日本、NATO加盟へ
日本がNATO加盟に向けて動き出したというニュースが流れる。
断続的に続いたウクライナ非合法政権と親ロシア勢力の調整が決裂し、NATOの軍事介入が避けられなくなったことを受けての動きだ。
集団的自衛権の行使を容認した以上、想定されていたこととはいえ、事態の進展のあまりの速さに愕然とする。
気分が悪い。
夢はそこで覚めた。
テレビニュースをつけたまま、うたた寝したのがまずかったようだ。
個別的自衛権に毛が生えた程度の「集団的自衛権」など、国際社会で通用するはずもない。
集団的自衛権行使容認は、国際社会ではたとえばNATOに参加できるということだ。
ベトナム政府の要請で中国とも戦火を交えることができるということを意味する。
対米隷属が極まった中での集団的自衛権行使容認は、米国と対立するイスラム世界と敵対する国というメッセージを鮮明にすることでもある。
集団的自衛権行使容認が抑止力の強化につながるという。
抑止力という考え方の是非はともかく、強化につながるという理屈自体がよくわからない。
政府が説明するような、米艦防護やアメリカへ向かうミサイルを迎撃することが、なぜ抑止力の強化につながるのか。
アメリカが他国への攻撃に対して、武力行使をするというなら、抑止力の強化につながるということはわからないではない。
しかし、たとえば、台湾が、アメリカに対する攻撃に対して、反撃することを明言すると、台湾の抑止力を強化したことになるのか。
小国の攻撃に対して、大国が武力行使するから、小国に対する抑止力になるというのが集団的自衛権による抑止力の本来の筋だろう。
何だかよくわからない議論だ。
先日、そうしたことに詳しいメンバーの会議で聞いてみた。
どうも政府は、なぜ抑止力強化につながるのか、はっきりした理由の説明をしている訳ではないらしい。
予想通り、日本が血を流す覚悟をすれば、アメリカも尖閣諸島を本気で守ってくれるだろう、あるいは血を流す覚悟を示さなければ、アメリカに尖閣諸島を守ってもらえないだろうということになっているようだ。
近所づきあいの「お互い様」の延長で考えるのはお目出度いこと甚だしいが、どうもそんな俗論しかないようだ。
日本が助ければ、アメリカが助けてくれるみたいな擬人化したお人好しの発想が、通じる筈もない。
「同盟国」の態度に応じて、自国の姿勢を好意的に変えるということなど土台期待できないことは、アメリカ流の「自由貿易」の内実を見れば明らかだろう。
自国の制度は一切変えることなく、相手国の制度や慣行を一方的に変えるよう攻め立てるのが「自由貿易」をめぐるアメリカの歴史だ。
譲歩すれば、さらなる譲歩を求めるだけだ。
経済交渉ですらこうなのだから、こと軍事になれば、『お互い様』などという甘ったるい発想が通じる筈もない。
アメリカのために「血を流す」と宣言すれば、もっともっと血を流すことを求めてくるだけだ。
かくして、アメリカの要求は際限がなくなる。
首相が日本に任せろと表明した以上、南シナ海の先兵は日本になるのは、自明に見える。
NATOに加盟して、イスラム国や親ロシア勢力と交戦しなくてはならなくなるという悪夢は、なまじ見当はずれでないかもしれない。
かつての大戦には負けていないと信じている日本の支配勢力が、最終的にどちらへ向かうのか明らかではないこともまた不気味だが、敗戦状態=対米隷属を選ぶならば、行く先は見えている。
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