グローバリゼーションと、対抗する専門家の不在
「景気回復」、「経済成長(金儲け)」の一言で思考停止するショックドクトリンの罠に日本は、完全に絡め取られている。
TPP、日本再生計画、国家戦略特区、規制改革実施計画…。
安倍政権は、TPPの波に乗り、「世界一ビジネスのしやすい国」を掲げて、率先して外資のために日本という国を投げ売りしている。
生涯派遣法、残業代ゼロ法、そして解雇制限法理廃止の追及。
労働者をもモノ化して市場に投げ込む労働者保護法制への執拗な攻撃。
生活者のために歯止めをかけるべき野党(社共を除く)は、与党とともに超党派でカジノ法を推進してグローバル企業に日本国民を差し出すことに精を出す。
避けられぬカジノ難民や治安維持のために国家予算を割いて、グローバル賭博業を日本に呼び込む。
どうかしている。
大阪市の水道を初めとして、公共サービスを解体して、市場に投げ入れようとする動きも急だ。
武器輸出3原則の見直しが言われたとき、これに反対する人たちは、せいぜいが同盟国との武器共同開発に向けられたものと理解していたのではないか。
そんな生やさしいことではなかった。
堂々と武器(技術)を輸出し、軍事ODAに踏み出す。
原発輸出が、原発事故の危険性を世界中にばらまく。
原子力協定でどのような約束をしようと、先々、全世界への核兵器の拡散につながらぬ保障はない。
戦後、営々として築いてきた「平和国家日本」のブランドを手放し、忌み嫌うべき「死の商人」へと踏み出す。
欺瞞であったとしても「平和国家」のブランドは外交・防衛上の日本の最大の強みだったはずだ。
これをいともやすやすと手放し、踏みにじる。
それもこれも「経済成長(金儲け)」のためだ。
「集団的自衛権行使」を容認して世界の普通の国になることと、「経済成長」「グローバリゼーションへの投身」は結びついている。
ネオリベラリズム、ウルトラ自由主義に哲学をもって対抗しようとする佐伯啓思氏や水野和夫氏ら気骨の論者は「経済成長」を自明視することに警鐘を鳴らし続けている。
残念ながら、極めて少数派だ。
今まさにマルクスが予見した世界に直面しながら、左派の学者から哲学のある本格的なグローバリズム批判が出たのを知らない。
みな学会の評価第一で、専門分野を避けながら、TPPに反対してみせているだけではないか。
憲法学者が憲法の最高法規性をいうならば、ISD条項によるグローバル資本主権国家への組み替えが、国民主権原理と基本的人権尊重原理を踏みにじることを明らかにすべきだろう。
国際公法の学者は、グローバル企業帝国主義は、国際公法の大原則に反することを主張すべきだろう。
行政法学者は、なぜ地方自治を蹂躙する国家戦略特区を初めとする、構造改革を体系的・専門的に論じ、違憲を主張しないのか。
僕が知る限り、法学者のだれ一人としてグローバル帝国主義を批判する専門分野の議論をしようとしない。
あげくは、TPPはアメリカ相手だからだめだが、ASEANや東アジアとの自由貿易は推進すべきという勢力に加担する。
自由貿易ルールの本質から目をそらす議論だ。
WTO後の現在、自由貿易のための新たなルールの導入は、「非課税障壁撤廃」のスローガンの下、すべからく暮らしの仕組みをグローバル資本にとって都合よく作り替えることに向けられているという本質を見ない。
自由貿易ルールは、食の安全も、消費者保護も、労働条件も、等しく底辺への競争へと駆り立て、人間の暮らしを破壊するという本質に目を向けようとしない。
日弁連も、グローバリズム、TPPについて頑なに沈黙を守る。
沈黙を守るということは、グローバリズム推進勢力に加担するということだ。
学者や日弁連が、集団的自衛権行使容認反対で、一丸になるのはいいだろう。
しかし、今、わが国を襲っているグローバリゼーションの波は、それに匹敵する重大な問題だ。
せめて集団的自衛権問題に割く力の、半分でも、いや4分の1でも、グローバリズム批判に向けるべきなのは明らかだ。
今や、僕の目に写る法律家の世界は、研究者も実務家もすべからくグローバリストに見える。
みなネオリベラリズム・ウルトラ自由主義を内在化させ、そのことに気づいてすらいないようにも見える。
佐伯啓思氏も水野和夫氏も、グローバリゼーションが破綻するのは、歴史的スパンでみれば、そう遠くはないという。
そうなったとき、法学者や法律実務家は、第二次世界大戦の敗戦と同様に悔恨の共同体を気取ってみせれば、責任を逃れられるとでも思っているのか。
目の前の、現実をそのままに見て、対峙すべきである。
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