靖国参拝と辺野古埋立承認
年末のどさくさに紛れて、よくやってくれたものだと思う。
12月26日 安倍首相靖国神社参拝
12月27日 仲井真沖縄県知事辺野古埋立承認
この二つの出来事は、少なくとも二つの意味で、同じことの裏表である。
最も見やすいのは、先の戦争を正当化し、A級戦犯を合祀する靖国神社への参拝は、先の戦争は正しかったとする意思の表明であり、したがって、沖縄を捨て石にした本土の戦略は正しかったということの表明である。
ゆえに、再び本土のために沖縄を踏みつけにして、何が悪いということである。
辺野古基地は、普天間基地の基地機能をはるかに強化した最新鋭基地である。
完成まで9年、その後の供用期間を考えれば、今後50年間は本土の民は、沖縄を踏みつけにするということだ。
平成の沖縄処分である。
二つめは、アメリカ覇権の後退だ。
議会の反対のためにシリア攻撃に踏み切れず、また、TPPも議会から授権される目処が立たないアメリカ政府は、軍事・経済の両面で衰退が明白になってきた。
アメリカ覇権の後退は、世界情勢を不安定化させるだろうと指摘されてきた。
中東やアフリカ情勢の不安定化はまさにそれだろう。
しかし、日本で起きていることも、まさにアメリカ覇権の後退を象徴するできごとであり、この点でも年末の二つの出来事は裏表の関係だ。
まず、靖国参拝。
アメリカが日本の首相の行動に明示的に反対の意思表示を行うことは、おそらくかつてなかったことだ。
重要な同盟国のトップに対して、そのような意思表示をしなければならないということは、アメリカが同盟国のトップをコントロールできないという事態を意味している。
帝国としては恥ずかしい限りであろう。
アメリカ覇権の後退は、遠い国の出来事ではない。
今、日本で起きていることが、まさにそれだろう。
他方で、辺野古基地移設。
ここではアメリカ覇権がなお健在であるかのように見えるかもしれない。
しかし、中国の台頭を踏まえ、アジアへのリバランスを掲げるアメリカの軍事戦略としては、できれば中国の中距離ミサイルの射程圏に基地を置くという愚は避けたい筈である。
したがって、日本に駐留させている兵員は引き揚げたい筈である。
ところが、機動的に動けない。
財政事情のためである。
アメリカ本国に置くよりコストがかからない日本に駐留させ続けざるを得ないということになる。
基地更新の費用を日本に肩代わりさせざるを得ない、したがって、不本意ながら、沖縄に新基地を持たざるを得ない。
辺野古基地もアメリカ覇権の後退の表れに見える。
今、世界は、パックスアメリカーナと呼ばれた構造の崩壊過程を迎えている。世界秩序は当分、不安定期に入る。
そして、安倍首相という、すぐれて特異な個性を選んだ日本国民は、不安定化する世界情勢の最先端に置かれるであろうという、新年早々、甚だめでたくない見通しを持たざるを得ない次第である。
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