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2014年6月20日 (金)

壊れていないモノを直すな  混合診療拡大の帰結

本川裕氏「統計データが語る日本人の大きな誤解」(日経プレミアシリーズ)の中に、興味深いグラフがある(社会実情データ図録1900)。

見やすいグラフはこちら

やや難解なグラフであるが、高齢化に伴って、各国の医療費が対GDP比でどのように変化したかを表している。
各国の折れ線グラフの点は、2011年までの一年ごとの各国の医療費がGDPに占める比率と、高齢化率(65歳以上の高齢者が人口に占める比率)の交点に打たれている。


注目すべきは、米国の医療費率の増大の仕方である。
ほぼ垂直にグラフが立ち上がっている。
つまり高齢化していないのに、GDPに占める医療比率が急激に上昇しているのだ。
高齢化が進展しているわけでもないのに、対GDP比率が10パーセント台から、17.7パーセントに急速に立ち上がっている。
グラフの点の数を数えてみると、こうした傾向は、80年代くらいから顕著になっている。
米国ほどではないが、英国も同様の傾向がある。
特別な要因が指摘できないとすれば、医療費が年々高騰したことを示している。
この医療産業の膨脹が、米国の経済成長の重要部分を占めていることを示している。


対して、日本は、高齢化率は最も高いが、医療費の対GDP比は相対的に低い。
しかも高齢化に伴う医療費の対GDP比率の上昇が相対的に緩やかになっている。
高齢化しても他国ほどには医療費の比率が増大しないということで、これは日本の医療制度のコストパフォーマンスが総体的に良好だということを示しているものと思われる。


政府は、「経済成長戦略」と称して、混合診療を拡大し、壊れていないモノ=健康保険制度に敢えて手を加えようとしている。
その先には、混合診療の全面解禁が待ち受けている。
健康保険が適用される件数が増大することは、健康保険財政を圧迫する。
不可避的に健康保険が適用される給付水準は切り下げられることになる。今なら保険適用されているCTやMRI、各種の検査が保険適用外になる。あるいは各種の薬剤が保険の適用外になる。


絶妙なバランスの上に成り立ち、コストパフォーマンスのすぐれた健康保険制度が破壊されることになる。
国民全体の健康が悪化することが避けられないだろう。


TPPでは、薬価に対する製薬メーカーの異議の制度化や、ジェネリックを抑制する種々の仕組みが盛り込まれている。
薬価を決める審議会での米国企業の発言権を強化することも狙いだ。


薬価が高騰すれば、今は当然と考えられているような基礎的な薬も、健康保険が適用されなくなる。
民間の保険会社の市場となる。


米国では、金融分野がGDPに占める比率が3割を超え、医療分野がほぼ2割を占める。
実に米国のGDPの内、半分を金融と医療が占める。
いわば作られた虚業による経済成長である。
このような経済は、いびつというほかないだろう。
しかし、「経済成長戦略」は、これこそ真っ当な戦略とする。


世界的に稀にうまくいっている健康保険の仕組みを壊すことが、「経済成長」には有益なのである。
ノバルティスなどで指摘される大学や医療機関と製薬会社の癒着は氷山の一角に過ぎない。
金融と医療をセットにして「経済成長」を図る政策は、国家ぐるみの癒着を正常なものと認識することを強いる日を招くだろう。


「経済成長」を自明視すべき時代が去ったと認識すべきことは「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫著・集英社新書)が示すとおりである。仮に「経済成長」を是とするとしても、TPPが招き寄せようとするグローバリズムによる「経済成長」は、一部富裕層を除く国民全体の生命・健康、幸福追求の権利を蝕む「経済成長」である。

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追記
本川裕氏の「統計データが語る日本人の大きな誤解」(日経プレミアムシリーズ)は、立場の違いを超えて、一読をお勧めしたい好著と思う。
氏の結論は次の通りだ。


『本書が統計データで明らかにした日本社会の本当の姿はこうだ。
 失業率はどんどん高まっているわけでなく、日本の経済力は高く、技術力も世界と比較して向上し続けている。
 経済格差も貧困も拡大しておらず、相変わらず日本は国際的には平等社会を維持している。
 また、世界一の「小さな政府」が効率的に機能しており、高齢化の割に医療費は非常に低く抑えられている。
 その中で食べ過ぎや肥満に陥らず、世界一の平均寿命を達成し、女性は生き生きと美しく暮らしている。
 これらのことから、日本人は、人類全体の希望の星となっている』


僕は、日々の仕事の中で、人々に広がる格差を実感している。
それでもデータが示す姿は日本がまだまだグローバリズムの観点からは序の口であることを示している。
TPPが壊すのは、まだ残されているこうした日本社会の良さでもある。

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