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2015年3月24日 (火)

TPP 大統領にはTPA通過後も権限がない ビックリUSTR公式見解

今回の議論は、いささかマニアックになる。
『方谷先生に学ぶ』のブログは、淡々として、驚くべき情報を提供されている。
いわゆる大統領貿易促進権限法(TPA)、推進側も反対側も世界共通で使用してきた「ファーストトラック」と呼ばれるものの誤解についてである。


議論は、おきまりのフレーズから始める必要があろう。


アメリカ合衆国憲法によれば、貿易協定の権限は議会にある。

第8 条[連邦議会の立法権限]
[第3 項]諸外国との通商、各州間の通商およびインディアン部族との通商を規制する権限。

立法、行政、司法全てにわたって独立性の強い各州の間の通商関係を連邦議会が法律に基づいて決定するというのは、合理的である。
ところが「諸外国との通商」を規制する権限が議会に属するとされ、その言葉通りに運用されてきたというのは、かなり特殊である。


相手国の立場に立つと、貿易協定を締結するための交渉相手は議会だと言われても困る。
議会の意思を代表する者は存在しない。議長は議事進行を掌るだけで、議会を代表するわけではない。議会の意思は多数決によって事後的に、初めて示される。
これでは、原理的に、諸外国は、米国とは貿易協定について交渉する余地がなくなってしまう。


そこで、大統領貿易促進権限法(TPA)があれば、議会が大統領に貿易協定締結権限を与えることができると理解されてきた。
だからこそオバマ大統領には、議会による貿易協定締結権限を授与する法律がないことが重大な問題だと指摘されてきた。
マスコミは、この法律があれば、議会の権限は、調印された貿易協定の是非を一括して認めるか否かだけになり、議会があれこれ修正を加えたり、条件を持ち出したりできないと報じてきた。
マニアックには「ファーストトラック」と呼ばれ、貿易協定を促進する権限と文字通りに理解されてきた。
この理解は、日本だけに限らず、諸外国全てに共通したものだったと思われる。
米国内ですら、そのように解されていた。


ところが、米国通商代表部(USTR)の見解は違うと「方谷先生に学ぶ」のブログ(3月13日付「USTRがTPAの本質を解説」)は暴露している。
以下、引用する。


---------------------------------------


 米通商代表部(USTR)が、正確な「大統領貿易促進権限(TPA)」の解説を行った。日本では担当閣僚や外務省がTPAを「通商交渉の結果を議 会に対して修正しないでイエスか、ノーか、それだけを議会の権限とすることを認める法律」と説明してきたが、それは一部分の説明であり、合衆国憲法に基づ く基本的な説明ではない。

3月4日に、「大統領貿易政策」と「2014年貿易年次報告」をUSTRが発表した。
この「大統領貿易政策」に、TPAの解説がある。

(中略)

 

TPA の下では議会は権限を大統領に譲らない。
大統領は、常に外国と交渉することができるが、議会のみが貿易協定を実施出来る。
 議会は、その憲法上の全ての権限を持っている、そして、憲法で定めるところにより、議会は上下院どちらでも いつでも、TPAを取り消すことも含め、その手順を変えることができる。これは、まさに2008年に、下院民主党が貿易交渉の結果に不満を抱いて行ったこ とである。(注2)


その時以来多くのことが起こった。 経済が変わり、貿易への我々のアプローチは変わらなければならない。 新しいTPA法律は、デジタル経済や国有企業に対処しなければならなく、始めて法律によって、将来の全ての貿易協定が完全に実施可能な労働基準と環境基準 を含むことを要求しなければならない。 TPAは、今日の経済を反映するために更新されなければならない。 TPAを通して、議会は非常にはっきりした優先順位と目的を行政に示す。その一方で、米国が交渉において声をそろえて対話することを許す通知手順と協議手 順の組合せを確立する。


 一部の方々はTPAを「ファストトラック」呼ぶが、速さではない。 大部分の協定は、議会の詳細な調査を受ける間、交渉に何年もかかる。最初に、貿易相手と交渉を始める前に、議会は90日前に通知書を受け取る。 長年の交渉の後、交渉が完了するときも、議会はさらに90日前の通知を受け取る。 数ヵ月後、実施法が導入されるとき、議会は公聴会を開き、実施法を起草するために会合を招集し、最終的に貿易協定を採決するのに、最高90日(典型的に 数ヵ月)の立法手続が必要になる。 本会議で法律を審議する前に、議会の委員会は、交渉目的が達成したかどうかも含め、詳細報告書を発行する。


 貿易交渉権限について最初に求めた80年前にFDRが語ったように「世界は、止まっていない。」 最近、アジア太平洋の国々は200以上の合意を行い、 アメリカ合衆国から貿易機会を遠ざけ、米国企業と労働者を不利な立場に置いた。 中国は、最大の受益者であった。 それは、許容できない状況である。 我々の経済を強化し続けるために、我々は、アメリカの仕事と労働者を保護し、我々の商品を世界中に輸出することを助けるより良い貿易規則を必要とする。米 国の労働者にとって歴史上で最も進歩的な貿易協定をもたらす、大統領から求められた道具を与える時だ。


 更新されたTPAを承認することは、そのプロセスの第一歩だ。
(以上大統領貿易政策の10、11頁)

(中略)


(注2)2008年の民主党によるTPAの手続変更
 2002年TPA法が失効する2007年6月30日をむかえ、TPA法を延長しない前提で、その後の貿易交渉について「2007年5月10日合意」と 言う形で、ブッシュ政権と民主党(ペロシ下院議長)との間で、政策合意が行われた。その内容は、未実施のFTAや今後の貿易交渉に高度な労働と環境と知的 財産保護条項などを追加する合意であり、下記テンプレートがその合意書である。現在もこの合意書を多くの議員が引用する重要な文書である。


-------------------------------------


なんとまあ、すったもんだの交渉の末、ようやく12カ国が調印に至っても、米国議会はTPAがあっても、修正権限を失わないというのが、USTRの公式見解なのである。

 

交渉相手にはたまったものではないし、交渉することに意味があるのかという問題になろう。
絶対にメディアが伝えない情報を伝えてくださる、「方谷先生に学ぶ」に感謝である。


あえて言えば、USTRからこうした公式見解を引き出したことは、合衆国憲法の勝利であり、合衆国国民の立場からも、勝利である。
合衆国国民にとって不利益になると思われる条項、利益の達成が不十分であると考えられる条項については、議会が修正することができるというのであるから、合衆国国民の利益は守られる可能性が高くなるからだ。


「自由貿易」を標榜する米国が、究極の「保護主義」的憲法解釈に至ったというのは、皮肉という他ないが、これはこれで、健全な現象のようにも見える。
自由貿易は、結局のところ、内需の縮小しかもたらさない。
OECDは格差が成長を阻害すると報告したが、その格差の最大の原因が、企業が賃金をコストとしか認識できなくなり、コスト削減の一環として人間を取り替え可能なモノ扱いする、「自由貿易」システムである。


米国国民は、これに自覚的に抵抗している。
その成果が現れ始めているとみることも可能である。
「自由貿易」神話がほころびを見せている。
可能な限り長く、「自由貿易」に抵抗することで、ネオリベ「自由貿易」システムが中心から崩壊する可能性は、ある。

方谷先生のブログ3月23日付は、直近のTPAを巡る議会内の情勢について、民主党リベラルと、共和党右派(ティーパーティ)との間の野合にも触れており、ポピュリズム批判もあるようである。
グローバルなネオリベラリズムの席巻は、世界中で(中東・アフリカの不安定化もネオリベラリズムに対する反作用である可能性がある)、極右の台頭をもたらしており、米国の先行きは著しく不安定であるのかもしれない。

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追記
方谷先生のブログに飛ぶと、最初、アメーバの広告が邪魔をしますが、記事を選択していただくと、読みやすくなります。
なお、ついでに報告しますが、当ブログのブログ内検索も無効化されています。
一般的に検索サイトで検索して出る記事が、ブログ内検索では出なくなっています。


追記2
エマニュエルトッドは、自由貿易がネオリベを世界中に蔓延させ、知識人がEUの植民地差別(反マグレブ)を煽り、極右を台頭させるという、耐えがたい状況を、サルコジ現象を手がかりに「デモクラシー以後」(藤原書店)で、詳細に論じている。
フランス共産党の壊滅的状況、フランス社会党のネオリベ化、極右の台頭に対向する団結が、政党間の対立構造を無意味化する。
超エリートは、国家の政治ではなく、EUの政治をめざし、凡庸なサルコジが大統領になる。


メディアを初めとするエリート層は、自らの財産を守るために、金融システムを支えるべく、自発的に対米隷属する状況をトッドは罵倒している。
まさに日本の状況の引き写しである。


10年近く前にフランスは、すでにトッドが耐えがたい思いをいだくほどに、そうだったのだ。


トッドは、この困難は、民主主義の終焉をもたらす可能性があることを射程に入れつつ、民主主義を維持する対抗軸として、「自由貿易」ではなく、協調した「保護主義」を提案している。


追記 3
「現代思想」3月臨時増刊号で紹介されている、現在のフランスは、さらにいっそう事態が進行している。
おそらく近未来の日本の姿がそこにある。
曾野綾子の「アパルトヘイト」発言は、近未来の日本知識人を代表する言説になるであろう。


だからこそ、自由貿易ではなく、協調した保護主義を、こそ。
植民地主義ではなく、植民地主義の克服を、こそ。

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