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« あんたも偉い! 長野県弁護士会 『TPP反対』初の弁護士会会長声明 | トップページ | 有害産品輸入促進ルール(SPS) 詳説4 予防的アプローチの制限1 »

2013年10月25日 (金)

有害産品輸入促進ルール(SPS) 詳説3 憲法25条違反


さて、国際経済法の規律原理を拒否したとき、私達は、何を「規律原理」として考えることができるだろうか。
国内法の実務家としては、結局、日本国憲法に立ち返るしかない。
日本国憲法の基本原則は、平和主義、基本的人権尊重主義、国民主権主義だ。



現行憲法の平和条項には種々の議論があることは承知している。
しかし、基本的人権尊重主義を放棄するように求める議論は極めて限られた支持しか得られないだろう。
基本的人権尊重主義から改めてSPSを見る。



占領下で制定された日本国憲法とはいえ、その条文の中には、いくつか帝国議会の審理の中で加えられた条項がある。
日本オリジナルな条項と言ってもよい。
憲法25条1項もその一つだ。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
日本国民が味わった第二次世界大戦の悲劇は、人類史に残る凄惨なものだ。
主要都市の大半が焦土と化した。
終戦直後の日本は、世界最貧国レベルの窮乏状態に陥った。
戦争末期から、猛烈な飢餓が国民を苦しめた。
飢餓と無縁な国民は農民だけだっただろう。



この条項の法的な性格については、憲法上の議論はある。
しかし、国家が、積極的に生存権を脅かす事態が生存権侵害に当たることについては、大方の異論はない。
生存権の自由権的側面と呼ばれることもある分野だ。



今日、無数の化学物質が世界を覆っている。
とくに先進国では、これらの物質と無縁な生活を送ることは不可能だ。
これらの物質が健康に悪影響を与えないように食品行政や環境行政は現代国家にとっては不可欠な機能だ。
大方の国民は国家がこうした物質が及ぼす危害から国民の生命・健康を守っていると信じているはずだ。
国内法の、建前も、食品安全基本法や環境基本法など、食品と環境の安全は国が保障することになっている。



自由貿易ルール、なかんずく有害産品輸入促進ルール(SPS)は、この国の構造が国際経済活動をゆがませるとして、書き換えることを求めている。



国際基準に委ねる選択肢が安全サイドのものであれば、それもよいが、SPSの恐怖で述べたように、国際基準は当てにならない。



国際経済活動の利益のために、国家の枠組みを書き換えられることは、有害だと判明するまで、毒でも食べよということを意味する。


以上を踏まえて、単純な話をする。
国際経済活動自由化ルールを受け入れれば、憲法25条は次のように書き換えられる。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。但し、国際経済活動を妨げてはならない
または、
「すべて国民は、国際経済活動をさまたげない限りにおいて、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」


国内法秩序では、憲法は条約に優位する。
憲法の条項に但書を付するような条約は憲法に違反している。
国内法の観点からする限り、憲法に違反する条約は無効であり、有害産品輸入促進ルール(SPSルール)は国内法的効力が否定される。



さて、今、問題にしている有害産品輸入促進ルール(SPSルール)はすでに締結されたWTO条約によるものだ。
国家主権との関係には一応の配慮があるとされ、各国の適切な保護の水準を下げる必要はないとの前文規定もあり、一面では機械的な適用を避けようとする思惑も見え隠れしている。
実際上、160ヶ国近くに及ぶ多国間協定では、各国はかなりばらばらに独自の安全基準を運用していたとされる。
したがって、WTOのSPSは、条文の文章そのままほどには、厳しく追及されるものではない実情があった。
WTOのSPSはその緩やかな適用を踏まえ、憲法と整合する運用がされてきた、あるいは、憲法に反しない限りにおいて、効力を有していたと考えることも許されよう。
だからこそ政府は、月齢20ヶ月以上のアメリカ牛の輸入を制限し、遺伝子組み換え作物については、表示義務を課すことができた。


問題は、TPPが、SPSルールをさらに進化させ、国家の権能をさらに制限しようとしていることだ。
TPPの原協定に当たるニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの間の協定には、国際基準へのいっそうの一致が謳われるとともに、WTOでは何かと議論のあった証明責任の問題について輸入国側に輸入を拒む理由の証明責任があることを明確にし、有害産品輸入促進ルールの例外規定と言うべき暫定措置(予防的アプローチ)の範囲をいっそう限定している。


その上、さらに日本は、アメリカとの二国間合意(日米FTA)によりSPSルールをいっそう徹底することを約束させられている。
その内容は、不明というほかないが、暫定措置の範疇すら認められない可能性がある。
暫定措置(予防的アプローチ)の否定は、懸念事項として、政府も挙げていた事項だ。
また、措置の同等という分野に基づいて、アメリカは日本に対して、食品安全基準の統一、つまりアメリカの食糧安全局(FDA)の認可を受けた産品の輸入は全面的に認めることを求めている可能性が極めて高い。
日米の二国間協議で求められる有害産品輸入促進ルール(SPSルール)は、食品安全行政や環境行政を放棄することだと言ってもよい。



こうした事態は、日本国憲法25条に由来して日本国が国民に対して負う健康で文化的な生活の保持義務を放棄するに等しい。
憲法違反は顕在化する。
TPP及び日米二国間協議(日米FTA)によるSPSが憲法25条違反であることは明らかである。

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