TPPは日米FTAへの撒き餌だった
山田正彦氏が急きょ、TPP第19回会合がなされるブルネイに飛ぶという。
自民党や農水委員会のTPPに対する公式的なスタンス(5品目の関税は死守する、食の安全は守る、主権を侵害するISD条項は入れない等々)が他の交渉参加国に全く知られていないという、アメリカの市民団体パブリックシチズンのローリーワラック氏の手紙を受けて、急きょブルネイ入りする。ブルネイ会合が日本が参加する最初で最後のTPP会合になるかもしれないとローリー・ワラック氏の手紙は警告している。
対立が激しいと伝えられたTPPが、思いの外早くまとまる可能性があるということだ。
多国間の自由貿易協定がすんなり決まった試しはない。
とくに主要プレーヤーであるアメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどの間には、厳しい対立があるはずである。
また、前回会合後、マレーシアの元首相は、脱退も辞せずと表明するなど、途上国とアメリカとの対立も険しい。
これがまとまる可能性があるということはどういうことか。
まず、アメリカが、妥協する可能性があるということだ。
アメリカの妥協を受けて、各国が対米要求を切り下げる可能性があるということだ。
TPPは意外と常識的な線に止まるかも知れないということだ。
なぜアメリカは妥協するのか。
アメリカからみたTPP加盟各国の名目GDP比率を円グラフにしてみる。
日本市場の割合が55%を占めている。
しかも、アメリカは主要参加国とはすでに別に自由貿易協定を締結済みだ。
カナダ、メキシコ、オーストラリア、シンガポール、ペルー、チリとの間には自由貿易協定がある。
TPPでアメリカが新たに自由貿易協定を締結することになる国は、日本、マレーシア、ニュージーランド、ベトナム、ブルネイである。
この名目GDPをグラフ化する。
アメリカが新規に自由貿易協定の市場とする国のGDPの92%を日本が占める。
TPPで狙われる市場が日本であることは歴然としている。
もともとTPP参加交渉をめぐる日米事前協議合意で二国間の並行交渉を飲まされた時点から、嫌な予感はしていた。
的中した感がある。
事前協議で日本が獲得したのは、日米二国間の約束(便宜上、以下、日米FTAと呼ぼう)は、TPPが効力を生じるのと同時に効力を生じるとしたぎりぎりの線だった。
しかし、アメリカは、TPPは譲っても、日米FTAで成果が得られればよいと考えているように見える。
あらゆる非関税障壁を協議対象にすることができるとされた日米FTAでは、日本に対して厳しい要求を突きつけることが可能だ。
リークされたTPPの投資章には、例えば、オーストラリアにはISD条項を適用しないなどの譲歩の可能性を示す文言が見受けられた。
また、産経新聞では、参加国がほぼ足並みを揃えている遺伝子組み換え食品の表示義務は認める方向との報道もあった。
TPPでは譲って成立を急ぎ、日米FTAで厳しく日本に迫る。
アメリカの狙いは最初から日本市場なのであるから、それで十分だろう。
たとえば、他のTPP加盟国では、遺伝子組み換え食品の表示義務は認められるが、日本だけは遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃を余儀なくされるということが起きる。
TPPは最初から日本をおびき出すための撒き餌だった。
多分、日本の支配層はそんなことは知って上で、最初から日米FTAというと、通りにくいので、TPPでアジアの成長を取り込むなどというご託を並べたのだろう。
とりあえず、呆れること仕切りである。
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