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2013年11月18日 (月)

アメリカの再生 アメリカの復元力という伝統

この間のブログで「アメリカの凋落」と書き、何人かの友人からお叱りをいただいた。


いうまでもないが、これはアメリカの『覇権主義の凋落』という文脈であるので、誤解を解く意味で、まとまりもないが、今、思うところを書いておきたい。


日米の政治風土の大きな違いをまざまざと今、われわれは見せつけられている。
アメリカで起きていることは、日本で言えば、自民党衆議院議員の295人の内230人が、安倍政権が進めるTPP交渉に待ったをかけたというに等しい。
そんなことは日本では起こり得ないことを悲しいことに私たち日本国民は知っている。
日本では、民主主義の死滅をもたらす秘密保護法が、おそらく少なからぬ自民党議員が疑問を持ちつつ(アメリカ留学経験のある弁護士でもある森雅子氏が担当大臣を任されて、とんちんかんな答弁を繰り返しているのは、ご本人がこの法律に納得していないからとお見受けする)、アリバイ的な微細な修正を施しただけで、通過させられようとしている。
個々の議員の主体性は存在しないに等しい。


議院内閣制と大統領制という統治機構上の相違が、まず浮かぶ。
しかし、それはおそらく、表層のことに過ぎない。
問題は、党が決めたことには従うという、家畜化された政党制だろう。
「自由民主」と称しながら、『自由』でも『民主』でもない。
高支持率の党首に服従する無力な議員の群に過ぎない。


かつての自民党には、多様性と懐の深さが存在した。
民主党政権の3年を経て、そうした政治文化は、死滅してしまった。
復活した自民党は、まるで全体主義政党だ。


もう少しレンジを広く取ろう。
この国では、私たちは、自分の手で明日を選び取ることができるのだ、という当たり前のことが、決して当たり前と思われていない。
仮に、国民主権の原則が、単なる正当化原理(権力者の言い訳)以上のものだとするならば、少なくとも、次のようなことを国民に要求するだろう。
主権者として自覚し、主権者として主張し、主権者として行動する。
これには、自分の手で明日を選び取ることができるという信念が必要だろう。
むろん、その結果に対して、主権者として責任を引き受ける覚悟も必要だ。
この根本が、日本の政治文化には根付いていない。


アメリカにおける『覇権主義の凋落』と、対比しておきたい。
アメリカの覇権によって利益を得てきた集団は、「1%」の富裕層であり、最低限のモラルすら投げ捨て、国民を家畜扱いする、グローバル資本だ。
米国議会の与党から上がった声は、グローバル資本に駆動されて暴走を続ける政府に対して民意が突きつけた拒絶に他ならない。
アメリカのグローバル資本の一番の被害者は、アメリカ国民なのだ。
アメリカ国民は、家畜化されなかった。
未来は自分たちで変えることができるとの信念を捨てなかったのだ。
今、アメリカで起きつつあることは、アメリカ民主主義の復活への序章なのだろう。
アメリカの覇権は後退するであろう。
一国が決めたルールで、全世界を支配しようなどと言うことが、そもそも正しい行いではないのだから、混乱は続くにしても、健全な世界を取り戻す一歩になるだろう。
そして、アメリカの国民は、より解放された国民になるだろう。


アメリカの復元力、という言い古された言葉がある。
アメリカでは、ほとんど絶望的と見える闘いに、挑み続け諦めない国民がいるということだ。
下院議員から上がった、“NO”の声は彼らにとっては、アメリカの凋落ではなく、民衆の復活を告げるのろしだ。
TPPは確かに、直ちに取りやめにはならず、議会もしばらく揉め続けるだろう。
しかし、メディアがいうような「年内妥結」をめぐってではない。
最低限でも、交渉内容を公開するか否かが焦点だ。
僕には、この形勢では、万一としか思われないが、アメリカ国民は、それでも、場合によっては、一時的敗北を余儀なくされる可能性もあるかもしれない。
しかし、彼らは決して、あきらめはしない。
だから、復活への第一歩を画した彼らに、心から、エールを送りたい。


日本でも同じはずだと、敢えて言う。

私たちは明日を選び取ることができる。
そして、国民主権原則によれば、私たちは明日を選び取ったとみなされる。
その責任を負うべきなのは、私たちだ。


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この件に関して、もう一つ挙げるのであれば、この国のマスコミのおバカぶりである。

雑記事ながら、下院民主党のこの動きに触れるマスコミは存在したようだ。
しかし、その論調は、毎日新聞などが『年内妥結に影』とおバカな評価を告げるばかりだ。
仮にも自民党衆議院議員の4分の3が安倍首相の進めるTPP交渉の中止を求めて書簡を送ったとしたら、TPP交渉はどうなるだろうか。
『年内妥結に影』という程度ですまされる問題だろうか。
まして、アメリカでは貿易協定交渉の権限は正式に議会に帰属している。
わずかに産経新聞が『早期妥結へ暗雲』『議会二分』と、かなり正確な見出しを付けている。但し、それも『早期妥結』に対する『暗雲』であり、本質を見るものではない(「年内妥結」との決まり文句でなく、「早期」とするのがミソ。いったい、どのくらいを早期と考えるのだろうか)。
問題は、国民の生活に大きな影響を及ぼす事柄を国会の頭越しに、極限的な密室交渉で決めてよいかという民主主義の問題だ。


朝日新聞に至っては、17日付で日米関税交渉を採りあげて、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、米国が日本にすべての輸入品の関税をなくすよう求めていることが分かった。日本が例外扱いを求めているコメなどの農産品「重要5項目」も、20年以上の猶予期間をつくるなどして撤廃するよう要求。米国の想定外の強硬姿勢に日本政府は反発を強めており、年内妥結は不透明さを増している。」とリードを打つおバカぶりである。
根本の米議会が揺れているのに、関税交渉で「年内妥結のために戦略の再検討が必要」との趣旨で結ばれるこの記事は、完全に倒錯している。
何と朝日新聞(名古屋)は、これを一面トップ記事として扱っている。
米国議会で起きている一大事を伏せて、アメリカの強硬な関税交渉の姿勢を一面トップで報じる。
譲歩しなければ大変なことになると、言わんばかりである。
バランスの欠如は明らかであろう。政府公報の面目躍如である。
朝日は、自民党議員の4分の3が、秘密交渉にNOを突きつけたとしても、アメリカの要求を採りあげて、年内妥結のために、再検討が必要だとするのであろうか。
尊敬していると思われるニューヨークタイムズ紙の分析は、天と地の差である。


下院議員は、オバマ政権には交渉権限はない、交渉を止めよ、と主張しているのだ。
交渉権限のないUSTRとの交渉の継続は、TPP自体に対して賛否いずれのスタンスを取ろうが、百害あって一利なしである。
まして、この期に及んでなお関税交渉で譲歩しようなどは、交渉相手を利する以外の何物でもない。
日本政府=日本国の代理人(≠USTR代理人)という前提で考えるとすれば、アメリカ大統領の交渉権限問題に決着がつくまで、他の交渉当事国とともに足並みを揃えて交渉を中断するのが真っ当である。

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追記
朝日新聞のこの体たらくについて、考えてみている。
記者ではなく、デスクを支配している何かがあるのだろう。
阪神支局事件のためだろうか。
それなら、「タブーの正体」に記された川端幹人氏のあとがきをよんでほしい。
個人ではなく、組織に属しているのだから、勇気は10分の1も要らないはずだ。
いや、スポンサー収入のせいだろうか。
それなら、平均年収が弁護士の2倍以上という給料に拘らず、ジャーナリズムに徹するだけですむ話である。
理解してあげようとしても、やっぱり無理である。

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