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2015年3月 6日 (金)

『派遣はモノ扱い』 厚労省課長あんたは正しい、そして間違っている

【簿記10級問題】
自営業者のAさんは、派遣労働者に対する賃金をどの費目に計上するのが適切か考えています。
明らかに間違っている費目はどれでしょうか。

① 消耗品費
② 人件費
③ 材料費

[正解]
  正解は②です。


絶対にしてはならないのは、派遣労働者に対する賃金を人件費に計上することです。


派遣労働者の賃金を人件費に計上した人は、最悪です。
一から勉強し直してください。
源泉徴収され、年末調整までされて税の仕組みに関心のない一般労働者ならともかく、企業経営者といわずとも、自営業者なら最低限知っておくべき常識です。


消費税は事業者にとっては、外形標準課税の一種です。
たとえ今年度の収支がどんなに赤字でも、売上の消費税分は絶対に納税しなければなりません。


A弁護士事務所は、今年度の売上1500万円、赤字500万円です。
税金は納めなくてもいいと思ってはいけません。
1500万円の内、単純に消費税分を計算すると年間8%、120万円です(昨年3月以前は5%だったのですが、計算を簡単にするために年間通して8%と仮定します。本来は1.08で割るのですが、計算の便宜のため掛け算を用いています)
取引先から受け取った消費税は国庫(地方自治体に対しても)に納める義務があります。
単純に売上に消費税率を乗じると、120万円も納税することになります。


しかし、日常の消耗品費や交通費、通信費、リース料などはすでに消費税を上乗せした金額を払っています。
事業のために仕入れた物品やサービスにかかった消費税分は、すでに支払っているのですから、仕入れ税額控除といって、納める消費税から控除することができます。
こうしてA弁護士事務所の納税額はすでに支払った消費税を控除して、たとえば60万円になります。
それでも、赤字500万円なのに、税金は60万円は絶対に支払わなければなりません。
薄く広くと言われている消費税ですが、実は、零細な事業者に集中して負担が求められる仕組みです。
ですから、今後、消費税率が上がれば上がるほど、零細・小規模事業者はどんどん廃業していきます。
グローバル経済を貫くのは弱肉強食の法則ですから、税金を負担させることによって不適格者を淘汰する政策は、理に適っています。


>

(ついでにいえば、トヨタなどの輸出産業は、輸出時点で仕入れ税額控除に当たる金額を払い戻してもらえます。これが何兆円にもなりますから、弱肉強食の法則にかなっています。国際的には、この仕組みは輸出補助金として扱われます。)


質問に戻りますが、人件費には消費税は課税されません。
派遣労働者の派遣費には消費税がかかっています。
それなのに、人件費に計上してしまうと、仕入れ税額控除が受けられなくなるのです。


ですから、派遣労働者の賃金を人件費に計上すると、無駄に消費税を払いすぎることになります。


もう一度、確認しますが、派遣労働者は、消費税の課税対象です。
派遣労働者は、消費するモノなのです。
間違っても人間とは思わないでください。
消耗品や材料費では、さすがにかわいそうだと思われる方は、外注加工費の科目に計上すると、少しは抵抗感がなくなるかもしれませんね。


『派遣はモノ扱いされてきた』と言った厚労省の富田望・需給調整事業課長は全く正しいことを言っているのです。
それなのに、厳重注意なんてあってはならないことです。

 

厳重注意処分に値するのは、『今後はモノ扱いしない』と言った後半の発言です。
派遣法の改正は、派遣対象を広げることですから、今後は、『もっとモノ扱いする労働者を広げていきます』というのが正しいのに、課長は真反対のことを言ったのですから、これは厳重注意処分に値します。


派遣労働者は、本来受けるべき賃金を、派遣業者にピンハネされて貢ぎ、その上、消費対象として消費税を国からピンハネされて貢いでくれる、大変貴重な存在です。


今後は、アルバイトやパート労働者の賃金にも消費税を課税することを検討する必要があります。
アルバイトやパート労働者も、法律上はともかく実情では、解雇自由がまかりとおる景気の安全弁ですから、派遣労働者と同じように消耗品として消費税の課税対象にすることに合理性があるでしょう。
いくいくは、正社員の賃金にも消費税を課税して、課税ベースを広げていくことが、正しい経済成長の道といえましょう。


1%が栄えるためには、99%は貢ぐ存在に徹しなければ、グローバルな経済競争で「強い日本」「世界の中心で輝く日本」を取り戻すことは決してできないのですから。

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追記 グローバリズムの源泉である米国では、1%に吸い上げられた結果、労働者の平均賃金は1970年並に低下した。日本も派遣労働などの非正規雇用の拡大によって急速にこれを追っている。
佐伯啓思氏は「経済学の犯罪」で、生産要素である労働、資本、土地を市場化してはならないとしている。生産を支える基盤を市場化して不安定化させれば、生産市場が不安定化し、結局、社会を不安定化させることになるからだ。
グローバリズムの席巻だけは、なんとしても食い止めなければならない。
今、必要なのは「自由貿易」ではなく、適度な保護主義である。

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