止まらぬ歴史認識の暴走 対米追随がもたらす日本最悪のシナリオ
橋下徹氏の日本軍「慰安婦」をめぐる発言の暴走が止まらない。
橋下劇場も、今度ばかりは、狙いも見えないし、落としどころも見えない。
掌を返したように批判を続けるマスコミを見ると、とりあえずは、安倍内閣の歴史認識が米国で批判を浴びていることを隠すためのおとりとされているのかとも思うが、安倍氏の歴史認識も米議会の報告書という歴とした公文書に残された訳だから、事態はそれほど簡単ではない。
つい先頃は、猪瀬都知事がアメリカ発信で、イスラムを侮辱する発言し、イスラムの人々が日本に寄せていた信頼という重要な資源に打撃を与えたばかりだ。
当事者であるトルコに対する謝罪も発言から10日以上も経ってからようやく思いついたように行われた。
ましてイスラム諸国の人々に対する謝罪など想像もできないに違いない。
この国際感覚の欠落は首都の顔として失格である。
東西の二大都市の首長が、このざまである。
問題は、日本の顔である安倍首相だ。
この人は、河野談話・村山談話と積み重ねてきた東アジアとの信頼を回復するための先人の努力を根底からひっくり返し、無にすることを心底から願っているとしか思えない。
アメリカを困惑させている。
安倍自民党は、教科書から近隣諸国条項を外そうとしている。
また、見解が分かれる問題については数値の具体的根拠を示すことを求める方針とも言う。
「数値の具体的根拠」を厳格化すれば、運用次第で、南京虐殺も日本軍「慰安婦」も教科書から消えるかも知れない。
極めつけは、突然の北朝鮮への特使派遣だ。
北朝鮮のミサイル騒動の最中に、靖国集団参拝を容認して関係国の足並みを乱した末、ようやく中国が重い腰を上げて経済制裁に踏み切った途端に、5カ国を出し抜いて、北朝鮮への特使派遣だ。
間が悪いことにどうして気がつかないのだろう。
TPPでは屈辱的なまでに卑屈に振る舞う人物が、今回に限っては、アメリカには無断だという。
属国が宗主国と無関係に、拉致問題を解決できると考えてでもいるのだろうか。
日本国内向けの人気取りのパフォーマンスか。
いずれにしろ、これもまたアメリカを不快にさせている。
総じて、日本の政治指導者は、国際感覚の欠如が著しく、歴史認識がない。
そうした政治指導者が、いっせいに集団暴走を始めている。
政治指導者が歴史認識を欠く人物ばかりになったのには明らかな理由がある。
アメリカと、マスコミを含むその周辺勢力が原因である。
対米追随から脱して、自立的な外交を展開しようとした政権は何度も生まれた。直近では、鳩山(小沢)政権がある。
対米追随から脱しようとするとき、東アジアとの信頼関係が欠かせないことは見やすい道理だ。
したがって、自立派は、いずれも、表面的にではあれ、歴史認識と反省・謝罪を示して東アジア諸国との信頼関係の構築に努めようとした。
しかし、こうした政治家は、アメリカの怒りを買うか、同調勢力によって、政権を追われ続けた。
自立派が駆逐され続けた結果、真っ当な歴史認識を持つ政治家は、ほとんどいなくなるか、無力となった。
歴史認識を欠く政治家の暴走には、アメリカ要因が極めて強い影響を及ぼしている。
たちが悪いことに、こうした政治家は歴史認識を欠いて勇ましく振る舞えば振る舞うほど、有権者の支持が得られると思いこんでいる。
その先には、悲願の憲法9条改正と、国防軍の保持が待っている。
周辺諸国から孤立して、国防に力を傾注しようとする姿は、なぜか北朝鮮に似てくる。
アメリカは、当面、困惑し、不快の念を示すだろう。
しかし、アメリカは、いつでも選択肢を持っている。
日本再占領を正当化する理由はとうの昔からある。
アメリカが膨大に蓄積させた日本のプルトニウムは、いつでも日本を核保有疑惑国と指定するに十分である。
東アジアで孤立し、イスラムの信頼も失った日本占領に対する批判は国際社会でも出ないだろう。
場合によっては、安保理の強制措置の議決も可能だ。
こうして、アメリカは、イラクやアフガンよりはるかにスムーズに日本の占領をおおぴらに再開することができる。
今や、米軍と一体化した自衛隊は、そのとき、日本占領軍の一翼を担うことになる。
日本国民にとって最悪のシナリオである。
杞憂とも思われていた最悪のシナリオだ。
参院選挙で自民党が勝利すれば、最悪のシナリオは俄に現実味を帯びてこよう。
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