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2013年5月30日 (木)

【拡散希望】TPP/SPSルールの恐怖5 EU-ホルモン牛事件(後編)

SPSルールに基づく輸入制限措置の国際標準とされる代表的なルールはコーデックス規格である。
先に述べたようにコーデックス規格は、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同委員会で策定される。
いずれもれっきとした国連の機関である。
国連の中でも、食糧、健康、安全を担当する機関が共同して決める規格であるから信頼性はいかにも高そうだ。


しかし、この国際基準は、EU-ホルモン牛事件の例に見る限り、健康リスクから世界の国民を守るためには不十分なものであったように見受けられる。


国連機関というなんだかありがたそうだが、泥沼のアフガン戦争を正当化したのは、国連安保理決議であった。
イラク戦争も、当初は安保理決議がなかったものの、米国が、勝利宣言した後は、多国籍軍の派遣を認める安保理決議をなして、その後、5年以上にわたる泥沼のイラク戦争に世界を巻き込んだ。
国連は重要である。
とくに国連憲章の精神を守り続けることは重要だが、国連が国際社会の力関係を反映する外交と政治の場であることも明らかである。


冷戦崩壊後、ソ連・東欧という重しが取れた資本主義はグローバルな新自由主義として暴走する。
軍事を除く場面においては、今や国際政治の権力は国連から世界銀行・国際通貨基金に移行しているように見える。
国連も否応なく、新自由主義に巻き込まれている。
その法律的な象徴が実は、WTOであったし、生命・健康の安全より自由貿易を優先するSPSルールである。


さて、ホルモン牛に関する国際基準は、国連を代表する二つの機関の合同委員会によって採用された安全規格だった。
コーデックス委員会自体は、1960年代から活動しているが、WTO憲章/SPS協定によって、法律的な意義付けを与えられ、コーデックス規格の重要性は一気に増した。


ホルモン牛に関するコーデックス規格は、WTO発足直後に採用されている。
コーデックス規格の採用は、それまで委員会全体によるコンセンサス方式によるのが通常であったとされるが、WTOの発足により、コーデックス規格に法的な意義付が与えられることに着目した米国やカナダは、1995年7月に異例の多数決方式によって、コーデックス規格の採択を推し進めた。
ホルモン牛に関するコーデックス規格は、賛成33、反対29、棄権7という僅差でかろうじて採択されたものだ。
国連の権威ある機関だからと言って、国際基準を鵜呑みにする訳にはいかない。
コーデックス委員会のように中立的に見える機関でも、国際政治の場に他ならないのだ。


しかもコーデックス委員会には、規格が消費者の生命・健康を守るのに十分なのかを疑わせる、その他の事情も指摘されている。
コーデックス委員会では、加盟国の代表だけではなく、その随行員にもオブザーバーとして発言権が与えられている。
そのため、米国などは、多数の多国籍企業の代理人を随行員として委員会に参加させている。
当然、モンサントなどの代理人も随行員に参加しているだろう。
また、NGOにもオブザーバーとして発言権が与えられているが、これも業界団体が大半を占めることが指摘されている。
たとえば国際農薬製造業者協会連合会等が、多国籍企業からオブザーバーとして派遣され、専門知識を活かした発言をして、多国籍企業に有利な規格が採用されるように、活動している。
2005年頃で、コーデックス委員会のオブザーバー資格を有するNGOは約160、明らかに企業の利益代表と認められる団体が100、消費者・健康・環境の利益を代表する団体は10に過ぎないと言われている。


国際基準に日本の食品の安全を任せていいのか。
問われる事態と言わざるを得ない。


以上、週刊新潮の記事を手がかりとして、EU-ホルモン牛事件を振り返った。


実際上、コーデックス規格を初めとする国際基準が、WTOの全加盟国において用いられているわけではないこと、むしろあまりにも多数に及ぶコーデックス規格の受容については、国によって不統一な印象もあることは先に述べたとおりである。
しかし、TPP、まして二国間交渉である日米FTAでは、それは許されない。
うさんくさい国際基準に基づく、食品の安全規格を、日本が全面的に飲まされる危険性は著しく高い。
日本が、怪しげな食品の薬漬けの人体実験場になる
と、繰り返さざるを得ない所以である。


なお、EU-ホルモン牛事件は、どの国際経済法の教科書にも載っているSPSの代表的なケースだ。
ここで述べたのは、国際経済法を学んだ者であれば、少し突っ込んで勉強すれば、学部生でも知っているはずの初歩的な知識に属する。
国際経済法学者は、ISDについても、SPSについても国民に正確な知識を与えるべき立場にあり、責任を有している。
しかし、TPPを巡って、国際経済法学者が、国民的な議論に参加した例を知らない。
僕の知る限り、国際経済法学者は、沈黙を保ち、口をつぐんでいる。


国際経済法の専門家には、国際仲裁の裁判官とか、国際会議の国家代表だとか、それなりの見返りがあるのだろう。
財閥や巨大企業の顧問であるビジネスロイヤーのグループは、国際経済法に詳しいはずだが、彼らにも同じようなステータスが保障され、ビジネスパートナーとなるアメリカのローファーム等からおいしいビジネスチャンスも約束されているのだろう。


国際経済法ムラと呼ばざるを得ない所以である。
法曹要請阿呆ムラよりは、よほど強力で、利益も巨大そうであるから、国際経済法ムラの結束は固く、突き崩すのは容易ではないだろう。


しかし、原子力ムラが国民の力によって、その姿を露わにしたように、国民は無力ではない。
だから、マチベンが、庶民の事件とはおよそ縁遠い国際経済法を勉強して報告している訳である。
(EU-ホルモン牛事件 完)

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