【資料メモ】 TPA(貿易重点法)の内容について
よんどころない事情で、情報分析をするいとまがない。
つきましては、例によって、最も的確な分析を提供していると思われる『方谷先生に学ぶ』のブログをご参照されることをお勧めいたします。
4月19日付記事では、為替操作条項について、きちんと書いてあります。
為替操作禁止は、TPAでは所与のことで、為替操作認定した場合に、米国が一方的に一種の経済制裁を加えることができるようにせよというのが、USTRに対する議員側の要求のようですね。
2.1 為替操作条項
2015年版
2章(b)(11) 通貨(2014年TPA法案と同じ)
通貨政策に関する米国の原則的な交渉目的は、米国との貿易交渉の相手国が、効果的な国際収支調整を避けるため、または交渉している相手国に対し不公平な競争上の優位を得るための為替操作を、協力メカニズム、強制力のある規制、報告、監視、透明性や適切と思われる他の手段を用いて、防ぐこと。デトロイト(自動車関連)議員が(主唱者;レビン歳入委員会民主党筆頭理事)、TPAあるいは貿易協定に罰則あるいは相殺手段のある為替操作条項にするよう求めている。
情報開示については、日本メディアは絶対に触れないでしょうね。
2.3 ワイデン民主党筆頭理事の努力
(1)情報開示
議員及びスタッフへの全面的な情報開示と国民への情報開示の規定が追加された。
(a)議員とスタッフ
・議員全員と議員が指名し秘密取扱許可を与えられた専任スタッフに、全ての通商交渉の機密扱いの交渉文書へのアクセスが許される。
・実施法(協定書条文と行政措置宣言など)は、協定署名60日前に議会に提出
(b)国民
・TPA法が成立して120日以内に国民に、貿易交渉へのアクセスに関するガイドラインを示すこと
・大統領が協定に署名する60日前までに、USTRウェブサイトに協定のテキスト公表
(c) USTRに主任透明性執行官の設置(2)議会アドバイザー及びアドバイザーグループの活動
下院歳入委員会と上院財政委員会の元に、それぞれ5名ずつのアドバイザーを任命する。(任命者は下院議長と上院仮議長)委員会の委員長と少数派筆頭理事が入り、他のメンバーはそれぞれの議会から3名ずつ選ぶ。
アドバイザーグループは任命されたアドバイザーで構成され、米国政府の正式交渉団に入り、アドバイスを行う。
秘密保持契約は、相手国だけが遵守させられる。
オバマの最大の交渉相手は米議会ですなんですから、当たり前ですね。
これはわかりにくいけど、TPAに付された内容を実現できない場合は、大統領権限を喪失させるという意味のような…。
(3)TPA権限の否決
「大統領がこのTPA法に基づく通知または協議を懈怠または拒否した。従って、同法に基づく貿易権限手続は、かかる通商協定に関して提出された実施法案には適用されない」の事例がある場合は、上院財政委委員会がTPA権限手順を適用しないと決議し否決される。上院本会議に上がっても、クローチャーモーション(討論終結動議)が60票に届かずブロックされた場合も上記事例のように否決される。下院歳入委員会と下院本会議も下院のルールで、TPA権限を否決できる。
これは、結局、「TPAを守っていない」と議会が認めれば、大統領の権限を奪うことができるということで、議会のご機嫌次第で、大統領は交渉権限を失うということで、大統領は、何とか交渉権限を維持しようとすると、これまでの交渉経過は無視して、論点を蒸し返したり、新たな要求を突きつけたりできるということ、ではないですかね。
オバマは、韓国や中米の国々に貿易協定の署名後に再交渉をして無理を通したことがあるわけですが、これを制度化するという意味に見えるのですが…。
TPA法案が仮に通ったとしても、交渉はしないに越したことはないです。
次のことは、僕も知っていました。
国際経済法の標準的テキストに書いてあるので、『現代農業』に寄稿したことがあります。
貿易協定より米国法が優先するとの規定は、2002年TPA法に明確な規定がないが、全てのFTA実施法第102条(ヨルダンのみ401条)に米国法が優先するとの規定を設けている。
ウォーレン議員が多数派工作をしている。
ウォーレン議員、頑張れ。
また、ウォーレン上院議員は、ISDSが国家主権を侵すとしてTPAとTPPに反対し、多数派工作を行っている。彼らに取ってみれば、反対する理由が2014年版に書かれていて、2015年版で何も変わっていない。
取り急ぎ、こんなところで。
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