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2013年10月23日 (水)

有害産品輸入促進ルール(SPS) 詳説1

TPPの本質は、『非関税障壁』の撤廃であり、『非関税障壁』とは、自由貿易を妨げ、公正な競争市場を損なう、政府の『全ての制度や慣行』である。

参照:韓国法務省は、間接収用による補償対象となる政府の措置に関して、以下のとおり結論づけている。

○特に、「間接収用」の概念は国際的定義が確立してない概念で租税、安保、公共秩序、保険等すべての政府(地方自治体および政府投資機関、司法府等を含む)の措置に対して提訴可能

※措置(actionまたはmeasure)は政府の法規定、制度、慣行、不作為、公務員の事実的行為等を含む広範囲な概念である


ISD(もしくはISDS)の問題性を考える上で、『投資家私設法廷』で用いられる国際経済法が、どのような基準に基づいて、国家の措置を違法と判断するのか、探ってみたい。


法的な違法性判断は、対立する諸価値のバランスを取る支点をどこに設けるかによって、異なってくる。


日本国憲法では、たとえば、財産権や経済活動に対する制限は、合理的な目的によるものであれば、政府には政策目的であっても、経済的基本権を制限する裁量が認められる。
したがって、裁量からの逸脱がない限り、財産権や経済活動に対する制限は違法とはならない。
これに対して、民主主義の基盤をなす表現の自由や思想・良心の自由に対する制限は、政策的な制限は認められず、やむを得ない理由による場合に限り許される。その場合でも制限は必要最小限でなければならず、より制限的でない他の手段がある場合には、それを超える制限は違法(違憲)となる。
これを憲法学は精神的自由と経済的自由に関する二重基準と呼んでいる。
(最高裁判例を見る限り、筆者は、学者が説くようなダブルスタンダードを最高裁が採用しているのか危惧を感じるが、少なくとも学者の定説はそう主張している)。


ここではWTO(1995年1月1日発効)のSPSルールを例に検討したい。
SPS(衛生及び植物検疫)は有害物質が国内に流入、流通して、人や動植物の生命や健康を害することを防ぐため、輸入に当たって国家が行う国家主権に基づく措置である。


TPP交渉参加事前合意の寸前まで日本は、狂牛病に罹患した牛肉が流入するのを防ぐために月齢20ヶ月を超える牛の輸入を禁止する措置を維持していたが、こうした措置が衛生及び植物検疫措置である。
福島第一原発からの汚染水漏れが明らかになった後、大国ではアメリカや、ロシア、中小国では韓国等が、日本の農水産品の一部の輸入を制限しているが、これも衛生及び植物検疫措置(SPS)である。


ここでSPSルールを例にするのは、SPSは、人や動植物の生命・健康という最も重要な法益を守るためになされる措置であるので、自由貿易ルールの中でも、最大限に国家の措置が尊重されるべきルールだと考えられるからである。


この点は、先に『SPSルールの恐怖』シリーズでもさわりの部分を検討したところであるが、さらに詳細にルールについて、確認しておきたい。


《第1ルール》有害性に関する十分な科学的証拠ルール
輸出国が安全である証明をしなければならないのか、輸入国が有害性を証明しなければならないのか、という基本的な点に関わる。


この点、自由貿易ルールは、明確である。
輸入を求められる国家が、有害であることの十分な科学的証拠を示さなければならない(2条2項)。
そうしなければ、安全性にかこつけて、差別的に扱うことを許すことになる。それでは自由貿易が妨げられる結果になるから、自由貿易のルールでは、有害だという側が十分な科学的証拠に基づいて措置をすることが求められている。
したがって、前記した狂牛病の例では、日本が有害であることを示す十分な科学的証拠を示さなければならないし、日本の農水産品の例では、アメリカやロシア、韓国が輸入を拒む措置を裏付ける、日本産品が有害であることの、十分な科学的証拠を示さなければならない。


また、

 

危険性の評価を行うに当たり、入手可能な科学的証拠、関連する生産工程及び生産方法、関連する検査、試料採取及び試験の方法、特定の病気又は有害動植物の発生、有害動植物又は病気の無発生地域の存在、関連する生態学上及び環境上の状況並びに検疫その他の処置を考慮する(5条2項)

 

ことをしなければならない。


《第2ルール》は、必要最小限規制のルールである。

仮に有害である十分な科学的証拠があるとしても、検疫措置は、正当な目的で、必要な限度に止められなければならない。

人、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要な限度においてのみ適用すること(必要限度規制)2条2項


つまり、貿易に与える影響を必要最小限にとどめる限りにおいて衛生及び植物検疫措置は認められる(5条2項)。
輸入の全面的禁止より貿易に与える影響が小さい手段があれば、これを選ばなければならない。たとえば、人の食品としての輸入は禁止したとしても、家畜に与えたり、加工食品にするために利用できるならば、輸入自体を拒んではならないということだ。


《第3ルール》恣意的・不当な差別の禁止


有害だという十分な科学的証拠がある場合でも、その行使の態様が恣意的・不当な差別になる措置は禁止される(2条3項、5条5項)。
つまり、放射能汚染が明らかになったとしても、第3国の産品は輸入しているのに、日本の産品の輸入を禁止するのは恣意的・不当な差別に当たる。
また、自国の域内でも狂牛病の牛が発生しているのに、流通を制限せず、アメリカの牛だけ輸入を禁止するのは、恣意的で不当な差別に当たる。
貿易を制限する以上、無差別でなければならなず、自国産品についても同一の措置を採らなければならない。
余計なお世話だと言うのは、貿易の自由に背く重大な背信行為である。


《第4ルール》偽装した障壁・制限の禁止


有害だという科学的証拠が十分にあり、無差別に措置を適用したとしても、それが、「偽装した障壁」(2条3項)であったり、「偽装した制限」(5条5項)に当たる場合は許されない。
つまり狂牛病の牛肉の流入阻止を目的とした輸入禁止措置だとしても、アメリカ産の牛は、ひどい育てられ方をしているから、ご遠慮いただきたいなどという本音が隠されていたりすると、「偽装した障壁」、「偽装した制限」として許されない。


《第5ルール》「調和」の原則 ハーモナイゼイション

 

国際的な基準や指針、勧告がある場合に、国際基準等に基づいて採られた措置は適法と推定する(3条1項)。
さすがに、毒でも何でも輸入しなさいという訳ではない。国際基準等があれば、これと一致した措置であれば、許してあげますよ、というわけだ。ことに途上国にはありがたい規定かも知れない。輸入を求められる度に、いちいち有害であることを示す科学的証拠がないかを探していては大変である。


さらに国際基準より高い水準の措置を採ることも認められているが、この場合には「科学的な正当な理由」が必要である(3条4項)。
アメリカ産牛肉の月齢制限をめぐる問題は、日本が狂牛病発生国の牛に対する国際基準である月齢30ヶ月を超える牛肉ではなく、それより「高い水準」の月齢20ヶ月を超える牛肉の輸入を禁止をしたことから発生した。アメリカは「科学的な正当な理由」(アメリカに言わせれば、「十分な科学的証拠」より厳格な科学的な理由が必要だ)がないと主張して強く輸入制限の解除を要求し、日本は国民の生命・健康に関わる問題であることから「科学的な正当な理由」があると頑張ったのだ。
TPP交渉参加決定直前、いっせいに国内の全頭検査がほぼ廃止されたのは、アメリカに対する恭順の意を示すための禊ぎであった。
おそらく、自民党政権が続く限り、二度と、アメリカに逆らおう等とは考えまい。こうして国民の生命・健康の安全は、TPP参加の引き換えに捧げられたのだ。


《第6ルール》損害と費用効果の均衡

有害動植物や病気が侵入したり、まん延する十分な科学的証拠があったとしても、輸出国が被る生産・販売の減少による損害の可能性と、輸入国における防除や撲滅の費用ないし危険を限定するために輸入禁止以外の方法を採った場合の費用効果を考慮しなければならない(3条5項)。
つまり、予め輸出国に与える経済的損害に配慮して、防除や撲滅の費用や、より輸入制限的でない他の手段をとった場合の費用対効果を考えた場合に、輸出国の損害が大きいような場合には、有害動植物でも輸入しなさいということだ。
5条6項では、技術的・経済的な実行可能性を考慮し、措置が適切な保護の水準を達成する以上に貿易制限的であってはならないと定めてもいる。


第7ルール(予防的アプローチ)もあり、これがWTOの紛争解決制度では最大の争点となったものであるが、すでにかなり長文になっている。
これについては、別の機会に譲る。


ざっとこれだけ見ても、自由貿易ルールでは、如何に国家が不自由な状態に置かれているかわかるのではないだろうか。
159ヶ国も参加しているのだから、自然なルールではないかと思っては間違える。
ルール自体は、国民の生命や健康を守ろうとする国家にとっては、極めつけに不自由なルールになっている。



SPSルールは極めて複雑であるし、経済法学者はかみ砕いた説明をしてくれないので、一般にわかるようにルールを説明したものがない。
マチベンは、庶民の相談パートナーであるから、やさしく説明しようとする訓練はときどき、していた。
市民にもわかるSPSルールの説明になっていることを祈るばかりである。

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