危機にあるのか? エクアドルの反新自由主義
メーリスに流れていた情報です。
『ラテンアメリカの政治経済』ブログからの転載情報です。
エクアドルといえば、ISDにおいて、シェブロン、オキシデンタル、ペトロリウムといった石油メジャーと毅然と闘う反米の国であり、ネオリベラリズムとの対決姿勢の明確な国というイメージである。
アメリカとの投資協定破棄への動向も伝えられていた。
そこで、一体何が起きているのか、マチベンでは知るよしもないが、情報として有益だと思われるので、転載します。
エクアドル社会運動からラテンアメリカ進歩主義政党への公開書簡(10月1日)
テーマ:noticias
[Ecuador Libre Red による]ラテンアメリカ進歩主義者会議に参加した仲間たちに。
四分の一半世紀以上にわたるこの地域の野蛮な新自由主義モデルの導入を生きてきたのちに、エクアドル人民は、過去の数十年の遺産である不平等、疎外の構造を根本的に変革しようという約束、社会組織の熱い支持によって作られた政治的プロジェクトの誕生を、期待をもって見つめていた。2007年経済学者ラファエル・コレア・デルガドは、市民の多数の支持、わが国において排除されてきたセクターからの歴史的要求に取り組むという約束のもと、共和国大統領職に就任した。市民革命と称するものは、数十年間にわたる農民、先住民、労働者、学生組織、人民、民族、女性、フェミニズム組織、民衆エコロジスト、LGBTI団体、そのほかの闘いの成果として、根本的な改革、社会の民主化を実行する義務を有していた。
憲法制定会議の招集ののち、エクアドルのすべての進歩主義、左翼の政治勢力の支持のもと、新しい憲法が多数で採択され、これは国際資本の利益のために強いられた新自由主義モデルを終わらせ、わが国の歴史上初めて、多民族国家のように非常に重要な原則を掲げ、個人や団体の完全な権利の実行を保障するために憲法の規範を直接的に適用し、教育、社会保障の全般的な権利、水が人間にとって権利であるとし、脱民営化と再配分、土地の少数者への集中を禁止し、障害者、老人、子どもたち、青年を社会に包含し、両性を公平にし、自然の権利を認め、派遣業のような労働の不安定化をなくし、エクアドルが遺伝子組み換え作物に侵されない国であると宣言し、食料主権を守ろうとしたものであった。
否定することのできない前進があったにもかかわらず、政府の最初の数年から、先住民と農民組織;教員と学生、女性、エコロジスト、そのほかの社会市民の組織されたセクターは、少なからぬ第二義的な規定の内容について、政府から強いられる公の政策などが新憲法と矛盾している、また獲得した権利が侵害され、この国の変革の真のプロセスを強化することが妨げられているという疑問を持った。民主的な方法で、この国の人民動員の伝統に基づいて、異なった社会セクターは、みづからの体制にたいする不同意を表明し、モンテクリスティの憲法が到達したものを深化させようとした。残念なことに、政府のこれにたいする答えの姿勢は、多数の参加によるプロセスを作り出す代わりに、権力の乱用が増え、驚くべき抑圧と権威主義が強まることになった。これらの動員の結果は、社会と人民の指導者を裁判にかけ、現在の政府にたいする社会的抗議を犯罪にすることが始まった。
社会的基盤から徐々に離れていき、そこにつくられた祖国同盟の政治的プロジェクトは、国民投票の実施をともないつつ悪化し、このスタイルはラファエル・コレアの政府にとって好ましいものだったが、その実際においては[憲法から]遠ざかっていき、裁判に「介入する」ことになった。憲法は体制にとって「生命の歌」であって、施行されて3年がたって、最初の破壊的な改革を被り、それは体制にとって機能的な裁判所によって置き換えられた。
その後の数年間のあいだに、政府は一連の法制度の変更をおこない、開発主義経済モデルを強化した。同時に植民地に起源をもつ原材料輸出集積の様式を進めるうえで、障害となりうるすべてのセクターを排除しようとした。
経済学者ラファエル・コレアが、権力構造を変革しようとする証拠というものは何もない。かれの政府の7年間のあいだに、エクアドルの富を集中する、寡占支配層を終わらせようとしたことは何もなかった。それとは反対に、かれらセクターこそがもっとも好まれ、この経済モデルからもっとも利益を受け、資本主義の世界的な再適応の良い例となっている。同時に法律と反憲法的な大統領令によって、エクアドルの数十年間にわたる社会闘争が終わらせようとされている。以下はそのいくつかの例である:
1.刑法法典は、中絶について、女性のみではなく、これに携わった医師にたいしても犯罪にしている。また法的権利である抵抗をおこなったものも犯罪となる(憲法では保障されている)。このことにより多くの社会指導者が、政府に反対の声を上げたことにより、迫害されることが明らかである。最近では中高生たちが、警察権力によって残虐に弾圧されたのち、不法にも逮捕された。被逮捕者の家族は、国家警察が、若者たちにたいして、拷問をおこなったことを告発している。
2.同じ方法によって、反対派の政治組織にたいする迫害は日ごとに激しくなっている。2つの民主的で左翼の政党が、選挙への登録から外されたが、これはまったく違法な手段によるものであった。
3.労働法典はまさに施行されたところだが、労働者階級が歴史的に獲得してきたものの多くを終わらせ、かつて憲法制定議会において労働の不安定化の諸形態を排除していたにもかかわらず、労働関係の緩和によって経営者に利益を与えた。同時にストライキの法的権利を制限し、とりわけ労働組合組織を弱体化した。
4.布告813は、公共部門の労働者の権利を制限し、反憲法的に「辞職の強制」を制度化、これは公共部門労働者への脅しの手段として使われている。
5.布告016は、これによってすべての社会組織をコントロールしようとするもので、政府の利益に反するものには、いままでに解散命令、いくつかのONG、あるいは財団に国外退去を命令した。
6.欧州連合との貿易協定は自由貿易協定であり、小生産者にたいして、とりわけ農業部門にたいして決定的な打撃を与える。
7.教育改革は能力主義に基づいており、教育の全般的権利を侵害し、60万人の若者が、この3年間のあいだに、高等教育システムから排除されることになる。
8.地方生産的土地法の制定。政府は農民と先住民族を守っていると自慢するが、国内の土地所有モデルを強化し、私的所有、農工業を通じた資本主義的蓄積を強め、農民家族経済、食料主権、エコロジー農業を弱める・・・水資源の扱いについても同じことが言える。水は人間の権利であると憲法に謳われているが、引き続き少数者の手にある。「人は資本の上にある」といったレトリックな言葉は、うんざりするほど繰り返された文言でしかなく、今日までそれが明らかな現実となったことはなかった。
9.ヤスニ開発プロジェクトについては、ここが世界でもっともエコロジーな保存地の一つであり、おそらくこの地球上でもっとも生物多様性の地であり、動物や植物にたいする脅威であるだけではなく、みづからの意思で孤立している人々の絶滅の危険性が存在する。政府は、革命的な提案の高みにいることはなく、問題が固定化し経済グループの利益構造を損なうことを解決するために、ヤスニを採掘し、この地域に住む孤立する人々の生命を危険にさらすことのほうを選んだ。コレアの政府の開発主義は、ヤスニにおける石油開発の推進を止めないことだけではなく、この国の歴史において初めて、金属鉱山の大規模な採掘の扉を開いたことにもある。法律や人間、環境に関する規制を弱めて、鉱山にたいする多国籍企業の資本投下を妨げないようにした。
10.マスメディアが伝統的に経済グループの利益に奉仕するものであるとしても、政府の意図は政府の施政の不法さを告発する小さな声を黙らせることにある。そのために通信法が作られ、公共の分野での自由な情報、意見、批判が流通することが制限された。
社会組織がこの数年間のあいだに組織してきた批判、疑問、動員をまえにして、現在の政府の答えはつねにこれらの声、提案、行動の非合法化であった。恒常的にわれわれは体制にたいする陰謀をたくらんでいると告発され、すべての動員が民主主義にたいする脅威、クーデター未遂、コレア大統領の言うところの「保守派の復興」とされたが、現実に保守派を復興しているのはコレア自身なのである。
真に保守派を復興しているのは、自由貿易協定の調印を優先させ、農民たちに打撃を与え、国家の弾圧装置を使って、人民組織の正義の抗議行動を黙らせ、新自由主義の政府がおこなっていることをおこなっているものである。真実の保守派の復興とは、ラファエル・コレアの政府が、エクアドル人民の闘いによって獲得してきた歴史的成果にたいして襲いかかるその後退のなかにある。
したがってわれわれは、男は女は、労働者は、先住民は、農民は、教師は、学生は、知識人は、活動家は、あなた方と同じ闘争と夢の戦士は、現在の緊急な事態のなかで弾圧のもとにある、エクアドルにおけるこの重大な後退を告発する。左翼組織として、あなたたちに連帯をもとめ、政府が対外的には左翼の演説を維持し、しかし国内においては右翼政府と同じように振る舞っていることにたいして、そのイメージを払しょくすることに手を貸すことの無いように要求する。
署名者
アルベルト・アコスタ‐元エクアドル共和国憲法制定全国会議議長。マリア・パウラ・ロモ‐ルプトゥラ運動。フアン・クビ‐モンテクリスティ・ビベ全国運動代表。エスペランサ・マルティネス‐エコロジー行動。ロサ・マリア・トルレス‐元教育大臣。マウリシオ・チルイサ‐エクアドル中高生連盟(FESE)委員長。エクアドル労働組合総同盟(UGTE)。人民戦線。グスタボ・バジェホ‐革命的社会主義全国指導部。ホセ・モリナ‐革命的社会主義潮流。ヘオバンニ・アタリウアナ‐人民連合全国指導部。ナタシャ・ロハス‐ピチンチャ人民連合指導部。ミルトン・グアラン‐サモラ・チンチペ多民族連合共和国会議。クララ・メリノ‐ルナ・クレシエンテ人民センター・政治連合・女性全国運動。ラス・ロレンサス・フェミニスタ団体。ロハナ・パラシオス‐教員全国連合。カルロス・カステジャノス‐CUCOMITAE。セサル・ブエルバ‐FEUNASSC。フェルナンド・カルバハル・アギルレ‐クエンカ大学学術研究者。アタワルパ・オビエド‐スマク運動/ムルティベルシダ・ヤチャイ・ワシ。パメラ・トゥロジャ‐LGBTI活動家。シルビア・ブエンディア‐エクアドルLGBTI多様性ネット。ベロニカ・ポテス‐ルプトゥラ運動。ラミロ・アビラ・サンタマリア‐アンディナ・シモン・ボリバル大学学術研究者。パブロ・オスピナ・ペラルタ‐アンディナ・シモン・ボリバル大学学術研究者。パブロ・コルネホ・サンブラノ‐エクアドル・バルリオス全国会議(CONBADE)委員長。フランシスコ・プロアニョ・アランディ‐作家。サンティアゴ・ロルドス‐俳優、監督、作家。マテオ・マルティネス・アバルカ‐哲学者、作家。レオン・シエルラ・パエス‐活動家、芸術家。ポチョ・アルバレス‐映画作家、ドキュメント製作者。シルバナ・ゴンサレス。ギジェルモ・ロバジョ・クエバ。ホルヘ・アコスタ・オレジャナ。アントニオ・ビジャルロエル‐大学教員。ベレン・セバジョス‐研究者。エクアドル革命的青年(JRE)。キンセナリオ・オプシオン。エクアドル・リブレ・レ。エクアドル・デシデ。カルロス・ソリジャ‐インタグ。フランシスコ・ルナ。ロシオ・ロセロ・ガルセス。ミチェレ・バエス‐エクアドルFLACSO学生。ソフィア・ランチンバ。セサル・カルデナス‐公共サービス市民監視。マヌエル・サルガド・タマヨ。フランシスコ・イダルゴ・フロー。コンスエロ・アルボルノス‐大学教員。
以下の団体に送付:
アルゼンチン:ラ・カンポラ。エビタ運動。拡大戦線。新しい出会い運動。横断戦線。勝利のための戦線(FPV)。
ボリビア:社会主義運動(MAS)。
ブラジル:ブラジル共産党。労働党。
チリ:市民左翼。進歩主義党。急進党。社会党。民主的革命運動。
コロンビア:対抗する民主的軸。市民の力運動。
キューバ:キューバ共産党。
エルサルバドル:ファラブンドマルティ民族解放戦線。
ホンジュラス:自由と再建党(LIBRE).
メキシコ:民主的革命党。国民再生運動(MORENA)。労働党。
ニカラグア:サンディニスタ民族解放戦線。
パナマ:民主的革命党。
パラグアイ:グアス戦線。
ペルー:ペルー統一人民党。ペルー社会党。
プエルトリコ:プエルトリコ民族党。
ドミニカ共和国:祖国同盟。
ウルグアイ:拡大戦線。
ヨーロッパ:ヨーロッパ左翼党。
ドイツ:ディ・リンケ。
スペイン:左翼連合。ポデモス。
シリア。ギリシャ。
(N01038)
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