日本NATO新連携協定と軍事演習 集団的自衛権の本丸はNATO
日本のNATO加盟(9月5日付拙ブログ)などは、さすがに、荒唐無稽の戯れ言と思っていた。
翌9月6日の中日新聞朝刊に次の記事が出た。
自衛隊 NATOと実働訓練へ
軍事連携拡大 懸念も
自衛隊と北大西洋条約機構(NATO)軍による初の実働訓練が実施の方向で調整されていることが明らかになった。日本政府が4日、英ウェールズのニューポートで開かれているNATO首脳会議の分科会で表明した。安倍晋三首相が主張する「積極的平和主義」の一環だが、同盟関係にある米国以外とも軍事連携の強化が進めば、自衛隊の海外活動が際限なく広がる懸念がさらに強くなる。
安倍政権は、これまでNATO側と次々に軍事連携を強めてきた。首相が5月にベルギーを訪問した際、ラスムセンNATO事務総長との間で、海賊対処を含む海上安全保障やサイバー防衛などの連携を確認。NATOの加盟国の英国やフランスとは、政権として禁輸政策の武器輸出三原則を撤廃したことを踏まえ、防衛装備品の共同開発などの協力を前進させている。
初の実働訓練では、ソマリア沖で海賊対処活動を実施している海上自衛隊と、NATO軍の共同訓練を想定。懸念されるのは、政府が7月に行使容認を閣議決定した集団的自衛権との関係だ。閣議決定では、集団的自衛権を行使できる3要件の中で「密接な関係にある他国」が武力攻撃された時と定め、政府は米国を例示しているが、対象になる国を限定していない。首相は米国以外の国に関し「状況に即して判断される」と国会答弁しており、NATO加盟国が「密接な関係にある」と判断される余地は十分にある。上智大の田島康彦教授(憲法)は「欧州諸国との軍事協力強化は、憲法9条の枠を大幅に超えた取り組みだ。集団的自衛権の行使が現実問題になった時に『密接な国』の定義が歯止めなく拡大解釈される恐れがある」と指摘した。(中根政人)
全国紙では報じられていないように見える。通信社の配信はあるようだが、扱いは小さい。
ネット検索すると、次の記事が出てきた。
今年5月の記事である。
安倍首相、NATOとの新連携協定に調印
2014年 05月 7日 06:16 JST
[ブリュッセル 6日 ロイター] - 欧州歴訪中の安倍晋三首相は6日、北大西洋条約機構(NATO)本部を訪れ、海賊掃討作戦、災害対策、人道支援などの分野でNATOとの連携を強化する新たなパートナーシップ協定に調印した。
安倍首相はNATO加盟28カ国の大使を前に講演。講演後のNATOのラスムセン事務総長との共同記者会見で、ウクライナ情勢を引き合いに出し、脅しや強要による現状の変更は容認しないと述べ、こうした姿勢は欧州とウクライナだけでなく、東アジアを含めた世界全体に適用できるとの考えを示した。
ウクライナ問題については、ロシア、およびウクライナの政党が今月25日に予定されるウクライナ大統領選挙の正統性を認めるよう要請。同時に、危機の解決に向け、ロシアとの対話を行うことも重要との立場を示した。
NATOは非加盟国であるウクライナに対する軍事介入は行わないとしているが、NATOに加盟する東欧諸国への配備は強化するなどの対策はとっている。ラスムセン事務総長は、同盟国の防衛と保護に向け、NATOは必要に応じて追加措置をとると述べた。
安倍首相は集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更を目指しているが、ラスムセン事務総長は、日本が平和維持に向け積極的な役割を果たすことを可能にするこうした動きを歓迎するとの立場を示した。
この新連携協定を報じているのは、ロイターとジャパンタイムズ、ロイターの記事を援用するハフィントンポストだ。
日本メディアは、調べた限りでは出てこない。
今年5月といえば、政府が解釈改憲の閣議決定を急ぎだした時期に重なる。砂川判決を持ち出して叩かれたかと思えば、15事例とか言い出し、くるくる説明を変えていた時期だ。
同時期に、NATO軍との関係を緊密化する新連携協定が結ばれていた。
今回の軍事演習は、この連携協定に基づくものだと見て良いだろう(中日新聞すら協定自体には触れていない)。
NATOのホームページ(英文)には、関連するページが幾つもあるので、日本メディアの沈黙は、特定秘密保護法(施行前)による威嚇効果(ないし萎縮効果)によって国民の目をふさぐためのものだろう。
ロシアによるクリミア併合は3月18日。
5月6日のNATOとの新連携協定はその直後ともいえるタイミングである。
一方、ソマリア沖に自衛隊が派遣されたのは2009年の3月である。
5年も経過して、海賊対処を名目にしたNATOとの連携を強化する協定を結び、NATO軍と軍事演習を行うというのはいかにも唐突である。
ウクライナとの関係を疑わない方がおかしい。
もっぱら中国に向けられた国内の自閉的な議論とは裏腹に、集団的自衛権行使容認は、すでに世界規模に拡大している。
解釈改憲の焦点は、今やNATO、そしてロシアに向けられていると言って過言ではない。
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