牛輸入禁止措置は、WTOのSPSルールに違反しており、国際法違反が確定しているのだ。


EUホルモン牛事件では、EUは、成長ホルモンを投与した牛には発ガンのリスクがある、消費者の生命健康を守るために、「一応のリスクがあれば輸入を制限する」ことは国民を守るべき国家(国家連合)の権利だとして徹底して争った。国際法の言葉ではEUの主張は「予防原則」という。
しかし、WTOは、パネル(小委員会)も上級委員会も「予防原則」は、WTOのSPSの基本ルールではないとして、有害であることの十分な科学的証拠がないのに、発ガンリスクを主張して輸入を禁止したEUの措置は違法だとしたのだ。


EU域内の乳ガンの発生率の低下が、ホルモン牛の輸入禁止措置と相関関係があるとすれば、EUは国際法に違反してでも、国民の健康を守ったことになる。
国際法を遵守する一方で、乳ガンの発生率が高まっている日本と、国際法に違反して健康が改善されたEU。
国民の立場では、自由貿易を犠牲にしても健康を守ってほしいと思うのが、普通ではないだろうか。
しかし、日本は、国際社会(日本では国際社会が許さないというときの国際社会は必ずといっていいほどにアメリカを意味する。中国や韓国、東南アジア、中東諸国やアフリカ諸国を国際社会と呼ぶのは聞いたことがない)に従順な優等生国家だから、EUのような気骨のあることはできなかったという訳だ。
(続)
(EU-ホルモン牛事件1/3)

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2013年5月27日 (月)

集英社から新書デビュー 6月14日発売予定

集英社から新書デビューをする段取りとなりました。
と言っても、共著ですけど (^^ゞ

2月に「TPPを慎重に考える会」からお呼びいただいて、議員会館で、TPPによる憲法破壊と国際法秩序紊乱のお話しをさせていただいた、そのエッセンスだけは、担当部分で書かせていただいています。

話には聞いておりましたが、編集・校正というお仕事がいかに大変なお仕事か、体験してみて、よく実感できました。


TPP 黒い条約 [新書] (集英社)

中野 剛志 , 関岡 英之 , 月 浩二 , 東谷 暁 , 村上 正泰 , 施 光恒 , 柴山 桂太

<目次>
第一章 世界の構造変化とアメリカの新たな戦略――中野剛志
第二章 米国主導の「日本改造計画」四半世紀――関岡英之
第三章 国家主権を脅かすISD条項の恐怖――岩月浩二
第四章 TPPは金融サービスが「本丸」だ――東谷 暁
第五章 TPPで犠牲になる日本の医療――村上正泰
第六章 日本の良さと強みを破壊するTPP――施 光恒
第七章 TPPは国家の拘束衣である――柴山桂太

 


思えば、菅直人首相の開国宣言にあわてふためいていた僕が、初めて手にしたTPPの解説本が中野剛志氏の「TPP亡国論」でした。
経済官僚の方が、普通に考えて、百害あって一利なしだと断言する内容に、自分の直感の正しさを確信することができました。
中野氏の書く本で、分担執筆することになるとは夢にも思いませんでした。


対米従属が日本の構造部分まで深く根を下ろしていることを教えてくれたのが、年次改革要望書を初めて白日に晒した関岡英之氏の「拒めない日本」でした。
「拒めない日本」は、僕が注文しようとした当時、ベストセラーなのにアマゾンには「在庫なし」と表示されていたのを印象深く記憶しています。
アマゾンでは、本によっては、在庫があるはずなのにえらく届くのが遅いというようなこともあるので、要注意ですね。
忘れた頃にアマゾンから届くので、honto(旧BK1)で二重に頼んでしまった本が何冊かあります。


法律に沿って分析すればするほど、TPPは如何に歪んだルールであるか、痛感します。
ISDだけでなく、SPSルールも非人間的なルールです。
超国家主体となったグローバル資本が最大限の利潤を追求するために、国家の枠組みを作り替えて共通化=スタンダード化しようとしています。
グローバル資本にとって、人間や国家、そして地域は、彼らの利益に奉仕する物としてしか意味がありません。


日本農業新聞で取材いただいてから、ほぼ1年で、共著デビュー。
TPPについて法律家の目から説明した方が明快になる点が山ほどありそうですので、引き続き単著デビューを目指しております。
新書という類型は結構、内容が難しめにできるみたいですので、刊行の形態は問いませんが、できるだけ気楽に手に取れるような、わかりやすい本を書いてみたいです。

「ホントはこんなだったの!! TPPの正体」
「TPPに騙されないための4つのヒント」とか。(^^)V


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2013年5月26日 (日)

TPP/SPSルールの恐怖2 日米FTAという悪夢

毒だとわかるまでは、食べろという、SPSルールは、ルール自体が悪夢である。
日常生活の感覚では、不自然で異常に思える。
しかし、国際経済法の分野では、今や当然の原則とされている。
なぜなら「安全だという証明がされた食品を輸入する」という考え方では、安全性にかこつけて、輸入を拒むことがあり、「自由貿易」を阻害することになるからだという。
国民の生命や健康、国や地域の環境保護より、「自由貿易」を優先させなければならない、これが、国際経済法のルールだ。
まるで、「自由貿易」至上主義の新興宗教のようだ。


実は、SPSについては、TPPとの関係では、もう一つ、付け加えなければならない悪夢がある。


日本は、多国間協議で決まるTPP以上に、厳しいSPSルールを押しつけられる可能性があるということだ。


日米事前合意を通じて、USTRが「片面的合意」(日本政府がアメリカ政府に表明した意見)の詳細を大統領に報告した文書が作成された。


この本体部分は、山田正彦氏のブログに仮訳が掲載されている。
これをプレスリリースと評価する向きもあるが、むしろ、USTRからオバマ大統領に対する交渉報告文書と評価する方が法的な意味が明確になると思われる。
オバマは、失効している大統領貿易促進権限法に倣って、議会に日本の交渉参加を認めるように通知しなければならない。
そのための基本情報が、USTRの声明であると考えるのが筋だからだ。


この中に次のくだりがある。

非関税障壁(NTM)

アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関しては別添fact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されてい

この別添ファクトシートで、SPSルールについては、次のように記載されている。

WTO/SPS協定に定められた権利・義務にしたがい、食品添加物に関するリスク評価を加速し、簡素化するとともに、防かび剤と人間が消費するゼラチン・コラーゲンに関するその他の課題にも取り組むこと。


これについて、4月19日付日本農業新聞は、次のように解説している。


 一方、米国は今月1日に公表した2013年版のSPS報告書でも、これらを指摘していた。防かび剤については、日本がポストハーベスト(収穫後)に使用 する防かび剤を「食品添加物」と「農薬」の両方でリスク評価をしていることに対し、手間が二重に掛かり、新製品の認可を妨げていると問題視する。

 同報告書は、米国での牛海綿状脳症(BSE)発生を受けて日本が続けている、米国産の牛など反すう動物を原料とするゼラチンやコラーゲンの禁輸解除を要求。食品添加物については「米国や世界中で広く使われている添加物が、日本では認められていない」として規制緩和を訴える。

 米国からすると、これらはいずれも長年の懸案課題。TPP交渉をきっかけに、日本に要求を飲ませるもくろみがあるとみられる。


この並行二国間協議は、これまで日米で行われたきたような政治的交渉ではなく、法改正や、条約締結といった法的な拘束力を持つことが事前合意で明らかにされている。
つまり、TPPで認められる以上に高度で、厳格なSPSルールの厳守を法的に約束させられようとしているのだ。


実際に、加盟157ヶ国に及ぶWTOにおいて、有害であるという十分な科学的証拠がなければ、輸入せよというSPSルールを厳格に順守している国はないと言ってもよいだろう。
多国間になればなるほど、合意は、相当の温度差のある加盟国間の妥協の産物であるだけに、その徹底はむつかしくなる。
食品添加物のような多種類に及ぶ物質について、一つ一つをWTOの紛争処理手続にかけるのは、現実性も実効性もない。


日本が、国益を損じても、ひたすらTPPに参加したいとの弱気の交渉姿勢であるのにつけ込み、どさくさ紛れに、長年の懸案に一気に片を付けるというのが、TPPと並行する二国間並行協議である。
日本は、週刊新潮が報道したような危なすぎる食材の輸入を一気に解禁させられることが避けられない。


かくして、日本は、将来、毒だと判明するかも知れない、アメリカ産の薬漬けの人体実験場となるのだ。

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2013年5月25日 (土)

【拡散希望】TPP/SPSルールの恐怖1 毒だという科学的証拠がないものは食べよ

TPPで協議の対象とされている21分野の1つにSPSと書かれた分野がある。
SPSとは「衛生植物検疫措置」のことだ。


国家は、自国の域内に人や動植物の健康や、環境に有害な食品や動植物が侵入することを防ぐ権利を有する。
この権利の行使を国際経済法の言葉では、「衛生植物検疫措置」という。
「植物」とあるが、この場合「動物」や「食品添加物を含む食品」等も含まれている。


この「衛生植物検疫措置」について加盟国の統一基準を定めるのがSPSの分野だ。


SPSルールは、別にTPPで新たに設けられたものではない。
WTO(世界貿易機関)設立条約(1995年)の一部となっている。
したがって、TPPにおいて合意されるSPSの最低限度の内容は、WTOのSPSルールを勉強することでわかる。


さて、食品添加物や残留農薬、ポストハーベスト(採取後に保存・防カビ等のために添加される農薬)、BSE牛、遺伝子組み換え食品等の輸入について、国民にとって望ましいルールはどちらだろう。


A 安全性が証明された食品を輸入する。

 

B 有害性について科学的証拠がなければ輸入する。


大方の人は、Aが望ましいルールだと考えるのではないだろうか。
ところが、WTOではBが採用された。
WTOのSPSルールは難解な条文だが、ベースとなる原則は紛れもなくBだ。


つまり、現に有害であるとする十分な科学的証拠がない限り、有害な食品であっても、基本的に輸入しなければならないのだ。


たとえば、遺伝子組み換え食品など、進んで食べたいという人はそう多くはいないと思う。
遺伝子組み換えという発想が、トマトに北極ヒラメの遺伝子を注入するとか、成長を早くするために魚にヒトの遺伝子を注入すると言ったグロテスクなものだと知れば、なおさらに嫌気がさすのではないだろうか。
遺伝子組み換え食品の製造は日本では実験目的以外には許されていない。


ところが、日本では遺伝子組み換え食品が、広く流通している。
こうした遺伝子組み換え食品が、有害であるという十分な科学的証拠がないとされているために、輸入しなければならないためだ。
かろうじて、現状では、豆腐や味噌といった直接の加工食品だけに表示義務を課して、遺伝子組み換え食品を直接、食べるかどうか消費者の選択に任せるというのが日本の現状だ。
日本の畜産では遺伝子組み換えトウモロコシがエサに使われているし、サラダ油、コーン油などの原料である菜種やトウモロコシも遺伝子組み換え食品が使われている可能性が高い。
知らない間に日本人は、遺伝子組み換え食品を食べさせられている。


日本では禁止されているのに、成長ホルモンを用いたアメリカ牛が広く流通していることは週刊新潮が伝えるとおりだ。
有害であるという十分な科学的証拠がないために、成長ホルモン漬けの牛でも輸入しなければならないからだ。


それもこれもSPSルールがBのルールを原則としているからだ。


有害である科学的証拠がなければ、輸入しなければならない。
これがSPSルールの本質である。

 

だから、自由貿易のおかげで、私たちは、安全だという証明のない食品を、どんどん食べさせられている。


この、今のところ毒だという証拠がないから、毒でも食べろという、SPSルールをさらに徹底しようとしているのが、TPPだとみてよい。

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2013年5月24日 (金)

【要旨ご紹介】週刊新潮5月23日号 TPPで押し寄せる危なすぎる食材

残念ながら、現在販売されている週刊新潮は5月30日号になってしまいました。
でも、バックナンバーを、直接、取り寄せる方法もありますので、関心をひかれた方は、是非、お試しください(但し、5月23日号については、5月29日までのようです)。
マチベンは、業務の都合上で(^^ゞ、かつてフラッシュのバックナンバーを取り寄せたことがあります。そのときは、相当、遡っても、送ってくれました。

 

店頭在庫がなくなったところで、牛肉関係と食品添加物関係について、要旨を紹介することといたします。
(販売中に内容を紹介すると、ネタバレになるといけませんので、控えました)



記事は、アメリカの肉牛は、狭いスペースに牛を押し込めることで運動を制限して太らせる「フィードロット方式」という方法が採られていることの紹介から始まる。

飼育現場を視察した畜産業者は、「至るところが糞尿まみれになっていた。充満する悪臭で、息もできないほどでした」と語る。


山田正彦元農水相が、大規模食肉処理場を視察した経験を語る。
「異様な臭気が漂っていて、とても清潔とはいえない環境だった。」
日本では、食肉処理の過程で行われる背割りの前に十分に髄液を抜くが「アメリカでは吸引が十分ではないので、背割りの瞬間に髄液が牛の全身に飛び散る
「殺されてベルトコンベアーに載せられる前のラインに明らかな“へたり牛”が何頭かいたのには驚きました。へたり牛とは自力で歩くのもままならないような弱った牛で、BSEへの感染が疑われます


アメリカ牛は、ホルモン牛として有名です。
先のブログに述べたとおり、アメリカ牛は成長ホルモンを投与して効率的に育てられます。
成長ホルモンを投与した牛は感染症にかかりやすくなるので、抗生物質も投与してあげます。
こうしておいしくて安いアメリカ牛が効率的に育つ仕組みです。
工業化された畜産です。
成長ホルモンを投与してやれば、人間も効率よく育ち、労働力になるまでの期間が短縮できるので、子育ての手間も省けるかもしれませんね。

 

さて、記事は、続く。


日本国内ではこうしたホルモン剤の使用は禁止。
が、不思議なことに、ホルモン剤を投与された牛の輸入は認められている。


抽出検査で「米国産牛肉には、国産に比べると赤身で600倍、脂身で140倍のエストロゲン(女性ホルモン)が含まれていた」と北海道対がん協会細胞センター所長藤田博正医師は語る。


エストロゲンは、乳ガンや子宮体ガン、前立腺ガンなどのホルモン依存性ガンの危険因子である。日本におけるホルモン依存性ガンの発生率は1960年代と比べて5倍に増加、それと比例するように牛肉消費量(内25%アメリカ牛)も同じく60年代比で5倍になっている。


他方で、EUは、1989年以降、ホルモン牛の輸入を禁止している。
その結果、ヨーロッパ30カ国の乳ガン死亡率が低下した。北アイルランドで29%、オランダで25%、ノルウェーで24%などとなっているとする論文が英国の医学誌『BMJ』に紹介された。


全てを紹介するのも骨が折れるので、食品添加物まで飛ばします。
アメリカを旅行した人から、食事が美味しかったという話を聞くことはあまりないように思います。
毒々しさに辟易したという声も聞きます。
ちなみにマチベンはアメリカ未体験の上、アメリカは広いので、一律にはいかないかもしれません。


食品の風味や外形を整えるために使用されている食品添加物は、日本で約800種類、アメリカでは約3000種類と国ごとに認可されている種類が異なる。
添加物について、食品添加物評論家の安部司氏は
「2007年に英国のサウスサンプトン大学の研究グループが発表したレポートによれば、日本でも認可されている添加物の食用赤色40号などと安息香酸ナトリウムという保存料を同時に摂取した際、子どもたちに多動性障害を引き起こした研究結果が出ました。添加物が恐ろしいのは、複合毒性や相乗効果があることなのです」と語る。


以下、記事は、添加物に関する国際基準について触れているが、マチベンが調べた範囲では、TPPの恐ろしさを、やや甘く見てしまっているように思われる。
実態はいっそう、恐ろしいと思われる。
日本では未認可の食品添加物の転化された食品の輸入を拒めるかどうかは、国際法に関わり、TPPに加盟すれば、法的な強制が働くと見た方がよい。


ということで、WTO/SPSルールに触れる前段としたい。

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2013年5月21日 (火)

「月刊日本」デビュー

月刊日本』にデビューしました。
6月号に「わが国の国家主権を奪う多国籍企業」というインタビュー記事が掲載されています。


インタビューを受けた編集部は、全員がタバコを吸うために堂々と灰皿が置いてあるという実に懐かしくも、硬派な所でした。
喫煙習慣病患者の僕は、吸ってもいいということに安心して、結局、吸わずにインタビューが終わりました。


掲載紙を送っていただきましたが、他の内容も骨のある内容ですね。
今どき、貴重な情報源になりそうです。


これぞ、真正右翼…(^^ゞ

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TPPで食の安全が脅かされる 週刊新潮5月23日号お勧めお早くお求めを

週刊新潮先週号はお薦め。
TPPで、一番、身近な食の話題を採り上げている。
気がついたら、あさってには、店頭から消えますので、お早めにお求めください。


TPP交渉に深刻な懸念
中国産に気を取られるあなたの食卓に米国産「危なすぎる食材」

▼日本人視察者が目を疑った「肉牛」飼育現場は糞尿まみれ

▼米国産「牛肉」輸入禁止24年で欧州はホルモン依存症ガンが減少

▼カリフォルニア産オレンジに強烈なる「防カビ剤」

▼アメリカ名門大学で「養殖サーモンは年に6回まで」のレポート

▼日本で認可されていない「食品添加物」2200種類がやってくる

▼袋を開けたらカビだらけだった「カリフォルニア米」の有害性

▼米通商代表部が「大腸菌付着に問題なし」と冷凍フライドポテト


牧場経営の経験がある山田正彦元農水相が、アメリカ牛の畜産現場を視察し、あまりのすさまじさに唖然としたというエピソードも入っています。


アメリカでは、牛を早く育てるために、成長ホルモンを投与しています。
成長ホルモンを投与した牛は感染症にかかりやすくなるので、抗生物質も投与します。
こうして、出荷までの時間を短くして、効率的な牛の生産ができているのですね。


成長ホルモン牛は、日本人は接種していますが、EUはWTOの判定にも反して断固として輸入を拒否しました。
その間、日本人の乳ガン発生率は5倍になり、EUの乳ガン発生率は30%減といったデータも出ています。


最近、ISD以外にSPS協定(衛生植物検疫協定)のお勉強も始めました。
食の安全が脅かされるというのは、比喩ではありません。
グローバル資本ルールにしたがって、私たちが薬漬けにされるのは、法律的に説明できます。
近いうちに、SPS協定の紹介をさせていただく予定です。

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2013年5月20日 (月)

ISD条項の実務 敦賀原発2号機直下の活断層と「間接収用」

敦賀原発2号機の直下の断層が原子力規制委員会によって活断層と断定され、廃炉の可能性が出てきたと伝えられる。
日本原電の浜田社長は、廃炉になった場合、震災以降、国の指示に従って行ってきた安全対策の費用を国に請求することも検討すると語った。



この場合、仮に日本原電が外国投資家に当たるとしてみよう。
ISD条項に基づく提訴が可能であるか。
勝訴の見込はどのくらいあるか。
賠償はどういう基準で算定されるか。
以上について、検討する。


まず、ISD条項に基づく提訴を考える場合、万能の「収用法理」を持ち出すことが得策であろう。
その場合、本件が「間接収用」に該当するかについてであるが、経産省によれば、「所有権等の移動を伴わなくとも、裁量的な許認可の剥奪や生産上限の規定など、投資財産の利用やそこから得られる収益を阻害するような措置も収用に含まれる」とされている(経済産業省 通商政策局 経済連携課「投資協定の概要と日本の取組」2012年11月)。


この定義の前段は例示であり、結局、再稼働の不認可が「投資財産の利用やそこから得られる収益を阻害するような措置」に当たるかどうかが問題になる。


本件は、「裁量的な許認可の剥奪」に著しく近いから、改めて検討するまでもないかもしれないが、念のために間接収用に該当するか否かについてTPPで採用されるアメリカ判例法理による判断基準を掲げておこう。
    ①政府措置の経済的影響の程度
    ②政府措置が明白で合理的な投資期待利益を侵害した程度
    ③ 政府措置の性格等


敦賀原発2号機のケースは、①経済的影響は甚大であり、②明白で合理的な投資期待利益を著しく侵害していることも明らかである。したがって、政府措置の性格を問題にするまでもなく、「間接収用」に該当することが明らかである。
(収用は、もともと公共目的でなされることが大前提であるから、政府措置が重大な危険性を避けるためにやむなくなされるものであることは間接収用を否定する理由にはならない)


したがって、外国投資家は、このケースについて、ISD提訴が可能であるし、勝訴も確実と言える。


さて、補償額であるが、浜田社長は「震災以降、国の指示に従って行った安全対策の費用」と語っている。
控えめすぎる。
何もそんなに遠慮する必要はないのだ。


間接収用に当たっては、収用時の投資財産の公正な市場価格(fair market value)によって補償する原則が確立している。
キャッシュフロー方式(中間利息控除方式)によって算定する逸失利益=将来利益を求めるべきである。


したがって、日本原電が外国投資家であれば、稼働可能年数までの間に挙げられたであろう利益に相当する金額を、間接収用と同時に支払うことを求めることができる。支払われるまで商業的に妥当な利率で遅延損害金の支払も求めることができる。
年利6%で請求するのが真っ当である。


外国投資家は、他社の原発事故で引き起こされたようなリスクも負わなくてよい。投資家の期待はノーリスクで保護されなければならないのである。


なお、日本国憲法によれば、致命的で取り返しのつかない事故を回避するための手段として合理性があるから、公共の福祉による財産権の規制として、当然、適法な措置である(憲法29条2項参照)。電力会社に何らかの補償をするべきかどうかは、政府の政治的裁量・政策の問題にとどまる。国民(この場合、在日・滞日外国人を含む)の生命・財産を守ることは国家の責務に他ならないから、財産補償が重大な問題に発展する余地はない。


ISDが導入されると、事態は、ことほどさように厄介になるのである。


ちなみに、現在、電力会社については、外為法によって、外国株主の投資に制限を加えることが認められている。
いわゆる投資分野における内国民待遇の例外規定に該当することになるが、この例外が許容されるためには、全加盟国の合意が必要である。


なお、日本原電が継続的に保守メンテナンス契約や部品供給契約をしているアメリカ(加盟国)企業であれば、その外国企業は、外国投資家として、間接収用に基づく補償を請求できると考えられる。


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付記
最近、日本の最高裁も
財産権至上主義的な判決を下しているようにもみえるし、行政事件訴訟法の下級審での運用状況などから察すると、行政事件も財産権保護(住民利益・環境利益の軽視)に偏った判決の傾向があるように見受けられる。
したがって、仮に日本原電から依頼があった場合、憲法29条3項の「収用」に準じて補償を求めるという構成を採用することも弁護士としては、あり得るだろう。
但し、その場合でも、ISD裁判のような公正な市場価格による補償(逸失利益・稼働利益の補償)ではなく、「正当な」補償を求められるにとどまるので、さまざまな政策的配慮を持ち込んだ補償になるのではないかと想像される。

2013年5月19日 (日)

「光州」に寄せて

昨日は、1980年韓国光州で、軍事独裁政権に対して民主化を求める民衆抗争が起きた日からちょうど33年目の日であった。
民衆抗争は、中国で言えば、天安門事件に匹敵する弾圧事件に発展した。
光州事件と呼ばれる。
この事件は、大学時代の僕に強い印象を与えた事件だった。

光州とは、仕事柄、深い縁がある。
今日は、光州事件に寄せて、光州市民に送った詩らしき文章を紹介しておこう。

--------------------------

おお光州よ

その名は私たちにとって

特別な響きを持っている。

 

おお光州よ

お前は何物も持たない

ただ人間の心を除いては。

そして

人間を包囲し

押しつぶそうとする巨大な力に

立ち向かった。

 

おお光州よ

お前は立ち上がり

軍靴に踏みにじられ

銃剣と砲弾に貫かれ

そして

戦車に踏みしかれ

お前は斃(たお)れた。

 

おお光州よ

しかし、お前はあきらめなかった。

お前は屈服したかのように見せながら

服従と屈辱にまみれた長い時間を耐え

待ち続けた。

なぜなら

お前は人間の真実と真理を知っているからだ。

 

そして

お前はよみがえる。

人間の歴史の

必然の力に押し戻されて。

 

おお光州よ

今、私たちは三菱重工本社の前に

無言で立ち続ける。

激しい日照りと雨と風にさらされながら

歯を食いしばって立ち続ける。

国家という名の

巨大な力に翻弄された、

ハルモニたちと苦難をともにするために。

私たちの

人間に対する信念を回復するために、

人間の尊厳に対する私たちの信念を確かめるために。

ただ黙って三菱重工の前に立ち続ける。

 

おお光州よ

今、お前が私たちに勇気を与える、

今、お前が私たちに信念と覚悟を与える、

そして希望を与える。

海を越えてお前の真理が私たちを揺さぶるのだ。

 

人間の、

人間としての誇りと、

人間としての尊厳が回復され、

人間としての社会が築かれるために、

歩み続ける勇気と信念と覚悟において、

お前の前に

国も民族も権力も無力だ。

 

そうして

お前は全ての

屈従し虐げられた者たちの心に灯りを灯し続ける。

 

おお光州よ

お前の名は

特別な響きを持っている。

人間の希望と、勇気と、信念と、覚悟において、

お前の名は

無限の響き合いを呼び寄せる。

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2013年5月18日 (土)

止まらぬ歴史認識の暴走 対米追随がもたらす日本最悪のシナリオ

橋下徹氏の日本軍「慰安婦」をめぐる発言の暴走が止まらない。
橋下劇場も、今度ばかりは、狙いも見えないし、落としどころも見えない。
掌を返したように批判を続けるマスコミを見ると、とりあえずは、安倍内閣の歴史認識が米国で批判を浴びていることを隠すためのおとりとされているのかとも思うが、安倍氏の歴史認識も米議会の報告書という歴とした公文書に残された訳だから、事態はそれほど簡単ではない。


つい先頃は、猪瀬都知事がアメリカ発信で、イスラムを侮辱する発言し、イスラムの人々が日本に寄せていた信頼という重要な資源に打撃を与えたばかりだ。
当事者であるトルコに対する謝罪も発言から10日以上も経ってからようやく思いついたように行われた。
ましてイスラム諸国の人々に対する謝罪など想像もできないに違いない。
この国際感覚の欠落は首都の顔として失格である。


東西の二大都市の首長が、このざまである。


問題は、日本の顔である安倍首相だ。
この人は、河野談話・村山談話と積み重ねてきた東アジアとの信頼を回復するための先人の努力を根底からひっくり返し、無にすることを心底から願っているとしか思えない。
アメリカを困惑させている。


安倍自民党は、教科書から近隣諸国条項を外そうとしている
また、見解が分かれる問題については数値の具体的根拠を示すことを求める方針とも言う。
「数値の具体的根拠」を厳格化すれば、運用次第で、南京虐殺も日本軍「慰安婦」も教科書から消えるかも知れない。


極めつけは、突然の北朝鮮への特使派遣だ。
北朝鮮のミサイル騒動の最中に、靖国集団参拝を容認して関係国の足並みを乱した末、ようやく中国が重い腰を上げて経済制裁に踏み切った途端に、5カ国を出し抜いて、北朝鮮への特使派遣だ。
間が悪いことにどうして気がつかないのだろう。
TPPでは屈辱的なまでに卑屈に振る舞う人物が、今回に限っては、アメリカには無断だという。
属国が宗主国と無関係に、拉致問題を解決できると考えてでもいるのだろうか。
日本国内向けの人気取りのパフォーマンスか。
いずれにしろ、これもまたアメリカを不快にさせている。


総じて、日本の政治指導者は、国際感覚の欠如が著しく、歴史認識がない。
そうした政治指導者が、いっせいに集団暴走を始めている。


政治指導者が歴史認識を欠く人物ばかりになったのには明らかな理由がある。
アメリカと、マスコミを含むその周辺勢力が原因である。
対米追随から脱して、自立的な外交を展開しようとした政権は何度も生まれた。直近では、鳩山(小沢)政権がある。
対米追随から脱しようとするとき、東アジアとの信頼関係が欠かせないことは見やすい道理だ。
したがって、自立派は、いずれも、表面的にではあれ、歴史認識と反省・謝罪を示して東アジア諸国との信頼関係の構築に努めようとした。
しかし、こうした政治家は、アメリカの怒りを買うか、同調勢力によって、政権を追われ続けた。
自立派が駆逐され続けた結果、真っ当な歴史認識を持つ政治家は、ほとんどいなくなるか、無力となった。


歴史認識を欠く政治家の暴走には、アメリカ要因が極めて強い影響を及ぼしている。
たちが悪いことに、こうした政治家は歴史認識を欠いて勇ましく振る舞えば振る舞うほど、有権者の支持が得られると思いこんでいる。


その先には、悲願の憲法9条改正と、国防軍の保持が待っている。
周辺諸国から孤立して、国防に力を傾注しようとする姿は、なぜか北朝鮮に似てくる。


アメリカは、当面、困惑し、不快の念を示すだろう。


しかし、アメリカは、いつでも選択肢を持っている。
日本再占領を正当化する理由はとうの昔からある。
アメリカが膨大に蓄積させた日本のプルトニウムは、いつでも日本を核保有疑惑国と指定するに十分である。
東アジアで孤立し、イスラムの信頼も失った日本占領に対する批判は国際社会でも出ないだろう。
場合によっては、安保理の強制措置の議決も可能だ。
こうして、アメリカは、イラクやアフガンよりはるかにスムーズに日本の占領をおおぴらに再開することができる。
今や、米軍と一体化した自衛隊は、そのとき、日本占領軍の一翼を担うことになる。


日本国民にとって最悪のシナリオである。
杞憂とも思われていた最悪のシナリオだ。
参院選挙で自民党が勝利すれば、最悪のシナリオは俄に現実味を帯びてこよう。

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2013年5月17日 (金)

TPP 今、マスコミがなすべきこと

マスコミは、すっかりTPP報道から遠ざかっている。
90日経てば、自動的に日本のTPP交渉参加が決まるといわんばかりである。
無権限のオバマは、日本からの前払金を取るだけ取って、アメリカ議会と今、緊密な協議をしている筈である。

90日ルールに関する2002年超党派大統領貿易促進権限法(2007年7月1日失効)の該当条文を以下に貼り付けておこう。

オバマの交渉相手は日本ではない。
米議会である
交渉は、今、本番にあるはずである。

上院財政委員会、下院歳入委員会、自動車業界と関係する委員会はどこだろうか、そうした委員会とも協議をしている。

2107条の議会監視グループの規定によれば、「下院歳入委員会委員長および上院財政委員会委員長は、議会監視グループを召集するものとする。」とされている。
招集されるメンバーは次の通りだ。

下院
(A) 歳入委員会の委員長および幹部委員、および同委員会の3人の追加メンバー(同一の政党のからのメンバーは2人までとする)。

(B) 議会の開催中いつでも行われ、本法律が適用される通商協定交渉によって影響を受ける法律の条項について、下院の規則に基づいて、管轄権を有する下院の委員会の委員長および幹部委員または彼らの指名者。


上院
(A) 財政委員会の委員長および幹部委員、および同委員会の3人の追加メンバー(同一の政党のからのメンバーは2人までとする)。

(B) 議会の開催中いつでも行われ、本法律が適用される通商協定交渉によって影響を受ける法律の条項について、上院の規則に基づいて、管轄権を有する上院の委員会の委員長および幹部委員または彼らの指名者。

相当規模の監視グループの動きがあるはずだから、ワシントンにいれば当然、情報は取れるだろう。
追加入場料を払わされるのかどうか、きちんと見ておく必要がある。
マスコミが監視しないことには、安倍政権は、秘密で追加入場料を払ってしまっている恐れが十分にある。

それにしても、これらの規定を見ると、アメリカは農林漁業に特段の配慮をしていることがよくわかる。
独立国として、第一次産品に特別の保護を与え、配慮をするのは当然のことなのだ。

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第2104条 協議と評価
大統領

(a) 交渉前の通知と協議― 大統領は、第2103 (b) 条の規定が適用されるすべての協定に関して、次の事をしなければならない。

(1) 交渉を開始する少なくとも90日前に、交渉に入ろうとする大統領の意図を書面で議会に提出し、その中に、大統領が考えているかかる交渉の開始日、交渉のための特別な米国の目標、および大統領が意図しているのは協定を結ぶことなのかそれとも既存の協定に対する変更なのかを記載すること。
(2) 通知の提出前後に、上院財政委員会と下院歳入委員会、その他大統領が適当と判断する上下両院の委員会、および第2107条に基づき召集される議会監視グループ、と交渉に関する協議を行うこと;および、
(3) 第2107 (c) 条に基づく議会監視グループのメンバーの過半数の要請に基づき、交渉開始前または適宜に、交渉に関して会議を開くこと。


(b) 農業分野に関する交渉

(1) 一般― 大統領は、その交渉の主題が第2102 (b)(10)(A)(i) 条に基く主題と直接関連する主題について、ある国と交渉を開始または継続する場合は、その前に、ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて決められている農産品に対する米国の関税が、交渉相手国によって決められている関税よりも低いか否かを評価するものとする。さらに、大統領は、米国からの輸入品に関して世界中で拘束され、適用されている関税の水準が、米国の関税よりも高いかどうか、そして、交渉がかかる乖離に焦点を当てる機会を提供するのかどうかを考察するものとする。大統領は、評価の結果、米国が評価で得られた結論に基づいて更なる関税引下げに同意することが適切なのかどうか、およびすべての適用可能な交渉目標をいかにして達成するか、に関して、下院の歳入委員会並びに農業委員会、および上院の農業、栄養および林業に関する委員会と協議をするものとする。

(2) センシティブな輸入製品に関する特別協議

(A) 米国通商代表部は、農業に関する交渉を開始する前に、また、米州自由貿易地域に関する交渉を開始する前に、およびWTOの主催の下での農業分野に関する交渉を開始する前に、本法律の発効後できるだけ速やかに、次のことを行うものとする。

(i) 本法律の発効日に関税率割当ての対象となる農産品を確認し、ウルグアイ・ラウンド合意の結果、米国が関税引下げを行う対象農産品を確認する。これに対しては、関税率が、1994年12月31日に適用されていた関税率の97.5%までの率に、1995年1月1日に引下げられた。
(ii) 次のことに関して、下院の歳入委員会並びに農業委員会、および上院の財政委員会並びに農業、栄養および林業に関する委員会と協議する。

(I) 当該製品を生産している米国の産業界にかかる関税引下げが与える影響を考慮に入れて、項目 (i) に基づいて確認された製品に関わる更なる関税の引下げが適切であるのかどうか;
(II) そのように確認された製品が、ウルグアイ・ラウンド合意に違反して科学的根拠に基づかないなどを含め、不当な一般衛生上または植物衛生上の規制に直面しないかどうか;および、
(III) 交渉に参加している国々が、かかる製品の世界貿易を歪曲する、輸出補助その他の制度、政策、または慣行を維持しているかどうか、及びかかる制度、政策および慣行の米国生産者に与える影響。

(iii) 国際貿易委員会が、かかる関税引下げが当該製品を生産している米国産業界に与える経済的影響、及び米国経済全般に与える影響を評価を作成するよう、要請する。そして、
(iv) 項目 (i)、(ii)、および (iii) に従って、下院の歳入委員会並びに農業委員会、および上院の財政委員会並びに農業、栄養および林業に関する委員会に、通商代表部が交渉において関税自由化を求めるつもりである、項目 (i) に基づいて確認された製品、及びかかる関税自由化を求める理由を通知する。

(B) サブパラグラフ (A) に述べられた交渉が開始した後に、

(i) 米国通商代表部が、サブパラグラフ (A)(iv) に基づく通知の対象ではない、サブパラグラフ (A)(i) に述べられた関税引下げの追加的農産品を確認した場合、または、
(ii) サブパラグラフ (A)(i) に述べられた追加的農産品が交渉の一方の当事者による関税引下げ要求の対象である場合には、
通商代表部は、できるだけ速やかに、サブパラグラフ (A)(iv) に述べられた委員会にそれらの製品及びかかる関税引下げを求める理由を通知するものとする。

(3) 水産物に関する交渉― 大統領は、魚介類の貿易に直接関わる交渉をある国と開始または継続する前に、下院の歳入委員会並びに資源委員会、および上院の財政委員会並びに商業、科学及び運輸に関する委員会と協議し、交渉の成り行きを時宜に適してこれらの委員会に常に報告するものとする。


(c) 繊維に関する交渉― 大統領は、その交渉の主題が繊維及び衣料品と直接関連する主題について、ある国と交渉を開始または継続する場合は、その前に、ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて決められている繊維及び衣料品に対する米国の関税が、交渉相手国によって決められている関税よりも低いか否か及び交渉がかかる乖離に焦点を当てる機会を提供するかどうかを評価するものとする。大統領は、評価の結果、米国が評価で得られた結論に基づいて更なる関税引下げに同意することが適切なのかどうか、およびすべての適用可能な交渉目標をいかにして達成するかに関して、下院の歳入委員会および上院の財政委員会と協議をするものとする。






第2107条 議会監視グループ
(a) メンバーおよび機能
最終期限

(1) 一般― 本法律の成立後60日以内で、かつ各議会の召集後30日以内に、下院歳入委員会委員長および上院財政委員会委員長は、議会監視グループを召集するものとする。


(2) 下院からのメンバー― 各議会で、議会監視グループは、下記の下院議員から構成するものとする。

(A) 歳入委員会の委員長および幹部委員、および同委員会の3人の追加メンバー(同一の政党のからのメンバーは2人までとする)。
(B) 議会の開催中いつでも行われ、本法律が適用される通商協定交渉によって影響を受ける法律の条項について、下院の規則に基づいて、管轄権を有する下院の委員会の委員長および幹部委員または彼らの指名者。


(3) 上院からのメンバー― 各議会で、議会監視グループも、下記の上院議員から構成するものとする。

(A) 財政委員会の委員長および幹部委員、および同委員会の3人の追加メンバー(同一の政党のからのメンバーは2人までとする)。
(B) 議会の開催中いつでも行われ、本法律が適用される通商協定交渉によって影響を受ける法律の条項について、上院の規則に基づいて、管轄権を有する上院の委員会の委員長および幹部委員または彼らの指名者。


(4) 認定― パラグラフ (2)(A) および (3)(A) に述べられた議会監視グループの各メンバーは、本法律が適用される通商協定交渉における米国代表に対する公式のアドバイザーとして、大統領に代わって、米国通商代表部によって認定されるものとする。パラグラフ (2)(B) および (3)(B) に述べられた議会監視グループの各メンバーは、そのメンバーがそのために議会監視グループの一員となっている通商協定交渉における米国代表に対する公式のアドバイザーとして、大統領に代わって、米国通商代表部によって認定されるものとする。議会監視グループは、当該通商協定の特定な目標、交渉戦略並びに立場およびその展開の立案、および通商協定に基づく約束事の遵守と実施に関する立案について、通商代表部と協議し、アドバイスを与えるものとする。

(5) 議長― 議会監視グループの議長は、下院の歳入委員会委員長および上院の財政委員会委員長が務めるものとする。



(b) ガイドライン

(1) 目的と修正― 米国通商代表部は、下院の歳入委員会および上院の財政委員会の委員長および幹部少数メンバーと協議して、

(A) 本法律の成立後120日以内に、通商代表部と本条に基づいて召集された議会監視グループとの間で有益で時宜に適した情報交換を促進するための、書面によるガイドラインを作成するものとする。また、
(B) 通商代表部は、適宜に、必要な修正をガイドラインに行うことができる。


(2) 内容― パラグラフ (1) に基づいて作成されたガイドラインは、特に、下記の事柄について規定をするものとする。

(A) 第2102 (c) 条に規定された一定の優先事項の推進および当該交渉の立場と状況を含む、交渉目標に関する議会監視グループの定期的、詳細報告を、議会監視グループの召集後できるだけ速やかに開始し、通商交渉が最終段階に入った場合は、報告を一層頻繁に行うものとする。
(B) 議会監視グループのメンバーおよび適切な安全性が確保されたスタッフによる、秘密資料を含む交渉に関する関係書類へのアクセス;
(C) 交渉会場での局面を含む、交渉中のあらゆる重大局面における、通商代表部と議会監視グループとの間のもっとも緊密で、実際的な調整;
(D) 当該通商協定の締結後の、通商協定に基づく約束事項の遵守と実施に関する協議;および、
(E) 第2102 (c)(8) 条で要求された報告書の提出時期。



(c) 会議の要請― 大統領は、議会監視グループの過半数の要請に基づき、通商協定に関する交渉を開始する前に、またはその他いつでも、交渉に関して議会監視グループとの会議を開催するものとする。


2013年5月15日 (水)

「トクホゥ」禁止もできなくなるTPP

今朝のNHKニュース、トクホの認定がない商品を「トクホウ」とコマーシャルしていた日本コカコーラが行政指導を受けたと報道されている。


「トクホと誤解のおそれ」で行政指導
NHK5月15日午前5時32分

大手飲料メーカーの日本コカ・コーラが先月発売した炭酸飲料の宣伝について、特定保健用食品、いわゆる「トクホ」ではないのに「トクホ」だと誤解させるおそれがあるとして、消費者庁が改善を求める行政指導をしました。

    消費者庁が改善を求めたのは、日本コカ・コーラが発売した炭酸飲料「カナダドライジンジャーエールFIBER8000」の宣伝です。

宣伝では、商品の新発売を「トクホウ」などと表現し、テレビコマーシャルではその文字を画面に表示して読み上げていますが、消費者庁によりますと、注意をしていないとそれが「トクホ」に聞こえるということです。

(略)

このため、消費者庁はこの商品の宣伝について「トクホ」ではないのに「トクホ」だと誤解させるおそれがあるとして、15日までに改善を求める行政指導をしま した。日本コカ・コーラは「食物繊維を豊富に含む新しい飲み物としてインパクトを与えようとコマーシャルの企画をしたが、結果として誤解したお客様がいた ことは真摯(しんし)に受け止めたいと話しています。

(略)


ググると、週間ダイアモンド(5月7日)がすでにこれを伝えていた。


日本コカ“疑似トクホ”商品に広がる店舗と消費者の戸惑い

トクホ飲料は認可までの時間と研究開発コストがかかり、さらに広告宣伝にも制約がある。日本コカ・コーラは「消費者庁に問い合わせ、宣伝方法について問題ないと確認を取っている現時点でトクホ炭酸商品を発売する予定はない」としているものの、実際にはトクホでないものをトクホを連想させながら販売する商法が消費者や店舗の理解を得られるかどうかは疑問だ。


コカコーラ社は、消費者庁から問題ないと確認を取っているとの主張だ。
したがって、行政指導にしたがう謂われはないはず。
しかし、NHKニュースでは、「結果として誤解したお客様がいたことは真摯に受け止めたい」としおらしい。


コカコーラ社がおとなしいのも今の内である。
TPP後はこうはいかない。
事前に言質を採っていれば、いくら紛らわしくとも、堂々と「トクホウ」とCMを続ける権利を外資は持つことができる。
一貫性のない行政対応は、TPP投資章の「公正・衡平待遇義務」違反に該当するからだ。
仮に、不当コマーシャルを止めさせれば、紛らわしいコマーシャルを続ければ得られたはずの売上収益を含む一切の損害の賠償を求めて国際投資家法廷に持ち込むことができる。
持ち込むのはアメリカ生え抜きのハイエナ弁護士であるからとんでもない巨額の請求である。
このケースではまず負けることはないので、ハイエナ弁護士は、国際裁判にかけることを材料とするビバレッジの利いた交渉をして、日本政府から多額の損害賠償を巻き上げることが可能だ。


お隣韓国では、ソウル市条例で大型スーパーの義務休業日とされている第2、第4日曜日にも、外資コストコが、堂々と営業を続けている。
ハンギョレサランバン06:13)


最高3000万ウォンの過怠金では、抑止力がないの指摘が出ているが、仮に、強制的に休業させれば、米韓FTAでアメリカ投資家に対して認めた、アメリカ法理・慣行が求める「公正・衡平待遇義務」に違反する。
莫大な損害賠償を韓国政府が行わなければならなくなる。


そんなこんなで、市条例を守る韓国大型店は、コストコの一人勝ちを指をくわえてみているしかないのである。

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2013年5月14日 (火)

『阿呆ムラ』球団  [ 需要あるある詐欺]の汚い手口

さるメーリスから、投稿者に無断で後記に転載しておきます。

業務改革委員会というのは、平たくいえば、弁護士の業務分野を広げ、あるいは、業務内容のレベルアップを図ることを任務とする委員会です。
ここで、「弁護士増員に見合うような新規分野などないじゃないないですか」、と率直に事実を述べた弁護士が該当の委員会から外されたということです。
弁護士会や日弁連の仕事はボランティアですから、「やりたい」と言い、「やってきた」実績のある弁護士を排除することは普通、あり得ないことです。


もともと法曹人口増員は、弁護士会内の異論を排除・封殺して始められましたが、今や『阿呆ムラ』になった増員派は、本来的に必要な有能な人材を切り捨ててまで、異 論を排除・封殺しているということになります。異論を排除した仲間内できっと『家庭内のもめ事を家庭内で解決する悪習を止めさせて、法の支配を及ぼせば、やまほど弁護士の仕事がある、ある』と盛り上がっているんでしょう。


しかし、この手口はあまりに汚い。
社会的正義の実現を使命とする弁護士のやることだろうか。
醜すぎる。


なお、ここで出てくる正副というのが、日弁連の常務の執行機関で、通常執行部と呼ぶものです。
執行部の事務方には、さらに日弁連事務局というのがあり、事実上、結構な権限があるようです。
だから、日弁連がTPPに口封じをしているのも、事務局の力も有力である可能性もあります(最高裁事務総局みたいですね)。


市民の皆さんも一度、日弁連事務局長とか事務局次長とかを呼び出して、どうしてTPPに反対しないのか、お問い合わせなさるといいかと思います。
『正確な情報が得られるまで検討しない』というより前進した回答が得られましたら、どこかでご報告ください。


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-------転載開始-------

私事ですが、昨日の○○○弁護士会弁護士業務改革委員会で、○○○弁護士会連合会から推薦する日弁連弁護士業務改革委員会の委員から私が外されたことを知りました。

そこで「委員を続けたいとの意見を申し上げていたのになぜ外されるのか。希望しているのに退任させる例など聞いたことがない。誰が外せと言ったのか理由と併せて教えてもらいたい」と申し上げましたが、委員長は「正副一任で決まったことだから手続的に問題はない」というだけで、まったく理由を教えていただけませんでした(+o+)。

私も(T先生ほどではありませんが)、○○○業革副委員長をX年、日弁連業革委員をY年以上務め、遺言相続センター、中小企業支援センター、ひまわりサーチなどの設立に関与し、日弁連では新分野開拓PT、対外業務広告ではPT座長を務め、出席率も高いはずです。

とすると思い当るのはただひとつ。

日弁連業革委員会で「どの分野でどれだけの経済規模のマーケットがあるのか教えてもらいたい」「ニーズがないならニーズがないと世間に率直に申し上げるべきではないのか」「ろくに成果もないのにシンポジウムを開いて自画自賛するのは会費(2000~3000万円)の無駄遣いではないか」と発言していたことくらいです。

私の推測が当たっているなら、日弁連業革委員会はひたすら「まだ開拓できる分野がある」と同執行部に意見を具申するためだけに存在し、反対意見や少数説などいらないと言っているのに等しいのではないでしょうか。あ、○○○弁護士会の弁護士業務改革委員会も同じですねえ(-_-;)。



以上の私の経験からすると、執行部は、司法改革&法科大学院マンセーの根拠を作るためだけに、何も知らない若手の委員をおだて上げ、アンケートやらレポートを作らせているようにしか思えません。で『潜在的ニーズ』に疑問を持つようになればお払い箱なんでつね…(T_T)。

でも、かといって委員会活動を忌避していると、「改革反対派は公益活動をしない」とレッテルを張られるのですから要注意。したがって、やはりT先生がおっしゃるように、他力本願に頼らず、自ら常議員や委員になってがんがん発言していくしかないと思います。



というわけで、腹立ちまぎれに、拙文ですが小職のパブコメも公開とさせていただきます。

各位にはご協力のほどよろしくお願い申し上げます<(_ _)>。




---転載終わり---

---さらに、同氏のパブリックコメントを転載----

 

法務省大臣官房司法法制部司法法制課 御 中

FAX0355117205

 

 

パブリックコメント

(「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」について)

 

 


 標記件につき、要点を絞って、意見を差し上げます。

 

「はじめに」について

〔意見〕

1 「法曹に対する需要がますます多様化・高度化されることが予想され、法曹が社会の隅々に駿出することが期待された」との出発点が誤りである。

2 ワーキングチーム・フォーラム・法曹養成検討会議の委員の大半は特定の思想や利害関係者で構成されているので、ただちに委員の入れ替えを求める。

〔理由〕

1 上記1の見解は、大学、法学者、法務省、文部科学省、一部弁護士、マスコミなどの妄想である。それは現に法曹に対する需要がないからである。どのような改革であれ負の側面が予想され、その場合の対応策が用意されなければならないが、わざわざ後戻りできない制度を作った責任がどの機関あるいは誰にあるのか、責任の所在を明確にされたい。

2 各機関の委員は、各省の推薦による大学(法科大学院)関係者ら司法制度改革推進論者によって占められている。なるほど構成員の経歴・社会的地位は申し分ないが、市井の事案を扱ったこともない方々であり、中には「今の世の中で経済的事情で大学院進学をあきらめる者などいない」と放言する委員もいたほどであって、委員の構成は著しく公正を欠く。ただちに委員を入れ替えるべきである。

 

1 「法曹有資格者の活動領域の在り方」について

〔意見〕

1 法曹有資格者の活動領域の更なる拡大を図る必要はなく、かつ、不可能である。

2 企業、国家公務員、地方自治体、法テラスなどでの活動領域の拡大は、小手先の弁明にすぎず、根本的な解決策とならない。

〔理由〕

1 利用者が必要と感じる時に生まれるのが需要であって、これに応じた供給が本来の姿である。司法制度改革も需要があるとして始められたものだから、それがないのであれば撤回すべきは必然である。実需があるなら、司法修習修了者の約半数が就職できないという状況が生じるはずはない(日弁連の恣意的な調査結果は、ノキ弁、即独、宅弁、ブラック事務所への就職、任期付就職をすべて含めて就職先があったと評するものであって、実質的な就職率ではないことには注意されたい)。また、小職は、10年にわたり日弁連等で少なからず活動領域の拡大に奔走してきたが、有意に拡大できる領域は存在しなかった。

2 上記2については、いずれも弥縫策にとどまる。日弁連が行った調査によれば、上場企業の95%、地方公共団体の97%が弁護士の採用に消極だったから、法曹有資格者が企業から求められる人材でないことは自明である。「取りまとめ」がこれを指して「急増した」と説くのは、意図的に誤導を招くものであって、詭弁の誹りを免れない。公務員採用も法テラスも終身採用ではなく、弁護士が不安定な身分に置かれることは明らかであって、問題の解決にはほど遠い。

 

2 「今後の法曹人口の在り方」について

〔意見〕

1 「法曹に対する需要は今後も増加していくと予想され」との意見は見当はずれである。それでも了とするなら具体的根拠を明示すべきである。

2 「全体としての法曹人口を引き続き増加させる必要があることに変わりはない」との意見に反対する。

3 「現状においては、司法試験の年間合格者数の数値目標は設けない」との意見は首肯できない。500人程度を目安にすると銘記すべきである。

〔理由〕

1 上記1につき、「とりまとめ」では法曹需要の増加についての論証がまったくない。訴訟件数が漸減し、企業や公共団体にも需要がないことが明らかであるのに、いまだ、夢のような抽象的な論理を振り回すことは正気とは思われない。

2 需要がないのに膨大な量の法曹を供給することは、法科大学院とその関係者にのみ利益をもたらしながら、高学歴失業者の増産を招き、訴訟社会を招き、情報の少ない国民に弁護過誤のリスクを押しつける政策であって、到底許されない。なお、法曹有資格者の自然減は毎年500人程度であるから、たとえ毎年700800人程度の合格者としても、法曹人口が増加する。

3 司法試験の年間合格者数は、毎年500人と明記すべきである。

  検討会議が3000人の旗を降ろしながら目標を設定せず(先延ばしし)、あまつさえ「将来、3000人程度とすべきことについて再び現実性が出てくることはあり得る」などと付記しているのは、一方で法科大学院・大学関係者とそれに大きな権益を持つ文部科学省(露骨に天下り受入れを求めると聞く)に配慮しながら、他方では、数年かけて、法科大学院入学者を2000名程度、司法試験合格者を1500名程度に落ち着かせ、「結局、法科大学院制度は失敗ではなかった」と口を拭って、司法制度改革に関与した責任者への批判をかわそうという見え透いた工作にほかならない。

   とくに、この点に関して、すでに本年度の法科大学院入学者数の集計が完了し、全体で2800人程度と予想されているのに、ことさらこれを発表せず、本パブコメが出そろうまで入学者数を明らかにしない文部科学省や各大学の態度は、本パブコメの意見募集にあたっても、必要な情報を隠し、世論操作を誘導しようとするものである。

   そして、現在の法曹有資格者の数を見れば、少なくとも弁護士が過剰であり、その3割ないし4割が年間所得100万円以下の生活保護レベルにあえいでいることは国税庁の業種別統計によって明らかであるから、これ以上の増員はまったく不要というべきである。

  かりに、今後も法科大学院に投与する予算があるなら、すでに法曹有資格者となった弁護士たちに再教育を受けさせ、あるいはまったく増えない裁判官と検察官に採用すべきであろう。

よって、司法試験の年間合格者数は、毎年500人とすべきである。

 

3 「法曹養成制度の在り方」について

1 「法曹養成制度の理念と現状」について

⑴ プロセスとしての法曹養成

〔意見〕

1 「プロセス」教育論や「ソクラテス」は詭弁である。

2 法科大学院修了を司法試験の受験資格とする制度は即刻廃止すべきである。

〔理由〕

1 法科大学院創設期において、「点」による選抜から「プロセス」としての法曹養成と喧伝されたが、具体的中身はない。そもそも大学教員は、本来特定分野の研究が主業務であるうえ、多くは司法試験に合格したこともなく、安定雇用に胡坐をかき、上から目線でサービス業的発想は皆無であり、法曹教育(とくに実務教育)できる知識も経験も能力もない。したがって、実務法曹を目指す学生が予備校等に通うのは当然だし、旧試験でも2年間の司法修習によって濃密なOJT(プロセス)を得られたから、旧試験による法曹養成が法科大学院に劣るとの論証は成立しない。そこで登場するのが、苦し紛れの「プロセス教育」や「ソクラテスメソッド」であって、これらが、大学人による大学のための「下駄」、「言い訳」にすぎないことは明らかである。

2 とすれば、司法試験受験資格を得るために法科大学院に進むことは、法科大学院及びその関係者の既得権益保持のために、法曹志望者に無用の経済的負担と時間的浪費を強いるものであるから、即刻、司法試験受験資格から法科大学院終了を外すべきである。

 

⑵ 法曹志望者の減少、法曹の多様性の確保

〔意見〕

1 法曹志願者者の減少の理由は、弁護士の大量増員による就職難と所得低下にあり、司法試験合格率に求めるのは誤りである。

2 多様なバックグラウンドを有する人材を確保するためなら、法科大学院卒業を受験資格とする参入障壁を撤廃し、いつでもだれでも司法試験を受けられるように変更すべきである。

〔理由〕

1 司法試験合格率が低くても、旧司法試験の時代には約50倍の志願者を確保できていたから、法曹志願者の減少の原因をそれに求めるのは明らかな誤りである。

2 法科大学院卒業のためには、新卒として就職できる期間を法科大学院に費やし(社会人であれば収入とキャリアアップをどぶに捨て)、多額の学費と生活費を負担し、受験指導禁止を盾にとって学部同様の授業を延々と続ける学者教員の顔色を窺い、ダブルスクールに通う必要がある。これを参入障壁以外の何と呼べばいいのか教えてもらいたい。

  法科大学院の創設とともに増えた「多様な法曹志願者」がいるとすれば、それは、弁護士の2世・3世、社会貢献など考えたこともなかったがプラチナチケットが簡単に手に入ると思った者、両親に資産があって多少のことでは経済的負担を感じない者、公務員試験に落ちた者や就職活動に失敗した者、たんにモラトリアムを求める者などが挙げられる。たしかに、従前と比べれば多様だが、一方で、高学歴を持ちほかにいくらでも就職先がある者、弱者救済の仕事を希求しながら経済的負担に耐えられない者、家族のために安定した就労を捨てることができない者などは姿を消した。

つまり、「多様性」という耳触りの良い言葉も、法科大学院及びその関係者の権益維持のための小道具である。

 

⑶ 法曹養成課程における経済的支援

〔意見〕

1 法科大学院生に対する経済的支援(公金投入)は不要である。

2 司法修習生に対する経済的支援は十分に行うべきであり、貸与制は即刻廃止し、給費制を復活するべきである。

〔理由〕

1 法科大学院出身者の累計でも、法曹資格を得たのは20%台しかいない。すなわち、それ以外の者は法曹とは関係のない進路を辿るのであって(進路があればだが)、公金を投入して育成することに合理性がない。なお、「充実した支援」がなされているかは、検討会議の委員ではなく、直接利用者である法科大学院在籍者、卒業生に聞くべきである。近年、学部から奨学金に頼るケースも約半数に及ぶうえ、法科大学院、修習貸与により順調にいっても総額1000万円の借財ができる。要するに、法科大学院は無用なのである。

2 これに対して、司法修習生は、おおむね法曹として司法権の一翼を担う立場にあるうえ、修習専念義務によって生活の糧を得ることができないのだから、給費制を復活させるべきは当然である。

 

2 「法科大学院」について

⑴ 教育の質の向上、定員・設置数、認証評価

〔意見〕

1 法科大学院が「法曹養成のための専門職大学院」というなら、司法試験対策を行わせないという方針は理解できない。

2 「資質のある多くの者が法科大学院を志願するようになる」との記載は誤記であろう。

3 「法科大学院が全体としてこれまで司法試験合格者を相当数輩出してきた事実を踏まえて」との意味が不明である。

4 法科大学院が法曹養成の中核としての使命を果たすとの考え方自体が誤っている。

〔理由〕

 1 法科大学院の教育の質の向上といっても、本来、司法試験に合格したこともなく、安定した身分で研究に没頭していた学者教員が、実務法曹に役立つ教育を提供することはできない。しかるに、省利省益をたくらむ文部科学省は実務家教員にまで研究論文の要件を課し、学者教員を優遇しようとしている。このような態度で、教育の質の向上が図れるはずがない。

 2 上記のとおり、現在の法曹志願者のレベルが落ちていることは明らかである。法曹(弁護士)そのものに魅力がない(というより生きていけない)のに、優秀な層が法科大学院を目指すとは考えられないから、この種文書にあるまじき誤記と考えるほかない。

 3 「相当数輩出」とはお手盛りも甚だしい。法科大学院を作り、それを受験資格としたのだから、予備試験経由者以外法科大学院の出身であることは当然である。その当然の事実をわざわざ指摘して、「その事実を踏まえて」とは、法科大学院とその関係者を優遇し、存続させることが「取りまとめ」の目的であると言わんばかりである。

 4 以上のように、司法試験と法科大学院を切り離すことがもっとも根本的な第一選択の改革であるから、法科大学院に法曹養成の使命があるかの表現は誤解を招く。

 

⑵ 法学未修者の教育

〔意見〕

  「共通到達後確認試験(仮称)」そのものが不要である。

〔理由〕

  「取りまとめ」では、未修者の1年終了時、2年終了時に試験を課し進級を判断するということだが、その時点で基準で到達していない未修者は留年を余儀なくされ、それ自体が法科大学院生の高齢無職化を招く。もとより、現在の就職状況では、法科大学院で留年しただけでも就職先がなくなることを理解しているのか疑問が残る。

 

3 「司法試験」について

⑴ 受験回数制限

〔意見〕

 受験回数の制限には合理性がないから、撤廃されるべきである。

〔理由〕

 受験回数にかかわらず、司法試験に合格できる能力があるなら、実務法曹に進んでどこが悪いのか。受験回数制限は、一見受験生の将来のことを考えているように見せながら、長期滞留者を司法試験受験生の枠から放逐し、その結果、法科大学院修了者の合格率をあげようとするものにほかならない。しかも、三振後でも、もう一度法科大学院に入学すれば司法試験を受けられるのだから、本当に受験生のことを考えているわけでもない。つまり、受験回数制限は、法科大学院の利益のみを図る巧妙な罠であるから、ただちに撤廃されるべきである。

 

⑵ 方式・内容、合格基準・合格者決定

〔意見〕

1 科目数の削減という考えは基本科目で能力が未達であることを示している。

2 科目数を削減するのなら、法科大学院の教員数も大幅に削減すべきである。

〔理由〕

1 科目数を削減すべきというのは、それだけ法科大学院における基本科目の履修が不十分であることを示している。

2 実務法曹になるのに不要な科目があるのなら、それに応じて、法科大学院の教員も削減し、かつ補助金も削減すべきである。仄聞するところ、島根大学、新潟大学、鹿児島大学法科大学院などの今年の入学者は数人であり、累計の合格率も10%前後でありながら、2030人の教員を用意している。このように社会に還元できない法科大学院が、地方における教育の重要性など説いて補助金を懇願するのは、ひとえに教員全員の給料を税金から出せと言っているのに等しく、見苦しいというほかない。これらの法科大学院は、即刻、退場させるべきである。

 

⑶ 予備試験制度

〔意見〕

1 予備試験枠を拡大すべきである。

2 導入の趣旨から予備試験を制限しようとの考え方は、法科大学院の権益を守れというに等しい。

〔理由〕

 1 予備試験に法曹志願者が集中し、かつ、予備試験組がすべての法科大学院を上まわる司法試験合格率を示したことからすると、予備試験を制限する合理的根拠はない。

 2 これに対して導入の趣旨を重視する立場は、法科大学院(と教員、関係者、天下り権益を持つ者)を守れというだけのことである。その根拠は法科大学院の教育が素晴らしいというしかないが、そうであれば、社会的認知を得て受験資格を外しても入学者が殺到してしかるべきであろう。

 

4 「司法修習」について

⑴ 法科大学院教育との連携

〔意見〕

1 法科大学院が実務への導入教育ができると考えることが笑止である。

2 「法科大学院との連携に関する取組が相当程度効果を上げている」というのは、事実に反する。

〔理由〕

1 法科大学院では書面の書き方も交渉の仕方も、何もできていない。法科大学院出身者の弁護士を雇ってみても実務能力は皆無に等しく、書面も交渉もすべて一からやり直しである。事件は現場で起こっているのであり、大学の中で教えられることはきわめて少ないことを大学人は自覚しなければならない。

2 それを一顧だにせず、「相当程度効果を上げている」という感覚がおよそ信じられない。そもそも上から一方的に信念を開陳するのではなく、たまには謙虚に、利用者である法科大学院出身者の声をきいてみればどうか。教員を生徒が評価するシステムの導入も一考であろう。インターネット上でも、法科大学院の教育に対する不満が渦巻いていることは実感できるはずである。

 

⑵ 司法修習の内容

〔意見〕

  司法修習の重要性を看過している。修習の短縮化は撤回されるべきである。

〔理由〕

   どのように工夫しようと、わずか1年の修習期間で、実務法曹としてのOJTができるわけではない。司法修習期間を、最低でも2年間に伸長すべきである。そのための予算は法科大学院への補助金から振替えるべきである。

 

5 「継続教育」について

〔意見〕

少なくとも、法科大学院が継続教育に協力することは不可能である。

〔理由〕

  法科大学院に、実務を教える能力はない。

 

4 最後に

  上述のとおり、「取りまとめ」の内容は、あまりにも現実とかけ離れた不合理なものというほかない。

未だに法科大学院を「法曹養成の中核」などと礼賛する筆致を見れば、このばかげた法科大学院の制度設計を行った者、法科大学院の利益を守ることに汲々とする委員、法科大学院の崩壊は必至と認識しつつ責任を回避しようとする各省関係者等への配慮が透けて見える。

  もとより中間的「取りまとめ」の起案者も小職が指摘したことなど先刻ご承知であろうが、これは司法権の未来に関することであり、一般国民の利害に直結する法曹養成に関することであるから、右顧左眄するのではなく、矜持を示していただきたい。

以上


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2013年5月11日 (土)

ハイエナ弁護士入門

弁護士に対する実需が減少しているのに、司法改革と称して弁護士数だけを激増させた。
勢い弁護士は、あらゆる紛争をメシのタネにする。
とりあえずは、不貞行為の取締りが弁護士の新たな任務になった。
弁護士はせっせと不貞行為狩りに取り組んでいる。
しかし、これだけで弁護士のメシのタネは足りない。
いずれハイエナ化しなければ弁護士はやっていけないことが明らかだ。
そこで、以下の場合に、どのように対応するのがハイエナ弁護士として正しい対応か、考えてもらいたい。


A  依頼人は倉庫泥棒

倉庫へ忍び込もうとして、天窓から落下して怪我をした泥棒から依頼を受けた弁護士がやるべきことは。

B 依頼人は交通事故被害者

フォード車に乗車中、居眠り運転の車にぶつけられた被害者から依頼を受けた弁護士は、加害者に対する賠償請求の他に何をすべきか。


以下、回答である。


A 倉庫泥棒事件

倉庫を訴え、治療費を初め負傷が治癒するまでの生活費と将来の生活費もあわせて損害賠償を要求する。
理由は、
「真夜中に天窓をあけていた倉庫の管理不十分が落下の責任であり、倉庫は賠償責任を果たすべきだ」からだ。
天窓の大きさと位置が設計ミスに該当するとして、倉庫を設計した建築設計士も訴える。

B 交通事故

フォード社の製造物責任を問うために、加害者の加入する保険会社の持っている別のフォード社の車を用いて衝突実験をやらせる。
断られれば、「弁護士の要請にもかかわらず衝突実験を断った支配人は、フォード社との訴訟に敗けた場合、その費用と責任を負う」との書面に署名を求める。
さらに断られれば、第三者を同伴して再び署名を迫り、再び断ると、第三者である弁護士仲間に向かって、支配人の言動を記録させる。そして、実験を拒否したという文書に署名を要求する。


いずれも元日本火災会長の品川正治氏が語る実話である(雑誌『世界』2012年12月号)。
しかも、これは50年も前、1960年代の話である。


この事態を経験した品川氏は、

「このどちらの事例においても、弁護士自身が諍いを煽り、訴訟へ発展せしめることで、自らの収入を確保しようとする気配が濃厚であった。


実は私はその時まで、日本においても弁護士はもっと増やしていいのではないか、せめて地方の簡易裁判所のある地域には必ず弁護士がいるということろまで増やすべきではないか、と考えていたが、弁護士社会、訴訟社会の恐ろしさを目の当たりに見て、ふっつりとその考えを捨てた。」

と語っている。


当時、米国の弁護士数は70万人、現在は130万人を超えているであろう。
ハイエナ弁護士の先進国では、事態はいっそう油断ならないものになっている。
『被曝』米兵が東電を訴えたトモダチ訴訟は、すでに原告数120名を超えたようだ。一人最低限の損害賠償として1000万ドルを請求しているから、すでに12億ドル(1200億円)を超えている。この他に懲罰的慰謝料も請求されている。
いずれ、これはトモダチ作戦に従事したことが判明している米兵全員をクラスとするクラスアクションに発展するものと思われる。
そうなると、2万を超える米兵×1000万ドル=2000億ドル(20兆円)規模の訴訟になる。
そして、彼らのルールでは、報酬は33%とされ、さらに、一流の医学者の協力費用等諸経費を引くということになるから、認められる金額のおおむね50%は弁護士のものになる。仮に譲歩して1割の200億ドル(2兆円)で和解したとしても、100億ドル(1兆円)が弁護士のものになる。
アメリカでは弁護士は一大産業化しているのだ。


アメリカ弁護士協会が2002年に行ったアンケート調査によれば、『大半の弁護士が依頼者の利益より自分の利益を優先している』、『弁護士は少ない方がよい』とする意見が過半数に及んでいる。
また、50%の人が医者を信頼しているのに対して、弁護士に対する信頼度は2割を切っている。しかも裁判所に対する信頼も30%程度に下がっている。
弁護士を増やすとは、そういう社会を目指すということなのだ。


消費者訴訟制度に経済界は異議を唱えているが、異議を唱えて止められるのも今の内である。
過剰弁護士はいつでもハイエナ化するし、TPPという後ろ盾を得ることになれば、米国の法律産業界が子飼いの日本法弁護士に、旨い汁を吸わせなければならないから、必ずクラスアクションの整備を求めてくるに違いない。
アメリカの弁護士(彼らも外国投資家になりうる)にとっては、閉鎖的な日本の裁判は、期待利益を阻害するものに他ならないから、クラスアクションが存在しないことを理由として、国際裁判所へ日本政府を提訴することが可能である。
過剰な弁護士にとっては、アメリカの後ろ盾を得て、大企業を狙い打ちにできるクラスアクション制度は、またとない慈雨ともなろうというものである。


財界がそこのところを理解してTPPを推進しているのか、甚だ心許ないと言わざるを得ない。

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2013年5月10日 (金)

死んでも阿呆ムラは治らない 『法の支配をすみずみ』教

崩壊大学院の擁護者の合い言葉は、「法の支配をすみずみまで」である。


法廷の前には、その日に法廷が開かれる事件の一覧表が掲示してある。
かつて圧倒的に多かった「不当利得返還請求事件」(サラ金過払金返還請求事件)はめっきり減った。
代わりに目に付くのが、「慰謝料請求事件」である。
これは自分の配偶者と不貞行為に及んだ第三者に慰謝料を請求する事件である。
「飼い犬に手を出した奴は許さん」訴訟ともいう。
この分野には、確かにこれまで法の支配がすみずみまで及んでいるとは言い難かった。
何より、学説では、第三者に慰謝料を請求するのはナンセンスとする説が圧倒的であるし、夫婦間の不仲の原因を第三者になすりつけるのはどうかという人生観を持った弁護士も多数いたのである。

しかし、事件がないのに、弁護士が増えた。
世に不貞行為は、掃いて捨てるほどある。
弁護士がたからない訳がない。
すでに、3年ほど前の判例専門誌で、岡山の裁判官が、当裁判所の事件の3大類型は、過払金請求事件、交通事故事件、そして不貞慰謝料請求事件だと書いていた。
弁護士を増やした効果は、現状では不貞行為の取締りに現れているようである。
探偵社も一緒になって不貞行為を食い物にしているので、不貞行為産業が成り立っているようだ。
しかし、結局、認められる金額が大した金額ではない上、手間暇もかかる。判決を取っても回収できないことも多い。
残念ながら、マニュアル通りにやれば、取りっぱぐれのなかった過払金請求とは市場規模があまりにも違う。


先日、NHKのラジオに出演していた日弁連執行部の弁護士は、「家庭内のもめ事を家庭内で解決してしまうという悪習が日本には残っている」として、どんどん弁護士を使うべきだと主張していたから、家庭内のもめ事にも、どんどん弁護士を介入させて「法の支配」を及ぼすべきだというのが彼らの世界観なのだろう。


需要がないのに、供給を増やした。
その反省もなく、とにかく需要を掘り起こそうというのが性懲りもない日弁連執行部の考え方なのだ。
阿呆は死んでも治らないのだ。

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2013年5月 9日 (木)

無駄な抵抗はやめよ、崩壊大学院

崩壊大学院の93%が定員割れだそうだ。
めでたいことである。


法科大学院発足以来、概算1000億円の予算を費やして、弁護士を見事に没落させた張本人は文科省と、権力の中枢に入ることこそ弁護士の使命とばかりに司法改革を加速化させた日弁連執行部である。

役に立たないロースクールに卒業まで概算400万円~600万円の学費を払わせた上、研修専念義務のある司法研修所の研修を受けるための生活費300万円をオリコを連帯保証人とする借入をさせ、将来オリコの使い走りをすることになりかねない弁護士を大量供給する結果を招いたのも文科省や法務省と結託した日弁連執行部である。


日弁連執行部を中心とする阿呆ムラは、まだ「プロセスとしての教育」とかほざいて崩壊大学院を維持しようとしているが、司法研修所の研修こそ、「プロセスとしての教育」である。
プロセスを大事にするには、それなりの基礎知識が必要であって、算数も知らないのに、集合や微積分をプロセスで考えさせようとしたところで、所詮無理はわかっていた。


数学を学んでこそ、高等数学をプロセスとして理解できるのである。
残ったのは、膨大な国費の無駄遣いと、奨学金、貸与金という借金を抱えた膨大な若き弁護士、弁護士未登録者の群れである。
彼らは被害者ではあるが、こんな中には、ハイエナのようにたくましく生き残ろうとして、庶民を餌食にする者がいるから、弁護士公害が問題になるのも時間の問題である。


何と言っても、司法研修所は、選りすぐりの実務家が基本的に常勤で指導する教育システムである。

寄せ集めの実務家臨時教員と実務を知らない学者のロースクールが太刀打ちできるはずがない。

前者を切り捨てて、後者を推進しようというこの間の政策の誤りは考えてみれば、最初から明らかだった。

いいタイミングで、毎日新聞が記事にしてくれたものだ。
二番目の記事に出てくる愛知県の57歳の弁護士は、僕のよく知っている衆目が認める(?)優秀かつ志の高い弁護士である。

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弁護士収入:2割が年収100万円以下


 弁護士の大半は個人事業主として活動しているが、その2割は、経費などを引いた所得が年間100万円以下であることが国税庁の統計で分かった。500万円以下だと4割にもなる。弁護士が急増したうえ、不況で訴訟などが減っていることが主原因とみられる。一方、1000万円超の弁護士も3割以上おり、かつては「高給取り」ばかりとみられていた弁護士業界も格差社会に突入したようだ。
 国税庁は自営業者ら個人事業主の「総所得金額等」を業種別にまとめている。総所得金額等は収入から必要経費などを引いた金額で、サラリーマンの「手取り給与」に近い。
 弁護士の中で対象となるのは、2008年、2万3470人▽09年、2万5533人▽10年、2万6485人▽最新の11年、2万7094人で、登録弁護士の8割を超える。
 国税庁の統計によると、このうち08年は、100万円以下が2879人(全体の約12%)、100万円超500万円以下が4684人(同20%)だった。しかし、09年は、100万円以下が5189人(同20%)と急増。11年は、100万円以下6009人(同22%)、100万円超500万円以下5208人(同19%)だった。
 一方、1000万円を超える高収入の弁護士の割合は年々減っているが、11年でも約34%に上る。
 統計の対象となる弁護士は、事務所を自分で開いたり、他人の事務所に間借りして個人営業する「ノキ弁」(軒先弁護士)ら。勤務先の法律事務所から給与だけをもらい、所得税を源泉徴収されている弁護士は含まない。
 低所得の弁護士はなぜ増えるのか。弁護士会などは司法制度改革による弁護士の急増を要因に指摘している。同改革は訴訟数増加や役所・企業への弁護士進出で弁護士の仕事が増えると想定していたが、景気低迷などの影響で、実際にはそのようになっていない。最高裁によると、裁判所が新たに受理した訴訟などの事件数は03年の612万件から、11年には406万件に落ち込んだ。
 こうした需給のアンバランスを受け、日本弁護士連合会は司法試験合格者数を現在の年約2000人から1500人程度にすべきだと提言している。司法制度見直しを議論してきた政府の法曹養成制度検討会議は今年3月、年3000人程度としていた合格者数目標を撤廃する案を公表した。【渋江千春】



弁護士収入:増えた人数、業務は減 事務所維持で借金も

 国税庁の統計で、所得格差が大きくなっている傾向が判明した弁護士業界。業務の需要が思うように増えないまま弁護士だけが急増し、生活するのが精いっぱいだったり、事務所を切り盛りするために借金をしたりする弁護士も出ている。
 2009年に弁護士登録した大阪弁護士会所属の男性弁護士(32)は、総所得金額等が100万円以下だ。同居の母親が事務員を務め、「母の給与と合わせて何とか生活できている。採算に関係なく、困っている人の訴訟などを受け持ちたいが、余裕がない」と嘆く。
 愛知県のベテラン弁護士(57)は、12年の総所得金額等が前年の約1000万円から約350万円に激減した。払い過ぎた利息を消費者金融から取り戻す「過払い金返還請求事案」を取り扱っていたが、返還請求がピークを過ぎ、反動に見舞われたという。
 弁護士と事務員を1人ずつ雇うが、資金が底を突きかけ、金融機関から約500万円を借りた。現在の手取りは月約15万円。不況の影響で、勝訴しても相手側からお金が取れなくなっていることも響いているという。「弁護士が増えて仕事を取り合っている状態だ。このままだと、皆がじり貧になる」と話す。
 大阪弁護士会の別の弁護士(54)は、収入のうち顧問料などの固定収入は2割程度しかない。「安定収入がある事務所は少数だ。事務所の家賃や事務員の給与など支出は毎月あり、やり繰りが厳しい所が多い」と明かす。日弁連の08年発表の調査によると、全国の中小企業の63%が「顧問弁護士は必要ない」と回答した。この弁護士は「事件を抱えるかどうか不確定なのに、不況の中、お金を払ってまで顧問を依頼する人はなかなかいない。今後も業務拡大が進むとは思えない」とし、「若手弁護士の状況は改善されず、一生懸命仕事をしても普通の生活水準を得ることすら困難だろう」と指摘する。【渋江千春】

ISD条項の罠15 Metalclad-Mexicoケースメソッド

以下は、環境保護に関わる法律家の機関誌『環境と正義』に寄せたメタルクラッド事件に関する解説である。
TPPムラは、国と自治体が違う対応を取ったのだから、賠償はあったり前だと言うが、生活者の視点からはとんでもないことだということを分かってもらいたくて、こうした分析となった。

人権と正義を旗印にするなら、日弁連もこの程度の想像力は持って欲しいものである。


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ISD条項と環境保護・環境保護運動

     弁 護 士 岩月浩二

     (TPPを考える国民会議世話人)

 以下は、ISD条項に基づく仲裁の代表的な判例として必ず採り上げられるMetalclad社対メキシコ合衆国の事例をもとに、若干の脚色と想像を加えたものである。

1 有害廃棄物処理場反対市民運動

 近くの渓谷で建設工事が進んでいる施設が有害廃物処理場であることがわかり、G市の住民は震え上がった。処理場からは発ガン性物質が放出されるとの情報もあり、住民は慌てた。連邦政府は、すでに有害廃棄物処理場建設と操業の許可をM社に与えていたが、住民にとっては、健康は譲ることのできない価値だ。

 住民が施設の危険性を知ったときには、工事は相当に進行していたが、住民は諦めることなく運動に立ち上がった。世論は一気に燃え上がり、建築許可を担当するG市は、許可を保留し、M社に建築許可が出るまで工事を中止するように求める事態になった。しかし、M社は連邦政府の許可を得ているとして、強引に工事を進め、工事は完成してしまった。

 M社は処理場の操業を祝うため連邦政府の役人を招いた大々的なオープニングセレモニーを計画した。住民は、自分たちの命と健康を守るために断固、式典を阻止することを決定。数百名の住民が式典会場前に押しかけ、式典は阻止された。

 住民運動の盛り上がりに、G市も応えた。M社が、建築許可が出る前から、工事を開始し、市が中止命令を出しても工事を続行したことを理由に、M社の建築許可申請を棄却したのだ。工事は完成している。いつでも操業してもおかしくはない。M社と住民のにらみ合いは続いた。

 住民運動の盛り上がりは州政府も動かした。州政府は、渓谷一帯を自然保護区に指定し、M社は操業断念に追い込まれた。

 住民運動の勝利だ。住民は命と健康を守ったのだ。

2 国際投資家仲裁

 M社はアメリカ国籍の外資だった。M社は、直ちに投下資本と操業により得られた筈の利益が損なわれたことを理由に、連邦政府に2000万ドルの賠償を求める通告書を送付した。

 これまでなら、この請求は、高をくくって無視することも許された。なぜなら、M社は、せいぜいS州にある裁判所に連邦政府を相手取った賠償請求の訴訟を提起する程度のことしかできなかったからだ。しかし、今回は事情が違う。連邦政府は、何とかM社の要求額を値切ろうと、必死になった。しかし、M社は頑として譲らなかった。

 6ヶ月後、連邦政府は、投資紛争解決国際センター(ICSID)に提訴された。政府は、NAFTA(北米自由貿易協定)で、国際仲裁に服する旨の包括的な同意をしていたために強制的に国際仲裁の場に引っ張り出されたのだ。

 原告M社のアメリカ人弁護士は、強力な手練れの者がなった。また、原告側の選定した仲裁人は、これまで何度も国際仲裁の手続に関与した国際センターでもよく知られた著明な法律家だった。

 被告政府は不慣れだった上、何十万ドルにも及ぶ弁護士費用にも事欠く財政状態だった。適切な国側仲裁人に心当たりもないため、たまたま政府役人が知っていた弁護士がセンターの仲裁人名簿に掲載されていたので、仲裁人になってもらうように懇請した。

 3人目の仲裁人が仲裁委員会委員長となるが、これは原告と被告の合意で選任することになっていた。結局、折り合いが付かなかったために、世界銀行総裁を兼ねる国際センター理事長が選任した者が仲裁委員会委員長となった。世界銀行に対する出資額は、アメリカが突出しており、出資額による多数決によって選ばれる世界銀行総裁になった者は、これまで全てアメリカ人だ。

 不慣れな代理人による連邦政府の訴訟進行は哀れなものだった。M社の主張を否定するために、わざわざ申請した連邦政府の高官が、「M社には州の許可も市の許可も不要だと説明した」と証言してしまい墓穴を掘ることになった。身も蓋もないとはこのことだ。M社の有利は確定的になった。

 仲裁委員会は、連邦政府と州、市の一貫性のない一連の行為が、M社の期待利益を著しく侵害した、これは間接収用に該当し、また外国投資家に与えられる最低限待遇義務にも違反するとして、連邦政府に1670万ドルを支払うように命じた。

3 住民運動の無効化(空想)

 連邦政府は、みすみす大金を外資に巻き上げられた。

 連邦政府は、これを理由に、莫大な損害を与えかねない住民運動を徹底的に取り締まることにした。集会やデモは次々と弾圧にさらされることになった。とくに外資を相手にするものには容赦ない弾圧が加えられた。

 こうして、表現の自由を初めとする精神的自由は、ISDを武器とする外国投資家の自由の前に空文化していった。

4 メキシコの憲法体制

 メキシコは、連邦制国家だが、税収を連邦政府が独占するなど中央集権化していることで知られている。この仲裁判断でも、環境・健康に関わる判断権は全て連邦政府に属しており、市が建築許可に当たって考慮できるのは、建物の構造的な欠陥だけであるとされており、州や市の権限は極めて限られている。

 仮に地方対中央の権限をめぐる対立が背景にあるとすれば、このケースでは、連邦政府が、強力な地方からの異論を封殺するために国際仲裁を逆利用することもできたケースである。

5 後日談

 Metalclad社のケースの仲裁地は、NAFTAの第三国であるカナダのブリティッシュ・コロンビア州が選ばれた。

 投資仲裁に上訴制度はないが、当該判断事項が、投資仲裁裁判所の権限に属するかどうか(事物管轄のようなもの)については、事後的な判断を仰ぐ仕組みがある。その場合は、政府は仲裁地の裁判所に判断を仰ぐことができる。メキシコ合衆国からの異議申立を受けた、ブリティッシュ・コロンビア州の最高裁は、仲裁裁判所が違法と判断した大部分を権限外に属するとして取消した。

 投資協定には、実体法として、内国民待遇、最恵国待遇、パフォーマンス要求の禁止等が一般的に盛り込まれる。これらは、制定法主義の大陸法系の法律を扱う日本法の実務家には単に「信義誠実の原則に従う」とか「権利の濫用はしてはならない」というほどに曖昧な規定にしか見えないが、英米法系の不文法主義の国では、裁判規範として十分ということになる。大陸法系の法律家には、判決がが出てみないと内容が分からないという困った代物である。

 本件では、その中でもひときわ曖昧な、「公正・衡平最低限待遇義務」が問題になった。仲裁裁判所は、連邦政府の説明から、G市による建築不許可までの一連の流れが、透明性のルールに反し、これは外国投資家に国際慣習法上の最低限の待遇を保障する「最低限待遇義務」に反するとして、賠償を認めていた。しかし、カナダのブリティッシュ・コロンビア州の最高裁は、国際慣習法上の「最低限待遇義務」には「透明性」の要求は含まれないとして、仲裁裁判所が認めた一連の行為が「最低限待遇義務」に反するとした仲裁裁判所の判断は、その権限に属さない事項について判断したものとして取り消したのだ。最終的には、S州が施設のある渓谷一帯を自然保護区に指定した行為を間接収用(所有名義の移転を伴わないが、実質上、投資家の利益を深刻に侵害する場合)に当たると判断して、結論は維持したが、ここには、国際法の律する範囲に関して、国内裁判所と国際仲裁・外国投資家との間の国家主権をめぐる葛藤が見られる。

 ISD制度が、国内主権を侵害するという警戒が、他国間の争いとはいえ、カナダの州裁判所には、強く窺える。

6 ISDS条項と環境保護

 (Investor-State Dispute Settlement・投資家対国家紛争解決制度)

 ISDS条項の起源は古く、1959年に西独がパキスタンと結んだ投資協定が最初の例といわれる。NAFTAが発効する1994年頃から、ISD条項を含んだ投資協定が激増し、現在では全世界で3000件を超える協定にISD条項が盛り込まれている。ISD条項は、当初は途上国に進出する先進国資本が途上国で財産を没収されるなど直接的な損害を想定して、途上国の司法制度の「不備」を理由として、国際裁判に訴える手続を設けたもので、最近まで抑制的に用いられており、多くても年間1,2件の仲裁付託が確認される程度であった。

 NAFTAが先進国(アメリカとカナダ)の間で初めてISD条項を設けたことを契機として、1997年頃から、国際仲裁付託が一気に増加した。2011年には過去最高46件の仲裁付託がなされ、累計470件に及んでいる。この進展の速さには国際経済法を専門にする学者すら全体像の把握が困難であることを認めている。

 ISD提訴はしばしば、環境・健康規制をめぐる分野の非関税障壁が問題にされ、有害物質の燃料への使用を禁止したカナダの措置(Ethyl事件)、PCBの輸出を禁止したカナダの措置(S.D.Meyers事件)が国際仲裁によりカナダ政府の敗訴や敗訴的和解に終わる等、環境規制に対する有力な攻撃材料になっている。

 2011年には、ドイツの脱原発政策を違法として、スウェーデンのエネルギー企業が国際仲裁に付託する等、国家の中核的な政策に関わる領域まで、外国投資家仲裁により判断される時代が到来している。

 今後の環境保護や環境保護運動を考えるときに、ISD条項の問題は、地球規模で避けて通ることができない課題を投げかけている。ISDは環境保護・環境保護運動の死命を制するといってもよいであろう。
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2013年5月 7日 (火)

TPP日米共同声明は法的に読み解くとこうなる

オバマ大統領及びアメリカ政府には、TPPについて交渉する法律的な権限がない。
TPPの内容はアメリカ議会が決定する。
安倍首相、安倍政権には、TPPに関する交渉権限がある。


この3つを前提に、2月22日の日米共同声明を考えると、米国政府は何も言っていないはずだから、米国政府の言及は外すことになる。両国政府という表現は日本政府となる。
こうして、日米共同声明を法律的に翻訳すると、以下のとおりである。


日本政府の声明

日本政府は,日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には,①全ての物品が交渉の対象とされること,及び,日本が他の交渉参加国とともに,2011 年11 月12 日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。


日本には一定の農産品,米国には一定の工業製品というように,両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ,日本政府は,最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから,②TPP交渉参加に際し,一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。

日本政府は,TPP参加への米国のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが,自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し,その他の非関税措置に対処し,及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め,なされるべき更なる作業が残されている。


①の下線部分は、権限のある政府の表明であるから、一方的な政治的約束として有効である。


②の下線部分は、日本が勝手に「TPP交渉参加に際し,一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。」というだけで、無権限のアメリカ政府がこれに同意した訳ではない。
自分で言って、自分で確認できたとする一人芝居である。


アメリカ政府は、日本が変なことを言っていると聞き置いただけで、全く意味のない部分である。


これを「聖域なき関税撤廃ではないことが確認された」などと宣伝したマスコミの罪がいかに重大で、国の進路を誤らせたか、その後の経過を見れば、すでにして明白であろう。

③の下線部分は、事前協議『合意』において、さらに重大な問題に発展していくことになる。 


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2013年5月 5日 (日)

【再掲】 TPPの内容はアメリカ議会の法律で決められている(3月21日)

原題は「TPP『極秘文書』の入手 『TPPお化け』論の敗北(3/21)
怪しげな『極秘文書』をとりげて騒いでいると読めちゃう標題だったので、改題しました。大統領貿易促進権限法さえ読めば、TPPに反対する人々が危惧していることが、まさにそのままアメリカ法の法的根拠を持ったしっかりした主張であることがわかります。

政府は、TPPのルール作りに参加するためにも、TPPへ参加することが不可欠だと主張し、今やマフィア(米語では、利益集団の意味を持つ)の提灯持ちに成り下がったマスコミが、それを垂れ流すので、国民も何となくそんなものかなと思いこまされている。
「政府は必ず嘘をつく」「嘘は大きければ大きいほどよい」のだから、ウソだ。


このたび、当サイトは、政府の大嘘を暴露する『極秘文書』を入手した。
これは、アメリカ合衆国の公式な法律的な方針である。


極秘文書
何とジェトロのサイトに隠されていた。
この文書は、TPPで実現する、最低限のことが列記されている。


第一の基本方針は以下のとおりである。


米国の輸出品に対する市場機会を減少させ、又は米国の貿易を歪曲するような、貿易に直接関係した外国政府の関税・非関税障壁や政策、慣行などを削減又は撤廃させること


米国にマイナスになるような「関税・非関税障壁、政策、慣行の削減・撤廃」が方針の一番に掲げられている。



この文書は、以下、相当詳細に、アメリカ合衆国の法律的な方針を明記している。


わかりやすいところから、農産品について、まず、触れよう。


外国の農産品が米国において与えられているのと実質的に同等の競争機会を外国の市場で獲得すること、


TPP参加国に、アメリカが海外農産品に与えている待遇と同等以上の待遇をしろという方針である。


著しく高い関税を課している農産品を撤廃・削減させる

具体的には、

米国の関税と同等またはそれ以下の水準まで関税を引き下げること。


補助金などの抜け道は許さない。

不当に農産物市場を歪曲させる助成金を削減・撤廃させること。

 


一方で、自国の農産品に対するガードは固い。
どこかの国のように、弱い分野は、ブランド力を高めて自由市場競争を克服するために改革に努めるなどという健気な発想はない。


米国にとってセンシティブな輸入農産品に対して、関税引き下げ交渉を開始する前に、議会と緊密な協議をして、合理的な調整期間(猶予期間)を設ける


【環境・健康規制関係】


遺伝子組み換え作物表示義務の解除も明確な方針になっている。

バイオ・テクノロジーなどの新しい技術に影響する、ラベリングのような、不当な貿易制限の撤廃 


モンサントの要求ではない。これは、アメリカ合衆国の法律的な方針である。


また、次のような法律的な方針もある。


科学的根拠に基づかないものをはじめとする、不当な一般衛生上または植物衛生上の制限


なるほどもっともだなどと思ってはいけない。
ここでいう「科学的根拠に基づかない」というのは、「有害性の立証ができていない」という意味だ。
安全性に懸念があるから予防的に規制するというものではない。
残留農薬基準も、これを超えると、明らかに健康に悪影響があるという科学的な根拠を示さなければ、非関税障壁として、撤廃を余儀なくされる。
健康を重視する「予防原則」は通用しない。あいまいな健康への悪影響より、外国投資家の利益を害していないか否かが、問われるというのがアメリカ合衆国の法律的な方針なのだ。
ちなみに、中日新聞が報じたところによれば、アメリカのコメに使われる殺虫剤の量は、日本の60倍から80倍に及んでいる。
有害だという科学的根拠がないから、アメリカでは、日本から見れば農薬は野放しに近い。


米国との通商協定の当事国の労働、環境、健康または安全政策および慣行が、偽装の貿易障壁として、米国の輸出品に対して恣意的にまたは不当に差別を行うことがないようにすること


BSE牛に関わる輸入制限は、有害性の科学的根拠がないのだから、
「偽装の貿易障壁」であり、「米国の輸出品に対する恣意的で不当な差別」そのものである。
法律上、認められない非関税障壁に分類される。


また、日本では、解雇制限法理が裁判例で認められ、使用者は自由に労働者を解雇することはできない。
これは、アメリカ資本にとっては、「偽装の貿易障壁」に該当する慣行に他ならない。


こうした分野の規制等に当たり、直接、アメリカ企業が参画する制度の導入も必要とされている。


透明性を高め、影響を受ける当事者(アメリカ企業:マチベン注)が規則の制定に参画する機会を増やすこと


提案された規則が、健全な科学、費用対効果分析、リスク評価、またはその他の客観的な証拠に基づいて設定されることを要求すること


米国製品の完全な市場アクセスを否定する、価格コントロールおよび基準価格の設定のような政府の措置を撤廃させること。 


最後の節は、日本の薬価規制に関係している。
アメリカ製薬企業の求める法外な価格、言い値で薬を買わせるようにするということだ。
国民健康保険財政が破綻に追い込まれることは必至だろう。


知的財産権の関係でも、さまざまな方針が述べられている。
マチベンが珍しく得意としない分野であるが、念のため目に付いたところだけを掲げておこう。


知的所有権を支配する多国間または二国間貿易協定の条項が、米国法に見られるものと同様の保護基準を反映するようにすること

権利者が、彼らの知的所有物のインターネットその他の世界的な通信手段を通じての使用をコントロールし、その無断使用を防止するための法律的、技術的手段を確実に持てるようにすること

利用しやすく、迅速で効果的な民事、行政および刑事の執行機関を通じて、知的所有権に強力な執行力を与えること;
 


こうした要求の根底には、


米国の法律が、全体として、国際法が要求するレベル以上の保護を投資に与えている

という認識がある。
これと横並びに高い水準の待遇を外国投資家に与えるように求めるということだ。
投資協定には、「公正・衡平な最低限の待遇」という規定がある。
これを国際法の水準以上に高め、投資家を米国並みに保護せよというのがこの方針を貫く基本である。


米国の対外投資に対する不自然な障壁または貿易歪曲的な障壁を削減または撤廃すること

投資家のために米国の法理および慣行に基づいて得られる権利に相当する重要な権利を確保すること


が目的である。
一方では、自国の投資家は守ると宣言している。


米国への外国投資が、投資の保護に関して米国における米国投資家よりも実体的に有利な権利を与えらることがないようにすること


アメリカの海外投資に対しては、米国の法理および慣行に基づいて保護される重要な権利を与えよ、しかし、アメリカ国内に進出した外国資本は、アメリカ投資家以上の待遇をしてはならないという、自国中心主義むき出しの方針である。


投資協定には、「公正・衡平最低限待遇義務」が謳われるのが通常だ。
通常、これは国際法の水準で考えられるとされている。
しかし、アメリカ合衆国の方針は異なる。


法の適正な手続きの原則を含む、米国の法理および慣行に一致した公正かつ衡平な取り扱いに対する基準の設定を求める

米国の法理および慣行に一致する収用および収用に対する補償の基準の設定を求める。


アメリカンルールを呑めということだ。
各国でそれぞれ用いているような財産権の制約法理は放棄しろということだ。
日本国憲法29条とは絶対的に矛盾する収用法理を作れと言うことだ。
そして、結局は、日本法を捨てろという要求なのだ。
グローバル資本にとって、最適なアメリカンルール=米国法理で世界を統一しよう、その最初の生け贄が日本なのだ。
日本の弁護士よ、日本の法学者よ。
それを知りながら、あなた達は、TPPに対して沈黙を守り続けようとしているのだろうか。


アメリカは、これを安全保障戦略として位置づけている。


国際貿易の拡大は、米国の国家安全保障にとって必須のものである。貿易は、米国の経済的成長と強化並びに世界におけるリーダーシップにとって極めて重要である。安定した通商関係は、安全保障と繁栄を促進する。通商協定は、今日では、一連の相互の権利と義務を通じて国々を一つに結束するという、安全保障条約が冷戦時代に果たしたのと同じ目標に貢献している。国際貿易における米国のリーダーシップは、世界中で、市場開放、民主主義及び平和を促進している。

 

米国の国家の安全保障は、その経済的安全保障に依存しており、言い換えれば、経済的安全保障は、活気があり成長する産業基盤の上に築かれているのである。貿易の拡大は、これまで経済成長の牽引力であった。通商協定は、情報技術や通信その他の主要な技術、基礎産業、資本財、医療機器、サービス、農業、環境技術、および知的財産などの、米国経済の重要な分野および経済圏構築の機会を最大にする。貿易は、米国に新たな機会を生み出し、経済、政治および軍事分野において、米国の比類なき強さを維持する。米国は、貿易と経済的機会を拡大することによって、21世紀の課題に取り組む。


日米安全保障条約2条の中には、次のようにある。

締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する


外材輸入が支配的になって、日本の山林が荒廃して山林の保水機能が失われたのも、小麦、大豆、とうもろこし等の農産品が壊滅的な状況になり、食糧自給率4割(穀物ベースでは2割を切る)という国際的に異常な食糧輸入国になったのも、全ては安全保障条約第2条によって、日本政府が言いなりにされてきた結果である。


21世紀に世界的な食糧危機が訪れることは必至であるが、アメリカは、骨の髄まで日本をしゃぶろうとしているのである。


極秘文書の正体は、アメリカ議会の「2002年超党派貿易促進権限法」である。
アメリカ合衆国憲法では、通商は議会の専権事項である。
米国大統領は、固有の通商協定(TPPはこれに含まれる)締結権限を持っていない。
議会の授権を受けて初めてTPPの締結権限を持つのだ。
専権事項の授権だから、議会は大統領に締結権限を与えるに当たって、自由に条件を付けることができる。
上記で紹介した『極秘文書』は、2002年から2007年6月30日までの間、議会が大統領に授権するに当たって大統領に突きつけた条件である。
法律的な効力のあるものであるから、大統領がこれを守らなければ、憲法違反になる。


オバマが、ほしくてたまらない筈のTPP締結権限を与えてもらえなかったのは、2002年貿易促進権限法で付けた条件程度では、議会が満足しなくなったからだ。
TPPの内容は、この貿易促進権限法よりいっそう厳しいものになる。
確実である。


わかっていただけるだろうか。
TPPのルールを作るのは、アメリカ議会である。
交渉に参加して日本に有利なルール作りに関わるなどということは、完全な絵空事である。
オバマでさえ、議会の操り人形に過ぎないのに、どうして日本政府がルール作りに関与できる余地があるのか。
そんな余地はないというのが結論だ。
しかも、法律的に必然的な結論なのだ。


貿易促進権限法は、極秘でも何でもない。
アメリカ議会の公にされた法律である。
国際経済法学者には常識に属する。
彼らには、沈黙するだけの見返りがあるに違いない。
財界も知っている。
官僚が知っているのは、もちろんだ。
現にジェトロのサイトに隠してあった。
5大紙の論説クラスも当然に熟知している。
知っていて、マスコミは「バスに乗り遅れるな」と騒ぎ、バスが出ているとわかるや「急いでルール作りに参加しよう」と人々の不安を煽り立てる。
どこまでも、国民を愚弄し続けようとしている。


きちんとした議論をしようとする市民や学者を彼らは『TPPお化け』論者とレッテル貼りをして、際物扱いしている。
しかし、今回の『極秘文書』の暴露で、『TPPお化け』論は完全に敗北した。
決して『お化け』ではない。
われわれに突きつけられた法律的な現実なのだ。
そのことを、ここに宣言する。


われわれは、騙されてはいけない。
騙されないだけの知恵と勇気と信念、そして諦めない心さえあれば、われわれが敗北することは絶対にないのだ。

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2013年5月 4日 (土)

【再掲】 TPP オバマ大統領には何の権限もない 日米首脳会談の想像を絶する茶番劇(3/14)

TPP情勢は、日米首脳会談以来、国民どころか国会での議論すら許さずに一気に進んだ。
法的な分析をしているサイトは少ないので、この間の経緯を整理する意味でしばらく旧記事で重要だと思われるものを再掲していくことにする。


アメリカ合衆国憲法では、関税を課し徴収する権限は議会の専権事項だ(第1条8節1号)。また、通商の規制も同じく議会の専権事項だ(第1条8節3号)。


すなわち、アメリカ合衆国憲法によれば、関税と通商については、本来、大統領には交渉権限がない。

 

過去、大統領が交渉権限を有していたのは、大統領貿易促進権限法による大統領に対する授権によるものであった。
だから、マチベンは、今さっきまでこの法律によってオバマ大統領は、安倍首相と会談したものと理解していたが、外務省の解説による限り、大統領への授権は、2007年7月1日に失効したとされている。


滝井光夫桜美林大学教授の「大統領の通商交渉権限と連邦議会」 によれば、関税については、アメリカ通商法による授権が引き続き残っているようであるが(関税についても、議会の授権による交渉権限であるから、最終的に議会の同意が必要であることはいうまでもないが)非関税部分(国内規制)については、大統領には何の権限もない。


いうまでもなく、TPPについては、関税はごく限られた一部の問題に過ぎず、大半の部分が非関税障壁に関わる部分である。


最近になって仕切りに、交渉開始前90日以内に議会に通知するとするルールがあるかのように報道されているが、これも法的根拠がないように思われる。大統領としては、失効してしまってはいるが、一応、貿易促進権限法のルールに倣って行動しているという程度の者なのではないかと思われる。


それにしても、オバマ大統領は、一体いかなる権限に基づいて、日本のTPP参加を云々しているのだろうと考えていたら、次の記述にぶつかった。


(現在のオバマ大統領のように)TPP 交渉開始の意図を議会に通告しながら、交渉が法的根拠なしに進められている状況は前例がない。」(同教授「米国のTPP参加交渉と貿易関連問題」16頁左欄)リンクが不調みたいです。よくある嫌がらせかと思います。「季刊 国際貿易と投資」で検索し、2011年夏84号を検索してくださいな(^^)V


問題は、単純である。
交渉権限のない大統領と、どんな約束をしようが、法律上、何の意味も生じないのだ。
安倍首相は、日米首脳会談と共同声明(しかも、自動車産業を生け贄にすることだけを一方的に約束した政治的大失態を演じた)というおよそ、何の意味もないパフォーマンスを演じて、交渉参加へなだれ込もうとしているのだ。


交渉権限のないオバマとしては、議会のご機嫌をとるために、自動車を生け贄にしておきたかった。
自動車を生け贄にしてもよいとした安倍首相は、条約締結交渉をする政府を代表する権限を有している。
だから、安倍首相の言辞は有効である。
しかし、オバマが、そこで何を言おうが、共同声明にどう書こうが、交渉権限がないのだから、ただの雑談の類、戯れ言に過ぎない。
前言を翻そうがどうしようが、道徳的な非難すら受ける理由はない。


こんなことは、日本政府はとうに知っている。
知りながら、国民を騙すためだけに、パフォーマンスを演じた。
むろん、大メディアも、財界もぐるである。
わかっていて、TPP交渉参加のためのお膳立てのために日米首脳会談を仕組んだ。
そして、わかっていて、日米首脳会談を礼賛した。
自動車業界だけ、なぜ、自分が財界に切り捨てられなければならないのかと今になって途惑っている。


騙されて、先々、とんでもない不幸な目に合うのは、マチベンを含む一般国民である。
日米首脳会談というのだから、何か意味があると思いこんでいた、マチベンはつくづくお人好しである。お人好しは、政治の世界では悪徳である。今後は、いっそう何でも疑ってかからなければならないだろう。

それにしても、と今さら思う。私たちの住む時空はどうしてこれほどまでに歪んでしまったのだろうか。知れば知るほど、恐ろしいほどに歪んだバーチャルな空間に生かされている。

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2013年5月 2日 (木)

【再掲】呆れるマスコミ 三題 猪瀬『失言』・NHKのとんでも憲法論議・戦場カメラマン

訳あって、NHK部分だけの単独記事を二重投稿にしようとして、失敗した。
2題目のNHKのとんでも憲法論議だけ残して他の部分を削除するという何とも初歩的なミスである。
羊頭狗肉になった方には、誠に申し訳ありませんでしたm(__)m。


できるだけ、再現してみます。
では、再現をば。


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今日は、寝起きから、新聞・テレビを見て、気分が悪くなった。
気を取り直そうとしても3連発はきっつ~い。
明日の憲法記念日は、もっと気分がわるくなるかしらん。


【猪瀬知事『失言』】

今朝の中日新聞を開いて目を疑った。
「『失言』 IOC処分せず」の見出しが目に飛び込んだ。
猪瀬氏の『発言』が『失言』にすり替えられている。
ついに中日新聞も、ごますり新聞になりさがったかと失望した。
とりあえず気を取り直して、事務所で調べてみると、共同通信配信の記事が『失言』とあり、地方紙は、おおむね『失言』となっている。
東京新聞は、同じ記事を引用して『発言』とあるので、とりあえず安心は、した。
『発言』か、『失言』か社としての見識が問われる。
中日新聞も見出しには注意して欲しい。
危うく、販売店に購読取りやめの電話をしかけた。


今朝のところでは、テレビ、独自取材による全国紙とも『発言』のようである。
その中、産経新聞、日経新聞が『失言』としているのが目に付く。
東京五輪が財界の金儲けの手段となっていることが、はしなくも暴露されたといえよう。


話のついでだ。
確か、猪瀬知事は、ボストンテロ事件の翌日にニューヨークを疾走して、東京招致をアピールしてた、とかあったよな、と思って、検索した。


【米国】猪瀬知事NYでジョギング、五輪招致をPR ニュース速報+ - 2 ...

211.125.84.145 › ニュース速報+[newsplus]
4 日前 – ニューヨーク=吉形祐司】米ニューヨーク市を訪問中の猪瀬直樹・東京都知事は16日、2020年五輪招致のロゴ入りTシャツを着て、 セントラルパークで1時間にわたり、約6キロ・メートルをジョギングして五輪招致をアピールした。 知事...

記事を引用しようとしたら、抹消されている。
ここでも『失走』になった。
NHKは、ネット業者の言い分鵜呑みに、誹謗中傷の書込にも表現の自由があって、削除依頼に応じられないとの仰せであったが、ネットで削除するのに、表現の自由も何もあったものではない。
都合の悪いことは、強者はどうにでもできるのである。
ネットは、強者のやりたい放題、思うがままである。
NHKご推奨の『知る権利』もへったくれもないのである。


金儲けをたくらんでいる財界さん。
いくら隠しても、猪瀬氏が、ボストンマラソンの翌日に走って見せて、悲嘆にくれるアメリカ国民の感情を逆撫でした事実は、消せません、よ。


それにしても、いくら傲慢でも、普通、ここまでしない。
これでは、財界が望んで止まない利権五輪を遠ざけるばかりだ。
財界としても、記事抹消なんていうちゃちいことをする前に、猪瀬氏を知事にしておいていいのか、考えたらどうだろう。
財界さんへのアドバイスである。


『失言』とは、「言うべきではないことを、うっかり言ってしまうこと」で、大抵の場合、本音である。
イスラム圏の侮辱も途上国の蔑視も「本音」である。
グローバル帝国の疑似支配層にとっては、崇高すべきニューヨークタイムズの取材という最もオフィシャルな場で、偏った「本音」を吐くような猪瀬氏が、首都東京の知事でいいのか。
今後、失うものがあまりに多いことを恐れる。
国内は、『失言』、『失走』でごまかせても、海外まではごまかせない。
帝国の疑似支配層としても、しかるべき措置を取るべきである。


断じて、『失言』ですまされる問題ではない。(*`∧´)


【公共放送NHKのとんでも憲法論】
前記事に記載のとおり。

民事法と憲法の混同をNHKが集団的にしでかしているという、何ともお粗末な話。
つうか、ひょっとしたら、こわ~いお話。



【戦場カメラマンW氏】
フジテレビ『朝イチ』に戦場カメラマンW氏が出ていた。
アフガニスタンで、米兵が搭乗したボーイング747型機が墜落した事故がタリバンのテロかどうかを議論していた。
W氏は、もっぱらタリバンのテロや暴力がひどいことを強調する狂言回しのやくどころだった。


アフガニスタンの泥沼の悲劇は、米軍を中核とする多国籍軍の攻撃がなければ起きなかったこと、アメリカは、無人爆撃機でパキスタンを攻撃し、無辜の市民を殺戮していることについては、全く触れない。


僕の勘違いでなければ、イラク戦争の頃、確かW氏を招いた企画に出席した記憶がある。米軍占領下のイラクで、イラク市民が米軍の攻撃に怯えて暮らしているさまを報告してもらったような気がする。
市民の立場から語ってくれていたような気がする。
今朝は、明らかに帝国の立場の語りだ。


もともとグローバル帝国の疑似支配層のお気に入りだったのか、W氏が変わってしまったのか。
あるいは、僕の単純な人違いなのか。
何とも気になるところである。


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公共放送NHKのとんでも憲法論

訳あって、前のブログのNHK部分だけ、分けて二重投稿します。

【みんなの公共放送:NHKの憲法議論】

7時台のニュースは、『シリーズ憲法』という連続枠を組んでいるようだ。
今日のお題は「『新しい人権』と憲法~ネット社会とプライバシー権」


まず、ネットへの投稿や、書込で、プライバシー権の侵害を受けたという被害を紹介。ネット業者にインタビュー。削除依頼があっても、『表現の自由』があるために、十分には応じられていないかのような回答を得る。
最後は、自治体の民生委員が、個人情報=プライバシー権の壁で、十分な福祉が行えず、孤独死が起きているという問題もある、と紹介。


学者の先生の訳のわからんコメント(先生が話した内容がかみ合っていないのか、意図的に歪曲されたのかは不明)を聞かされた末、取材記者が登場して、憲法13条の『個人の尊重』、『幸福追求権』でプライバシー権は保障されているという『意見もある』(憲法学では通説である)が、明確に規定することが必要とする声もあるとまとめる。


おいおい、これでは、憲法を、民事紛争を解決するルールを決める民法と同じに扱ってるじゃないかい。
おまけに、福祉行政では、プライバシー権が邪魔になっているという訳だから、行政に対してはプライバシー権を放棄して、私人間では、憲法によってプライバシー権を守ろうという話になっている。


憲法は、権力を拘束するもので、個人を縛るものではない。
憲法に書かれている権利は、直接は、権力に対して主張するものだ。
私人間の話であれば、民事法で対応するのが筋である。
私人間ルールとして衆目が一致するような課題は、行政法規に取り込んでいけばよい。
ネット被害は、公権力による規制以外は、憲法問題ではない。


おいおい、天下のNHKさん。
こんな高校生や中学生並みのことを教えてもらわなければならないほど、劣化しちゃったのかい。
この企画、局のどっかで、誰かが、間違ってると思わなきゃウソでしょ。

訂正放送をすべきである。

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