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2014年2月 3日 (月)

栃木県弁護士会ISD反対声明 (2013年10月30日)

長野県弁護士会に引き続き、栃木県弁護士会がTPP反対の会長声明を出している。


ISDについて、憲法体系との矛盾点を簡潔に指摘しているので、ご紹介したい。


栃木県弁護士会で会長声明が承認された日付は2013年10月30日だが、公表されるまで確か2週間くらいかかっていた。
その間に特定秘密保護法案が国会提出され、TPPとの関連性に気づいてからは、秘密保護法問題に気を取られてしまい、ご紹介が遅れました。

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投資家対国家紛争解決制度を含む環太平洋パートナーシップ協定の締結に反対する会長声明

2013年(平成25年)10月30日
栃木県弁護士会
会長 橋本賢二郎


1 投資家対国家紛争解決制度
環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement 以下、TPP という)のうち、投資分野に関する協定(投資協定)には、実体規定と手続規定とが定められているが、投資家対国家紛争解決制度(Investor-State Dispute Settlement、以下、ISDSという)は、投資協定に付随する手続き条項である。

ところで、当該制度は、外国投資家と投資受入国政府(地方自治体や独立行政法人等を含む)の投資協定に違反する作為・不作為の問題について、外国投資家に対し、直接に国際投資仲裁に付託する権利を包括的に認め、投資受入国政府に国際投資仲裁を受けることを強制する制度である。

TPPは、投資分野も対象の1つの分野としていることや、これまで同種の条約や協定にISDSが設けられていることから、このISDSが設けられることは必至である。

2 投資協定の実体規定と紛争の多発
投資協定の実体規定は、投資後の保護だけでなく、外国投資家の日本国内への投資の自由や、外国投資家の円滑な活動を保証する趣旨を含み、内国民待遇義務、最恵国待遇義務、間接収用を含む収用の禁止及び適正な保証、公正・衝平待遇義務等を定めている。

しかし、上記の様な重要な規定にかかわらず、その規定文言は漠然としている。しかも、外国投資家の活動範囲は、今日、極めて広範に及んでおり、外国投資家と政府・地方政府の間の活動の章にかかわる紛争は極めて広範に及ぶものであり、当該紛争解決制度の利用の多発することが必定であると言わざるを得ない。


3 司法主権の侵害
(1)ISDSは、極めて曖昧な文言で表現されている投資協定に関する実体法に、国際法としての規範性を付与したうえ、法律の制定を含む政府の作為・不作為が違法であるかどうかの判断権限を国際仲裁制度に与えるものである。

(2)ところで、日本国憲法76条1項は、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところによって設置される下級裁判所に属する」と規定し、司法権を一元化している。また、日本国憲法は、最高法規であり(憲法98条1項)、公務員に憲法尊重擁護義務を課している。更に、内閣による条件の締結、国会による条約の批准は、憲法の尊重擁護義務を課せられた公務員によって行われる。

この様な憲法の定めにかかわらず、ISDS条項を定める条約を批准することは、司法権に属する重要な権力行為を国際仲裁判断に付託すること、即ち、司法権の重要部分を国際仲裁に付託することを認めることになる。

つまり、内閣がこのような司法主権侵害のISDSを締結し、国会が批准することは、憲法に違反するものである。

4 国民主権の侵害と憲法破壊
(1)日本国憲法は、国民主権原理に立脚し、国民の選挙によって選ばれる議員によって構成される国民こそが国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるとしている。

しかるに、国際投資仲裁制度における仲裁人は、国民に対し何らの責任をも負わないのであって、このような仲裁人に対し、国会の立法すら左右する権限を付与する制度は、国民主権原理と相容れないものである。

(2)また、ISDSは、巨大な多国籍企業によって濫用される傾向にあり、北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement)発足後、その弊害は顕著になっている。また、ISDSが存在することによって、国家機関等の諸活動に対して、萎縮効果を及ぼすものである。米韓FTAの締結に先立って、韓国の法務部がISDSについて検討した結果、「租税、安保、公共 秩序、保険等すべての政府(地方自治体及び政府投資機関、司法府等を含む)の措置に対して提訴可能」であるとしている。

(3)ISDSは、我が国においても、自立的な立法・行政・司法活動を著しく阻害する恐れがある以上、我が国の国民主権に基づく統治機構を、外国投資家の支配下に置くに等しく、国民主権原理を踏みにじるものであるから、それは、憲法破壊的な事態を招来するものと言わざるを得ない。

5 以上の様に、外国投資家が、我が国の同協定違反について国際投資仲裁に付託できる制度を採用する太平洋パートナーシップ協定の投資家対国家紛争解決制度は、我が国の司法主権を侵害するとともに、我が国の立法・行政をも萎縮させ、国民主権原理を否定するものである以上、日本国憲法の体系に違反する恐れがある。したがって、日本国政府は、この紛争解決制度の条項を置く環太平洋パートナーシップ協定を締結すべきではない。
    以上

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