現実遮断・批判精神の衰退 たかがサッカーまでも
W杯サッカーの日本代表は、『史上最強』で、『優勝』をねらえるチームという触れ込みだった。
いいところなく、早々と一次リーグで敗退した。
大会直前の46位というFIFAランキングは、本大会出場を目前にしてアジア予選を敗退したドーハの悲劇の1993年の43位より低いのだから、一次リーグ突破は容易ではないというのが客観的見方だったのだろう。
一次リーグが終わるまで、メディアがチームのFIFAランキングに触れることはほとんどなかった。
ベスト8が出そろってから、目にするようになった印象である。
都合の悪い数字は隠して、現実を無視して、『史上最強』チームと煽ったのだろう。
ベストエイトが出そろってみれば、ランキングは、正直である。
ドイツ 2位
ブラジル 3位
アルゼンチン 5位
コロンビア 8位
ベルギー 11位
オランダ 15位
フランス 17位
コスタリカ 28位
コスタリカは奇跡と言われているのだから、日本が「優勝」などとおよそ口にできる状況になかったことは明らかだろう。
たかがサッカーであるが、たかがサッカーまでも、現実遮断されている。
かつては信頼に値したと思われたサッカージャーナリストも『史上最強』のお墨付きを与え、メディアの煽りに加担する。
日韓大会の日本代表トルシエ監督は、批判にさらされ続けたが、結果を残した。
念のため日韓大会のあった2002年5月の日本のFIFAランキングは32位だ。
昨年来、日本代表のランキングは降下の一途を辿り、40位台をさまようようになった。
しかし、ザッケローニ監督に対する批判は大会が終わるまで、ほとんど聞かなかったように思う。
ザッケローニ監督の4年間は、そのまま日本社会が批判精神を失う年月に重なる。
今や、『美味しんぼ』のようなマンガ表現ですら、現実を批判しようとすると、厳しいバッシングを覚悟しなければならない。
守られるのは、結局、電力会社の利益だ。
「現実は完全にブロックされ、管理下にある」状況は今や、たかがサッカーにまで及んでいる。
経済成長・企業の利益のためには、現実は遮断されるのだ。
批判を封じ込める社会は、衰退するだろう。
無謀な太平洋戦争に突き進んだ状況を想起するのは、たやすそうだ。
サッカー日本代表を『史上最強』と煽ったメディアの視聴率至上主義は、そのまま無謀な太平洋戦争への突入を煽った新聞の部数第一の姿勢に重なるだろう。
しかし、僕には今、日本を襲う状況は『ショックドクトリン』の冒頭に描かれた人体実験に似て見える。
同書は冒頭、狂気じみた感覚遮断実験の模様から始まる。
感覚遮断された人間は正常な判断能力を失い、容易に操作されるようになる。
シカゴ学派によるウルトラ自由主義の運動はこの実験を応用し、ウルトラ自由主義を世界中にばらまいていった。
日本は今、原発事故を発端とした感覚遮断の真っ只中にある。
その方向は極端な新自由主義と企業利益不可侵の世界を向いている。
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