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2013年5月26日 (日)

TPP/SPSルールの恐怖2 日米FTAという悪夢

毒だとわかるまでは、食べろという、SPSルールは、ルール自体が悪夢である。
日常生活の感覚では、不自然で異常に思える。
しかし、国際経済法の分野では、今や当然の原則とされている。
なぜなら「安全だという証明がされた食品を輸入する」という考え方では、安全性にかこつけて、輸入を拒むことがあり、「自由貿易」を阻害することになるからだという。
国民の生命や健康、国や地域の環境保護より、「自由貿易」を優先させなければならない、これが、国際経済法のルールだ。
まるで、「自由貿易」至上主義の新興宗教のようだ。


実は、SPSについては、TPPとの関係では、もう一つ、付け加えなければならない悪夢がある。


日本は、多国間協議で決まるTPP以上に、厳しいSPSルールを押しつけられる可能性があるということだ。


日米事前合意を通じて、USTRが「片面的合意」(日本政府がアメリカ政府に表明した意見)の詳細を大統領に報告した文書が作成された。


この本体部分は、山田正彦氏のブログに仮訳が掲載されている。
これをプレスリリースと評価する向きもあるが、むしろ、USTRからオバマ大統領に対する交渉報告文書と評価する方が法的な意味が明確になると思われる。
オバマは、失効している大統領貿易促進権限法に倣って、議会に日本の交渉参加を認めるように通知しなければならない。
そのための基本情報が、USTRの声明であると考えるのが筋だからだ。


この中に次のくだりがある。

非関税障壁(NTM)

アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関しては別添fact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されてい

この別添ファクトシートで、SPSルールについては、次のように記載されている。

WTO/SPS協定に定められた権利・義務にしたがい、食品添加物に関するリスク評価を加速し、簡素化するとともに、防かび剤と人間が消費するゼラチン・コラーゲンに関するその他の課題にも取り組むこと。


これについて、4月19日付日本農業新聞は、次のように解説している。


 一方、米国は今月1日に公表した2013年版のSPS報告書でも、これらを指摘していた。防かび剤については、日本がポストハーベスト(収穫後)に使用 する防かび剤を「食品添加物」と「農薬」の両方でリスク評価をしていることに対し、手間が二重に掛かり、新製品の認可を妨げていると問題視する。

 同報告書は、米国での牛海綿状脳症(BSE)発生を受けて日本が続けている、米国産の牛など反すう動物を原料とするゼラチンやコラーゲンの禁輸解除を要求。食品添加物については「米国や世界中で広く使われている添加物が、日本では認められていない」として規制緩和を訴える。

 米国からすると、これらはいずれも長年の懸案課題。TPP交渉をきっかけに、日本に要求を飲ませるもくろみがあるとみられる。


この並行二国間協議は、これまで日米で行われたきたような政治的交渉ではなく、法改正や、条約締結といった法的な拘束力を持つことが事前合意で明らかにされている。
つまり、TPPで認められる以上に高度で、厳格なSPSルールの厳守を法的に約束させられようとしているのだ。


実際に、加盟157ヶ国に及ぶWTOにおいて、有害であるという十分な科学的証拠がなければ、輸入せよというSPSルールを厳格に順守している国はないと言ってもよいだろう。
多国間になればなるほど、合意は、相当の温度差のある加盟国間の妥協の産物であるだけに、その徹底はむつかしくなる。
食品添加物のような多種類に及ぶ物質について、一つ一つをWTOの紛争処理手続にかけるのは、現実性も実効性もない。


日本が、国益を損じても、ひたすらTPPに参加したいとの弱気の交渉姿勢であるのにつけ込み、どさくさ紛れに、長年の懸案に一気に片を付けるというのが、TPPと並行する二国間並行協議である。
日本は、週刊新潮が報道したような危なすぎる食材の輸入を一気に解禁させられることが避けられない。


かくして、日本は、将来、毒だと判明するかも知れない、アメリカ産の薬漬けの人体実験場となるのだ。

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