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2014年1月17日 (金)

『SHALL』と『SHOULD』 朝日新聞TPP記事の間違い

1月16日付朝日新聞「けいざい深話 TPP最終攻防2」の記事はTPP交渉の舞台裏を取材したという触れ込みの記事のようである。
そこに下記の件(くだり)がある。


フロマンが「今日はこのテキストをまとめよう」と切り出すと、ある箇所を「SHOULD(~すべきだ)」にするか「SHALL(~の方がいい)」にするかで紛糾。時間はむなしく過ぎていった。


これは、ごく最近になって英語の法律文を読むようになったマチベンから見ても、明らかに間違いだと思われる。


法律用語としては
「should」は「~するように努める」であり、
「shall」は「~しなければならない」であるから
「shall」は強い拘束力があるが、「should」はそうではない。
朝日の記事では、この関係が逆になっている。


しかも、「should」にするのか「shall」にするのかでは、法的な意味が決定的に違う。
前者の違反は違法ではないが、後者の違反は直ちに違法になる。
努力義務規定と法的義務規定と理解してよいのではないかと思われる。
したがって、「時間はむなしく過ぎていった」も間違いで、この問題は交渉の正念場になる。


ところで、朝日新聞はいち早く昨年9月4日のTPP関連記事から『ISD』との呼称を『ISDS』に改めている。
理由については、政府の呼称に統一したと述べている。
しかしながら、政府は、2011年以来(それ以前からかも知れないが)、一貫してISDSの呼称を用いている。
したがって、この時期(2013年9月4日)になって、政府の呼称に合わせて『ISDS』に改めるべき理由は見当たらない。
普通に考える限り、当時、政府に取材した記者が、政府から『ISD』ではなく、『ISDS』にしろと言われて、それにしたがったのではないかと想像される。
「投資家私設法廷制度」の横文字呼称など、別にどちらが正しいという問題ではないことは、昨日述べ通りだ。


朝日新聞の今回の交渉内幕記事も、当然、政府に取材して書かれていると思われるのだが、政府は、どうでもいいような呼称の統一については拘るが、基本的な法律用語の間違いについては、どうでもよいと考えて説明してあげなかったようである。
今朝の朝日新聞を見ても、訂正記事がないので、政府は、記事が間違っていたよと、朝日新聞記者に教えてあげるという親切心も持ち合わせていないようである。


天下の朝日新聞が、法律的な間違いを犯すのは、読者にとって問題がある。
他に教えてくれる人もいないようなので、仕方がないから、離婚だとか不倫だとか相続だとか市井の事件しか扱っていないマチベンが親切にも教えてあげる。
訂正してね。
(ついでに、TPPに関わる法律問題について取材するときにはマチベンにも取材してね(^^)V)


それにしても、TPPについては、政府も学者も、どうでもいいことに拘って見せて、肝心なことは教えない。
ISDについても、15日のNHKニュース9では、カナダのISD反対の学者に取材していたから、海外では活発な論争が学者の間でも続いているはずなのに、そうした紹介すらされない状況だ。


よらしむべし知らしむべからず。
これが政府と推進派の本音である。

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